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第118話 思わぬ来客
ミサエラさんは、食堂の営業に配慮してか、お休みの日にお店にやってこられました。
はい、レシピは無事に商業ギルドで登録されました。これらの情報もすぐさま各地のギルドと情報共有されるそうです。まったく、こういう異世界というものはよく分からない技術というものがあるものですね。
ご都合主義という言葉で片付けてもいいとは思いますが、やっぱり限度があると思いますよ、私は。
ですが、お伺いしてもきちんとした答えが返ってきませんので、ご都合主義なんだと思います。魔法のある世界ですし、なんとでもなるのでしょうね。
……私は深く考えることをやめました。
さて、無事にレシピ登録も終わりましたので、普段の仕事に戻りましょうか。
年も明けましてからひと月以上が経過しましたので、スピードとスターのことが気になって仕方がないのですよね。
まだまだ冬毛でもこもこした状態のラッシュバードですけれど、そろそろ産卵のことを考えておかねばなりません。
繁殖の頃ともなれば、スピードがそわそわし始めます。奥の方でごそごそしていることがありますが、それはそういうことなんですよね。
そわそわしていたかと思えば落ち着いて、その数日後にスターが卵を産みます。大体一度に四~六個を産みます。その約半分が無精卵となり、私たちの食卓に上がることになります。
ラッシュバードってほぼダチョウそのものですので、本当に卵が大きいんですよね。一個あればプリンが十個くらい作れますからね。
ですが、客数や使える料理の数を思えば、一日に卵が五十個以上は必要になります。
現状産卵のできるラッシュバードは、スターと去年の最初に生まれたラッシュバードだけでして、現状では年間最大で百五十個前後がいいところでしょう。
王都にいるフォレとラニやその子どもたちは王家の管理下ですので手は出せません。
そうなると、無精卵がもったいないですよねぇ……。
はあ、どうしたものでしょうか。
思い悩み続けた次の休業日のことです。
いつものように仕事をしていると、入口が騒がしくなります。一体どうしたのでしょうか。
「レチェ様、お客様がいらしています」
「はい、どちら様でしょうか」
「それが……」
どういうわけか対応に出ていたイリスの表情が曇ります。
なんだか嫌な予感がしますが、私は呼ばれて外へと出ていきます。
食堂の入口には、なんとも体格の良い男性が二人と女性一人が立っていました。なんでしょうか、見た覚えがありますね。
「おうおう、あんたがここの責任者かい?」
三人の真ん中に立つ男性が、威圧的に声をかけてきます。怯むところでしょうが、私には効きませんよ。
「はい、その通りです。私はこの『憩いのラッシュバード亭』の経営者でレチェと申します。本日はどのようなご用件でしょうか」
私が挨拶をすると、全員が固まっています。
よく自分の姿を確認すると、貴族の令嬢がするカーテシーを自然と取ってしまっていました。しみついてしまった習慣というものは簡単には抜けませんね。
まあ、今さらです。気を取り直して対応を続けましょう。
「ちょっと待って下さい。まさかそのお顔は……」
話を始めようかとした時、唯一いた女性が何かに気が付いたようです。
「おう、一体どうしたっていうんだ」
中央の男性が女性に尋ねています。
「髪色は違いますが、レイチェル・ウィルソン公爵令嬢でいらっしゃいますよね?」
「え?」
名前を言い当てられてしまって、私はつい固まってしまいます。
そんなに分かってしまいますかね。
「おい、レイチェル様といえば、金髪だろう? どこにでもいる茶髪の女性じゃないか」
「いえ、今さっきのカーテシーといい、この気品あふれるたたずまいといい、間違いありません。わざわざアンドリュー殿下が指定したお店なのですから、何かあるとは思っていましたが、まさかレイチェル様だったなんて」
女性が全部話してくれましたね。
やっぱり殿下ですか。見覚えがあると思ったら、この方たち、王宮料理人の人たちですよ。
実は言いますと、まだ殿下の婚約者であった頃のお茶会で、この人たちを見たことがあるんです。まだまだ見習いだったということもあって、給仕の真似事もしていたのです。
「申し訳ありませんが、その話はここではできません。どうぞ、中へお入り下さい」
「はっ、これは大変失礼を致しました。それでは、お邪魔致します」
というわけでして、三名の方を食堂の事務所までご案内してお話を伺います。
アンドリュー殿下の指示を受けて、私の料理を覚えてこいという指示を受けたそうですよ。
この食堂の料理が気に入られたようですね。
アンドリュー殿下がこの街に来られたのは十日ほど前のこと。移動距離を考えますと、即断即決即行動ということですね。この三人を選んだのは、先程の理由からでしょう。
まったく迷惑ですね。でも、ちょうどよかったとも言えます。
レシピの件で王都にも連絡を入れようと考えていましたからね。ええ、アマリス様のためですよ、もちろん。
むこうからわたしが考え出した(ことになっている)料理を学びに来てくれるのでしたら、それは大歓迎というものです。
「分かりました。王家から出向いてきて下さったので、追い返すのもよくないでしょう。滞在を許可しますが、問題が起きた場合は処罰として王都に追い返すこともありますので、覚悟して下さいね」
「もちろんです」
「アンドリュー殿下からは料理を覚えるまで帰ってくるなと言われております。追い出されないよう一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」
そんなわけでして、私の食堂に新たな戦力が加わりました。
まったく、アンドリュー殿下ときたら、そんなに私の気を引きたいのですかね。
食堂の経営としては助かりますので受け入れますが、文句のひとつでもお返ししなければなりませんね。
