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新章 青色の智姫
第114話 風を使いこなせ
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自分の未熟さを痛感したシアンは、剣も魔法もより一層力を入れるようになった。
特に魔法は、名門アクアマリン子爵家の一人としておろそかにはできなかった。プルネに負けたことが相当こたえたのだと思われる。
ロゼリアと同じ土、水、風の三属性の魔法を扱えるとはいっても、そのどれも威力の点では申し分ないものの、器用に扱うことはできていない。
ならばと、シアンはエアリアルボードとアクアボードの二つをマスターするべく、特に重点的に特訓を行い始めた。
「今日も来られてますね、シアン王女様」
学園が休みの日に、城にある広い庭園にやって来たシアン。ここならば人はあまりいないし、やって来ることもないので魔法の訓練にはうってつけだった。今もいるのは庭師と見回りの兵士くらいだ。
(魔法はイメージ……)
シアンはその言葉を胸に魔法を使うことに集中する。
まずは母親であるロゼリアも使えるエアリアルボードからだ。スミレがよく手にしているトレイをイメージして風を集める。
庭園の草木が騒めく。
シアンを中心として風が集まっているのだ。
(風を集めて、圧縮する!)
集まった風を圧縮しようと魔力を込めるシアンだったが……。
「あっ」
やりすぎてしまったようだ。
集まった風が固まりすぎて、外に向かって爆発しそうになる。
「ダメ、土壁よ、風を上空へ!」
シアンは慌てて風を囲むようにして大量の分厚い土壁を庭園に出現させる。
特に何もないところでやっていたのが正解だった。地面から生えた土壁はとんでもない高さまで突き上がる。
爆発した風は、土壁に遮られて上空へと舞い上がっていった。
「ふぅ、制御をミスってしまいましたね。とっさにこれだけの土壁が作れてよかったですよ」
シアンはじっと土壁を眺めている。
「ただ、土属性は少々苦手にしてますから、やりすぎてしまいましたかね……」
あまりにも高く突き上がった土壁を見て、シアンの顔は虚無に満ちていた。
消えろ消えろと、シアンは土壁をゆっくり崩していく。とっさにやってしまったので、一気に消すことができなかったのだ。
「こんな感じでは、まだまだ未熟ですね。アクアマリンの名が泣きますよ……」
大きなため息とともに、シアンはやるせなさを感じていた。
自分は当主にはふさわしくないとアクアマリン子爵家を飛び出し、ロゼリアの侍女になりながらも主は救えず、自分のわがままに振り回されてきた前世を改めて思い出していたのだ。
このままでは、今世もわがままな女性のままで終わってしまいかねない。
「ダメですね。弱気になってはいけないわ、シアン。今度こそ、お母様のためにしっかり役に立たなきゃダメよ」
気合いを入れ直したシアンは、もう一度エアリアルボードを完成させようとして魔力を発動させる。
結局、力加減をミスってもう二度ほど風の大爆発を起こしてしまっていた。
三回も風の大爆発を起こして、大きな土壁を作っていると、シアンの魔力は微妙に尽きかけていた。体力的にも消耗が激しく、大きく肩で息をしている状態だった。
(はあ、はあ……。この状況ですと、できてもあと一回といったところですかね)
さすがの魔力自慢のシアンでも、とっさの魔法では魔力の消耗が大きかったようなのだ。土壁を消すのにも魔力を消耗していたから、当然なのかもしれない。
今日のところは次失敗したら諦めよう。
シアンは覚悟を持って、本日四回目の挑戦を始める。
(きれいな円形のトレイに、風を圧縮する……)
シアンが集中すると、再び風が集まり始める。
(上に立っても座っても平気なように、表面はふわふわな感じに)
さらにイメージを固めて、風を加工していく。
シアンの目の前で、ぎりぎり二人が乗れるくらいの大きさの円形の風の塊が徐々にでき上がっていく。
(これくらいかしら)
そう思って、魔力を徐々に緩めていく。
さっきまではここで魔力を強めてしまった。それで風の大爆発を招いたので、今度は逆に緩めているというわけである。
先程までと最後の手順を変えてみた結果、目の前にはしっかりとした円形の風の塊が浮いていた。そう、シアンはようやくエアリアルボードを完成させたのである。
「ふぅ、ようやく完成ですね。問題はこれにちゃんと乗れるかどうかですね……」
魔力もほとんど使い果たしてしまったので、その辺りに転がっている石ころを拾い上げてくるシアン。それをようやく完成させたエアリアルボードの上に置いてみる。
なんということだろうか。切り刻まれることもなく、無事に空気の塊の上に石ころが乗っているではないか。
「はあ、ようやく完成しましたね。思ったよりも魔力の消耗も少ないですし、これで乗って空を飛べるようになれれば、本当の完成になりますね」
疲れ切ったシアンは、その場にへにゃりと座り込んでしまった。
今は動く気力もないので、とりあえず自分の指で座面となる部分を突いてみる。相手は風の塊だというのに、ぷよんとした不思議な感触がしている。面白くて、つい何度も突いてしまう。
しばらく休んで回復したシアンは、一度完成したエアリアルボードを霧散させ、もう一度作ってみる。
何度やってもきちんと完成させられるようになったシアンは、つい嬉しくてしばらくその場で笑い続けていたのだった。
特に魔法は、名門アクアマリン子爵家の一人としておろそかにはできなかった。プルネに負けたことが相当こたえたのだと思われる。
ロゼリアと同じ土、水、風の三属性の魔法を扱えるとはいっても、そのどれも威力の点では申し分ないものの、器用に扱うことはできていない。
ならばと、シアンはエアリアルボードとアクアボードの二つをマスターするべく、特に重点的に特訓を行い始めた。
「今日も来られてますね、シアン王女様」
学園が休みの日に、城にある広い庭園にやって来たシアン。ここならば人はあまりいないし、やって来ることもないので魔法の訓練にはうってつけだった。今もいるのは庭師と見回りの兵士くらいだ。
(魔法はイメージ……)
シアンはその言葉を胸に魔法を使うことに集中する。
まずは母親であるロゼリアも使えるエアリアルボードからだ。スミレがよく手にしているトレイをイメージして風を集める。
庭園の草木が騒めく。
シアンを中心として風が集まっているのだ。
(風を集めて、圧縮する!)
