ラミアプリンセスは配信者

未羊

文字の大きさ
37 / 142

SCENE036 機嫌の悪いセイレーン

しおりを挟む
 衣織が瞬のダンジョンを訪れていた頃、横浜ダンジョンでは……。

 ―――

「ねえ、シードラゴン」

「なんでしょうか、セイレーン様」

 あたしは、シードラゴンを呼びつけていますわ。
 それというのも、ウィンクスダンジョンという新規ダンジョンのことを調べさせていたので、その結果を聞くためですわよ。

「頼んでおいた調べ物は、終わったかしら」

「いえ、それが……」

 シードラゴンが口答えをしようとするものだから、あたしはギロリと睨んでやりましたわ。
 まったく、あたしにこんな顔をさせるなんて、あたしの美貌に影響が出たらどうしてくれますの。

「思った以上にダンジョンシステムの防御が固くて、私にはとてもではないですが無理でございます」

 シードラゴンってば、泣きごとを言ってきましたわね。
 このあたしの執事のくせに、なんて無能なことをして下さるのかしら。まったく許せませんわね。

「まったく、しょうがありませんわね。無駄にこういうところだけは厳重なんですから……」

 異界の統治のレベルを知っているだけに、このダンジョンシステムの不透明さがなんとも不気味ですわ。
 国同士の決め事とか、内部の決まり事などは筒抜けなんですもの。ここまで包み隠すなんてこと、ダンジョンくらいですわよ。
 ですが、そういう環境でしか得られない快感というものもございますわ。
 そう、この燦然と輝く、全ダンジョンのトップに君臨するという栄誉。すべてのモンスターの頂点に、このあたしが立っておりますのよ。おーっほっほっほっほっ!

「それにしても、このあたしのダンジョンに迫りつつある新規ダンジョンというのが、本当に気に食いませんわ」

 あたしはシードラゴンの持っている魔晶石の板を眺めておりますわ。
 つい最近にできたばかりだといいますのに、上位十ダンジョンにめり込んでいるというのですから恐ろしいですわ。まあ、あたしのダンジョンの二十分の一未満ですけれど。
 それにしても、本当に気に入りませんわね。

「ああ、なんだかイライラしてきますわ」

「いかが致しましょうか、セイレーン様」

 あたしの気持ちが段々と落ち着かなくなってきましたわ。
 だといいますのに、シードラゴンが無神経な質問をしてきますわね。

「決まっているじゃありませんの。入って来た探索者どもをぶち殺して差し上げるのですわ」

「ということは、あの部屋へと誘導なさるおつもりで?」

「もちろんですわ。シードラゴン、うまくモンスターを使って誘導しておやりなさい」

「承知致しました、セイレーン様」

 あたしの命令を聞いて、シードラゴンは部屋を出ていきます。
 普段は優秀ですなシードラゴンですが、やっぱりダンジョンシステムへの不正介入は無理でしたわね。

「まったく、ダンジョン同士は接触ができないなんて、こういう時はもやもやして困りますわね。新しいダンジョンのくせに、本当に生意気ですわ」

 イライラとする気持ちを落ち着けるために、あたしはダンジョンコアを呼び出してダンジョンポイントの変化を見守ります。
 ダンジョンへとやってくる探索者はランクによってまちまちですけれど、強い方ですと一人で4000は入りますわ。
 復活システムを導入しておりませんと5000ポイントなので、1000ポイントの差は大きいですわよ。ですが、復活システムを導入しておけば、死んだ探索者はダンジョンの入口で蘇生しますわ。
 つまり、たった一回の5000ポイントか、何度も入る4000ポイントかという違いですわね。上位を目指すのであれば、後者を選んで当然ですわよ。
 最弱の探索者でも一人あたり二割減の160ポイントですからね。
 そうやって、何度もやってきてくれる探索者たちのおかげで、あたしはこのように優雅な暮らしをしておりますわ。

「ふふっ、愚かな探索者たちが次々と罠にはまって死んでいってますわね。本当にポイントがおいしいですわね」

 次々と増えていくポイントに、あたしはついうっとりとしてしまいますわ。

 こつん……。

 ダンジョンコアに気を取られていましたら、何か足音が聞こえてきましたわね。

「誰ですの?!」

 あたしはダンジョンコアをしまいまして、声を上げます。
 どう考えてもこの足音はシードラゴンではありませんわ。探索者がここまでたどり着いたといいますの?

