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SCENE036 機嫌の悪いセイレーン
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衣織が瞬のダンジョンを訪れていた頃、横浜ダンジョンでは……。
―――
「ねえ、シードラゴン」
「なんでしょうか、セイレーン様」
あたしは、シードラゴンを呼びつけていますわ。
それというのも、ウィンクスダンジョンという新規ダンジョンのことを調べさせていたので、その結果を聞くためですわよ。
「頼んでおいた調べ物は、終わったかしら」
「いえ、それが……」
シードラゴンが口答えをしようとするものだから、あたしはギロリと睨んでやりましたわ。
まったく、あたしにこんな顔をさせるなんて、あたしの美貌に影響が出たらどうしてくれますの。
「思った以上にダンジョンシステムの防御が固くて、私にはとてもではないですが無理でございます」
シードラゴンってば、泣きごとを言ってきましたわね。
このあたしの執事のくせに、なんて無能なことをして下さるのかしら。まったく許せませんわね。
「まったく、しょうがありませんわね。無駄にこういうところだけは厳重なんですから……」
異界の統治のレベルを知っているだけに、このダンジョンシステムの不透明さがなんとも不気味ですわ。
国同士の決め事とか、内部の決まり事などは筒抜けなんですもの。ここまで包み隠すなんてこと、ダンジョンくらいですわよ。
ですが、そういう環境でしか得られない快感というものもございますわ。
そう、この燦然と輝く、全ダンジョンのトップに君臨するという栄誉。すべてのモンスターの頂点に、このあたしが立っておりますのよ。おーっほっほっほっほっ!
「それにしても、このあたしのダンジョンに迫りつつある新規ダンジョンというのが、本当に気に食いませんわ」
あたしはシードラゴンの持っている魔晶石の板を眺めておりますわ。
つい最近にできたばかりだといいますのに、上位十ダンジョンにめり込んでいるというのですから恐ろしいですわ。まあ、あたしのダンジョンの二十分の一未満ですけれど。
それにしても、本当に気に入りませんわね。
「ああ、なんだかイライラしてきますわ」
「いかが致しましょうか、セイレーン様」
あたしの気持ちが段々と落ち着かなくなってきましたわ。
だといいますのに、シードラゴンが無神経な質問をしてきますわね。
「決まっているじゃありませんの。入って来た探索者どもをぶち殺して差し上げるのですわ」
「ということは、あの部屋へと誘導なさるおつもりで?」
「もちろんですわ。シードラゴン、うまくモンスターを使って誘導しておやりなさい」
「承知致しました、セイレーン様」
あたしの命令を聞いて、シードラゴンは部屋を出ていきます。
普段は優秀ですなシードラゴンですが、やっぱりダンジョンシステムへの不正介入は無理でしたわね。
「まったく、ダンジョン同士は接触ができないなんて、こういう時はもやもやして困りますわね。新しいダンジョンのくせに、本当に生意気ですわ」
イライラとする気持ちを落ち着けるために、あたしはダンジョンコアを呼び出してダンジョンポイントの変化を見守ります。
ダンジョンへとやってくる探索者はランクによってまちまちですけれど、強い方ですと一人で4000は入りますわ。
復活システムを導入しておりませんと5000ポイントなので、1000ポイントの差は大きいですわよ。ですが、復活システムを導入しておけば、死んだ探索者はダンジョンの入口で蘇生しますわ。
つまり、たった一回の5000ポイントか、何度も入る4000ポイントかという違いですわね。上位を目指すのであれば、後者を選んで当然ですわよ。
最弱の探索者でも一人あたり二割減の160ポイントですからね。
そうやって、何度もやってきてくれる探索者たちのおかげで、あたしはこのように優雅な暮らしをしておりますわ。
「ふふっ、愚かな探索者たちが次々と罠にはまって死んでいってますわね。本当にポイントがおいしいですわね」
次々と増えていくポイントに、あたしはついうっとりとしてしまいますわ。
こつん……。
ダンジョンコアに気を取られていましたら、何か足音が聞こえてきましたわね。
「誰ですの?!」
あたしはダンジョンコアをしまいまして、声を上げます。
どう考えてもこの足音はシードラゴンではありませんわ。探索者がここまでたどり着いたといいますの?
