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第三章 悪魔、魔境を知る
118泊目 帰ってきた熱いやつ
交渉がまとまらなかった翌日。
アサーナたちはいつものように冒険者たちの食事を用意している。
そんな中、急に外が騒がしくなってきた。
「もう、朝から騒がしいわね。一体どうしたっていうのよ」
気になったアサーナは、ミリナやセミルたちに食事の準備を任せると、宿の外へと出てくる。
「おい、あれは一体何なんだ?」
冒険者が怯えながらアサーナに泣きついてくる。
そこでアサーナが見たのは、一つの人影だった。
「あら、ロック様じゃないの。戻られたんですね。って、何ですか、その塊は」
人影の正体を確認したアサーナが声をかけるが、同時に見えた物体に思わず顔を引きつらせてしまう。
なにせ見慣れないでかい塊が何個も置いてあったのだから。
「おう、久しぶりだな。いやぁ、森のところに行ったらこっちにいるって聞いたんでな。ただで帰ってくるのも悪いと思って手土産を持ってきたんだ」
「手土産?」
ロックが塊に手をかけながら、満足そうに笑いながら話している。
ただ、手土産というにはそこにあったものはとんでもでかいものだった。
じっとアサーナが目を凝らすと、この物体は見覚えのある光を放っている。
「それって、もしかしてミスリル?」
うろ覚えのためにおそるおそる確認をしてみている。
「おう、その通りだ」
そしたらば、実際にその通りだった。ロックが満面の笑みを浮かべて答えていたので、アサーナは思わず顔に手を当てて天を仰いでいる。
「アサーナちゃん、どうしたの?」
大きなしゃべり声が聞こえてきたのが気になったのか、ミリナが様子を見にやってくる。
「あれっ、ロック様ではないですか」
「おう、久しぶりだな」
ロックに気がついたミリナが声をかければ、ロックは右手を小さく上げて挨拶を返してきた。
それと同時に、ミリナもロックが持ってきた大きな塊に気が付く。
「ロック様、なんでか、このミスリルの塊は。それとその塊の大きさに気を取られて気付きにくいですが、オリハルコンとアダマンタイトもあるじゃないですか。どうしたんですか、こんなに」
「おう、よく分かったな」
珍しくミリナが厳しく指摘するも、ロックの反応は相変わらずマイペースだった。
ミスリルの塊の足元には六分の一くらいの大きさのオリハルコンがあるし、ロックがポケットからはアダマンタイトの黒い塊が出てくる。
「うわっ、本当にオリハルコンとアダマンタイトだわ。どこから持ってこられたんですか!」
驚愕の事実に、さすがのアサーナもドン引きするしかなかった。
だというのに、ロックは白い歯を見せながら嬉々として説明のターンに入っていた。
「さっき森のところに行ったって話したろ。その際に人間と取引しているという話を聞いたんでな。だったら、俺のところからも何か持っていってやろうと思ってな。俺の縄張りである山岳地帯では、こういった石がよく採れるんだよ」
「えっ、そうなの?!」
「ああ。これ以外にも採れるぞ。欲しいものがあったらいえ、いくらでも持ってきてやる」
「いやいやいや、さすがにそれは遠慮するわ。でも、なんでそんなに採れるのよ!」
ロックが笑いながら話していると、アサーナが思ったことを直にぶつけている。
「俺がボスを務める山岳地域だがな、実は俺よりも古い悪魔がいる。自分のことを岩の悪魔だとか名乗っているが、そのじいさんの話だと、瘴気が地面に影響を与えて変化させているらしい。どんな理屈かは、俺にはさっぱり分からんがな! がっはっはっはっ!」
大声でロックが笑っている。
どうやら、山岳地帯にはロックよりも古株の悪魔がいて、その悪魔が鉱石のことをよく知っているらしい。今回ロックが持ってきた鉱石も、その悪魔に頼んで分けてもらったそうだ。
全盛期に比べて力が衰えたため、山岳地帯にある洞窟の近くに隠居しているらしい。脳筋ぞろいの山岳地帯の悪魔の中では珍しく頭脳派なのだという。
「その洞窟付近にいるゴーレムどもは、そのじいさんの配下だそうだ。言っていることは難しくてよく分からんのだが、お前たちなら話ができるんじゃないかな、がっはっはっはっ!」
ロックが言うことだけに、どこか信じられないアサーナたちである。
だが、こうやってロックに頼まれて鉱石を渡してくれるあたり、話は通じそうだなとは感じていた。
話をひと通り終わらせると、邪魔になるからということでロックを中へと通す。
ロックが持ってきた大きな鉱石は、邪魔になるからとひとまずアサーナの収納空間へとしまわれた。
「おう、森はどこにいる」
「わしならここじゃよ。山岳の、朝からでかい声で落ち着いて本も読めんわい」
「おう、それは悪かったな!」
別館の方向から、実に嫌そうな顔をしながらフォスが現れる。
「まったく、希少鉱石を持ち込むとか、何を考えておるのじゃ」
「ロック様は、フォス様と違って、考えるよりも動いてしまうタイプですからね。やることがまったく理解できませんよ……」
「そうだよね」
アサーナもミリナも呆れている。
「あらあら~、面白うそうな~人だわ~」
「おう、なんか面白そうな悪魔がいるな。なんか欲しいものはあるか?」
「ミスリル~、いただけるかしら~」
「おう、いいぞ!」
全員がロックの相手に困っている中、ハナだけが平然と声をかけていた。
「大丈夫かしらね、これ」
「さあ、どうなんだろう……」
朝から大騒ぎである。
