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新章 青色の智姫
第40話 巣を目指して
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すぐさま、害獣掃討作戦が決行される。
ロゼリアは王都までひとっ飛びで姿を消し、ペイルとチェリシアで害獣の捜索を行う。その間、シアンとモーフはスミレたち使用人たちと一緒に村長の家に待機することとなった。
ロゼリア生存によるアイヴォリー王国存続ルートでも、この事態は避けられないのかとシアンとスミレは驚きを隠せなかった。
モーフが震えているので、姉としてしっかりと構えるシアン。
(どうか、無事であってください、お母様、お父様)
まるで祈るような気持だった。
ハウライトの王城内へと飛んだロゼリアは、シルヴァノとペシエラのところへと向かう。王都に到着後に別れたので、今日は城に居るはずである。
バーンと扉を開けて登場するロゼリアに、ペシエラが目を丸くして驚いていた。どうにか自室にいたペシエラを見つけられたようである。
「ちょっと、ロゼリア。なにを急に入ってきていますのよ」
お互い瞬間移動魔法を使えることが知っているので、急に現れても特に気にしない二人である。急に現れて邪険にするのはケットシー相手だけだ。
「ペシエラ、ちょうどよかったわ。ちょっと聞いてもらってもいいかしら」
ロゼリアが珍しく高圧的に迫ってくるので、何かを感じ取るペシエラ。
「……何かありましたのね。聞かせてもらえますかしら」
すぐさま真剣な表情で、ロゼリアに問い掛けるペシエラである。判断が早い。
相変わらずのペシエラの頭の回転の良さに、頭の下がる思いのロゼリア。すぐさまカイスの村に起きた異変について話をしていた。
ロゼリアから告げられた内容に、ペシエラはギリッと爪を噛んでいる。
「なんて事ですの。逆行前にわたくしを死に追いやった現実が、今回でも襲ってくるといいますの?」
その表情はとてつもなく厳しいものだ。思わずロゼリアも引いてしまうくらいだった。
「お姉様からの知識で、ネズミは病気も媒介するといいますわ。逆行前のわたくしは飢えと病気で死んだのは知ってますわよね?」
ペシエラの問い掛けに頷くロゼリア。
「襲撃してきた害獣がネズミであるなら、病の危険性もありますわね。……すぐに向かいますわよ」
「ペシエラだけで?」
「もちろんですわ。万一を考えればわたくしだけで十分ですわ。浄化魔法もございますし、何の問題がありまして?」
ペシエラに強く言われて、ロゼリアはたじろいだ。確かに、ペシエラがいればそれだけで百人力である。
しかし、アイヴォリーの王妃となって二児の母でもある彼女を、単独で連れ出せるかどうかといったら、甚だ疑問である。
「迷っている暇はございませんわよ。国民の、なによりお父様の領地の民が苦しむ姿なんて見たくありませんわよ。さっさと行きますよ、ロゼリア!」
ここまで強く言われてしまえば、ロゼリアには選択肢はなかった。
ペシエラの侍女に事情だけ説明すると、ロゼリアとペシエラは城から姿を消したのだった。
カイスの村に再び戻ると、ペイルとチェリシアの二人で害獣の巣を探している真っ最中だった。
「ペイル陛下、お姉様。現状はどうなのかしら」
「ペシエラ?!」
ロゼリアと二人で現れたペシエラの姿に驚くチェリシアである。
「シアンの話では夜中にネズミが出たらしい。今は巣を探っているところだ」
ペイルの方は落ち着いてペシエラの質問に答えている。
「分かりましたわ。こういうことはわたくしにお任せ下さいませ。お父様の領地で勝手な真似をしたことを後悔させてあげますわ」
ペシエラは、自分を中心に魔力の波を起こしていく。これはいわゆる探知系の魔法だ。
自分自身から魔力の波を起こして、その反応で相手の位置を探り出すという、いわゆるソナーのようなものである。ペシエラがこんな魔法を使えるのは、大体チェリシアのせいである。
「見つけましたわよ。覚悟なさい」
小さなエアリアルボードを生み出して、ペシエラが突っ込んでいく。
「ちょっと待ちなさいって」
チェリシアがすぐに追いかけようとするが、ペイルとロゼリアを置いていくわけにはいかず、しょうがなく三人乗りのエアリアルボードで追いかける。
「まったく、ずいぶんと熱い子になっちゃったわね。逆行前を思えば信じられないわ」
「それだけ、アイヴォリー王国への思いが強いんだろうな。ロゼリアへの気持ちがいい方向へひっくり返っただけで、頼もしい味方だよ」
ペイルもつい苦笑いをしてしまう。
「あっ、いたわよ」
しばらくして追いつくと、ペシエラが上空でとどまった状態で地面を見つめていた。
「どうしたのよ、ペシエラ」
様子がおかしいのでロゼリアが近付いて声をかける。
「下を見て下さいませ」
「下?」
ペシエラの声に下へと視線を落とすと、思わず変な声が出そうになってしまった。
「なんてこと。これって十歳の頃のカイスの一件みたいな感じじゃないの……」
「カイスの一件って、厄災の暗龍が出た時の話か?」
ペイルが確認すると、三人揃って大きく頷いた。
