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新章 青色の智姫
第206話 アイヴォリーの鉱山
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話に出たので、翌日は近くの鉱山へと向かうことにするペシエラたち。
ついてきていた護衛は使用人たちと一緒に休息を取ってもらうために置いてきた。
ペシエラ、チェリシア、シアン、ダイア、ライトの五人だけである。
チェリシアがエアリアルボードを使えば、鉱山まではそんなにかからず到着できる。
マゼンダ侯爵領のすぐ隣にある王家の直轄地。アイヴォリー王国の鉱山はそこにあった。
基本的にここに送られてくるのは重罪人たちではあるが、その生活は保護されている。
「そういえば、即位後にここに来るのは初めてですかね」
「えっ、来たことなかったんだ」
ペシエラが呟いたことに、チェリシアが驚いている。
「大体はお姉様のせいですわよ。あれこれいろいろとやってくれるので、わたくしが後始末をして回ったのではないですか。アメジスタにも謝っておいて下さいませ」
「えー、そんなにやらかした記憶ないんだけどなぁ……」
ペシエラの言うことに、チェリシアは記憶がないと反論している。やらかした人間の大抵はこう答えるのだ。
「これはペシエラ王妃様。ようこそおいで下さいました」
入口で兵士が出迎える。さすがに王妃のことは知っているようだ。
「お勤めご苦労。中の様子に問題は?」
「特にございません。本日はどのようなご用件でございましょうか」
「ええ、スノールビーまで休養に来ましたので、ついでと思って寄らせて頂きましたわ」
「そうでございましたか。本日はドール商会のルゼ様がいらしております。お話をされて行かれてはどうでしょうか」
「あら、そうですのね。ありがとう、お邪魔しますわ」
「はっ!」
ひと通りのやり取りを終えると、ペシエラたちは中へと入っていく。
ここの労働者たちは基本的には重罪人たち。普通ならば中に入っていくのは危険なはずである。
だが、魔力を封じられた状態で半日以上に及ぶ労働を課されているために、その疲弊は計り知れない。
護衛に兵士もつくので、そこまでの危険性はないのである。
過酷な労働環境ではあるものの、意外と集落の中の者たちの服装はきれいなものだ。
鉱石の採掘は国家にとって有用な事業である。犯罪者とてその重要な事業に携われるのだから、処遇はそれなりによくなるというわけだ。
ちなみにだが、今でこそコーラル伯爵夫人という立場にいるアイリスやその侍女であるキャノル、それにケットシーの片腕となったストロアも、状況次第ではここに送り込まれていた可能性あった。
人のめぐりあわせというのは、本当に不思議なものである。
「それで、今後の産出計画はどうなっていますかね」
「ええとですね。こっちの坑道はもう掘り尽くされていて出る気配がないでさぁ。こっち側に広げる予定ですが、あまり進むと隣国に突き抜ける可能性が……」
ルゼがいると聞いて案内を頼んだペシエラたちがやって来た時、当の本人は鉱山の責任者と話し込んでいるようだった。
「ルゼ、調子はどうかしら」
「これはペシエラ様。メタルゼリーである私に不調はありませんよ」
ペシエラに声を掛けられてくるりと振り返るルゼ。質問には淡々と答えている。
後ろにいたチェリシアの姿にぎょっとしたものの、すぐ話し合いに戻っていた。
「今は忙しいのですよ。いくらペシエラ様とはいえ、お相手している暇はございません」
「あら、それはどういうことなのかしら」
ルゼの言い分に、ペシエラは何かが引っ掛かったようだ。
「あっ、王妃様。実はですね、坑道の何本かが鉱石が掘れない状態になっていましてね。それで、新しく掘り進めようとしているのですが、我々では難しい状況にありましたので、専門の方に来て頂いたのですよ」
ルゼの代わりに鉱山の責任者が答えていた。
「なるほど、資源の枯渇ですか」
「ええ、そういうことです。私は今持てる能力で測定しているのですが、少々難航してるというところですかね」
「あら、ルゼでも難しいってどういうことですかしら。鉱石のエキスパートの名が泣きますわよ」
ペシエラの言いっぷりに少しカチンとくるルゼである。
「国境線のせいです。豊富な鉱石が眠るのは隣国の領内ですし、アイヴォリーの側で掘ろうとするのなら、深度が問題になるんです。山の中で曖昧だとはいっても、さすがに一市民である私にそんな権限はありませんからね」
ルゼは現在の問題点をはっきりと告げる。
その話を聞いて、ペシエラとチェリシアが急いで話に加わっていた。
地図を見ながらあーだこーだと話を始めてしまい、シアンたちはどうしたものかとその様子をただ見守っていた。
「私たち、どうしたらいいんでしょうかね」
「済むまで待つしかないんじゃないのかしらね」
「困りましたね。僕たちだけでは集落の中を歩けませんからね」
議論が白熱する様子に、シアンたちは対応に困っている。
「すみません。この鉱山で採れるものについてお話を伺ってもいいでしょうかね。ペシエラ様たちがあれでは、私たちは動けませんから……」
シアンは仕方なく、小屋にいた別の人物に鉱山についての話を聞くことにしたのだった。
