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第六章 一年次・夏
第122話 お船に揺られて
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というわけでやって来ました。シェリア港です。漣の音、海鳥の鳴き声、港で働く人たちの喧騒。これぞ港である。
今回の視察の締めとして、シェリアの船に乗る事になったのだが、実は全員が船は初体験。チェリシアだけは前世で乗船経験があるが、木造船は初めてである。しかし、コーラル伯爵の長女としての体裁もあるので、ここは説明側に回る。
「海の上の船は、波の影響で思った以上に揺れる事があります。もし気持ち悪くなった時は、早めに仰って下さい」
食後、ある程度時間を置いたとはいえ、船酔いを起こせば思いっきり嘔吐してしまう。なので、事前に嘔吐対策もしっかりしてある。後は早めの申告をしてもらえれば、甲板を汚す事もないだろう。
説明と準備が終わったところで、いよいよ出航だ。錨を回収し、埠頭に固定するためのロープも回収。帆を張ると、船はゆっくりと離岸する。
今回乗船している船は、風と潮だけで航行できる操舵士が操る船である。念のために水と風の魔法の使える魔法使いも乗船している。
二十人ほどが乗り込める船だが、その半分は全員だ。つまり、残りの枠をロゼリアたちで埋めているという事である。
船の大きさは全長が二十五メートルほどで、高さは帆の部分を含めて三十五メートルだ。地球なら小型船舶と言ってもいいくらいだが、アイヴォリー王国内であれば、なかなか見ない大型船になる。文化の差というか技術の差というか、国内の船なんて精々湖沼で使うボートくらいだったのだから、確かに大型なのだ。
一時間程度のクルージングではあったが、なかなか体験できない海上での時間に、プラティナやブラッサたちには喜んでもらえたようだ。グレイアだけは船酔いをしていたようだが、それ以外に船酔い被害自体は起きなかった。強い。
「この船という物を使えば、海の向こうなどとの交易もできそうですね。チェリシア様たちには感謝せねばなりませんね」
ブラッサはこういう事を言っていた。商魂逞しいばかりだ。さすがは商会長の娘である。
ただ本人は「ロイエールも連れて来たかった」と言っていた。自分だけが経験したのは申し訳ないと言ったところだろう。なので、
「今度はお父様やロイエールさんも連れていらして下さい。友人としてもですが、コーラル伯爵家としても歓迎致しますよ?」
チェリシアは笑顔で伝えておいた。ブラッサは考え込んでいたので、前向きに検討してくれるだろう。そのうち、シェリアにドール商会の支店を出しそうである。歓迎はするけど。
そういえば、途中で体験した、船上での釣りも好評だった。グレイアは船酔いしかけた事も忘れて、ポンポンと魚を釣り上げていた。これは意外な才能である。
そして、獲った魚はその日の夜の食卓で振る舞われる運びになった。
ちなみにこの視察の様子は、アイリスに着けられた録画魔法と、チェリシアとペシエラの写真魔法でしっかりと記録されている。言わぬが花という事で、ロゼリア以外は知らない話である。
あれよあれよという間に、シェリアでの二日間が終わる。翌日からは、二日掛けてカイスへの移動となる。
今回の視察は、ドール商会への便宜を図るのなら、ロイエールも連れてくるべきであっただろう。しかし、エアリアルボードの性能を考えると人数を絞る必要はあったし、一応は恋のライバルになる可能性のある女性たちの動向を、この目で直接見ておく必要があったのだ。そういった思惑から、女性ばかりでの視察となったのだ。
まあそれはどうであれ、シェリアでの視察はなかなかに有意義なものであった。
しかし、チェリシアは満足していない。まだ再現できていない調味料はある。やはり、醤油、味噌、マヨネーズは必要だ。これがあればさらに料理の幅が広がる。ワインや酢といった発酵系の食材はあるのだ。理論上、醤油や味噌だって作れるはずなのである。