そう、ロゼリアたちがいる場所の真下には、あの時と同じような瘴気だまりができていたのだった。
ロゼリアは王都までひとっ飛びで姿を消し、ペイルとチェリシアで害獣の捜索を行う。その間、シアンとモーフはスミレたち使用人たちと一緒に村長の家に待機することとなった。
ロゼリア生存によるアイヴォリー王国存続ルートでも、この事態は避けられないのかとシアンとスミレは驚きを隠せなかった。
モーフが震えているので、姉としてしっかりと構えるシアン。
(どうか、無事であってください、お母様、お父様)
まるで祈るような気持だった。
ハウライトの王城内へと飛んだロゼリアは、シルヴァノとペシエラのところへと向かう。王都に到着後に別れたので、今日は城に居るはずである。
バーンと扉を開けて登場するロゼリアに、ペシエラが目を丸くして驚いていた。どうにか自室にいたペシエラを見つけられたようである。
「ちょっと、ロゼリア。なにを急に入ってきていますのよ」
お互い瞬間移動魔法を使えることが知っているので、急に現れても特に気にしない二人である。急に現れて邪険にするのはケットシー相手だけだ。
「ペシエラ、ちょうどよかったわ。ちょっと聞いてもらってもいいかしら」
ロゼリアが珍しく高圧的に迫ってくるので、何かを感じ取るペシエラ。
「……何かありましたのね。聞かせてもらえますかしら」
すぐさま真剣な表情で、ロゼリアに問い掛けるペシエラである。判断が早い。
相変わらずのペシエラの頭の回転の良さに、頭の下がる思いのロゼリア。すぐさまカイスの村に起きた異変について話をしていた。
ロゼリアから告げられた内容に、ペシエラはギリッと爪を噛んでいる。
「なんて事ですの。逆行前にわたくしを死に追いやった現実が、今回でも襲ってくるといいますの?」
その表情はとてつもなく厳しいものだ。思わずロゼリアも引いてしまうくらいだった。
「お姉様からの知識で、ネズミは病気も媒介するといいますわ。逆行前のわたくしは飢えと病気で死んだのは知ってますわよね?」
ペシエラの問い掛けに頷くロゼリア。
「襲撃してきた害獣がネズミであるなら、病の危険性もありますわね。……すぐに向かいますわよ」
「ペシエラだけで?」
「もちろんですわ。万一を考えればわたくしだけで十分ですわ。浄化魔法もございますし、何の問題がありまして?」
ペシエラに強く言われて、ロゼリアはたじろいだ。確かに、ペシエラがいればそれだけで百人力である。
しかし、アイヴォリーの王妃となって二児の母でもある彼女を、単独で連れ出せるかどうかといったら、甚だ疑問である。
「迷っている暇はございませんわよ。国民の、なによりお父様の領地の民が苦しむ姿なんて見たくありませんわよ。さっさと行きますよ、ロゼリア!」
ここまで強く言われてしまえば、ロゼリアには選択肢はなかった。
ペシエラの侍女に事情だけ説明すると、ロゼリアとペシエラは城から姿を消したのだった。
カイスの村に再び戻ると、ペイルとチェリシアの二人で害獣の巣を探している真っ最中だった。
「ペイル陛下、お姉様。現状はどうなのかしら」
「ペシエラ?!」
ロゼリアと二人で現れたペシエラの姿に驚くチェリシアである。
「シアンの話では夜中にネズミが出たらしい。今は巣を探っているところだ」
ペイルの方は落ち着いてペシエラの質問に答えている。
「分かりましたわ。こういうことはわたくしにお任せ下さいませ。お父様の領地で勝手な真似をしたことを後悔させてあげますわ」
ペシエラは、自分を中心に魔力の波を起こしていく。これはいわゆる探知系の魔法だ。
自分自身から魔力の波を起こして、その反応で相手の位置を探り出すという、いわゆるソナーのようなものである。ペシエラがこんな魔法を使えるのは、大体チェリシアのせいである。
「見つけましたわよ。覚悟なさい」
小さなエアリアルボードを生み出して、ペシエラが突っ込んでいく。
「ちょっと待ちなさいって」
チェリシアがすぐに追いかけようとするが、ペイルとロゼリアを置いていくわけにはいかず、しょうがなく三人乗りのエアリアルボードで追いかける。
「まったく、ずいぶんと熱い子になっちゃったわね。逆行前を思えば信じられないわ」
「それだけ、アイヴォリー王国への思いが強いんだろうな。ロゼリアへの気持ちがいい方向へひっくり返っただけで、頼もしい味方だよ」
ペイルもつい苦笑いをしてしまう。
「あっ、いたわよ」
しばらくして追いつくと、ペシエラが上空でとどまった状態で地面を見つめていた。
「どうしたのよ、ペシエラ」
様子がおかしいのでロゼリアが近付いて声をかける。
「下を見て下さいませ」
「下?」
ペシエラの声に下へと視線を落とすと、思わず変な声が出そうになってしまった。
「なんてこと。これって十歳の頃のカイスの一件みたいな感じじゃないの……」
「カイスの一件って、厄災の暗龍が出た時の話か?」
ペイルが確認すると、三人揃って大きく頷いた。
そう、ロゼリアたちがいる場所の真下には、あの時と同じような瘴気だまりができていたのだった。
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