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第八章 二年次
第203話 不穏
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結論から言うと、アルミニウムの精製は簡単だった。しかし、それはルゼだからこそできたもの。アルミニウムの精製技術が無い上に、アルタン自体の流通も見る限り存在しない。キャノルの暗器を作っていた職人は、どうやってアルタンを手に入れて加工していたのか、まったくもって不可解すぎる。
また、ルゼの能力は素晴らしいもので、ボーキサイトからアルミナを取り出した残りから、しっかり使えそうな金属を抽出していた。
学園祭での出し物は、チェリシアが中心となって進められている。ロゼリアはそのサポートをしつつクラスの方を優先、ペシエラは王妃教育をこなしつつ自分の事で精一杯で、学園祭に関してはほぼノータッチである。
「私、今年も武術大会に出る事にしてますので、お姉様を手伝えずに残念ですわ」
魔道具の作製をしながら、ペシエラは残念そうにしていた。
「仕方ないわよ。正式に殿下の婚約者になって忙しいんだから。夜会にも引っ張り回されてるんでしょう?」
「ええ、まだ十一歳という事で、早めに切り上げさせて頂いてますけど、頻度が頻度なので疲れてしまいますわ」
愚痴を言うペシエラ。なんでもほぼ毎週のように夜会なのだから困ったものである。しかし、なんでそんなに行うのであろうか。王家の意図も分からない。
「あまりにストレスが多い時は、ラルクに剣術の相手を頼んでますわ。彼は盾剣の使い手なので、なかなかいい訓練になりますのよ」
ペシエラは人差し指を立てて、自慢げに話している。
アイリスの従魔となったオークジェネラルのラルクは、現在は王国の近衛騎士団の一員となっており、騎士団の訓練では的役を買って出ているらしい。上級の魔物である彼にとって、人間の攻撃など蚊に刺された程度なのだろうから、適任と言えば適任かも知れない。
話をしながらチェリシアが調理窯用の魔石を作っていると、ペシエラが珍しくあくびをしている。
「ペシエラ、あくびが出るくらいには疲れてるみたいだから、無理しないで部屋に戻りなさい。魔法だけなら私だって負けてないから、代わりにやっておくわよ」
ペシエラはチェリシアの言葉にちょっと悩んでいたが、
「そうですわね。ここのところ寝不足気味でしたから、そうさせて頂きますわ」
と、素直に手を置いて、王都のコーラル邸へとアイリスに付き添われながら戻っていった。
「……だいぶ疲れてるわね。逆行前の事もあるから、女王としての覚悟があるのはいいけど、頑張り過ぎてるのよね……」
チェリシアは作業の手を止めて、ペシエラを心配していた。
「さて、ペシエラのしていた作業に移りますか」
チェリシアは席を移動して、ペシエラの居た場所に座る。
チェリシアとペシエラは、そもそもが同一人物なので魔力の量や質がほぼ同じである。チェリシアに異世界の魂が宿ったので、差異はそれくらいである。なので、二人とも同じ作業をする事ができるのだ。
チェリシアは部屋に一人で黙々と作業をしている。
陽が傾き始めた頃、作業をするチェリシアの元にキャノルがやって来た。
「チェリシア様、そろそろ帰らないと親父さんたちが心配すると思いますぜ」
その声にチェリシアが反応して顔を起こす。作業をする部屋には陽が入ってこないし、集中していたから時間を忘れてしまっていたようだ。
「もうそんな時間なのね。分かったわ、そろそろ帰りましょう」
チェリシアは机の上を片付ける。
「最近、周りをうろちょろする輩が居るんで、気を付けて下さいよ。チェリシア様はどこか危なっかしいんでね」
暗殺者だったキャノルは、こういった気配には鋭いらしく、チェリシアに伝えてきた。
「そうなのね。一応防護魔法を展開してるし、魔道具だって身に付けてるわ」
「いや、あたいがすんなり近付けた実績があるんだ。油断しない方がいい」
どこか楽観的なチェリシアを、キャノルは諌めた。
「……それもそうね。もしもの時は、頼りにしてるわよ」
「はぁ……。まあ、雇い主に忠誠を誓ってるから、護る時は護りますけどね?」
笑顔を向けてくるチェリシアに、キャノルはどこか呆れたように戸惑った。
