ラミアプリンセスは配信者

未羊

文字の大きさ
16 / 141

SCENE015 残された家族

しおりを挟む
 ピンポーン。

 家の呼び鈴が鳴る。

「はい、どちら様でしょうか」

 私は今にあるインターフォンを取って、対応をする。

『三枝瞬くんのお宅でしょうか。ダンジョン管理局の者です』

「えっ、ダンジョン管理局の人?!」

 私はすごく驚いた。
 ダンジョン管理局の人が、お兄ちゃんの名前を口にしたんだもの。というか、ダンジョン管理局の人がなんでうちに来るの?
 よく分からないけれど、身分証のタグを見せているので間違いなさそう。
 お兄ちゃんが行方不明になってからすでに二週間。ようやく落ち着いて普段の生活ができるようになってきたのに、どういうことなのかな。
 同じく居間にいたお母さんと一緒に、私は玄関に向かう。

 がちゃりと玄関を開けると、そこにはスーツ姿の男性と女性が立っていた。
 二人は名刺を取り出してきて自己紹介を始める。

「初めまして、ダンジョン管理局の谷地翔と申します」

「同じく、日下まことと申します」

「こちらは三枝瞬くんのお宅で、間違いございませんね?」

「はい、瞬はうちの息子です。一体どうしたというのですか」

 自己紹介から、お兄ちゃんのことを確認してきた。

「実は、三枝瞬と名乗る人物からの手紙を受け取ってきたのです。中でお話はよろしいでしょうか」

「わ、分かりました。お上がり下さい」

 お、お兄ちゃんからの手紙?!
 私はびっくりして、二人のことをじっと見つめていた。

 あっ、自己紹介が遅れました。
 私は三枝瞳さえぐさひとみ。現在中学一年生です。
 話に出てきた瞬というのは、私のお兄ちゃん。半年もすれば高校生になる、私の頼りになるお兄ちゃんです。
 そんなお兄ちゃんが、二週間前から行方不明になっていて、家の中は大騒ぎになりました。私たちはしばらく生活が落ち着かないものになっていたけれど、今回のことはようやく落ち着いてきた矢先のことなんですよ。
 では、また語り部に戻るので丁寧語をやめますね。

 私とお母さんが、ダンジョン管理局の人たちを向かい合う。

「こちら、預かってきた手紙でございます。どうぞ、ご確認ください」

 一通の手紙を渡されて、お母さんが開けて確認をします。

『お父さん、お母さん、瞳、ごめんなさい。僕は、事情があって家に帰れなくなりました。でも、元気でやっているので心配しないで下さい。瞬より』

 短い文章だけど、無事を知らせる内容だった。
 だけど、私たちがそんなに簡単に信じられるわけがなかった。

「確かに、あの子の字だけど、こんな手紙ひとつで信じられると思うのですか?」

「心中お察しします。ですが、その手紙にも書いてある通り、彼は今、特殊な状況下にあるんです」

「どういう状況なんですか!」

 お母さんがテーブルを叩いて大声を出している。やっと落ち着いてきたのに、また精神的に不安定になってしまうわ。
 私は心配そうな表情をお母さんに向けます。

「あの……」

 あまりにも見ていられないお母さんの状態に、私は管理局の人に声をかけます。

「なんでしょうか」

「お兄ちゃんの状況を、教えてくれませんか?」

 お母さんが怒鳴りつけた内容と同じだけど、私は気持ちを落ち着けながら丁寧に頼みこむ。
 管理局の人たちは、一度互いに視線を送り合い、再び私たちに向かい合う。

「初めての事態ですので、私たちも混乱しております」

「本人たちの話からしますと、三枝瞬くんはダンジョンマスターとなってしまったようなのです」

「ダンジョンマスター?!」

 私たちは大声で驚く。
 それもそのはず。ダンジョンマスターということは、モンスターということ。お兄ちゃんは探索者適性のある人間だもん、モンスターなわけがない。信じられるわけがないよ。

