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新章 青色の智姫
第203話 インフェルノが語ること・前編
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インフェルノはペシエラの元にやって来ていた。
「ちょっと話はいいかな?」
「ええ、いいですわよ。お姉様のお付き合いで来てますが、暇ですもの」
ペシエラは、インフェルノの誘いを受け入れる。
自分の泊まっている部屋へとやって来たペシエラは、インフェルノを正面向かって座り込む。
ちなみにチェリシアのわがままで作られた和室なので、ペシエラは正座、インフェルノは胡座で座っている。
「それで、何の話なのかしら」
ペシエラは改めて用事を聞く。
「うむ、シアンとスミレの話は、どこまで知っているのかな」
「そもそも最初からある程度は知っていますけれど、半年ほど前にムー王国パール王妃とお話した際に初めて聞かされたこともありましたわね」
「そうか。なら我がその部分について補足することはないかな」
「まあ、そうですわね。幻獣というのもたまには無茶をしますのね」
ペシエラが珍しくくすくすと笑っている。まるで少女に戻ったかのようなその笑い方は、実に新鮮な感じだった。
なにせ、逆行しても逆行前のペシエラ・コーラル・アイヴォリーの調子がまったく抜けなかったのだから。ある意味新鮮な姿である。
「まあ、そうだな。だが、お前たちの逆行については、実は別の話もあるのだよ」
「あら、それは何かしら」
ペシエラは気になるのか、インフェルノに問いかけている。
インフェルノはどこか含みを持たせたような笑みを浮かべてもったいぶっている。神獣という割にはずいぶんとおちゃめなことをしてくれる。
「凍らせますか?」
「おいおい、こんな建物の中で魔法を使うつもりか?」
イラッと来たペシエラが、手の上に冷気を集中させ始める。
インフェルノが煽りを入れると、ペシエラの魔力がさらに増大していく。どうやら本気で放つつもりのようだ。
「お、おい。分かった話すから魔法はしまえ。さすがに破壊は我の思うところではないぞ」
一向にやめる気配のなかったペシエラに、インフェルノはおとなしく話を始めることにした。
「スミレは幻獣クロノアで、彼女の力で逆行したことは、十分知っているよな?」
「もちろんですわ。大体のことはケットシーがぽろぽろと話しますからね」
「よし、あとであいつはしばく」
「お任せしますわ」
クロノアの話をしているのに、なぜか矛先がケットシーを向く。よくあることなので気にしてはいけない。
「時渡りの秘法については一応聞いておりますからね。どうしてこうなったのかという気持ちはありましたが、今を思うと感謝しかありませんわよ」
「まあそうだな。より良い状況で逆行前と同じ位置に落ち着いたのだからな。だがな、あの逆行がクロノアだけで可能だったと思うか?」
「……どういうことですの?」
ペシエラが食いつくと、インフェルノはにやりと笑っている。
「疑問に思ったことはないか? なぜ自分の立ち位置に別人がいたのかということに」
「それは、ありますわね。逆行した直後は特に」
ここで話題に出しているのはチェリシアのことだ。
「実はな、あの時渡りの秘法にはクロノスのやつも関わっていたのだ。本来の発動相手は、ロゼリアという令嬢一人だけだったからな」
「……なんですって?」
「ロゼリアだけを逆行させても意味はないだろうと、クロノスが手を貸した。その結果、起きたことが二つある」
「二つ?!」
インフェルノが話す内容に、ペシエラは驚いている。
「そうだ。一つがペシエラ、お前の逆行だ。性格は歪んだが、十分に反省したお前なら、きっとうまくやり直せると睨んだんだろう。それに、クロノアはまだまだ未熟だから、助ける意味合いもあったのかもな」
ペシエラは黙って聞いている。
インフェルノが言うには、本来クロノスは関わるつもりがなかったらしい。だが、クロノアが危なっかしく見えたし、使用者の願いがかなり本気なものだったために動いたというのだ。
「だが、それが思わぬ副作用をもたらす。二つの魔力がぶつかり合い、次元の扉が開いてしまった。その結果、異世界から魂を呼び寄せることになってしまったんだ」
「なるほど、お姉様の転生ってそれが原因でしたのね」
「うむ、我もクロノスから聞かされた時は驚いたがな。またこのスノールビーに来ることがあったら話してやれと、暇人同士の話の中でしておったぞ」
「暇人……」
「そうとも、神獣は基本的に見守るものだからな。幻獣どものように積極的に動かんのだ」
笑うインフェルノの姿に、ペシエラは呆れた顔をしている。
「わたくし、それで一度消えかけましたけれど?」
「うむ、あの手違いは予想外だった。だが、あの精霊王のおかげで事なきを得てよかったな」
「……二度とごめんですわよ」
ペシエラは顔を押さえて大きくため息をついていた。
しばらく笑っていたインフェルノだったが、突然ピタリと笑うのをやめる。
「いかんいかん。クロノアのことで本題を忘れるところだった」
「本題って何ですのよ」
急に真面目な顔つきになるインフェルノに、ペシエラも同じように真面目な顔つきで問い掛ける。
「シアンという小娘についての話だな。まあ、それを話せば、お前の子どもたちの話にもつながるのだが」
「わけが分かりませんわよ」
さすがのペシエラも察することもできないようだ。
「単純な話をすると、親子で持つ属性の話だな」
