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第八章 二年次
第187話 金属と職人
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鉄を炉で熱して、熱いうちに叩いて延ばし、それを水につけて急激に冷やす。
その工程を繰り返しているうちに、どんどんと高純度鉄が細長く、そして薄くなっていき、次第に剣の姿を見せ始めた。
何度となく席を外したグレイアと違い、ルゼはずっとその様子を見ていた。リードのその動き一つ一つを食い入るように。
外がすっかり暗くなった頃、ようやく納得がいったのか、リードが手を置いた。六時間はぶっ通しで剣を打っていた事になる。ルゼは輝くような目で、その打たれた剣を見ている。
「ガキ、まだ居たのか……」
「ええ。おじさんの仕事を瞬きもなく最初から。うん、金属がすごく満足してる。真剣に会話してたのが、よく分かる」
ルゼは笑顔である。
(この熱い工房の中で汗一つかいていない。紛れもなくコイツは魔物なんだな)
ようやく、ルゼが魔物であると納得したリードだったが、まだ剣は完成していないので作業の手は止めない。それに、剣身が剥き出しのままなのだ。これに柄を付けなければ完成しない。
結局、剣が完成したのは、それから更に二時間も後の事だった。
「……ふう、完成だ。……ほれ、見てみるか?」
リードは後ろにルゼが居るのを確認して、完成したばかりの剣を見せる。
「うん、見る」
ルゼは剣を手に取ってまじまじと見ている。そして、突然、自分の左手を切り落とした。
「お、おいっ、何してるんだ!」
リードが慌てて叫ぶが、ルゼはまったく気にしていない。
「平気よ。私はスライムの上位種だから」
切り落とされた左手がみるみるゲル化して、左手首に吸い寄せられていく。そして、あっという間に元通りになってしまった。
「……、いきなり手を切り落とすのはやめてくれ。今のあんたはどう見ても人間だからな、心臓に悪い」
「……そうなのね。分かった」
リードが頭を掻きながらボヤくと、ルゼはきょとんと不思議そうな顔をしながら答えた。
「うん、打ちたてだけど、何の問題もない。これだけ見事に流動の金属を斬れるなら、大抵の魔物に通用するわ」
剣に見惚れるような顔で、ルゼは感想を漏らした。
「凄いわね。ずっと見てたけど、ここまで丹念に鍛えられた剣は見た事がないわ」
ルゼは剣を持って、そのすべてをじっくり見ている。厚さ、強度など、状態を確かめている。
「決めたわ。主人様とペシエラ様の剣もここで作ってもらうわ」
「ほう、ペシエラって事は、マゼンダ商会のとこのか、あんたは」
リードが睨むようにして言うと、
「そうよ。私は金属に詳しいからって、ドール商会に入ったの」
底抜けの笑顔でルゼは答えていた。
「そうか。だが、剣を作るとしてお金はどうする気だ? こっちも商売だからな、金は取るぞ?」
リードは金銭の話をする。だが、ルゼは鼻で笑った。
「私は金属の塊よ。お金と言うなら……、これでどうかな?」
ルゼは指先から搾り取るように、金属の塊を生み出した。それを見たリードは、とてつもない顔で驚いていた。
「こいつぁ、紛れもなく魔法銀じゃねえか。とんでもねえ、これだけあればさっき打った剣数本分にはなるぞ」
目の前の親指一本分の魔法銀を見て、リードは唸った。
「そっか。じゃ、ペシエラ様のサーベルを一本、主人様の短剣二本と投擲用の短剣数本を作ってもらえるかな? 材質はさっきのでいいわ」
「ああ、分かった。馬鹿にして悪かったな。その詫びも入れてやらせてもらうぞ」
商談が成立した。
「そっか。リードといったかしら。あなたとは長い付き合いになりそうで楽しみだわ」
ルゼはそう言って、非常に悪い顔をしている。だが、リードはやる気満々である。
リードたちをご飯に呼びに来たグレイアも、工房の外から見た父親の顔に、非常に喜びを感じていた。
ルゼは、リードやグレイアたちと、金属と加工についてご飯を食べながら盛り上がっていた。
