転生オートマタ

未羊

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Mission206

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 国境に到着してから数日をかけて、アリスたちはマテンロの王都に到着していた。
「なんとものどかな国ですね。建物が建物っていう感じではないですね」
 ギルソンもこんな感想を漏らしている。そのくらいマテンロの住居は独特なのである。
「パオでしたっけゲルでしたっけ、そんな名前だったような……」
 ジャスミンはジャスミンでこんなことを言っている。
 アリスが亡くなった時点では、娘である茉莉花はまだ元気だった。だというのに、どういうわけかジャスミンはその茉莉花の影響を受けているのだという。
 しかし、このような状況になった理由はまったく分かっていない。ただ、間違いなくジャスミンは、ありすの娘である茉莉花の人格と記憶を持っているのだ。
 そういう背景があり、先日はやりたい放題をする母親を叱っていたというわけだ。
 結果、今のアリスはかなりおとなしくしている。
「ねえ、ジャスミン」
「なんでしょうか、マスター」
「アリスさん、なんだか静かじゃないですかね。何か知っていますか?」
「さあ、なぜでございましょうかね」
 マリカはその夜の事を知らないので、かなり不思議そうな顔をしていた。
 事情を知っている周りの兵士たちは、マリカの質問を聞いて苦笑いを浮かべていた。
「ちょっと待ってよ。なんでみなさん笑ってらっしゃるんですか。もしかして、私だけ知らないってことですか?!」
 戸惑いを隠しきれないマリカは、大きな声で驚いていた。
「まあまあマリカ。今はそういうことはどうでもいい話ですよ。ほら、マテンロ国の国王陛下たちにご挨拶しませんと」
 ギルソンは笑いながらもマリカをなだめようとしている。
 確かに今はギルソンの言うとおりだ。もう一行はマテンロの王城の前にやって来ていた。
 城とはいっても平屋に豪華な民族的な家が建っているだけである。
 アリス以外は、この質素な感じの城にとても驚いている。
「さあ、マテンロ国の国王陛下と王妃殿下にお会い致しますよ。いつまでも大口を開けていないで移動しましょう」
 ただ一人一度やって来たことのあるアリスが、全員を誘導している。
 ギルソンたちはそれに従い、城の入口に向かう。
「これはこれは、アリス殿、お久しぶりでございます」
 アリスの印象は相当に強かったらしく、門番がしっかりと覚えていた。
「お久しぶりでございます」
「今日はまたずいぶんと大所帯ですね。どなたをお連れになったのですか」
 兵士はとても気になっているようだ。
「紹介してあげたいのは山々ですが、それは国王陛下方にご挨拶をしてからというわけでよろしいでしょうか」
「なら仕方ないですな。今からお伝えしてきますので、お待ちいただいてよろしいでしょうか」
「はい、よろしいですよ」
 アリスが承諾したために、兵士は城の中へと駆けていく。
 しばらくすると、にこやかな様子で戻ってきた。
「お待たせしました。それではお入り下さい」
「はい、失礼致します」
 アリスはぺこりと兵士に頭を下げると、ギルソンたちを連れて中へと入っていく。
 ひときわ大きく豪華な造りの建物がある。ここが国王たちのいる場所となる。
 当然ながら、ここでも一度止められる。
「アリス殿、よくおいで下さいました。到着を陛下にお知らせしますので、ここでもしばらくお待ち下さい」
 兵士は建物の入口に近付いて、中へと声を掛けている。
 少しばかりやり取りをすると、兵士が扉に手をかけてキリーたちを呼び寄せる。
「大変お待たせ致しました。アリス殿とその御一行様。くれぐれも陛下に失礼のないようにして下さいませ」
「ええ、承知しております。それでは参りましょうか、マイマスター」
 アリスたちはぞろぞろと中へと入っていく。
 見た目の割には中は意外と広い。
 国王たちを目の前にアリスが跪く。
 ギルソンたちはそれにならう様にして、全員がその場に跪いた。
「おお、アリスか。久しいな」
「ご機嫌麗しゅうございます陛下」
 唯一の知っている顔がアリスだったために、国王はアリスに対して挨拶をしている。アリスもしっかりと返している。
「それにしても、ずいぶんと大人数でやってこられたものだな。ひとまずこの者たちを紹介してもらえるかな?」
「承知致しました。では、マイマスターから順番に紹介して参ります」
 アリスはギルソンから順番に紹介していく。
 ギルソン、イスヴァンと紹介が進んでいくたびに、国王たちの表情が少しずつ歪んでいく。
 無理もない話だ。王子、皇子、公子、公女という、とんでもない顔ぶれがそろっていたのだから。
 よくもまあ、こんな要人たちが非公式ながらこんな国にやって来たと思う。
「……なるほど、全員がファルーダン王国の所有する学園の生徒というわけか。その休みを利用して、このマテンロを訪れたというわけか」
「その通りでございます」
 ギルソンは肯定して頷いている。
「そうか。せっかくの訪問感謝する。このように何もない国ではあるものの、精一杯もてなしをさせてもらおうではないか」
 国境に着いたところで先触れは出しておいたと思ったのだが、どうやらうまく伝わっていなかったようだ。
 マテンロ国での滞在は思わぬことから始まったのであった。
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