「属性、ですか」
ペシエラはどういうことなのかと表情を険しくしている。
二人の間に、しばらく沈黙が漂っていた。
「ちょっと話はいいかな?」
「ええ、いいですわよ。お姉様のお付き合いで来てますが、暇ですもの」
ペシエラは、インフェルノの誘いを受け入れる。
自分の泊まっている部屋へとやって来たペシエラは、インフェルノを正面向かって座り込む。
ちなみにチェリシアのわがままで作られた和室なので、ペシエラは正座、インフェルノは胡座で座っている。
「それで、何の話なのかしら」
ペシエラは改めて用事を聞く。
「うむ、シアンとスミレの話は、どこまで知っているのかな」
「そもそも最初からある程度は知っていますけれど、半年ほど前にムー王国パール王妃とお話した際に初めて聞かされたこともありましたわね」
「そうか。なら我がその部分について補足することはないかな」
「まあ、そうですわね。幻獣というのもたまには無茶をしますのね」
ペシエラが珍しくくすくすと笑っている。まるで少女に戻ったかのようなその笑い方は、実に新鮮な感じだった。
なにせ、逆行しても逆行前のペシエラ・コーラル・アイヴォリーの調子がまったく抜けなかったのだから。ある意味新鮮な姿である。
「まあ、そうだな。だが、お前たちの逆行については、実は別の話もあるのだよ」
「あら、それは何かしら」
ペシエラは気になるのか、インフェルノに問いかけている。
インフェルノはどこか含みを持たせたような笑みを浮かべてもったいぶっている。神獣という割にはずいぶんとおちゃめなことをしてくれる。
「凍らせますか?」
「おいおい、こんな建物の中で魔法を使うつもりか?」
イラッと来たペシエラが、手の上に冷気を集中させ始める。
インフェルノが煽りを入れると、ペシエラの魔力がさらに増大していく。どうやら本気で放つつもりのようだ。
「お、おい。分かった話すから魔法はしまえ。さすがに破壊は我の思うところではないぞ」
一向にやめる気配のなかったペシエラに、インフェルノはおとなしく話を始めることにした。
「スミレは幻獣クロノアで、彼女の力で逆行したことは、十分知っているよな?」
「もちろんですわ。大体のことはケットシーがぽろぽろと話しますからね」
「よし、あとであいつはしばく」
「お任せしますわ」
クロノアの話をしているのに、なぜか矛先がケットシーを向く。よくあることなので気にしてはいけない。
「時渡りの秘法については一応聞いておりますからね。どうしてこうなったのかという気持ちはありましたが、今を思うと感謝しかありませんわよ」
「まあそうだな。より良い状況で逆行前と同じ位置に落ち着いたのだからな。だがな、あの逆行がクロノアだけで可能だったと思うか?」
「……どういうことですの?」
ペシエラが食いつくと、インフェルノはにやりと笑っている。
「疑問に思ったことはないか? なぜ自分の立ち位置に別人がいたのかということに」
「それは、ありますわね。逆行した直後は特に」
ここで話題に出しているのはチェリシアのことだ。
「実はな、あの時渡りの秘法にはクロノスのやつも関わっていたのだ。本来の発動相手は、ロゼリアという令嬢一人だけだったからな」
「……なんですって?」
「ロゼリアだけを逆行させても意味はないだろうと、クロノスが手を貸した。その結果、起きたことが二つある」
「二つ?!」
インフェルノが話す内容に、ペシエラは驚いている。
「そうだ。一つがペシエラ、お前の逆行だ。性格は歪んだが、十分に反省したお前なら、きっとうまくやり直せると睨んだんだろう。それに、クロノアはまだまだ未熟だから、助ける意味合いもあったのかもな」
ペシエラは黙って聞いている。
インフェルノが言うには、本来クロノスは関わるつもりがなかったらしい。だが、クロノアが危なっかしく見えたし、使用者の願いがかなり本気なものだったために動いたというのだ。
「だが、それが思わぬ副作用をもたらす。二つの魔力がぶつかり合い、次元の扉が開いてしまった。その結果、異世界から魂を呼び寄せることになってしまったんだ」
「なるほど、お姉様の転生ってそれが原因でしたのね」
「うむ、我もクロノスから聞かされた時は驚いたがな。またこのスノールビーに来ることがあったら話してやれと、暇人同士の話の中でしておったぞ」
「暇人……」
「そうとも、神獣は基本的に見守るものだからな。幻獣どものように積極的に動かんのだ」
笑うインフェルノの姿に、ペシエラは呆れた顔をしている。
「わたくし、それで一度消えかけましたけれど?」
「うむ、あの手違いは予想外だった。だが、あの精霊王のおかげで事なきを得てよかったな」
「……二度とごめんですわよ」
ペシエラは顔を押さえて大きくため息をついていた。
しばらく笑っていたインフェルノだったが、突然ピタリと笑うのをやめる。
「いかんいかん。クロノアのことで本題を忘れるところだった」
「本題って何ですのよ」
急に真面目な顔つきになるインフェルノに、ペシエラも同じように真面目な顔つきで問い掛ける。
「シアンという小娘についての話だな。まあ、それを話せば、お前の子どもたちの話にもつながるのだが」
「わけが分かりませんわよ」
さすがのペシエラも察することもできないようだ。
「単純な話をすると、親子で持つ属性の話だな」
「属性、ですか」
ペシエラはどういうことなのかと表情を険しくしている。
二人の間に、しばらく沈黙が漂っていた。
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