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第七章 一年次・後半
第132話 武術大会、開始
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結論から言うと、ペシエラの武術大会への出場は了承された。決め手はやはり、入学直後の武術試験だった。剣だけの勝負でペイル王子に勝ってしまったわけだし、目玉にならないわけがなかった。
ところが、懸念材料もあると言えばある。それは、武術大会は魔法が解禁される事である。会場には失われた技術を用いた防壁が張ってあるとはいえ、ペシエラの魔法が規格外であるので、懸念は耐えられるかどうかいう点である。少なくとも雷魔法は、その防壁の外から飛んでくるので、一般被害が起きそうで戦々恐々であった。
そんなこんなで、あっという間に学園祭の日がやってきた。日程は全部で四日間。武術大会は参加人数が居るので、初日、二日目、最終日と分けて行われる。三日目に行われないのは、予選と決勝を明確に分けるためである。
予選は複数の組に分けられた総当たり戦で行われ、各上位二名ずつが決勝に上がる。そして、決勝戦は組み合わせによる勝ち抜き戦、つまりはトーナメントである。
参加人数を確認すると、全部で四十人居るようだ。それぞれ五人ずつの八組に分かれている。六年次まである学園にしては、思ったよりも少ない人数だ。ちなみに例年なら、この倍は参加するらしい。
ここまで減った原因は、一年次の参加者が原因である。
シルヴァノとペイルという王子が二人に加え、騎士団副団長の息子のオフライトと目を引く参加者が居る。それに加えてダークホース的な存在として、ペシエラが居たのだ。参加メンバーの中で唯一の女性で、しかも十歳という。凄腕とは聞き及んでいるが、淑女に剣を向ける事を、多くがためらったのである。紳士だ。
しかし、このためらいは別の意味で英断だったと思い知らされる。
ペシエラは大会の二戦目に早くも登場する。相手は五年次の学生で、体格の差がかなりある。そのせいか、会場からは八百長を促すような声も聞こえてくるが、ペシエラはむしろこの体格差を喜んでいる。
「さぁ、本気でかかって来て下さいませ。手加減されるのは、はっきり言って迷惑ですわ」
もはや挑発じみた口調で話すペシエラ。どうして戦闘狂になったのだろうか。
ところがどっこい、この挑発に相手がまんまと乗ってしまう。
「おいおい、手加減してやれよ」
「あれじゃあの子が可哀想だわ」
「ペイル王子に勝ったって言っても、あれだけの体格差じゃシャレにならんぞ」
観客がそれぞれにペシエラの心配をしているようだ。しかし、それはすぐに杞憂というかただの間違いだったと分かる。
五年次の学生が、始めの合図と共にペシエラへと持った剣を振り回す。だが、ペシエラはその剣筋を見切っているのか、踊るように全てを躱していく。
「くっ、一丁前に躱すじゃねえか。だが、いつまで持つかな?」
五年次先輩は、さらに攻撃を仕掛けてくる。
この武術大会は魔法も使えるはずなのだが、五年次先輩は魔法を使ってこない。遠慮しているのかと思ったのだが、
(単純に魔法が使えませんのね。魔力の流れがほとんどありませんもの)
使えても単純な初歩魔法くらいしか使えないくらいの魔力しかなかった。
だが、その分、体を技術を鍛えた。しかし、力任せの攻撃ゆえに、大振りで軌道が読みやすく、ペシエラに攻撃を掠める事すらできなかった。
「お遊びはこれまでですわね」
ペシエラはそう言って、バックステップで五年次先輩と距離を取った。
が、次の瞬間。
「はあぁっ!!」
五年次先輩の目の前まで飛び込んで、凄まじいまでの連続突き。そして、最後の一撃を放ち、引いた剣を横薙ぎすると、五年次先輩は静かにその場に倒れ込んだ。
会場は何が起こったのか分からずに静まり返る。審判役の教官が四角い闘技場に上がり、倒れ込んだ五年次先輩の状態を確認する。
脈あり、呼吸あり、意識なし。
それを確認した審判は、ペシエラの勝ちを宣言した。
「すげええっ!」
「な、何が起きたんだ?」
「連続突きをしてたぞ」
「でも、届いてなかったよね?」
会場からは様々な声が上がる。それにしても、どうやら連続突きが体に当たっていない事を見破っていた猛者が居るようだ。
そう、五年次先輩は突きの風圧で気を失ったのである。それほどまでにペシエラの攻撃は鋭いものであり、剣先を一度も相手に当てないという剣捌きを見せつけたのだ。これでいて魔法を使っていない。