「ここは、一体どこなんですかね」
姿を見せたのは、なんともまだ若い少年ですわね。
「あら、探索者がここにたどり着くなんて、初めてですわね」
「えっ、お姉さん誰?」
あら、なんて失礼な子なのかしら。
でも、よく思えば、あたしのことを知っている探索者はいませんわね。だって、あたしはここから出ませんし、誰もここまで来たことがないんですもの。
仕方ありませんわ。ここは丁重にお出迎えをしてあげませんとね。
「おーっほっほっほっほっ。よくここまでたどり着きましたわね。ここは横浜ダンジョンの最奥部。あたしはこのダンジョンのマスターであるセイレーンですわよ」
「だ、ダンジョンマスター?! なんで、俺はこんなところにたどり着いているんだ?」
「あたしの方が聞きたいですわね。ここは常にダンジョンが組み変わっておりますし、今はとある地点に探索者たちを誘導しておりますもの。モンスターたちだって強いですから、ここにたどり着けるわけがありませんわ。どうやって来ましたの」
「わ、分からない。でも、ぼーっとしながら歩いていたら、ここに着いてしまって……」
なんとも歯切れの悪い言い方をしていますわね。話を信じるのであるなら、適当にさまよっていたらここに着いたという風に受け取れますわ。ありえませんわね。
正直、ウィンクスダンジョンのこともありまして、機嫌は最悪ですわ。
ですけれど、ここは殺したい気持ちをぐっとこらえておきましょう。なんといっても珍しい外部情報を仕入れるチャンスが来たんですもの。
「ちょうどいいですわ。あなた、あたしとお話をしませんこと?」
ウィンクスダンジョンの情報を仕入れられるかも。そう考えたあたしは、迷い込んだ探索者を誘うことにしましたわ。
―――
「ねえ、シードラゴン」
「なんでしょうか、セイレーン様」
あたしは、シードラゴンを呼びつけていますわ。
それというのも、ウィンクスダンジョンという新規ダンジョンのことを調べさせていたので、その結果を聞くためですわよ。
「頼んでおいた調べ物は、終わったかしら」
「いえ、それが……」
シードラゴンが口答えをしようとするものだから、あたしはギロリと睨んでやりましたわ。
まったく、あたしにこんな顔をさせるなんて、あたしの美貌に影響が出たらどうしてくれますの。
「思った以上にダンジョンシステムの防御が固くて、私にはとてもではないですが無理でございます」
シードラゴンってば、泣きごとを言ってきましたわね。
このあたしの執事のくせに、なんて無能なことをして下さるのかしら。まったく許せませんわね。
「まったく、しょうがありませんわね。無駄にこういうところだけは厳重なんですから……」
異界の統治のレベルを知っているだけに、このダンジョンシステムの不透明さがなんとも不気味ですわ。
国同士の決め事とか、内部の決まり事などは筒抜けなんですもの。ここまで包み隠すなんてこと、ダンジョンくらいですわよ。
ですが、そういう環境でしか得られない快感というものもございますわ。
そう、この燦然と輝く、全ダンジョンのトップに君臨するという栄誉。すべてのモンスターの頂点に、このあたしが立っておりますのよ。おーっほっほっほっほっ!
