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第117話 ちょっと相談をしましょう
アンドリュー殿下がいらしていたことは、別のところからも証言を取ることができました。
「まったく、アンドリュー殿下が来られた時にはびっくりしましたよ。でも、私がまさか領主代行の妻だとは思いもしませんでしょうね」
そう言って笑うのは、商業ギルドの副マスターであるミサエラさんです。ミサエラさんは対外的に発表はされておりませんが、リキシルおじさまの妻です。おそらく発表されないのは平民だからでしょうね。貴族は貴族同士というのが、この世界の通例ですからね。
とはいえ、ミサエラさんは商業ギルドの副マスターを務められるくらいですから、とても優秀な方なのですよね。
「でもまぁ、私以外でアンドリュー殿下のことに気が付いていらっしゃるのは冒険者ギルドのマスターたちくらいでしょう。お忍びとしては成功でしょうね」
とても涼しげな顔で、ミサエラさんは話をされておりました。
「それで、レチェさんは本日はどのような用件でいらしたのですか?」
私の顔を見ながら、ミサエラさんが用件を確認してこられます。
そうですよね。商業ギルドに来ておきながら、用件がこれだけだなんて思われませんよね。
そんなわけでして、私は咳払いをして用件を伝えます。
「今さらですが、レシピの登録に来ました。去年は準備中でしたのですっかり忘れていましたが、食堂が開業して時間が経って落ち着いてきましたので、今出している料理とこれから出す予定のある料理のレシピを、保護のために商業ギルドに登録しておこうとやって参りました」
そう、私が今日やって来たのは、料理のレシピ登録です。前世の世界でいうところの特許申請のようなものですね。
この世界では料理のレシピというのは貴重でして、新しい料理を作ればすぐに登録することが推奨されています。そうしておかないと、真似した人たちから法外な使用料の要求が来たりすることもあるのだそうです。
私たちの食堂にやってくるお客様からの話で、思い出したのですよ。
「試食会の時にこちらで登録をお勧めしておくべきでしたね。申し訳ありません、衝撃的すぎて私たちですら忘れてしまっているとは……」
ミサエラさんが謝罪をしてきます。
「過ぎたことは仕方ありませんよ。今回まだ未発表のレシピも混ざっていますので、もし類似のものが出ていたとしても、私の方がオリジナルだと認識して頂けるでしょう。あ、ご試食されますか?」
「よろしいのですか?」
「はい」
ミサエラさんが食べたそうな感じでしたので、私はパンの販売でも使っているかごの中から、今回の試食品を取り出しました。
食堂の経営が軌道に乗って余裕が出てきたら売り出そうと思っていた、スライスフライドポテトとスティックフライドポテトです。スライスタイプの方は、他の異世界ものでも定番ですよね。
「これは、芋でしょうか」
「はい、その通りです。薄切りにしたものと棒状に切ったものを油で揚げたものになります。油で揚げること自体、私の食堂の専売特許ですからね」
私はミサエラさんに胸を張って説明をしています。
あまりにも堂々とした私の態度に、ミサエラさんはおかしそうに笑っていました。変なことを言いましたかね。
「まあ、パリッとした食感がまた新しいですね。これはいつくらいから始めるつもりでしょうか」
ミサエラさんがかなり食いついてきましたね。
「そうですね。すぐというわけにはいかないと思います」
「それはなぜですかね」
ミサエラさんが確認してきますので、私は問題点を挙げていきます。
揚げ物をすると油が汚れますので、それをきれいにするための浄化の魔石の消耗が激しくなります。これがまず一つ目ですね。
次に、揚げれば油が減ります。補うための油の生産が追いつかなくなる可能性が考えられます。
最後に、材料となる芋の確保ですね。ノームに無理をさせるつもりはありませんので、いざという時以外は食堂の食材は自然に任せたものとなります。売れすぎてしまえば、開業時の二の舞です。二度目は避けたいのですよ。
それと、これは直接関係ありませんが、ラッシュバードの産卵時期が近付いてきています。神経質になりやすいですから、新しいことは差し控えたいところです。
こんな感じでミサエラさんに説明をしますと、納得して頂くことができました。
「事情は分かりました。それでは、レシピの登録をさせていただきますね。結果については後日、お知らせに伺わせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」
用件が終わりました。
私は帰ろうとしますが、ミサエラさんに呼び止められてしまいます。
「レチェさん、何か変わったことがあれば、すぐに相談して下さいね。私はあなたのおばになるのですからね」
「はい、ありがとうございます。とは言われましても、私は極力公爵家とは距離を取りたいですから、いざという時だけにさせていただきますね」
「無理はいけませんよ。まだ子どもなのですから、大人は頼って下さい」
「でしたら、イリスやギルバードにまずは頼りますよ」
私がその様に返しますと、ミサエラさんは困った顔をしていました。おばであると同時に商業ギルドの副マスターですから、頼ってほしいのでしょうね。