「証拠は、あるんですか?」

「こちらをご覧ください」

 お母さんが怒りをにじませた表情で管理局の人たちに鋭い視線を送っている。だけど、管理局の人たちはとても落ち着いているみたい。
 ダンジョン管理局の谷地さんが取り出したスマートフォンには、何か動画が映し出されました。

『こんにちは、ダンジョンマスターのウィンクです』

 映し出されたのは、髪の長い女の子だった。
 誰だろうって見ていたけど、その顔をじっと見つめていると、私は気が付いてしまった。

「この顔、お兄ちゃんだ!」

「間違いないわね、瞬だわ」

 声はちょっと高くなっているし、髪の毛はなんか銀髪になってるし、目も赤い。だけど、顔立ちと喋り方は間違いなくお兄ちゃんだった。
 お母さんもすぐに分かったみたい。お兄ちゃん、顔に特徴あるからなぁ……。

「でも、この姿って……?」

「はい、ラミアプリンセスというモンスターだそうです。この配信システムは探索者にしか使えません。つまり、この配信を行っている時点で、彼女が元人間で探索者適性のある人物であることは間違いないんです」

「はっ、確かに!」

 私は思い出した。私だって探索者適性があるから、配信のシステムのことだって知ってるもん。

「それで現在の探索者登録をしている人物のうち、行方不明者を絞り込んでいった結果、三枝瞬くんしか該当がありませんでした」

 私たちは言葉を失った。
 行方不明になったお兄ちゃんが、モンスターになってダンジョンマスターをしているなんて、誰が信じられるというのかしら。

「それで、提案なのですが」

「はい、何でしょう」

「ウィンクと名乗るラミアプリンセスに会ってみませんか?」

 予想外の提案にびっくりして、私たちはお互いの顔を見てしまう。

「今すぐ決める必要はありません。私どもは一度報告に向かわせて頂きますので、じっくりお考えになって下さい」

 ダンジョン管理局の人たちは、そう言い残すと帰っていく。
 私たちはどうしたものかと、しばらくの間、椅子に座ったまま動けなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乗っ取られた家がさらに乗っ取られた。面白くなってきたので、このまま見守っていていいですか?

雪野原よる
恋愛
不幸な境遇の中で廃嫡され、救い出されて、国王の補佐官として働き始めた令嬢ユーザリア。追い出した側である伯爵家が次々と不幸に見舞われる中、国王とユーザリアの距離は近付いていき……  ※このあらすじで多分嘘は言っていない  ※シリアスの皮を被ったコメディです  ※これで恋愛ものだと言い張る

 怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~

美袋和仁
恋愛
 ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。  しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。  怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。  なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLの白瀬凛は、過労死した翌朝、異世界の侯爵令嬢アリア・ヴェルナーとして目を覚ました。   転生初日。 婚約者であるシュルツ公爵令息から、一方的に告げられる。   「君は無能だ。この婚約は破棄する」   行き場を失ったアリアが選んだのは、王城のメイドに志願すること。 前世でブラック企業に鍛えられた凛には、武器があった。 ——人を動かす技術。業務を改善する知識。そして、折れない心。   雑用メイドからスタートした凛は、現代の知識を武器に王城を変えていく。 サボり魔、問題児、落ちこぼれ——誰もが見捨てたメイドたちが、次々と凛に懐いていく。   そして転生からわずか一年。 凛は王城に仕える500人のメイドを束ねる、史上最年少メイド長となっていた。   「——なぜ、君がここに」   国王主催の晩餐会。 青ざめた顔で立ち尽くす元婚約者の前で、500人のメイドたちが一斉に頭を下げる。   「アリア・ヴェルナー・メイド長。晩餐会の準備が整いました」   私を捨てたあの日、あなたの後悔も始まっていたのです。 ——もう、遅いですけれど。

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

殿下は私を追放して男爵家の庶子をお妃にするそうです……正気で言ってます?

重田いの
恋愛
ベアトリーチェは男爵庶子と結婚したいトンマーゾ殿下に婚約破棄されるが、当然、そんな暴挙を貴族社会が許すわけないのだった。 気軽に読める短編です。 流産描写があるので気をつけてください。

処理中です...