ただでさえまとまっていない商談があるというのに、更なる爆弾を投じられて、アサーナたちは不安しか感じられない朝を迎えたのだった。
アサーナたちはいつものように冒険者たちの食事を用意している。
そんな中、急に外が騒がしくなってきた。
「もう、朝から騒がしいわね。一体どうしたっていうのよ」
気になったアサーナは、ミリナやセミルたちに食事の準備を任せると、宿の外へと出てくる。
「おい、あれは一体何なんだ?」
冒険者が怯えながらアサーナに泣きついてくる。
そこでアサーナが見たのは、一つの人影だった。
「あら、ロック様じゃないの。戻られたんですね。って、何ですか、その塊は」
人影の正体を確認したアサーナが声をかけるが、同時に見えた物体に思わず顔を引きつらせてしまう。
なにせ見慣れないでかい塊が何個も置いてあったのだから。
「おう、久しぶりだな。いやぁ、森のところに行ったらこっちにいるって聞いたんでな。ただで帰ってくるのも悪いと思って手土産を持ってきたんだ」
「手土産?」
ロックが塊に手をかけながら、満足そうに笑いながら話している。
ただ、手土産というにはそこにあったものはとんでもでかいものだった。
じっとアサーナが目を凝らすと、この物体は見覚えのある光を放っている。
「それって、もしかしてミスリル?」
うろ覚えのためにおそるおそる確認をしてみている。
「おう、その通りだ」
そしたらば、実際にその通りだった。ロックが満面の笑みを浮かべて答えていたので、アサーナは思わず顔に手を当てて天を仰いでいる。
「アサーナちゃん、どうしたの?」
大きなしゃべり声が聞こえてきたのが気になったのか、ミリナが様子を見にやってくる。
「あれっ、ロック様ではないですか」
「おう、久しぶりだな」
ロックに気がついたミリナが声をかければ、ロックは右手を小さく上げて挨拶を返してきた。
それと同時に、ミリナもロックが持ってきた大きな塊に気が付く。
「ロック様、なんでか、このミスリルの塊は。それとその塊の大きさに気を取られて気付きにくいですが、オリハルコンとアダマンタイトもあるじゃないですか。どうしたんですか、こんなに」
「おう、よく分かったな」
珍しくミリナが厳しく指摘するも、ロックの反応は相変わらずマイペースだった。
ミスリルの塊の足元には六分の一くらいの大きさのオリハルコンがあるし、ロックがポケットからはアダマンタイトの黒い塊が出てくる。
「うわっ、本当にオリハルコンとアダマンタイトだわ。どこから持ってこられたんですか!」
驚愕の事実に、さすがのアサーナもドン引きするしかなかった。
だというのに、ロックは白い歯を見せながら嬉々として説明のターンに入っていた。
「さっき森のところに行ったって話したろ。その際に人間と取引しているという話を聞いたんでな。だったら、俺のところからも何か持っていってやろうと思ってな。俺の縄張りである山岳地帯では、こういった石がよく採れるんだよ」
「えっ、そうなの?!」
「ああ。これ以外にも採れるぞ。欲しいものがあったらいえ、いくらでも持ってきてやる」
「いやいやいや、さすがにそれは遠慮するわ。でも、なんでそんなに採れるのよ!」
ロックが笑いながら話していると、アサーナが思ったことを直にぶつけている。
「俺がボスを務める山岳地域だがな、実は俺よりも古い悪魔がいる。自分のことを岩の悪魔だとか名乗っているが、そのじいさんの話だと、瘴気が地面に影響を与えて変化させているらしい。どんな理屈かは、俺にはさっぱり分からんがな! がっはっはっはっ!」
大声でロックが笑っている。
どうやら、山岳地帯にはロックよりも古株の悪魔がいて、その悪魔が鉱石のことをよく知っているらしい。今回ロックが持ってきた鉱石も、その悪魔に頼んで分けてもらったそうだ。
全盛期に比べて力が衰えたため、山岳地帯にある洞窟の近くに隠居しているらしい。脳筋ぞろいの山岳地帯の悪魔の中では珍しく頭脳派なのだという。
「その洞窟付近にいるゴーレムどもは、そのじいさんの配下だそうだ。言っていることは難しくてよく分からんのだが、お前たちなら話ができるんじゃないかな、がっはっはっはっ!」
ロックが言うことだけに、どこか信じられないアサーナたちである。
だが、こうやってロックに頼まれて鉱石を渡してくれるあたり、話は通じそうだなとは感じていた。
話をひと通り終わらせると、邪魔になるからということでロックを中へと通す。
ロックが持ってきた大きな鉱石は、邪魔になるからとひとまずアサーナの収納空間へとしまわれた。
「おう、森はどこにいる」
「わしならここじゃよ。山岳の、朝からでかい声で落ち着いて本も読めんわい」
「おう、それは悪かったな!」
別館の方向から、実に嫌そうな顔をしながらフォスが現れる。
「まったく、希少鉱石を持ち込むとか、何を考えておるのじゃ」
「ロック様は、フォス様と違って、考えるよりも動いてしまうタイプですからね。やることがまったく理解できませんよ……」
「そうだよね」
アサーナもミリナも呆れている。
「あらあら~、面白うそうな~人だわ~」
「おう、なんか面白そうな悪魔がいるな。なんか欲しいものはあるか?」
「ミスリル~、いただけるかしら~」
「おう、いいぞ!」
全員がロックの相手に困っている中、ハナだけが平然と声をかけていた。
「大丈夫かしらね、これ」
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