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第六章 一年次・夏
第104話 十歳の威圧
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ロゼリアたちの方も、シルヴァノたちの活躍で徐々に魔物の数が減ってきていた。
しかし、第二波を倒しても第三波がやはり現れてしまい、徐々にジリ貧となってきていた。もはやこれまでかと、諦めの雰囲気が出始めた時だった。
「サンダーネット!」
その声が響くと同時に、ロゼリアたちの足元に魔力の網が現れる。そして、出現した魔物と魔物を呼び出す召喚陣のすべてを雷で打ち据えていった。
「お姉様、ロゼリア、大丈夫ですか?」
魔力の縄で縛り上げたアイリスを伴って、エアリアルボードに乗ったペシエラが駆けつけたのだった。
「ペシエラ!」
ロゼリアが叫ぶ。ペシエラがちょこんと地面に降りると、
「ええ、みんな無事よ」
「うん、魔物はすべて退治されたみたい」
ロゼリアとチェリシアが口々に答えた。
「しかし、何だったのかしら、あの魔物たちは……」
安心したロゼリアは考え込む。
「ええ、その理由をこの方に答えてもらいましょう」
「この方?」
ペシエラは、エアリアルボードに乗せた、猿轡を掛けられた少女を指差した。
その少女を見て、ロゼリアとチェリシアは驚いた。
「なんと、そのアイリス嬢がこの一件に絡んでいると言うのかな?」
疑問を最初に投げ掛けたのは、チークウッドだった。
「ええ。向こうでケルピーを倒した後に、心配したフリをして、私を刺そうとしてましたからね。少なくともパープリア男爵家が絡んでいそうですわ」
ペシエラがアイリスを見ると、アイリスはバツが悪そうに目を背けた。
「私たちと友人になって、油断させるつもりだったのですわね。こんな物まで用意して」
ペシエラは、さっきアイリスが落とした宝珠を取り出す。
「何だい、それは?」
チークウッドは尋ねる。
「鑑定魔法の結果、魔物を使役する魔道具だったようですわ。ケルピーを使役するようになっていたようですけれど、使った本人が怯んでしまっては、意味がありませんわね。おそらく、何が使役されるか知らされてなかったのでしょう」
ペシエラはそう推察した。
つまりは、アイリスは使い捨ての駒だったという事だ。となると、逆行前の魔物の襲撃も、アイリスが引き起こしたもので間違いはないだろう。
しかし、恐ろしいのは子どもにそんな役目を言い渡した大人だ。となると、これを以てパープリア男爵家を追い詰める必要がありそうだった。
「というわけで、アイリス」
ペシエラはアイリスに掛けた拘束を解く。予想外の行動に、その場の全員が驚いた。当のアイリスも驚きはしたが、ペシエラを見て喚き始めた。
「なによ、私が王子たちの殺害の片棒を担いだ事は分かってるのでしょう? さっさと私を殺せばいいんだわ!」
しかし、ペシエラはこの言葉にまったく動じない。
「そうね。ここでの件はあなた一人を殺せば済むかも知れませんわね。でも、真犯人は他に居るのですから、そっちは放っておけませんわよ。元を断たねば、王族の命を狙う不逞を放置する事になりますもの。あなたはさっさと、この謀りの黒幕を話せばよろしいのですわ」
ペシエラから凍てついた視線を送られ、アイリスはひっと縮こまる。さすがは一度女王を体験した身、肝が据わっている。
「しかし、よく気が付いたものですね、ペシエラ嬢」
シルヴァノがペシエラに話し掛ける。
「それはもちろん、サインがあったからですわ」
「どんな、ですか?」
「アイリス様は右利き。ですが、私に近付いて来た時は左手を伸ばして、右手は握り込んでいましたの。それですぐに気が付きましたわ、右手に何かを持っていると」
ペシエラの答えに、全員が感心する。アイリスを除いて。
「それだけで気付いたというの? ……お父様は上手くいくって仰っていたのに」
アイリスははっと口を押さえる。だが、言ってしまった言葉は取り消せない。
「ほう、やはり今回の騒ぎはパープリア卿の仕業ですか」
