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第2話
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意識が覚めていく。
死に損なったんだ。まともに死ぬ事も出来ないとは、これは確かに出来損ないだ。
私はベッドに寝かされていたようだ。初めてのベッド。
「どうやら元気……と、言っていいかは判断に悩むけれど。とりあえず、無事でよかった」
声が聞こえる。私の無事を確かめる声。そこに不快さを滲ませない声は初めて聞いた。
そちらへ振り向くと、そこにいたのは男性だった。
清潔な人。それでいて嫌らしさが無い人だった。これも初めて見る人種だ。
つやのある青い髪の男性。私に顔の良し悪しは分からないけれど、今まで出会った男性より見栄えが良く見える気がする。
見える? どういう事?
私は右目を凝らした。……見える。もう見えなくなったはずなのに。何故?
困惑する私に、その男性が声を掛けてくる。
「不思議かな? その目は傷ついた体と共に治療させてもらったよ。それとも余計なお世話だったかな?」
そう言われても、どうだろう? 正直なところ感謝すればいいのかは分からない。死を受け入れていたから、治った体を素直に喜ぶ事が出来なかった。
それでも一つ言える事があった。
「支払えるものがない。悪いけど、あなたのどのような期待にも応えられないと思う」
そう、お金が無い。治療にお金がいる。学の無い私でも分かる事だ。
それを聞いて、何が可笑しかったのか。男性は突然笑い出した。
「あははっ、面白いね君。ただ、期待に応えられないという事は無い。既に無くなっているんだ。その目の治療法は開発中の魔法でね? 人体での実験をまだ行っていなかった。そのデータを君は提供してくれたんだよ。そして実験は成功、君はこれからの様々な人々を救う立役者となったわけだ。金にも勝る価値がある。そう、今の君はね」
なるほど、実験の役に立ったのか。褒められたのは初めてだけど、言いようのない程胸がスゥっとした。
「そう……。こんな体でも役立ててくれてありがとう。じゃあ私行くわ。婚約しなければならないから」
「あの道の先にいた貴族は先ほど息を引き取ったよ。嵐の影響か、容体が悪化したみたいでね」
困った。行くところが無くなってしまった。両親は私が嫁ぐと同時に完全に籍を剥奪してしまったから屋敷にも戻れない。
……いや、どうせ死ぬ気になったのだからそこら辺で野垂れ死ねばいいのか。
「教えてくれてありがとう。じゃあ私はこれで」
「どこか一目のつかない所で命を絶つつもりかい? もし、君に罪悪感を覚える念があるなら、ここに住まないか? 今出て行かれると僕の寝覚めが悪いんだ」
罪悪感。それは私が生まれて来た事全てだ。生まれた事が罪だと言われ、生かしてもらってる事に感謝しろと言われてきた。そんな私が生まれて来なければと後悔しながら死ぬのは、確かに罪悪感を覚えずにはいられなかった。
「それに、経過観察をしなければ十分なデータは取れない。君がデータを提供するなら、その報酬に部屋と服と食事を与えよう。悪くないと思うけど、どう?」
この人は一体何を言っているんだろう? そんな疑問は浮かぶけれど、何故か断る気にはならなかった。
「……わかったわ。お願い」
こうして、私の新しい生活が始まった。
死に損なったんだ。まともに死ぬ事も出来ないとは、これは確かに出来損ないだ。
私はベッドに寝かされていたようだ。初めてのベッド。
「どうやら元気……と、言っていいかは判断に悩むけれど。とりあえず、無事でよかった」
声が聞こえる。私の無事を確かめる声。そこに不快さを滲ませない声は初めて聞いた。
そちらへ振り向くと、そこにいたのは男性だった。
清潔な人。それでいて嫌らしさが無い人だった。これも初めて見る人種だ。
つやのある青い髪の男性。私に顔の良し悪しは分からないけれど、今まで出会った男性より見栄えが良く見える気がする。
見える? どういう事?
私は右目を凝らした。……見える。もう見えなくなったはずなのに。何故?
困惑する私に、その男性が声を掛けてくる。
「不思議かな? その目は傷ついた体と共に治療させてもらったよ。それとも余計なお世話だったかな?」
そう言われても、どうだろう? 正直なところ感謝すればいいのかは分からない。死を受け入れていたから、治った体を素直に喜ぶ事が出来なかった。
それでも一つ言える事があった。
「支払えるものがない。悪いけど、あなたのどのような期待にも応えられないと思う」
そう、お金が無い。治療にお金がいる。学の無い私でも分かる事だ。
それを聞いて、何が可笑しかったのか。男性は突然笑い出した。
「あははっ、面白いね君。ただ、期待に応えられないという事は無い。既に無くなっているんだ。その目の治療法は開発中の魔法でね? 人体での実験をまだ行っていなかった。そのデータを君は提供してくれたんだよ。そして実験は成功、君はこれからの様々な人々を救う立役者となったわけだ。金にも勝る価値がある。そう、今の君はね」
なるほど、実験の役に立ったのか。褒められたのは初めてだけど、言いようのない程胸がスゥっとした。
「そう……。こんな体でも役立ててくれてありがとう。じゃあ私行くわ。婚約しなければならないから」
「あの道の先にいた貴族は先ほど息を引き取ったよ。嵐の影響か、容体が悪化したみたいでね」
困った。行くところが無くなってしまった。両親は私が嫁ぐと同時に完全に籍を剥奪してしまったから屋敷にも戻れない。
……いや、どうせ死ぬ気になったのだからそこら辺で野垂れ死ねばいいのか。
「教えてくれてありがとう。じゃあ私はこれで」
「どこか一目のつかない所で命を絶つつもりかい? もし、君に罪悪感を覚える念があるなら、ここに住まないか? 今出て行かれると僕の寝覚めが悪いんだ」
罪悪感。それは私が生まれて来た事全てだ。生まれた事が罪だと言われ、生かしてもらってる事に感謝しろと言われてきた。そんな私が生まれて来なければと後悔しながら死ぬのは、確かに罪悪感を覚えずにはいられなかった。
「それに、経過観察をしなければ十分なデータは取れない。君がデータを提供するなら、その報酬に部屋と服と食事を与えよう。悪くないと思うけど、どう?」
この人は一体何を言っているんだろう? そんな疑問は浮かぶけれど、何故か断る気にはならなかった。
「……わかったわ。お願い」
こうして、私の新しい生活が始まった。
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