「それにしても、このあたしのダンジョンに迫りつつある新規ダンジョンというのが、本当に気に食いませんわ」
あたしはシードラゴンの持っている魔晶石の板を眺めておりますわ。
つい最近にできたばかりだといいますのに、上位十ダンジョンにめり込んでいるというのですから恐ろしいですわ。まあ、あたしのダンジョンの二十分の一未満ですけれど。
それにしても、本当に気に入りませんわね。
「ああ、なんだかイライラしてきますわ」
「いかが致しましょうか、セイレーン様」
あたしの気持ちが段々と落ち着かなくなってきましたわ。
だといいますのに、シードラゴンが無神経な質問をしてきますわね。
「決まっているじゃありませんの。入って来た探索者どもをぶち殺して差し上げるのですわ」
「ということは、あの部屋へと誘導なさるおつもりで?」
「もちろんですわ。シードラゴン、うまくモンスターを使って誘導しておやりなさい」
「承知致しました、セイレーン様」
あたしの命令を聞いて、シードラゴンは部屋を出ていきます。
普段は優秀ですなシードラゴンですが、やっぱりダンジョンシステムへの不正介入は無理でしたわね。
「まったく、ダンジョン同士は接触ができないなんて、こういう時はもやもやして困りますわね。新しいダンジョンのくせに、本当に生意気ですわ」
イライラとする気持ちを落ち着けるために、あたしはダンジョンコアを呼び出してダンジョンポイントの変化を見守ります。
ダンジョンへとやってくる探索者はランクによってまちまちですけれど、強い方ですと一人で4000は入りますわ。
復活システムを導入しておりませんと5000ポイントなので、1000ポイントの差は大きいですわよ。ですが、復活システムを導入しておけば、死んだ探索者はダンジョンの入口で蘇生しますわ。
つまり、たった一回の5000ポイントか、何度も入る4000ポイントかという違いですわね。上位を目指すのであれば、後者を選んで当然ですわよ。
最弱の探索者でも一人あたり二割減の160ポイントですからね。
そうやって、何度もやってきてくれる探索者たちのおかげで、あたしはこのように優雅な暮らしをしておりますわ。
「ふふっ、愚かな探索者たちが次々と罠にはまって死んでいってますわね。本当にポイントがおいしいですわね」
次々と増えていくポイントに、あたしはついうっとりとしてしまいますわ。
こつん……。
ダンジョンコアに気を取られていましたら、何か足音が聞こえてきましたわね。
「誰ですの?!」
あたしはダンジョンコアをしまいまして、声を上げます。
どう考えてもこの足音はシードラゴンではありませんわ。探索者がここまでたどり着いたといいますの?
「ここは、一体どこなんですかね」
姿を見せたのは、なんともまだ若い少年ですわね。
「あら、探索者がここにたどり着くなんて、初めてですわね」
「えっ、お姉さん誰?」
あら、なんて失礼な子なのかしら。
でも、よく思えば、あたしのことを知っている探索者はいませんわね。だって、あたしはここから出ませんし、誰もここまで来たことがないんですもの。
仕方ありませんわ。ここは丁重にお出迎えをしてあげませんとね。
「おーっほっほっほっほっ。よくここまでたどり着きましたわね。ここは横浜ダンジョンの最奥部。あたしはこのダンジョンのマスターであるセイレーンですわよ」
「だ、ダンジョンマスター?! なんで、俺はこんなところにたどり着いているんだ?」
「あたしの方が聞きたいですわね。ここは常にダンジョンが組み変わっておりますし、今はとある地点に探索者たちを誘導しておりますもの。モンスターたちだって強いですから、ここにたどり着けるわけがありませんわ。どうやって来ましたの」
「わ、分からない。でも、ぼーっとしながら歩いていたら、ここに着いてしまって……」
なんとも歯切れの悪い言い方をしていますわね。話を信じるのであるなら、適当にさまよっていたらここに着いたという風に受け取れますわ。ありえませんわね。
正直、ウィンクスダンジョンのこともありまして、機嫌は最悪ですわ。
ですけれど、ここは殺したい気持ちをぐっとこらえておきましょう。なんといっても珍しい外部情報を仕入れるチャンスが来たんですもの。
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