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新章 青色の智姫
第99話 お昼休憩
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武術大会も一度休憩に入り、シアンはプルネとフューシャと一緒に昼食を食べに行く。
「二回戦進出おめでとう、プルネ」
「お母様」
会場を出ようとしたところで、アイリスが顔を出す。
「フューシャも実力のままなら勝てたのに、詰めの甘さが出ましたね。まったく、あの人同様にすぐ視野が狭くなっちゃうんだから」
「ははは……、面目ありませんわ」
アイリスに咎められて、フューシャは照れくさそうに笑っていた。
「参りましたね。武台の端っこに誘い出されていたのに気が付かなったもの。熱くなりすぎました」
「フューシャお姉様って、ついつい集中しちゃうものね」
あまりの集中っぷりに、プルネにまで笑われる始末である。見た目こそそこそこ似た感じの姉妹なのに、性格自体はフューシャはニーズヘッグに、プルネはアイリスに似たらしい。
(ニーズヘッグに似たのなら、あのフューシャの様子は納得がいきますね)
シアンは一緒に歩きながら、そんな風に思っている。
「さて、今日のお昼はこちらですよ」
「ここって……」
アイリスに連れられてやって来た場所に、シアンは思わず固まってしまう。
「あら、やっと来たのね。準備ならできているから、適当なところに座って」
そこにはエプロン姿のチェリシアの姿があった。
案内された場所は、マゼンダ商会の出店の裏手だったのだ。今年もチェリシアは出店で料理をしていたのである。そう、今年もである。
普通、侯爵夫人が料理をする事なんてありえない。稀にはあるかもしれないが、本当に稀である。
「さぁて、そろそろ焼き上がるわよ。フォレストバードのお肉は今や定番のお肉ですからね」
「フォレストバードって。またあそこに行ってきたんですか、お姉様……」
チェリシアがにこにこと話していると、アイリスは呆れたような顔をして言葉を漏らしている。
フォレストバードは、コーラル領の西の端にある未開の森に出没する魔物だ。大抵は空を飛んでいるために、遠距離攻撃を持っていないと倒すことに苦戦する。
ところが、チェリシアの手にかかればなんてことはなかった。エアリアルボードに規格外の魔力を使って、一瞬にして仕留めてしまうのだ。
そのフォレストバードのお肉に、カイスで採れた野菜を大量に乗せてピザを焼いている。チーズも同じくカイスで手に入ったものだ。
フォレストバードの肉を使った以外には、シェリアの魚介類を使ったシーフードピザも焼いている。その手際は本当に慣れたものだった。
「こっちはコーンを使ったスープね。昔を思うと、今のコーラル領は食材の宝庫ですからね。こっちはマゼンダ領の果物ね」
焼き上げてる最中もてきぱきと動いているチェリシア。まったく、ここにカーマイルがいなくてよかったと思われる。いたら絶対止めていた。そうなると口げんかになるというのがもはやパターンらしい。
「焼き上がりまでもう少し時間あるし、写真撮影でもして待っててよ。アメジスタさん、お願いできますか?」
「はい、チェリシア様」
「お、お母さ……ま?!」
出店の死角から出てきたアメジスタに、アイリスがが驚いている。
アメジスタはアイリスの母親であり、彼女の家系が神獣使いベルの子孫にあたる。だから、アイリスは神獣や幻獣と契約や話ができるわけなのだ。
それで、そのアメジスタは今はマゼンダ商会の秘書を務めている。つまり、カーマイルの側近の一人だ。
アメジスタが手に何かを持っているが、これはマゼンダ商会の画期的であり主力でもあるカメラである。チェリシアが前世知識を思い出しながら、自分とペシエラだけが使える写真魔法を誰でもお手軽に使えるようにした魔道具だ。
ただ、あまり便利にしてしまうと画家たちの仕事を奪いかねないので、一般的な書類の大きさまでしか作れないようにしてある。
写真は全部で三種類撮った。シアンとプルネとフューシャの三人だけのもの。そこにアイリスが加わったもの。それとアメジスタ、アイリス、フューシャとプルネという親子三代。親子三代はシアンが撮ったわけだが、アメジスタから操作方法を軽く聞いただけで扱えた。
(こんなに簡単に撮れてしまうものなのですね。モスグリネにも普及すれば違いますのに)
撮影の後、シアンは渋い顔をしていた。なにせ未だにモスグリネ王国内にはこのカメラはあまり普及していないからだ。王家すら持っていない。あるのは商業組合だけという状況なのである。
「撮影終わった? 焼き上がったから食べるわよ」
カメラをじろじろと見ていたシアンも、返事をしてカメラをアメジスタに返す。
ちゃんとお昼は食べておかないと、午後も頑張れない。なにせプルネとシアンはの二人は午後にも対戦を控えているからだ。
「私はお母様と一緒に観戦していますね」
「お姉様の分も頑張りますよ」
フューシャに頭を撫でられて、プルネは両手を軽く握って笑顔を向けていた。
対戦中は怖いほどだったフューシャも、普段はただのお姉ちゃんなのである。その微笑ましい光景に、シアンもついつい笑みをこぼしてしまう。