一年次の、しかも十歳という新星の登場に、会場は更なる盛り上がりを見せるのだった。
ところが、懸念材料もあると言えばある。それは、武術大会は魔法が解禁される事である。会場には失われた技術を用いた防壁が張ってあるとはいえ、ペシエラの魔法が規格外であるので、懸念は耐えられるかどうかいう点である。少なくとも雷魔法は、その防壁の外から飛んでくるので、一般被害が起きそうで戦々恐々であった。
そんなこんなで、あっという間に学園祭の日がやってきた。日程は全部で四日間。武術大会は参加人数が居るので、初日、二日目、最終日と分けて行われる。三日目に行われないのは、予選と決勝を明確に分けるためである。
予選は複数の組に分けられた総当たり戦で行われ、各上位二名ずつが決勝に上がる。そして、決勝戦は組み合わせによる勝ち抜き戦、つまりはトーナメントである。
参加人数を確認すると、全部で四十人居るようだ。それぞれ五人ずつの八組に分かれている。六年次まである学園にしては、思ったよりも少ない人数だ。ちなみに例年なら、この倍は参加するらしい。
ここまで減った原因は、一年次の参加者が原因である。
シルヴァノとペイルという王子が二人に加え、騎士団副団長の息子のオフライトと目を引く参加者が居る。それに加えてダークホース的な存在として、ペシエラが居たのだ。参加メンバーの中で唯一の女性で、しかも十歳という。凄腕とは聞き及んでいるが、淑女に剣を向ける事を、多くがためらったのである。紳士だ。
しかし、このためらいは別の意味で英断だったと思い知らされる。
ペシエラは大会の二戦目に早くも登場する。相手は五年次の学生で、体格の差がかなりある。そのせいか、会場からは八百長を促すような声も聞こえてくるが、ペシエラはむしろこの体格差を喜んでいる。
「さぁ、本気でかかって来て下さいませ。手加減されるのは、はっきり言って迷惑ですわ」
もはや挑発じみた口調で話すペシエラ。どうして戦闘狂になったのだろうか。
ところがどっこい、この挑発に相手がまんまと乗ってしまう。
「おいおい、手加減してやれよ」
「あれじゃあの子が可哀想だわ」
「ペイル王子に勝ったって言っても、あれだけの体格差じゃシャレにならんぞ」
観客がそれぞれにペシエラの心配をしているようだ。しかし、それはすぐに杞憂というかただの間違いだったと分かる。
五年次の学生が、始めの合図と共にペシエラへと持った剣を振り回す。だが、ペシエラはその剣筋を見切っているのか、踊るように全てを躱していく。
「くっ、一丁前に躱すじゃねえか。だが、いつまで持つかな?」
五年次先輩は、さらに攻撃を仕掛けてくる。
この武術大会は魔法も使えるはずなのだが、五年次先輩は魔法を使ってこない。遠慮しているのかと思ったのだが、
(単純に魔法が使えませんのね。魔力の流れがほとんどありませんもの)
使えても単純な初歩魔法くらいしか使えないくらいの魔力しかなかった。
だが、その分、体を技術を鍛えた。しかし、力任せの攻撃ゆえに、大振りで軌道が読みやすく、ペシエラに攻撃を掠める事すらできなかった。
「お遊びはこれまでですわね」
ペシエラはそう言って、バックステップで五年次先輩と距離を取った。
が、次の瞬間。
「はあぁっ!!」
五年次先輩の目の前まで飛び込んで、凄まじいまでの連続突き。そして、最後の一撃を放ち、引いた剣を横薙ぎすると、五年次先輩は静かにその場に倒れ込んだ。
会場は何が起こったのか分からずに静まり返る。審判役の教官が四角い闘技場に上がり、倒れ込んだ五年次先輩の状態を確認する。
脈あり、呼吸あり、意識なし。
それを確認した審判は、ペシエラの勝ちを宣言した。
「すげええっ!」
「な、何が起きたんだ?」
「連続突きをしてたぞ」
「でも、届いてなかったよね?」
会場からは様々な声が上がる。それにしても、どうやら連続突きが体に当たっていない事を見破っていた猛者が居るようだ。
そう、五年次先輩は突きの風圧で気を失ったのである。それほどまでにペシエラの攻撃は鋭いものであり、剣先を一度も相手に当てないという剣捌きを見せつけたのだ。これでいて魔法を使っていない。
一年次の、しかも十歳という新星の登場に、会場は更なる盛り上がりを見せるのだった。
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