彼は今日も私に嘘をつく

ヒカリと影

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愛情は消える

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なんで来たの?なんで今来たの?私はね、昨日屋上に来てほしかった。
急に震えてきた…この感情は、何?…怒り?悲しみ?それとも恐怖?
「なんで来たの」
「…見舞いに来た」
「…見舞い?なんで?こんな風にさせたのは、智也じゃないの」
「ごめん」
貴方が今までしてきたことは、裏切りだよ。そう言いたい。もう、言っちゃいそう。…でも、言ったら智也は悲しむのかな、とか思った私は、馬鹿なのかな。今まで散々悲しんできたのにね。

「愛梨ー!遅いけど大丈夫って…なんであんたがここにいるの」
夏波、なんかすごい言い方だったよ。私と智也に対しての言い方が全然違うよ。
「いや、見舞いに」
「見舞い?ふざけないでよ。今まで愛梨が、どれだけ辛い思いしてきたかわかる?どれだけ泣いてきたかわかる?」
「夏波…もういいよ」
「あんたにはわからないでしょうね、愛梨の気持ちなんて。毎日女が周りにいたもんね?」
「夏波っ」
「最初は無視、今は浮気?愛梨の気持ちを弄んでた訳?……あんたが今までしてきたこと、なんて言うかわかる?…裏切りだよ」
夏波が私の言いたいこと全部言ってくれた。
「ねぇ、昨日屋上に来てって言ったのは、別れようと思ったからだよ。もう、嫌なの。辛いんだよ」
「そういうことだから、帰って!」
「…お大事に、愛梨」


「夏波本当にありがとう。楽になった」
「ごめん、言い過ぎちゃった。」
「大丈夫だよ!私は嬉しいんだよー!こんなにも私のことを思ってくれる人がいてさ。」
「少しは役に立てた…?」
「そんなこと気にしなくていいの!嬉しかったよ、ありがとう。…あっ、そうだ!今日お母さんに夏波泊まるって言っとこ、夏波何食べたい?今日のお母さんは私病人だからなんでも買ってくれるかもよ?」
「じゃあ私愛梨のお母さん手作りのパエリアがいい!」
「えっ、また?前来た時もそうだったよね?」
「私愛梨のお母さんの手作りパエリア大好きなの!」
それはお母さん喜ぶわ。
 「じゃあ言っとくね。お母さん喜ぶと思うよ。私はおかゆだけどね。」
「ありがとう、そうだったね、まぁ、治ったらまた一緒にパエリア食べよう!」
「え、またパエリア?」
私達は笑った。
まるでさっきのことが無かったかのように。私も、そして夏波も、後悔はしない。


愛情?友情?
私にはもう、友情しか残っていない。 
名前に愛が入っていても、愛情というものは私から消えた。 
ごめん、お父さん、お母さん。        
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