集まった風を圧縮しようと魔力を込めるシアンだったが……。
「あっ」
やりすぎてしまったようだ。
集まった風が固まりすぎて、外に向かって爆発しそうになる。
「ダメ、土壁よ、風を上空へ!」
シアンは慌てて風を囲むようにして大量の分厚い土壁を庭園に出現させる。
特に何もないところでやっていたのが正解だった。地面から生えた土壁はとんでもない高さまで突き上がる。
爆発した風は、土壁に遮られて上空へと舞い上がっていった。
「ふぅ、制御をミスってしまいましたね。とっさにこれだけの土壁が作れてよかったですよ」
シアンはじっと土壁を眺めている。
「ただ、土属性は少々苦手にしてますから、やりすぎてしまいましたかね……」
あまりにも高く突き上がった土壁を見て、シアンの顔は虚無に満ちていた。
消えろ消えろと、シアンは土壁をゆっくり崩していく。とっさにやってしまったので、一気に消すことができなかったのだ。
「こんな感じでは、まだまだ未熟ですね。アクアマリンの名が泣きますよ……」
大きなため息とともに、シアンはやるせなさを感じていた。
自分は当主にはふさわしくないとアクアマリン子爵家を飛び出し、ロゼリアの侍女になりながらも主は救えず、自分のわがままに振り回されてきた前世を改めて思い出していたのだ。
このままでは、今世もわがままな女性のままで終わってしまいかねない。
「ダメですね。弱気になってはいけないわ、シアン。今度こそ、お母様のためにしっかり役に立たなきゃダメよ」
気合いを入れ直したシアンは、もう一度エアリアルボードを完成させようとして魔力を発動させる。
結局、力加減をミスってもう二度ほど風の大爆発を起こしてしまっていた。
三回も風の大爆発を起こして、大きな土壁を作っていると、シアンの魔力は微妙に尽きかけていた。体力的にも消耗が激しく、大きく肩で息をしている状態だった。
(はあ、はあ……。この状況ですと、できてもあと一回といったところですかね)
さすがの魔力自慢のシアンでも、とっさの魔法では魔力の消耗が大きかったようなのだ。土壁を消すのにも魔力を消耗していたから、当然なのかもしれない。
今日のところは次失敗したら諦めよう。
シアンは覚悟を持って、本日四回目の挑戦を始める。
(きれいな円形のトレイに、風を圧縮する……)
シアンが集中すると、再び風が集まり始める。
(上に立っても座っても平気なように、表面はふわふわな感じに)
さらにイメージを固めて、風を加工していく。
シアンの目の前で、ぎりぎり二人が乗れるくらいの大きさの円形の風の塊が徐々にでき上がっていく。
(これくらいかしら)
そう思って、魔力を徐々に緩めていく。
さっきまではここで魔力を強めてしまった。それで風の大爆発を招いたので、今度は逆に緩めているというわけである。
先程までと最後の手順を変えてみた結果、目の前にはしっかりとした円形の風の塊が浮いていた。そう、シアンはようやくエアリアルボードを完成させたのである。
「ふぅ、ようやく完成ですね。問題はこれにちゃんと乗れるかどうかですね……」
魔力もほとんど使い果たしてしまったので、その辺りに転がっている石ころを拾い上げてくるシアン。それをようやく完成させたエアリアルボードの上に置いてみる。
なんということだろうか。切り刻まれることもなく、無事に空気の塊の上に石ころが乗っているではないか。
「はあ、ようやく完成しましたね。思ったよりも魔力の消耗も少ないですし、これで乗って空を飛べるようになれれば、本当の完成になりますね」
疲れ切ったシアンは、その場にへにゃりと座り込んでしまった。
今は動く気力もないので、とりあえず自分の指で座面となる部分を突いてみる。相手は風の塊だというのに、ぷよんとした不思議な感触がしている。面白くて、つい何度も突いてしまう。
しばらく休んで回復したシアンは、一度完成したエアリアルボードを霧散させ、もう一度作ってみる。
何度やってもきちんと完成させられるようになったシアンは、つい嬉しくてしばらくその場で笑い続けていたのだった。
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