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「へくしっ」
「あら?大丈夫?朝は寒いから、もっと上着を着たら?」
くしゃみをした椿にエマは自分の上着を着せてあげた。
日が昇り出しても、まだ肌寒さが残る中2人は馬屋へ向かう。
たわいもない話をしながら歩いていたが、
チラチラとエマの方を見る椿に笑いを堪え切れなくなったエマがケラケラと笑い出した。
「アッハッハ!もうダメ!ふふっ、そんなに名残惜しいの?ふはっ」
「!!!そんな事ないもん!」
椿はふくれっ面をしながらもチラリとエマを見ていた。
施設を出た時に、2人は変装を解いたのだった。エマは男性から女性の格好に戻ったが、椿が何度も男性の姿を重ねて見ている様な気がして笑ってしまったのだ。
(違うのよ!決して男性の方がいいとか、そういう事じゃないんだから……)
自分に言い聞かせながらもやはり、エマに目がいってしまう。
美人なエマ。先程は凛々しくカッコ良かったけど…どちらも素敵。
そんな事を考えながら歩いていたのだ。
馬屋が見えてきた、気を紛す為に小走りになってしまうがクツクツと笑うエマにはお見通しの様だ。
「あっ!馬くん、元気にしてたかな?ご飯はいっぱい食べた?」
椿は黒い馬に近づくと、馬の方からスリスリとしてきた。
「ん?馬くん?どうかしたの?」
急に動きが止まり、何かに怯えている様な素振りをしている。よく見ると他の馬達もプルプル震えていた。不思議に思い、エマに聞こうとしたら、下を指差していた。
〔私が居る為、怯えているのでしょう。〕
そう言うウルを見ると、確かに馬達の目線はウルの方を向いていた。
スタスタと黒い馬の方に歩いて行くと、ウルは威厳のある声で話しかけていた。
〔我の主人、つばき様の足となり今後も忠誠を誓うか?〕
ヒヒーンッ
〔ならば、我の配下に成るべく儀を行う。この命尽きるまで 我と共に生きよ〕
ウルが馬と何やら話をしていたと思ったら、馬の額に白い椿の花が浮き上がった。ウルの花と似ているが少し小さい。
「ウル?何をしたの?」
〔はい、私の配下に致しました。これで、裏切り逃げる事は出来ませんのでご安心下さい。〕
尻尾をパタパタとさせながら褒めて!と言わんばかりの眼差しを向けられ、椿は苦笑した。
まさか、ここまでするのか?と内心思ったが、口にはしなかった。
「馬代を払うから、その間に必要なのがあれば買っといたら?隣がお店になってるわよ~門も時間にならないと開かないから、慌てなくても良さそうね」
エマに言われて、ひとまず馬には待っていてもらいウルとお店に向かう。
すぐ隣にあるお店は、コンビニの様で色々な物が売っていた。
特に買う物は決めていなかったがブラブラと中を見て回る。
「ん?」
商品を見ていたら、不思議な形の箱が置いてあり何かと手に取って見る。
四角い箱に丸い球体が付いている。赤と青のマーブル模様の球体は見ていると綺麗な色をしていた。
「綺麗…何に使うんだろ?」
商品名は“ラバーズ”と書いてあるだけで、使い方が書いていなかった。
「ラバーズ?恋人って事?何だろ…」
値段も1500円と少し高めだったが、球体が綺麗だったので買う事に決めた。
他には特に買う物が無かったので、代金を支払うと馬の所へ戻る。
「あっ!エマ~綺麗なのが売ってたよーでも、何に使うか分からないんだよね?」
そう言って、先に戻っていたエマに買った物を見せたらギョッとした顔で慌てて鞄にしまう様に言い、周りに誰もいないか見渡した。
「えっ?どうかしたの?」訳も分からずキョトンと話す椿にエマは、深いため息をしながら耳元で囁いた。
「つばきちゃん、鑑定で見たらわかるでしょ?」
あっ!その手があったか。と鞄から取り出し「鑑定」をしてみる。
「・・・・・・・・・・」
スッと、無言で鞄にしまうと何も無かったかのように馬車に乗り込む。
「ふはっ!ちゃんと確認してから買いなさいよ~それとも、私とやーームグッ」
「だめ!違うの!!本当に知らなかったの!もう忘れて!!!」
真っ赤にしながらエマの口を押さえ、恥ずかしそうにモジモジしている。そんな椿が可愛くて抱きつきたいのを我慢し、頭をポンとする。
「冗談よ、さっ行きましょう。そろそろ時間だから、門が開くわよ」
ムーっとふくれっ面をしながらも自分が分からず買ってしまったのが悪い。顔の火照りが収まるまで外を眺めていた。
門には既に人が並んでいた。
その列に並んでいると、先頭の方で何やら騒がしい。
不思議に思い、顔を出すと誰かが門番と言い合いをしているようだ。
「だから!そんな人間は通していないって話しているだろ!」
「嘘よ!!街中に見当たらないのよ!絶対国を出たんだわ!!」