チェリシアの作ったピザとスープを完食したシアンたちは、午後の試合に向けて再び会場へと向かったのだった。
「二回戦進出おめでとう、プルネ」
「お母様」
会場を出ようとしたところで、アイリスが顔を出す。
「フューシャも実力のままなら勝てたのに、詰めの甘さが出ましたね。まったく、あの人同様にすぐ視野が狭くなっちゃうんだから」
「ははは……、面目ありませんわ」
アイリスに咎められて、フューシャは照れくさそうに笑っていた。
「参りましたね。武台の端っこに誘い出されていたのに気が付かなったもの。熱くなりすぎました」
「フューシャお姉様って、ついつい集中しちゃうものね」
あまりの集中っぷりに、プルネにまで笑われる始末である。見た目こそそこそこ似た感じの姉妹なのに、性格自体はフューシャはニーズヘッグに、プルネはアイリスに似たらしい。
(ニーズヘッグに似たのなら、あのフューシャの様子は納得がいきますね)
シアンは一緒に歩きながら、そんな風に思っている。
「さて、今日のお昼はこちらですよ」
「ここって……」
アイリスに連れられてやって来た場所に、シアンは思わず固まってしまう。
「あら、やっと来たのね。準備ならできているから、適当なところに座って」
そこにはエプロン姿のチェリシアの姿があった。
案内された場所は、マゼンダ商会の出店の裏手だったのだ。今年もチェリシアは出店で料理をしていたのである。そう、今年もである。
普通、侯爵夫人が料理をする事なんてありえない。稀にはあるかもしれないが、本当に稀である。
「さぁて、そろそろ焼き上がるわよ。フォレストバードのお肉は今や定番のお肉ですからね」
「フォレストバードって。またあそこに行ってきたんですか、お姉様……」
チェリシアがにこにこと話していると、アイリスは呆れたような顔をして言葉を漏らしている。
フォレストバードは、コーラル領の西の端にある未開の森に出没する魔物だ。大抵は空を飛んでいるために、遠距離攻撃を持っていないと倒すことに苦戦する。
ところが、チェリシアの手にかかればなんてことはなかった。エアリアルボードに規格外の魔力を使って、一瞬にして仕留めてしまうのだ。
そのフォレストバードのお肉に、カイスで採れた野菜を大量に乗せてピザを焼いている。チーズも同じくカイスで手に入ったものだ。
フォレストバードの肉を使った以外には、シェリアの魚介類を使ったシーフードピザも焼いている。その手際は本当に慣れたものだった。
「こっちはコーンを使ったスープね。昔を思うと、今のコーラル領は食材の宝庫ですからね。こっちはマゼンダ領の果物ね」
焼き上げてる最中もてきぱきと動いているチェリシア。まったく、ここにカーマイルがいなくてよかったと思われる。いたら絶対止めていた。そうなると口げんかになるというのがもはやパターンらしい。
「焼き上がりまでもう少し時間あるし、写真撮影でもして待っててよ。アメジスタさん、お願いできますか?」
「はい、チェリシア様」
「お、お母さ……ま?!」
出店の死角から出てきたアメジスタに、アイリスがが驚いている。
アメジスタはアイリスの母親であり、彼女の家系が神獣使いベルの子孫にあたる。だから、アイリスは神獣や幻獣と契約や話ができるわけなのだ。
それで、そのアメジスタは今はマゼンダ商会の秘書を務めている。つまり、カーマイルの側近の一人だ。
アメジスタが手に何かを持っているが、これはマゼンダ商会の画期的であり主力でもあるカメラである。チェリシアが前世知識を思い出しながら、自分とペシエラだけが使える写真魔法を誰でもお手軽に使えるようにした魔道具だ。
ただ、あまり便利にしてしまうと画家たちの仕事を奪いかねないので、一般的な書類の大きさまでしか作れないようにしてある。
写真は全部で三種類撮った。シアンとプルネとフューシャの三人だけのもの。そこにアイリスが加わったもの。それとアメジスタ、アイリス、フューシャとプルネという親子三代。親子三代はシアンが撮ったわけだが、アメジスタから操作方法を軽く聞いただけで扱えた。
(こんなに簡単に撮れてしまうものなのですね。モスグリネにも普及すれば違いますのに)
撮影の後、シアンは渋い顔をしていた。なにせ未だにモスグリネ王国内にはこのカメラはあまり普及していないからだ。王家すら持っていない。あるのは商業組合だけという状況なのである。
「撮影終わった? 焼き上がったから食べるわよ」
カメラをじろじろと見ていたシアンも、返事をしてカメラをアメジスタに返す。
ちゃんとお昼は食べておかないと、午後も頑張れない。なにせプルネとシアンはの二人は午後にも対戦を控えているからだ。
「私はお母様と一緒に観戦していますね」
「お姉様の分も頑張りますよ」
フューシャに頭を撫でられて、プルネは両手を軽く握って笑顔を向けていた。
対戦中は怖いほどだったフューシャも、普段はただのお姉ちゃんなのである。その微笑ましい光景に、シアンもついつい笑みをこぼしてしまう。
チェリシアの作ったピザとスープを完食したシアンたちは、午後の試合に向けて再び会場へと向かったのだった。
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