チェリシアは次の視察地であるカイスに期待する。数年前に仕掛けた魔法が実っていると信じて……。
今回の視察の締めとして、シェリアの船に乗る事になったのだが、実は全員が船は初体験。チェリシアだけは前世で乗船経験があるが、木造船は初めてである。しかし、コーラル伯爵の長女としての体裁もあるので、ここは説明側に回る。
「海の上の船は、波の影響で思った以上に揺れる事があります。もし気持ち悪くなった時は、早めに仰って下さい」
食後、ある程度時間を置いたとはいえ、船酔いを起こせば思いっきり嘔吐してしまう。なので、事前に嘔吐対策もしっかりしてある。後は早めの申告をしてもらえれば、甲板を汚す事もないだろう。
説明と準備が終わったところで、いよいよ出航だ。錨を回収し、埠頭に固定するためのロープも回収。帆を張ると、船はゆっくりと離岸する。
今回乗船している船は、風と潮だけで航行できる操舵士が操る船である。念のために水と風の魔法の使える魔法使いも乗船している。
二十人ほどが乗り込める船だが、その半分は全員だ。つまり、残りの枠をロゼリアたちで埋めているという事である。
船の大きさは全長が二十五メートルほどで、高さは帆の部分を含めて三十五メートルだ。地球なら小型船舶と言ってもいいくらいだが、アイヴォリー王国内であれば、なかなか見ない大型船になる。文化の差というか技術の差というか、国内の船なんて精々湖沼で使うボートくらいだったのだから、確かに大型なのだ。
一時間程度のクルージングではあったが、なかなか体験できない海上での時間に、プラティナやブラッサたちには喜んでもらえたようだ。グレイアだけは船酔いをしていたようだが、それ以外に船酔い被害自体は起きなかった。強い。
「この船という物を使えば、海の向こうなどとの交易もできそうですね。チェリシア様たちには感謝せねばなりませんね」
ブラッサはこういう事を言っていた。商魂逞しいばかりだ。さすがは商会長の娘である。
ただ本人は「ロイエールも連れて来たかった」と言っていた。自分だけが経験したのは申し訳ないと言ったところだろう。なので、
「今度はお父様やロイエールさんも連れていらして下さい。友人としてもですが、コーラル伯爵家としても歓迎致しますよ?」
チェリシアは笑顔で伝えておいた。ブラッサは考え込んでいたので、前向きに検討してくれるだろう。そのうち、シェリアにドール商会の支店を出しそうである。歓迎はするけど。
そういえば、途中で体験した、船上での釣りも好評だった。グレイアは船酔いしかけた事も忘れて、ポンポンと魚を釣り上げていた。これは意外な才能である。
そして、獲った魚はその日の夜の食卓で振る舞われる運びになった。
ちなみにこの視察の様子は、アイリスに着けられた録画魔法と、チェリシアとペシエラの写真魔法でしっかりと記録されている。言わぬが花という事で、ロゼリア以外は知らない話である。
あれよあれよという間に、シェリアでの二日間が終わる。翌日からは、二日掛けてカイスへの移動となる。
今回の視察は、ドール商会への便宜を図るのなら、ロイエールも連れてくるべきであっただろう。しかし、エアリアルボードの性能を考えると人数を絞る必要はあったし、一応は恋のライバルになる可能性のある女性たちの動向を、この目で直接見ておく必要があったのだ。そういった思惑から、女性ばかりでの視察となったのだ。
まあそれはどうであれ、シェリアでの視察はなかなかに有意義なものであった。
しかし、チェリシアは満足していない。まだ再現できていない調味料はある。やはり、醤油、味噌、マヨネーズは必要だ。これがあればさらに料理の幅が広がる。ワインや酢といった発酵系の食材はあるのだ。理論上、醤油や味噌だって作れるはずなのである。
チェリシアは次の視察地であるカイスに期待する。数年前に仕掛けた魔法が実っていると信じて……。
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