ラミアプリンセスは配信者

未羊

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SCENE003 ダンジョンコア

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 目の前にダンジョンコアが現れた。
 漆黒というのがふさわしい感じの黒いきれいな球状の水晶だった。

「さあ、プリンセス。ここに手を乗せて魔力流して下さい」

「魔力? そんなの僕にはないと思うんだけど」

「ああ、そうでした。この世界の人間だと魔力というものが認識できないのでしたね」

 僕が聞き返すと、バトラーはしまったという感じで顔に手を当てていた。思ったよりに賑やかな人みたいだ。

「言い方を変えましょう。手を置いて、『オープン、メニュー』と念じて下さい」

「うん、分かったよ」

 僕は言われた通り、コアに手を置いて『オープン、メニュー』と強く思い浮かべる。
 その瞬間だった。
 ブォンという音がして、コアの上に何かが表示された。

「こ、これは?」

「それがダンジョンコアで行える操作の一覧ですね。『ダンジョン拡張』『モンスター配備』『設備購入』『物品購入』『食料購入』『設定』の六種類でございます。ちなみに一番上の数値が、今所有のダンジョンポイントでございます」

「な、なるほど」

 メニューの一番上には、『1000』という数値が書かれている。これがさっきバトラーが説明していた、ダンジョンマスターの就任祝いのポイントらしい。
 ダンジョンポイントを増やすには、探索者を負傷させる、探索者を倒すなど、とにかくダンジョンを守るという項目を満たせば増えるらしい。

「それでは、ひとつずつ説明して参ります」

 メニューにある機能について、バトラーが説明を始めてくれた。

 ダンジョン拡張というのは、その名の通り、ダンジョンを広げていくというもの。
 通路や小部屋、階層を増やすというのが、ここにあたる。

 モンスター配備というのは、ダンジョンを守るモンスターを呼び出すということ。
 ダンジョンマスター以外の魔物は、一部を除いては代替可能な量産型の魔物なんだそうだ。
 当然ながら、能力が高いほどダンジョンポイントを多く消耗するらしい。

 設備購入というのは、拡張では得られない他の設備の購入のこと。
 扉や罠はもちろん、トイレやお風呂といった設備もここで手に入るらしい。

 物品購入は、日用品や衣類などの設備ほど大きいものではないものの、食べ物ではないものを購入する項目なんだとか。
 食料購入はそのままだから省略だね。

「なるほどね。バトラーからすると、最初に何をすべきだと思う?」

 僕はよく分からないので、ひとまずバトラーに方針を尋ねてみる。
 なぜかバトラーは悩み始めている。

「ここはプリンセスのダンジョンですので、我が意見をするのは差し出がましいと思われます。ですが、そうですね……。我であるなら拡張と配備から行いますね。少しでも身の安全を確保したいですからな」

「なるほど……」

 確かにそうだなと思った。
 ダンジョンとして成立してしまった以上、そのうち、探索者がやって来ることになる。
 ダンジョンポイントの乏しい最初のうちでは、簡単に自分のところまでたどり着かれてしまうだろう。
 だけど、僕は簡単には決められなかった。

「うーん、まずはダンジョンの現状を確認してからの方がいいかな」

「いやはや、現在の状態は、プリンセスがここに来られた時と変わりはありませんぞ。ここから出口まで、大きな一本道でございますよ」

「ホント?」

 僕は疑ってかかる。

「設備購入を選んでいただければ、ダンジョンの現在の状態が確認できます。どうぞ、ご確認ください」

 バトラーに言われて、僕は設備購入という項目に触れる。
 画面が切り替わって、ダンジョンの全体像が表示される。……確かに、入口からここまで、大きな一本道になっていた。

「うわぁ、これじゃ簡単にたどりつけちゃうじゃないか」

「はい。ですから、ポイントを使ってダンジョンを改造しようというわけです」

「なるほど……」

 項目を見ながら、いろいろと改造を考え始めたその時だった。

「むっ、人の気配」

 バトラーが何かを感じ取ったようだ。

「ええっ!? どうしよう。何もできてないのにこのままじゃ……」

「仕方ありませんな。ひとまずは小部屋と回転扉を追加して隠れましょう。まだ入ったばかりのところですから、そのくらいの時間はあります」

「わ、分かりました。小部屋と回転扉を追加っと」

 僕が操作をすると、合計で100ポイントを消費して、ダンジョンの行き止まりの壁に変化が起きた。

「プリンセス。ダンジョンコアを消して逃げ込みますぞ」

「は、はい」

 消し方を教えてもらってダンジョンコアを消すと、僕たちは荷物や卵を回収して小部屋に逃げ込む。ぐるんと回った岩壁は両面が点対称になっているから、きちんと閉めれば簡単にはばれない。
 僕たちは小部屋の中で息を潜めて外の様子を窺う。

 しばらくすると、外から人の声が聞こえてくる。

「なんだ、何もいないじゃないか」

「嘘じゃないって。バカでっかい蛇のモンスターがいたんだよ!」

 この声は、僕を突き飛ばした友人だった奴じゃないか。
 僕の拳に思わず力が入る。

「嘘はよくないな。どこにもモンスターがいた形跡はない。それよりも、ダンジョン探索法違反で、君たちは補導させてもらうよ」

「そ、そんなぁ……」

 しばらくの間、裏切った友人たちの叫ぶ声が聞こえてきたのだけど、その声も足音と共に段々と遠ざかっていった。
 騒ぐ声が聞こえなくなると、僕はほっとした様子でその場に座り込んでしまったのだった。
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