「ここは、一体どこなんですかね」

 姿を見せたのは、なんともまだ若い少年ですわね。

「あら、探索者がここにたどり着くなんて、初めてですわね」

「えっ、お姉さん誰?」

 あら、なんて失礼な子なのかしら。
 でも、よく思えば、あたしのことを知っている探索者はいませんわね。だって、あたしはここから出ませんし、誰もここまで来たことがないんですもの。
 仕方ありませんわ。ここは丁重にお出迎えをしてあげませんとね。

「おーっほっほっほっほっ。よくここまでたどり着きましたわね。ここは横浜ダンジョンの最奥部。あたしはこのダンジョンのマスターであるセイレーンですわよ」

「だ、ダンジョンマスター?! なんで、俺はこんなところにたどり着いているんだ?」

「あたしの方が聞きたいですわね。ここは常にダンジョンが組み変わっておりますし、今はとある地点に探索者たちを誘導しておりますもの。モンスターたちだって強いですから、ここにたどり着けるわけがありませんわ。どうやって来ましたの」

「わ、分からない。でも、ぼーっとしながら歩いていたら、ここに着いてしまって……」

 なんとも歯切れの悪い言い方をしていますわね。話を信じるのであるなら、適当にさまよっていたらここに着いたという風に受け取れますわ。ありえませんわね。
 正直、ウィンクスダンジョンのこともありまして、機嫌は最悪ですわ。
 ですけれど、ここは殺したい気持ちをぐっとこらえておきましょう。なんといっても珍しい外部情報を仕入れるチャンスが来たんですもの。

「ちょうどいいですわ。あなた、あたしとお話をしませんこと?」

 ウィンクスダンジョンの情報を仕入れられるかも。そう考えたあたしは、迷い込んだ探索者を誘うことにしましたわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】身代わりとなります

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
レイチェルは素行不良の令嬢として悪名を轟かせている。しかし、それはレイチェルが無知ゆえにいつも失態をしていたためで本人には悪意はなかった。 レイチェルは家族に顧みられず誰からも貴族のルールを教えてもらわずに育ったのだ。 そんなレイチェルに婚約者ができた。 侯爵令息のダニエルだ。 彼は誠実でレイチェルの置かれている状況を知り、マナー講師を招いたり、ドレスを作ってくれたりした。 はじめは貴族然としている婚約者に反発していたレイチェルだったがいつのまにか彼の優しさに惹かれるようになった。 彼のレイチェルへの想いが同情であっても。 彼がレイチェルではない人を愛していても。 そんな時、彼の想い人である隣国の伯爵令嬢フィオラの国で革命が起き、彼女は隣国の貴族として処刑されることが決まった。 そして、さまざまな思惑が交錯する中、レイチェルは一つの決断を下し・・・ *過去と未来が行ったり来たりしながら進行する書き方にチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんがご了承ください。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

緑の指を持つ娘

Moonshine
恋愛
べスは、田舎で粉ひきをして暮らしている地味な女の子、唯一の趣味は魔法使いの活躍する冒険の本を読むことくらいで、魔力もなければ学もない。ただ、ものすごく、植物を育てるのが得意な特技があった。 ある日幼馴染がべスの畑から勝手に薬草をもっていった事で、べスの静かな生活は大きくかわる・・ 俺様魔術師と、純朴な田舎の娘の異世界恋愛物語。 第1章は完結いたしました!第2章の温泉湯けむり編スタートです。 ちょっと投稿は不定期になりますが、頑張りますね。 疲れた人、癒されたい人、みんなべスの温室に遊びにきてください。温室で癒されたら、今度はベスの温泉に遊びにきてくださいね!作者と一緒に、みんなでいい温泉に入って癒されませんか?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。

kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。

処理中です...