一刻でも早く、アンドリュー殿下の未練が断ち切れますように。私は真剣に祈るのでした。
はい、レシピは無事に商業ギルドで登録されました。これらの情報もすぐさま各地のギルドと情報共有されるそうです。まったく、こういう異世界というものはよく分からない技術というものがあるものですね。
ご都合主義という言葉で片付けてもいいとは思いますが、やっぱり限度があると思いますよ、私は。
ですが、お伺いしてもきちんとした答えが返ってきませんので、ご都合主義なんだと思います。魔法のある世界ですし、なんとでもなるのでしょうね。
……私は深く考えることをやめました。
さて、無事にレシピ登録も終わりましたので、普段の仕事に戻りましょうか。
年も明けましてからひと月以上が経過しましたので、スピードとスターのことが気になって仕方がないのですよね。
まだまだ冬毛でもこもこした状態のラッシュバードですけれど、そろそろ産卵のことを考えておかねばなりません。
繁殖の頃ともなれば、スピードがそわそわし始めます。奥の方でごそごそしていることがありますが、それはそういうことなんですよね。
そわそわしていたかと思えば落ち着いて、その数日後にスターが卵を産みます。大体一度に四~六個を産みます。その約半分が無精卵となり、私たちの食卓に上がることになります。
ラッシュバードってほぼダチョウそのものですので、本当に卵が大きいんですよね。一個あればプリンが十個くらい作れますからね。
ですが、客数や使える料理の数を思えば、一日に卵が五十個以上は必要になります。
現状産卵のできるラッシュバードは、スターと去年の最初に生まれたラッシュバードだけでして、現状では年間最大で百五十個前後がいいところでしょう。
王都にいるフォレとラニやその子どもたちは王家の管理下ですので手は出せません。
そうなると、無精卵がもったいないですよねぇ……。
はあ、どうしたものでしょうか。
思い悩み続けた次の休業日のことです。
いつものように仕事をしていると、入口が騒がしくなります。一体どうしたのでしょうか。
「レチェ様、お客様がいらしています」
「はい、どちら様でしょうか」
「それが……」
どういうわけか対応に出ていたイリスの表情が曇ります。
なんだか嫌な予感がしますが、私は呼ばれて外へと出ていきます。
食堂の入口には、なんとも体格の良い男性が二人と女性一人が立っていました。なんでしょうか、見た覚えがありますね。
「おうおう、あんたがここの責任者かい?」
三人の真ん中に立つ男性が、威圧的に声をかけてきます。怯むところでしょうが、私には効きませんよ。
「はい、その通りです。私はこの『憩いのラッシュバード亭』の経営者でレチェと申します。本日はどのようなご用件でしょうか」
私が挨拶をすると、全員が固まっています。
よく自分の姿を確認すると、貴族の令嬢がするカーテシーを自然と取ってしまっていました。しみついてしまった習慣というものは簡単には抜けませんね。
まあ、今さらです。気を取り直して対応を続けましょう。
「ちょっと待って下さい。まさかそのお顔は……」
話を始めようかとした時、唯一いた女性が何かに気が付いたようです。
「おう、一体どうしたっていうんだ」
中央の男性が女性に尋ねています。
「髪色は違いますが、レイチェル・ウィルソン公爵令嬢でいらっしゃいますよね?」
「え?」
名前を言い当てられてしまって、私はつい固まってしまいます。
そんなに分かってしまいますかね。
「おい、レイチェル様といえば、金髪だろう? どこにでもいる茶髪の女性じゃないか」
「いえ、今さっきのカーテシーといい、この気品あふれるたたずまいといい、間違いありません。わざわざアンドリュー殿下が指定したお店なのですから、何かあるとは思っていましたが、まさかレイチェル様だったなんて」
女性が全部話してくれましたね。
やっぱり殿下ですか。見覚えがあると思ったら、この方たち、王宮料理人の人たちですよ。
実は言いますと、まだ殿下の婚約者であった頃のお茶会で、この人たちを見たことがあるんです。まだまだ見習いだったということもあって、給仕の真似事もしていたのです。
「申し訳ありませんが、その話はここではできません。どうぞ、中へお入り下さい」
「はっ、これは大変失礼を致しました。それでは、お邪魔致します」
というわけでして、三名の方を食堂の事務所までご案内してお話を伺います。
アンドリュー殿下の指示を受けて、私の料理を覚えてこいという指示を受けたそうですよ。
この食堂の料理が気に入られたようですね。
アンドリュー殿下がこの街に来られたのは十日ほど前のこと。移動距離を考えますと、即断即決即行動ということですね。この三人を選んだのは、先程の理由からでしょう。
まったく迷惑ですね。でも、ちょうどよかったとも言えます。
レシピの件で王都にも連絡を入れようと考えていましたからね。ええ、アマリス様のためですよ、もちろん。
むこうからわたしが考え出した(ことになっている)料理を学びに来てくれるのでしたら、それは大歓迎というものです。
「分かりました。王家から出向いてきて下さったので、追い返すのもよくないでしょう。滞在を許可しますが、問題が起きた場合は処罰として王都に追い返すこともありますので、覚悟して下さいね」
「もちろんです」
「アンドリュー殿下からは料理を覚えるまで帰ってくるなと言われております。追い出されないよう一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」
そんなわけでして、私の食堂に新たな戦力が加わりました。
まったく、アンドリュー殿下ときたら、そんなに私の気を引きたいのですかね。
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一刻でも早く、アンドリュー殿下の未練が断ち切れますように。私は真剣に祈るのでした。
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