「ガレン先生!」
アイリスの口から衝撃的な言葉が出た時、背後からガレンが現れたのだった。
しかし、第二波を倒しても第三波がやはり現れてしまい、徐々にジリ貧となってきていた。もはやこれまでかと、諦めの雰囲気が出始めた時だった。
「サンダーネット!」
その声が響くと同時に、ロゼリアたちの足元に魔力の網が現れる。そして、出現した魔物と魔物を呼び出す召喚陣のすべてを雷で打ち据えていった。
「お姉様、ロゼリア、大丈夫ですか?」
魔力の縄で縛り上げたアイリスを伴って、エアリアルボードに乗ったペシエラが駆けつけたのだった。
「ペシエラ!」
ロゼリアが叫ぶ。ペシエラがちょこんと地面に降りると、
「ええ、みんな無事よ」
「うん、魔物はすべて退治されたみたい」
ロゼリアとチェリシアが口々に答えた。
「しかし、何だったのかしら、あの魔物たちは……」
安心したロゼリアは考え込む。
「ええ、その理由をこの方に答えてもらいましょう」
「この方?」
ペシエラは、エアリアルボードに乗せた、猿轡を掛けられた少女を指差した。
その少女を見て、ロゼリアとチェリシアは驚いた。
「なんと、そのアイリス嬢がこの一件に絡んでいると言うのかな?」
疑問を最初に投げ掛けたのは、チークウッドだった。
「ええ。向こうでケルピーを倒した後に、心配したフリをして、私を刺そうとしてましたからね。少なくともパープリア男爵家が絡んでいそうですわ」
ペシエラがアイリスを見ると、アイリスはバツが悪そうに目を背けた。
「私たちと友人になって、油断させるつもりだったのですわね。こんな物まで用意して」
ペシエラは、さっきアイリスが落とした宝珠を取り出す。
「何だい、それは?」
チークウッドは尋ねる。
「鑑定魔法の結果、魔物を使役する魔道具だったようですわ。ケルピーを使役するようになっていたようですけれど、使った本人が怯んでしまっては、意味がありませんわね。おそらく、何が使役されるか知らされてなかったのでしょう」
ペシエラはそう推察した。
つまりは、アイリスは使い捨ての駒だったという事だ。となると、逆行前の魔物の襲撃も、アイリスが引き起こしたもので間違いはないだろう。
しかし、恐ろしいのは子どもにそんな役目を言い渡した大人だ。となると、これを以てパープリア男爵家を追い詰める必要がありそうだった。
「というわけで、アイリス」
ペシエラはアイリスに掛けた拘束を解く。予想外の行動に、その場の全員が驚いた。当のアイリスも驚きはしたが、ペシエラを見て喚き始めた。
「なによ、私が王子たちの殺害の片棒を担いだ事は分かってるのでしょう? さっさと私を殺せばいいんだわ!」
しかし、ペシエラはこの言葉にまったく動じない。
「そうね。ここでの件はあなた一人を殺せば済むかも知れませんわね。でも、真犯人は他に居るのですから、そっちは放っておけませんわよ。元を断たねば、王族の命を狙う不逞を放置する事になりますもの。あなたはさっさと、この謀りの黒幕を話せばよろしいのですわ」
ペシエラから凍てついた視線を送られ、アイリスはひっと縮こまる。さすがは一度女王を体験した身、肝が据わっている。
「しかし、よく気が付いたものですね、ペシエラ嬢」
シルヴァノがペシエラに話し掛ける。
「それはもちろん、サインがあったからですわ」
「どんな、ですか?」
「アイリス様は右利き。ですが、私に近付いて来た時は左手を伸ばして、右手は握り込んでいましたの。それですぐに気が付きましたわ、右手に何かを持っていると」
ペシエラの答えに、全員が感心する。アイリスを除いて。
「それだけで気付いたというの? ……お父様は上手くいくって仰っていたのに」
アイリスははっと口を押さえる。だが、言ってしまった言葉は取り消せない。
「ほう、やはり今回の騒ぎはパープリア卿の仕業ですか」
「ガレン先生!」
アイリスの口から衝撃的な言葉が出た時、背後からガレンが現れたのだった。
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