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新章 青色の智姫
第119話 一年目の年末パーティー
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シアンがアイヴォリーに留学してから、実に初めての年越しになる。
年末パーティーの席では、シアンも他国とはいえ王族になるために、ペシエラたちと一緒に入場して前で豪華な椅子に座って会場を眺めるという状況になっていた。
(今回の人生では王族ですけれど、やはりこういうのは慣れませんね)
シアンはどことなく表情が硬かった。
まあ、前世は子爵令嬢で、大半をメイドとして過ごしたのでこういうパーティーとはほぼ無縁だったので仕方もないだろう。モスグリネにも年末のパーティーはあったものの、幼いがゆえに参加も数えるくらいだったので不慣れなのである。
シアンたちが座る王族の席には、国の貴族たちが代わる代わるやって来る。その中にはニーズヘッグとアイリスもいたのだが、ニーズヘッグはまったく慣れる気がないのか面倒くさそうな顔でやってきていた。
とはいえ、さすがにペシエラに笑顔を向けられると、ニーズヘッグも背筋を伸ばしてしゃんとしている。厄災の暗龍としてとどめを刺されたのは、ペシエラの光魔法だったから少々トラウマになっているようだった。
アイヴォリーのパーティーに出される料理の中には、モスグリネとも関係深い一品が混ざっている。
それは何かといわれたら『豆腐』である。
異世界からの転生者であるチェリシアが、モスグリネで大豆を発見して作り上げた真っ白な直方体。それが豆腐なのだ。
真っ白で見事なまでに整ったフォルムはアイヴォリーにふさわしいとして、今では国民食にまでなり上がった料理なのである。そのせいで、このようなおめでたい席にも置かれるようになったのである。
ちなみにだが、大豆はモスグリネの商業組合とマゼンダ商会の取引主力商品でもあるのだ。そのせいで、ケットシーもしばしばチェリシアやカーマイルに会いにアイヴォリーにやって来るというわけなのである。
豪華絢爛なアイヴォリーの年末パーティーは、今年も真っ白な雪が降り積もった中で行われている。
普通のパーティーならばバルコニーに逃げるような貴族もいるのだが、外は滑りやすく肌寒いために、全員がパーティー会場に留まっている。関わりたくない貴族たちは、壁に張りついてやり過ごそうとしているようだった。
そういえば、アイリスが挨拶にはきたものの、子どもであるフューシャとプルネの姿は見当たらなかった。どうやら弟や妹の面倒を見るために残っていたようだ。シアンの席からその姿がはっきりと確認できた。
(ふふっ、プルネってばいいお姉ちゃんをしていますね。フューシャの方が苦戦しているように見えますね)
シアンからは本当に全部丸見えになっていた。後日伝えれば顔を真っ赤にして恥ずかしがりそうだ。
にこにことしていたシアンが目を横に向けると、クロッツ子爵の姿があった。ブランチェスカの両親の雰囲気はとてもブランチェスカと似ていて穏やかな感じだった。
ブランチェスカはシアンの視線に気が付いたのか、くるりと体ごとシアンに向けて淑女の挨拶をしていた。シアンは椅子に座っているので、小さく手を振ってブランチェスカに挨拶をしていた。
貴族たちの挨拶が続く中、とある貴族がやって来たところで空気がピリッと震えたような気がした。
視線を向けると、ワッケギーとアッサギーの姿があった。どうやら今挨拶をしているのはオニオール子爵家のようだ。子爵の雰囲気は普通な感じなのに、息子たちの雰囲気は嫌な感じしかしなかった。
(この感じ……。さすがはデーモンハート騒動の実行犯といった感じですね。間違いないとは見ていますが、まだ確証がないので疑惑段階なのが口惜しいですが……)
シアンがちらりと視線を向けていると、アッサギーがどうもその視線に気が付いたらしくシアンへと顔を向ける。だが、すぐにオニオール子爵に連れられて会場へと戻っていく。
(なんですか、あの顔は……)
シアンは見逃さなかった。一瞬ではあるものの、自分の顔を見て口角が上がった姿を。
(あれは、まだ何かを企んでいるわね。私は仮にもモスグリネの王女。自分の国の王女に対してあの表情、間違いなく何かやらかす気でいますね)
違和感しかなかった。
しかしながら、まだまだ貴族の挨拶が続いている真っ最中。シアンはその場を動くわけにはいかなかった。
ようやく、長かった貴族の挨拶が終わる。挨拶だけの貴族と、何かしらの贈り物を持ってきた貴族と、王族への挨拶は様々だった。
ちなみにだが、マゼンダ侯爵家とコーラル伯爵家はプレゼントはなしだった。普段は商会を通じていろいろと持ってきているためか、特別な時だからこそあえて何も持ってこなかったようだった。
ようやく席を離れられたシアンが会場へと降りていくと、待ってましたとばかりにプルネとブランチェスカの二人が現れた。
「お待ちしておりました、シアン王女殿下」
「早速ですけれど、私たちと踊って頂けませんか?」
二人揃ってシアンに向かって手を差し出してくる。
その姿に思わず面食らってしまったシアンだったが、すぐに笑顔になって返事をする。