……結局泊まりになってしまったがために、翌日、マゼンダ、ドールの両商会からこっ酷く怒られたのは、言うまでもない話である。
その工程を繰り返しているうちに、どんどんと高純度鉄が細長く、そして薄くなっていき、次第に剣の姿を見せ始めた。
何度となく席を外したグレイアと違い、ルゼはずっとその様子を見ていた。リードのその動き一つ一つを食い入るように。
外がすっかり暗くなった頃、ようやく納得がいったのか、リードが手を置いた。六時間はぶっ通しで剣を打っていた事になる。ルゼは輝くような目で、その打たれた剣を見ている。
「ガキ、まだ居たのか……」
「ええ。おじさんの仕事を瞬きもなく最初から。うん、金属がすごく満足してる。真剣に会話してたのが、よく分かる」
ルゼは笑顔である。
(この熱い工房の中で汗一つかいていない。紛れもなくコイツは魔物なんだな)
ようやく、ルゼが魔物であると納得したリードだったが、まだ剣は完成していないので作業の手は止めない。それに、剣身が剥き出しのままなのだ。これに柄を付けなければ完成しない。
結局、剣が完成したのは、それから更に二時間も後の事だった。
「……ふう、完成だ。……ほれ、見てみるか?」
リードは後ろにルゼが居るのを確認して、完成したばかりの剣を見せる。
「うん、見る」
ルゼは剣を手に取ってまじまじと見ている。そして、突然、自分の左手を切り落とした。
「お、おいっ、何してるんだ!」
リードが慌てて叫ぶが、ルゼはまったく気にしていない。
「平気よ。私はスライムの上位種だから」
切り落とされた左手がみるみるゲル化して、左手首に吸い寄せられていく。そして、あっという間に元通りになってしまった。
「……、いきなり手を切り落とすのはやめてくれ。今のあんたはどう見ても人間だからな、心臓に悪い」
「……そうなのね。分かった」
リードが頭を掻きながらボヤくと、ルゼはきょとんと不思議そうな顔をしながら答えた。
「うん、打ちたてだけど、何の問題もない。これだけ見事に流動の金属を斬れるなら、大抵の魔物に通用するわ」
剣に見惚れるような顔で、ルゼは感想を漏らした。
「凄いわね。ずっと見てたけど、ここまで丹念に鍛えられた剣は見た事がないわ」
ルゼは剣を持って、そのすべてをじっくり見ている。厚さ、強度など、状態を確かめている。
「決めたわ。主人様とペシエラ様の剣もここで作ってもらうわ」
「ほう、ペシエラって事は、マゼンダ商会のとこのか、あんたは」
リードが睨むようにして言うと、
「そうよ。私は金属に詳しいからって、ドール商会に入ったの」
底抜けの笑顔でルゼは答えていた。
「そうか。だが、剣を作るとしてお金はどうする気だ? こっちも商売だからな、金は取るぞ?」
リードは金銭の話をする。だが、ルゼは鼻で笑った。
「私は金属の塊よ。お金と言うなら……、これでどうかな?」
ルゼは指先から搾り取るように、金属の塊を生み出した。それを見たリードは、とてつもない顔で驚いていた。
「こいつぁ、紛れもなく魔法銀じゃねえか。とんでもねえ、これだけあればさっき打った剣数本分にはなるぞ」
目の前の親指一本分の魔法銀を見て、リードは唸った。
「そっか。じゃ、ペシエラ様のサーベルを一本、主人様の短剣二本と投擲用の短剣数本を作ってもらえるかな? 材質はさっきのでいいわ」
「ああ、分かった。馬鹿にして悪かったな。その詫びも入れてやらせてもらうぞ」
商談が成立した。
「そっか。リードといったかしら。あなたとは長い付き合いになりそうで楽しみだわ」
ルゼはそう言って、非常に悪い顔をしている。だが、リードはやる気満々である。
リードたちをご飯に呼びに来たグレイアも、工房の外から見た父親の顔に、非常に喜びを感じていた。
ルゼは、リードやグレイアたちと、金属と加工についてご飯を食べながら盛り上がっていた。
……結局泊まりになってしまったがために、翌日、マゼンダ、ドールの両商会からこっ酷く怒られたのは、言うまでもない話である。
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