夏凛の大冒険

変な夢

夏凛はその夜、夢を見た。
ただ、ひたすらに真っ白な世界を歩く。ずっと歩いていたら、扉があった。夏凛は開けようとするのだが、全然開かない。そんな夢。
（もう、出られないのかな…）

「…凛、夏凛！」
「…え？あ、おはよ」
「あぁ、おはよ、それよりお前涙出てるけどどうした？」
「え!？私泣いてる？」
そう言われて夏凛は目を拭った。雫が静かに頬を伝っていた。
「ほんとだ、何かね、変な夢を見ちゃったの」
「変な夢？どんなやつ」
「んー、ずーっと真っ白な世界を歩いてて、そしたら扉が見えてきたの。これを開けば出れるって思って開けようとするんだけど全く開かなくて…怖かったな」
「そっか、今夏凛は夢からちゃんと覚めてるし、大丈夫」
「ありがとう」
タクは夏凛が不安そうに見えたので、頭をポンポンと叩いた。
「お前にそんなブスな顔似合わない！」
「なんだとーっ！？」
「冗談だよ、元気で何よりですよ夏凛様」
「ふーん、まぁ過ぎたこと気にしてもしょうがないし、なんてったって私、器広いし？許してあげる。」
「ありがとうございます。
　夏凛の夢聞いて思い出したんだけど、俺も似たような夢見たことある気がするんだよな」
「なになに、どんな夢だったの？」
「いや、だから似たような夢って言ったけど」
「もう、細かいことは気にしないで！さ、説明してよ！」
「はいはい、俺も昔に真っ白な世界を歩いてて、扉があったのよ。そこまで一緒じゃん、そっからが夏凛と違うくて、扉開けようと思って開けてみたら、開いたんだよな。」
「えーっ!!開いたの!？私は開かなかったのに！？それちょっと酷くない？」
「それとそれは関係ないだろ、夢なんだから」
「すみませんねぇ。それで？開いてどうなったの？そこが肝心でしょ」
「それはまた今度な、時が来たら話すって」
「なによーっ！タクのケチっ!!」
「おい！自分でも気にしてることさらっと言うなよ！」
「あっ気にしてたんだ」
「そうだよ、また今度話すからさ、な？」
「わかった。」
そう言ってタクはどこか少し悲しそうに微笑んだ。
でも、特に私は気にしていなかった。