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第2話 決意

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 彼とはお互いの父同士が決めた仲。しかしわたくしの捧げた愛は本物であったと自負しておりました。

 それが何故? こんな事になるなどと……。

 あのような性格では無かったはずでしたのに。もしや、あれが本性?

 ではそれに気づかずに愛だなんだと叫んでいたわたくしは……。

「ただのおマヌケさんでしたのね……。それでも、それでもわたくしは――」

「ん? これはミランダ君じゃないか。何故そのような涙に濡れているのか? いや、どうでもいいな」

「ぁ……」

 目の周りを腫らしたわたくしに掛けられる声、その主はわたくしの目元に優しくハンカチを当てて下さいました。

「あ、ありがとうございますシュロー王子様」

「気になどする必要は無いさミランダ君。涙を流すご婦人にする行動とは、いつの時代も限られている。ただそれを実行したに過ぎないのだらか」

 シュロー王子。

 わたくしの元婚約者となってしまわれたオラン王子の兄にあたる人物。

 オラン様とお付き合いが始まって以来、何かと優しくして頂きました。

 しかし、彼とお別れの関係になってしまった以上、もうシュロー王子様とも私的に顔を合わせる事が出来そうにありませんの。

「せめて、このハンカチは丁寧にお洗濯してお返しします」

「何がせめてなのか……。あの愚弟の言い分を気に病む事は無い、と言いたいが、君の性格では難しいだろうな」

「ご、御存じでしたの? これはお恥ずかしい……」

「恥ずかしいのはあんな大声で身内の恥をさらした愚弟だ。使用人たちにも聞かれて、兄として頭が痛い思いだよ。そういう意味では君とおそろいだな」

 オラン王子に悩まされ、心を痛めている同士。という意味でしょうか?

「お、御戯れを。わたくしの頭とシュロー様のお頭では比べるべくも無い高貴な違いがございましてですの」

「そう自分を卑下する事も無いと思うが……。今日はゆっくり湯にでも浸かって、そして体を温めてから長めの睡眠をとるといい」

「過分なアドバイス、感謝致しますわ」

「うむ。それでは失礼するよ」

 シュロー王子様はわたくしの元から去ろうとしますが、わたくしはその背中に声をかけました。

「あの! もし宜しければなのですけど……」

「ん? 何かな?」

 ああ! ついに言ってしまいましたわ……。

 でもこのオラン第三王子の私室から逃げ出してきた今のわたくしには、頼れる方はシュロー王子様しかおりませんもの。


 背水の陣ッですわ……!


「わ、わたくしに――あのお二人を見返す術を教えては下さいませんですの?!」
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