ですが、私は公爵家からは独立する気でいますので、極力お借りしたくはないのですよね。お気持ちは嬉しいのですけれど。
ミサエラさんが心配そうに見守る中、私は商業ギルドを後にしたのでした。
「まったく、アンドリュー殿下が来られた時にはびっくりしましたよ。でも、私がまさか領主代行の妻だとは思いもしませんでしょうね」
そう言って笑うのは、商業ギルドの副マスターであるミサエラさんです。ミサエラさんは対外的に発表はされておりませんが、リキシルおじさまの妻です。おそらく発表されないのは平民だからでしょうね。貴族は貴族同士というのが、この世界の通例ですからね。
とはいえ、ミサエラさんは商業ギルドの副マスターを務められるくらいですから、とても優秀な方なのですよね。
「でもまぁ、私以外でアンドリュー殿下のことに気が付いていらっしゃるのは冒険者ギルドのマスターたちくらいでしょう。お忍びとしては成功でしょうね」
とても涼しげな顔で、ミサエラさんは話をされておりました。
「それで、レチェさんは本日はどのような用件でいらしたのですか?」
私の顔を見ながら、ミサエラさんが用件を確認してこられます。
そうですよね。商業ギルドに来ておきながら、用件がこれだけだなんて思われませんよね。
そんなわけでして、私は咳払いをして用件を伝えます。
「今さらですが、レシピの登録に来ました。去年は準備中でしたのですっかり忘れていましたが、食堂が開業して時間が経って落ち着いてきましたので、今出している料理とこれから出す予定のある料理のレシピを、保護のために商業ギルドに登録しておこうとやって参りました」
そう、私が今日やって来たのは、料理のレシピ登録です。前世の世界でいうところの特許申請のようなものですね。
この世界では料理のレシピというのは貴重でして、新しい料理を作ればすぐに登録することが推奨されています。そうしておかないと、真似した人たちから法外な使用料の要求が来たりすることもあるのだそうです。
私たちの食堂にやってくるお客様からの話で、思い出したのですよ。
「試食会の時にこちらで登録をお勧めしておくべきでしたね。申し訳ありません、衝撃的すぎて私たちですら忘れてしまっているとは……」
ミサエラさんが謝罪をしてきます。
「過ぎたことは仕方ありませんよ。今回まだ未発表のレシピも混ざっていますので、もし類似のものが出ていたとしても、私の方がオリジナルだと認識して頂けるでしょう。あ、ご試食されますか?」
「よろしいのですか?」
「はい」
ミサエラさんが食べたそうな感じでしたので、私はパンの販売でも使っているかごの中から、今回の試食品を取り出しました。
食堂の経営が軌道に乗って余裕が出てきたら売り出そうと思っていた、スライスフライドポテトとスティックフライドポテトです。スライスタイプの方は、他の異世界ものでも定番ですよね。
「これは、芋でしょうか」
「はい、その通りです。薄切りにしたものと棒状に切ったものを油で揚げたものになります。油で揚げること自体、私の食堂の専売特許ですからね」
私はミサエラさんに胸を張って説明をしています。
あまりにも堂々とした私の態度に、ミサエラさんはおかしそうに笑っていました。変なことを言いましたかね。
「まあ、パリッとした食感がまた新しいですね。これはいつくらいから始めるつもりでしょうか」
ミサエラさんがかなり食いついてきましたね。
「そうですね。すぐというわけにはいかないと思います」
「それはなぜですかね」
ミサエラさんが確認してきますので、私は問題点を挙げていきます。
揚げ物をすると油が汚れますので、それをきれいにするための浄化の魔石の消耗が激しくなります。これがまず一つ目ですね。
次に、揚げれば油が減ります。補うための油の生産が追いつかなくなる可能性が考えられます。
最後に、材料となる芋の確保ですね。ノームに無理をさせるつもりはありませんので、いざという時以外は食堂の食材は自然に任せたものとなります。売れすぎてしまえば、開業時の二の舞です。二度目は避けたいのですよ。
それと、これは直接関係ありませんが、ラッシュバードの産卵時期が近付いてきています。神経質になりやすいですから、新しいことは差し控えたいところです。
こんな感じでミサエラさんに説明をしますと、納得して頂くことができました。
「事情は分かりました。それでは、レシピの登録をさせていただきますね。結果については後日、お知らせに伺わせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」
用件が終わりました。
私は帰ろうとしますが、ミサエラさんに呼び止められてしまいます。
「レチェさん、何か変わったことがあれば、すぐに相談して下さいね。私はあなたのおばになるのですからね」
「はい、ありがとうございます。とは言われましても、私は極力公爵家とは距離を取りたいですから、いざという時だけにさせていただきますね」
「無理はいけませんよ。まだ子どもなのですから、大人は頼って下さい」
「でしたら、イリスやギルバードにまずは頼りますよ」
私がその様に返しますと、ミサエラさんは困った顔をしていました。おばであると同時に商業ギルドの副マスターですから、頼ってほしいのでしょうね。
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