「ええ、もちろんですよ」
アイヴォリー王国留学一年目は、雪の舞う中のパーティーを楽しんで終わりを告げたのだった。
年末パーティーの席では、シアンも他国とはいえ王族になるために、ペシエラたちと一緒に入場して前で豪華な椅子に座って会場を眺めるという状況になっていた。
(今回の人生では王族ですけれど、やはりこういうのは慣れませんね)
シアンはどことなく表情が硬かった。
まあ、前世は子爵令嬢で、大半をメイドとして過ごしたのでこういうパーティーとはほぼ無縁だったので仕方もないだろう。モスグリネにも年末のパーティーはあったものの、幼いがゆえに参加も数えるくらいだったので不慣れなのである。
シアンたちが座る王族の席には、国の貴族たちが代わる代わるやって来る。その中にはニーズヘッグとアイリスもいたのだが、ニーズヘッグはまったく慣れる気がないのか面倒くさそうな顔でやってきていた。
とはいえ、さすがにペシエラに笑顔を向けられると、ニーズヘッグも背筋を伸ばしてしゃんとしている。厄災の暗龍としてとどめを刺されたのは、ペシエラの光魔法だったから少々トラウマになっているようだった。
アイヴォリーのパーティーに出される料理の中には、モスグリネとも関係深い一品が混ざっている。
それは何かといわれたら『豆腐』である。
異世界からの転生者であるチェリシアが、モスグリネで大豆を発見して作り上げた真っ白な直方体。それが豆腐なのだ。
真っ白で見事なまでに整ったフォルムはアイヴォリーにふさわしいとして、今では国民食にまでなり上がった料理なのである。そのせいで、このようなおめでたい席にも置かれるようになったのである。
ちなみにだが、大豆はモスグリネの商業組合とマゼンダ商会の取引主力商品でもあるのだ。そのせいで、ケットシーもしばしばチェリシアやカーマイルに会いにアイヴォリーにやって来るというわけなのである。
豪華絢爛なアイヴォリーの年末パーティーは、今年も真っ白な雪が降り積もった中で行われている。
普通のパーティーならばバルコニーに逃げるような貴族もいるのだが、外は滑りやすく肌寒いために、全員がパーティー会場に留まっている。関わりたくない貴族たちは、壁に張りついてやり過ごそうとしているようだった。
そういえば、アイリスが挨拶にはきたものの、子どもであるフューシャとプルネの姿は見当たらなかった。どうやら弟や妹の面倒を見るために残っていたようだ。シアンの席からその姿がはっきりと確認できた。
(ふふっ、プルネってばいいお姉ちゃんをしていますね。フューシャの方が苦戦しているように見えますね)
シアンからは本当に全部丸見えになっていた。後日伝えれば顔を真っ赤にして恥ずかしがりそうだ。
にこにことしていたシアンが目を横に向けると、クロッツ子爵の姿があった。ブランチェスカの両親の雰囲気はとてもブランチェスカと似ていて穏やかな感じだった。
ブランチェスカはシアンの視線に気が付いたのか、くるりと体ごとシアンに向けて淑女の挨拶をしていた。シアンは椅子に座っているので、小さく手を振ってブランチェスカに挨拶をしていた。
貴族たちの挨拶が続く中、とある貴族がやって来たところで空気がピリッと震えたような気がした。
視線を向けると、ワッケギーとアッサギーの姿があった。どうやら今挨拶をしているのはオニオール子爵家のようだ。子爵の雰囲気は普通な感じなのに、息子たちの雰囲気は嫌な感じしかしなかった。
(この感じ……。さすがはデーモンハート騒動の実行犯といった感じですね。間違いないとは見ていますが、まだ確証がないので疑惑段階なのが口惜しいですが……)
シアンがちらりと視線を向けていると、アッサギーがどうもその視線に気が付いたらしくシアンへと顔を向ける。だが、すぐにオニオール子爵に連れられて会場へと戻っていく。
(なんですか、あの顔は……)
シアンは見逃さなかった。一瞬ではあるものの、自分の顔を見て口角が上がった姿を。
(あれは、まだ何かを企んでいるわね。私は仮にもモスグリネの王女。自分の国の王女に対してあの表情、間違いなく何かやらかす気でいますね)
違和感しかなかった。
しかしながら、まだまだ貴族の挨拶が続いている真っ最中。シアンはその場を動くわけにはいかなかった。
ようやく、長かった貴族の挨拶が終わる。挨拶だけの貴族と、何かしらの贈り物を持ってきた貴族と、王族への挨拶は様々だった。
ちなみにだが、マゼンダ侯爵家とコーラル伯爵家はプレゼントはなしだった。普段は商会を通じていろいろと持ってきているためか、特別な時だからこそあえて何も持ってこなかったようだった。
ようやく席を離れられたシアンが会場へと降りていくと、待ってましたとばかりにプルネとブランチェスカの二人が現れた。
「お待ちしておりました、シアン王女殿下」
「早速ですけれど、私たちと踊って頂けませんか?」
二人揃ってシアンに向かって手を差し出してくる。
その姿に思わず面食らってしまったシアンだったが、すぐに笑顔になって返事をする。
「ええ、もちろんですよ」
アイヴォリー王国留学一年目は、雪の舞う中のパーティーを楽しんで終わりを告げたのだった。
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