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第2話 目を覚ますと……
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「真衣~。またそれ読んでるの?」
誰、私を呼ぶのは……。
「いいじゃないのよ。私、こういう悲劇の恋愛って好きなんだもん」
えっ、私の声?
頭の中に響く声に、私は混乱している。
「高校生になっても童話を読んでるなんて夢見がすぎるわよ。そんなだから、渡くんにも振り向いてもらえないんじゃないかな?」
「ちょっと、海斗は……そんなんじゃないから。幼馴染みだよ」
「またまたぁ~? あたし、知ってるんだからね。真衣がいっつも渡くんのことをじ~っと見ているのを」
「えっえっえっ?!」
ああ、これはあれだ。高波にさらわれる前にしていた、友人とのやり取りの記憶だわ。
こんなのを思い出してるなんて……。私、転生先でも死んじゃったのかな?
「まったく、他の子に取られないうちに、さっさと告っちゃえ」
なんだろう、腰に肘が当たっているような感じがする。
「もう、そんなんじゃないってば……」
私はなんだか恥ずかしそうに答えている。
ああ、なんだかすごく懐かしいな。
私が行方不明になっちゃって、今頃みんな悲しんでいるのかな。
ごめんね、みんな。転生前も転生後も、みんなを置いて私はどこかに旅立っちゃって……。
「頑張ってよね、あたし、応援してるんだから」
「もう、からかわないでよ……」
「ほらほら、さっさと行った行った」
その言葉と同時に、私は背中を押されたような気がした。
「ほら、きっと大丈夫だって。頑張ってよね、真衣」
友人の声が段々と遠くなっていく。
それと入れ替わるように、私の耳にはカチッ、カチッという音が聞こえてきた。
これは時計の針の音だろうか。
異世界に時計はなかったし、あるとすれば一体ここはどこなんだろう……。
時計の針の音がはっきりと聞こえてくるにつれ、私の意識は少しずつ曖昧になっていった。
―――
「う……ん……」
私はゆっくりと目を開ける。
「今のは、夢……?」
意識がぼーっとしていて、夢か現実かの区別がうまくできずにいる。
周りを確認しようとするも、私がいる場所には光が差し込んでいて、まともに目が開けられないくらいにまぶしさを感じている。
(まぶしい……。これだけ強い光ってことは、ここは海の中ではなさそうだわ)
意外にも冷静に私は状況を分析しようとしていた。
やがて、目が光に慣れていく。
そうしてはっきり見えてきた部屋は、どう見ても異世界の景色ではなかった。
(なに、この部屋……。まるでこれは、前世の世界を見ているような気分だわ)
私がこう思うのも当然だと思う。自分が寝かされているベッドはまずいいとして、壁にはまったアルミサッシの窓があったり、液晶テレビだって見える。
カチカチッと鳴っているのは、壁にかけられたアナログの時計の音だったみたい。秒針が心地よい音を刻みながら時を告げていっている。
「どういうこと……?」
あまりにも不可解な状況に、私は顔を手で押さえてしまう。
私は城の外へとお散歩に出かけて、突然発生した水流に巻き込まれたはず。
水流に飲み込まれた時点で意識を失ったみたいだけど、目を覚ましたら周囲にはどういうわけか転生前の世界っぽい光景が広がっている。
わけのわからないまま、私は自分の下半身に目を向ける。どう見てもお魚のまま。つまり、私は異世界転生をした上で、あの水流に巻き込まれて、元の世界に戻されたっていうことなのかしら。
「……頭痛い」
状況が分からな過ぎて、私はそのまま前のめりになってしまう。
しばらくすると、外から人の近づいてくる気配がする。気配を感じた私は、思わず逃げようとするも、魚な下半身のせいでまったく動けなかった。
「あたっ!」
慣れない陸上での動きに、ついバランスを崩してベッドの上から思いっきり落ちてしまう。
かなり痛くて、この状況が現実だということをはっきりと認識させられてしまった。
(うそっ……。私、転生した体のまま、元の世界に戻ってきたとでもいうの?)
痛みを感じたせいで、うつろに感じていたことが現実味を帯び始めてしまった。
だけど、どうして私はベッドの上で寝かされていたんだろうか。ここまで私を連れてきた誰かがいるっていうことだと思うんだけど、今の私は人の気配にパニックを起こしてしまっていて、それどころではなくなっていた。
(と、とにかく逃げなきゃ。もし前世の世界なら、人魚は絶対見世物にされちゃうんだから!)
私は魚な状態の下半身を引きずって、窓から脱出を試みようとする。
ところが、体がうまく動かないせいか、ベッドの上にすら戻ることができない。あたふたとしていると、部屋の入口のドアががちゃりと開いた。
「おや、目が覚めたのか」
男の人の声が聞こえてくる。
聞こえてきた声に、私は思わずぴたりと動きを止めてしまう。
だって、この声、すっごく聞いたことのある声なんだもの。
ゆっくりと振り返って、声の主を確認する。
「よかった。元気そうで安心したよ。とりあえずベッドの上に戻ってくれ」
私に声をかけてきたのは、とても懐かしい人物だった。
前世の私の幼馴染みで思い人だった人物、渡海斗その人だったのよ。
誰、私を呼ぶのは……。
「いいじゃないのよ。私、こういう悲劇の恋愛って好きなんだもん」
えっ、私の声?