そう、キャノルは怪しい動きを見せる輩に覚えがあったのだ。だからこそ、チェリシアのこののんびりした態度に、どこか苛立ちを覚えたのだ。しかし、あの恐怖のペシエラの姉である以上、何かがあれば間違いなく酷い目に遭う。
キャノルは大きなため息をつきながら、チェリシアと共にコーラル邸へと戻っていった。
また、ルゼの能力は素晴らしいもので、ボーキサイトからアルミナを取り出した残りから、しっかり使えそうな金属を抽出していた。
学園祭での出し物は、チェリシアが中心となって進められている。ロゼリアはそのサポートをしつつクラスの方を優先、ペシエラは王妃教育をこなしつつ自分の事で精一杯で、学園祭に関してはほぼノータッチである。
「私、今年も武術大会に出る事にしてますので、お姉様を手伝えずに残念ですわ」
魔道具の作製をしながら、ペシエラは残念そうにしていた。
「仕方ないわよ。正式に殿下の婚約者になって忙しいんだから。夜会にも引っ張り回されてるんでしょう?」
「ええ、まだ十一歳という事で、早めに切り上げさせて頂いてますけど、頻度が頻度なので疲れてしまいますわ」
愚痴を言うペシエラ。なんでもほぼ毎週のように夜会なのだから困ったものである。しかし、なんでそんなに行うのであろうか。王家の意図も分からない。
「あまりにストレスが多い時は、ラルクに剣術の相手を頼んでますわ。彼は盾剣の使い手なので、なかなかいい訓練になりますのよ」
ペシエラは人差し指を立てて、自慢げに話している。
アイリスの従魔となったオークジェネラルのラルクは、現在は王国の近衛騎士団の一員となっており、騎士団の訓練では的役を買って出ているらしい。上級の魔物である彼にとって、人間の攻撃など蚊に刺された程度なのだろうから、適任と言えば適任かも知れない。
話をしながらチェリシアが調理窯用の魔石を作っていると、ペシエラが珍しくあくびをしている。
「ペシエラ、あくびが出るくらいには疲れてるみたいだから、無理しないで部屋に戻りなさい。魔法だけなら私だって負けてないから、代わりにやっておくわよ」
ペシエラはチェリシアの言葉にちょっと悩んでいたが、
「そうですわね。ここのところ寝不足気味でしたから、そうさせて頂きますわ」
と、素直に手を置いて、王都のコーラル邸へとアイリスに付き添われながら戻っていった。
「……だいぶ疲れてるわね。逆行前の事もあるから、女王としての覚悟があるのはいいけど、頑張り過ぎてるのよね……」
チェリシアは作業の手を止めて、ペシエラを心配していた。
「さて、ペシエラのしていた作業に移りますか」
チェリシアは席を移動して、ペシエラの居た場所に座る。
チェリシアとペシエラは、そもそもが同一人物なので魔力の量や質がほぼ同じである。チェリシアに異世界の魂が宿ったので、差異はそれくらいである。なので、二人とも同じ作業をする事ができるのだ。
チェリシアは部屋に一人で黙々と作業をしている。
陽が傾き始めた頃、作業をするチェリシアの元にキャノルがやって来た。
「チェリシア様、そろそろ帰らないと親父さんたちが心配すると思いますぜ」
その声にチェリシアが反応して顔を起こす。作業をする部屋には陽が入ってこないし、集中していたから時間を忘れてしまっていたようだ。
「もうそんな時間なのね。分かったわ、そろそろ帰りましょう」
チェリシアは机の上を片付ける。
「最近、周りをうろちょろする輩が居るんで、気を付けて下さいよ。チェリシア様はどこか危なっかしいんでね」
暗殺者だったキャノルは、こういった気配には鋭いらしく、チェリシアに伝えてきた。
「そうなのね。一応防護魔法を展開してるし、魔道具だって身に付けてるわ」
「いや、あたいがすんなり近付けた実績があるんだ。油断しない方がいい」
どこか楽観的なチェリシアを、キャノルは諌めた。
「……それもそうね。もしもの時は、頼りにしてるわよ」
「はぁ……。まあ、雇い主に忠誠を誓ってるから、護る時は護りますけどね?」
笑顔を向けてくるチェリシアに、キャノルはどこか呆れたように戸惑った。
そう、キャノルは怪しい動きを見せる輩に覚えがあったのだ。だからこそ、チェリシアのこののんびりした態度に、どこか苛立ちを覚えたのだ。しかし、あの恐怖のペシエラの姉である以上、何かがあれば間違いなく酷い目に遭う。
キャノルは大きなため息をつきながら、チェリシアと共にコーラル邸へと戻っていった。
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