ダイアが舟をこぎ始めることになっても、ペシエラたちの話は終わりそうにない。
本当なら日帰りでスノールビーに戻るはずだったのに、一泊することになりそうだった。
ついてきていた護衛は使用人たちと一緒に休息を取ってもらうために置いてきた。
ペシエラ、チェリシア、シアン、ダイア、ライトの五人だけである。
チェリシアがエアリアルボードを使えば、鉱山まではそんなにかからず到着できる。
マゼンダ侯爵領のすぐ隣にある王家の直轄地。アイヴォリー王国の鉱山はそこにあった。
基本的にここに送られてくるのは重罪人たちではあるが、その生活は保護されている。
「そういえば、即位後にここに来るのは初めてですかね」
「えっ、来たことなかったんだ」
ペシエラが呟いたことに、チェリシアが驚いている。
「大体はお姉様のせいですわよ。あれこれいろいろとやってくれるので、わたくしが後始末をして回ったのではないですか。アメジスタにも謝っておいて下さいませ」
「えー、そんなにやらかした記憶ないんだけどなぁ……」
ペシエラの言うことに、チェリシアは記憶がないと反論している。やらかした人間の大抵はこう答えるのだ。
「これはペシエラ王妃様。ようこそおいで下さいました」
入口で兵士が出迎える。さすがに王妃のことは知っているようだ。
「お勤めご苦労。中の様子に問題は?」
「特にございません。本日はどのようなご用件でございましょうか」
「ええ、スノールビーまで休養に来ましたので、ついでと思って寄らせて頂きましたわ」
「そうでございましたか。本日はドール商会のルゼ様がいらしております。お話をされて行かれてはどうでしょうか」
「あら、そうですのね。ありがとう、お邪魔しますわ」
「はっ!」
ひと通りのやり取りを終えると、ペシエラたちは中へと入っていく。
ここの労働者たちは基本的には重罪人たち。普通ならば中に入っていくのは危険なはずである。
だが、魔力を封じられた状態で半日以上に及ぶ労働を課されているために、その疲弊は計り知れない。
護衛に兵士もつくので、そこまでの危険性はないのである。
過酷な労働環境ではあるものの、意外と集落の中の者たちの服装はきれいなものだ。
鉱石の採掘は国家にとって有用な事業である。犯罪者とてその重要な事業に携われるのだから、処遇はそれなりによくなるというわけだ。
ちなみにだが、今でこそコーラル伯爵夫人という立場にいるアイリスやその侍女であるキャノル、それにケットシーの片腕となったストロアも、状況次第ではここに送り込まれていた可能性あった。
人のめぐりあわせというのは、本当に不思議なものである。
「それで、今後の産出計画はどうなっていますかね」
「ええとですね。こっちの坑道はもう掘り尽くされていて出る気配がないでさぁ。こっち側に広げる予定ですが、あまり進むと隣国に突き抜ける可能性が……」
ルゼがいると聞いて案内を頼んだペシエラたちがやって来た時、当の本人は鉱山の責任者と話し込んでいるようだった。
「ルゼ、調子はどうかしら」
「これはペシエラ様。メタルゼリーである私に不調はありませんよ」
ペシエラに声を掛けられてくるりと振り返るルゼ。質問には淡々と答えている。
後ろにいたチェリシアの姿にぎょっとしたものの、すぐ話し合いに戻っていた。
「今は忙しいのですよ。いくらペシエラ様とはいえ、お相手している暇はございません」
「あら、それはどういうことなのかしら」
ルゼの言い分に、ペシエラは何かが引っ掛かったようだ。
「あっ、王妃様。実はですね、坑道の何本かが鉱石が掘れない状態になっていましてね。それで、新しく掘り進めようとしているのですが、我々では難しい状況にありましたので、専門の方に来て頂いたのですよ」
ルゼの代わりに鉱山の責任者が答えていた。
「なるほど、資源の枯渇ですか」
「ええ、そういうことです。私は今持てる能力で測定しているのですが、少々難航してるというところですかね」
「あら、ルゼでも難しいってどういうことですかしら。鉱石のエキスパートの名が泣きますわよ」
ペシエラの言いっぷりに少しカチンとくるルゼである。
「国境線のせいです。豊富な鉱石が眠るのは隣国の領内ですし、アイヴォリーの側で掘ろうとするのなら、深度が問題になるんです。山の中で曖昧だとはいっても、さすがに一市民である私にそんな権限はありませんからね」
ルゼは現在の問題点をはっきりと告げる。
その話を聞いて、ペシエラとチェリシアが急いで話に加わっていた。
地図を見ながらあーだこーだと話を始めてしまい、シアンたちはどうしたものかとその様子をただ見守っていた。
「私たち、どうしたらいいんでしょうかね」
「済むまで待つしかないんじゃないのかしらね」
「困りましたね。僕たちだけでは集落の中を歩けませんからね」
議論が白熱する様子に、シアンたちは対応に困っている。
「すみません。この鉱山で採れるものについてお話を伺ってもいいでしょうかね。ペシエラ様たちがあれでは、私たちは動けませんから……」
シアンは仕方なく、小屋にいた別の人物に鉱山についての話を聞くことにしたのだった。
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