頭の中に響く声に、私は混乱している。
「高校生になっても童話を読んでるなんて夢見がすぎるわよ。そんなだから、渡くんにも振り向いてもらえないんじゃないかな?」
「ちょっと、海斗は……そんなんじゃないから。幼馴染みだよ」
「またまたぁ~? あたし、知ってるんだからね。真衣がいっつも渡くんのことをじ~っと見ているのを」
「えっえっえっ?!」
ああ、これはあれだ。高波にさらわれる前にしていた、友人とのやり取りの記憶だわ。
こんなのを思い出してるなんて……。私、転生先でも死んじゃったのかな?
「まったく、他の子に取られないうちに、さっさと告っちゃえ」
なんだろう、腰に肘が当たっているような感じがする。
「もう、そんなんじゃないってば……」
私はなんだか恥ずかしそうに答えている。
ああ、なんだかすごく懐かしいな。
私が行方不明になっちゃって、今頃みんな悲しんでいるのかな。
ごめんね、みんな。転生前も転生後も、みんなを置いて私はどこかに旅立っちゃって……。
「頑張ってよね、あたし、応援してるんだから」
「もう、からかわないでよ……」
「ほらほら、さっさと行った行った」
その言葉と同時に、私は背中を押されたような気がした。
「ほら、きっと大丈夫だって。頑張ってよね、真衣」
友人の声が段々と遠くなっていく。
それと入れ替わるように、私の耳にはカチッ、カチッという音が聞こえてきた。
これは時計の針の音だろうか。
異世界に時計はなかったし、あるとすれば一体ここはどこなんだろう……。
時計の針の音がはっきりと聞こえてくるにつれ、私の意識は少しずつ曖昧になっていった。
―――
「う……ん……」
私はゆっくりと目を開ける。
「今のは、夢……?」
意識がぼーっとしていて、夢か現実かの区別がうまくできずにいる。
周りを確認しようとするも、私がいる場所には光が差し込んでいて、まともに目が開けられないくらいにまぶしさを感じている。
(まぶしい……。これだけ強い光ってことは、ここは海の中ではなさそうだわ)
意外にも冷静に私は状況を分析しようとしていた。
やがて、目が光に慣れていく。
そうしてはっきり見えてきた部屋は、どう見ても異世界の景色ではなかった。
(なに、この部屋……。まるでこれは、前世の世界を見ているような気分だわ)
私がこう思うのも当然だと思う。自分が寝かされているベッドはまずいいとして、壁にはまったアルミサッシの窓があったり、液晶テレビだって見える。
カチカチッと鳴っているのは、壁にかけられたアナログの時計の音だったみたい。秒針が心地よい音を刻みながら時を告げていっている。
「どういうこと……?」
あまりにも不可解な状況に、私は顔を手で押さえてしまう。
私は城の外へとお散歩に出かけて、突然発生した水流に巻き込まれたはず。
水流に飲み込まれた時点で意識を失ったみたいだけど、目を覚ましたら周囲にはどういうわけか転生前の世界っぽい光景が広がっている。
わけのわからないまま、私は自分の下半身に目を向ける。どう見てもお魚のまま。つまり、私は異世界転生をした上で、あの水流に巻き込まれて、元の世界に戻されたっていうことなのかしら。
「……頭痛い」
状況が分からな過ぎて、私はそのまま前のめりになってしまう。
しばらくすると、外から人の近づいてくる気配がする。気配を感じた私は、思わず逃げようとするも、魚な下半身のせいでまったく動けなかった。
「あたっ!」
慣れない陸上での動きに、ついバランスを崩してベッドの上から思いっきり落ちてしまう。
かなり痛くて、この状況が現実だということをはっきりと認識させられてしまった。
(うそっ……。私、転生した体のまま、元の世界に戻ってきたとでもいうの?)
痛みを感じたせいで、うつろに感じていたことが現実味を帯び始めてしまった。
だけど、どうして私はベッドの上で寝かされていたんだろうか。ここまで私を連れてきた誰かがいるっていうことだと思うんだけど、今の私は人の気配にパニックを起こしてしまっていて、それどころではなくなっていた。
(と、とにかく逃げなきゃ。もし前世の世界なら、人魚は絶対見世物にされちゃうんだから!)
私は魚な状態の下半身を引きずって、窓から脱出を試みようとする。
ところが、体がうまく動かないせいか、ベッドの上にすら戻ることができない。あたふたとしていると、部屋の入口のドアががちゃりと開いた。
「おや、目が覚めたのか」
男の人の声が聞こえてくる。
聞こえてきた声に、私は思わずぴたりと動きを止めてしまう。
だって、この声、すっごく聞いたことのある声なんだもの。
ゆっくりと振り返って、声の主を確認する。
「よかった。元気そうで安心したよ。とりあえずベッドの上に戻ってくれ」
私に声をかけてきたのは、とても懐かしい人物だった。
前世の私の幼馴染みで思い人だった人物、渡海斗その人だったのよ。
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