「あのなー、門はまだ開いていないんだぜ?どうやって出れるんだ?」
「それは…あなたが見ていないだけかも知れないでしょ!いーから名簿を見せなさい!!」
「ダメだ。門番以外に見せれるわけが無いだろ!?」
「貸しなさいよ!!!」
聞こえてきた声に椿は嫌な予感がした。無意識にぎゅうっとエマの腕にしがみついてしまう。
エマも声に気付いたようで、やれやれといった顔をしている。
サラが門番と言い合っていたのだ。
不安な顔でエマを見ると「大丈夫よ。心配いらないわ」と頭を撫でてくれた。
大丈夫。今は変装を解いているから見つからない。そう言うエマだが、椿は不安が頭から離れないでいた。
【 鑑定 : ラバーズ。箱の中に2センチ程の赤と青の球体が10個入っている。これを飲む事により媚薬の2倍・効果が出る。2人で盛り上がりたい時の必須アイテム。】
「あら?大丈夫?朝は寒いから、もっと上着を着たら?」
くしゃみをした椿にエマは自分の上着を着せてあげた。
日が昇り出しても、まだ肌寒さが残る中2人は馬屋へ向かう。
たわいもない話をしながら歩いていたが、
チラチラとエマの方を見る椿に笑いを堪え切れなくなったエマがケラケラと笑い出した。
「アッハッハ!もうダメ!ふふっ、そんなに名残惜しいの?ふはっ」
「!!!そんな事ないもん!」
椿はふくれっ面をしながらもチラリとエマを見ていた。
施設を出た時に、2人は変装を解いたのだった。エマは男性から女性の格好に戻ったが、椿が何度も男性の姿を重ねて見ている様な気がして笑ってしまったのだ。
(違うのよ!決して男性の方がいいとか、そういう事じゃないんだから……)
自分に言い聞かせながらもやはり、エマに目がいってしまう。
美人なエマ。先程は凛々しくカッコ良かったけど…どちらも素敵。
そんな事を考えながら歩いていたのだ。
馬屋が見えてきた、気を紛す為に小走りになってしまうがクツクツと笑うエマにはお見通しの様だ。
「あっ!馬くん、元気にしてたかな?ご飯はいっぱい食べた?」
椿は黒い馬に近づくと、馬の方からスリスリとしてきた。
「ん?馬くん?どうかしたの?」
急に動きが止まり、何かに怯えている様な素振りをしている。よく見ると他の馬達もプルプル震えていた。不思議に思い、エマに聞こうとしたら、下を指差していた。
〔私が居る為、怯えているのでしょう。〕
そう言うウルを見ると、確かに馬達の目線はウルの方を向いていた。
スタスタと黒い馬の方に歩いて行くと、ウルは威厳のある声で話しかけていた。
〔我の主人、つばき様の足となり今後も忠誠を誓うか?〕
ヒヒーンッ
〔ならば、我の配下に成るべく儀を行う。この命尽きるまで 我と共に生きよ〕
ウルが馬と何やら話をしていたと思ったら、馬の額に白い椿の花が浮き上がった。ウルの花と似ているが少し小さい。
「ウル?何をしたの?」
〔はい、私の配下に致しました。これで、裏切り逃げる事は出来ませんのでご安心下さい。〕
尻尾をパタパタとさせながら褒めて!と言わんばかりの眼差しを向けられ、椿は苦笑した。
まさか、ここまでするのか?と内心思ったが、口にはしなかった。
「馬代を払うから、その間に必要なのがあれば買っといたら?隣がお店になってるわよ~門も時間にならないと開かないから、慌てなくても良さそうね」
エマに言われて、ひとまず馬には待っていてもらいウルとお店に向かう。
すぐ隣にあるお店は、コンビニの様で色々な物が売っていた。
特に買う物は決めていなかったがブラブラと中を見て回る。
「ん?」
商品を見ていたら、不思議な形の箱が置いてあり何かと手に取って見る。
四角い箱に丸い球体が付いている。赤と青のマーブル模様の球体は見ていると綺麗な色をしていた。
「綺麗…何に使うんだろ?」
商品名は“ラバーズ”と書いてあるだけで、使い方が書いていなかった。
「ラバーズ?恋人って事?何だろ…」
値段も1500円と少し高めだったが、球体が綺麗だったので買う事に決めた。
他には特に買う物が無かったので、代金を支払うと馬の所へ戻る。
「あっ!エマ~綺麗なのが売ってたよーでも、何に使うか分からないんだよね?」
そう言って、先に戻っていたエマに買った物を見せたらギョッとした顔で慌てて鞄にしまう様に言い、周りに誰もいないか見渡した。
「えっ?どうかしたの?」訳も分からずキョトンと話す椿にエマは、深いため息をしながら耳元で囁いた。
「つばきちゃん、鑑定で見たらわかるでしょ?」
あっ!その手があったか。と鞄から取り出し「鑑定」をしてみる。
「・・・・・・・・・・」
スッと、無言で鞄にしまうと何も無かったかのように馬車に乗り込む。
「ふはっ!ちゃんと確認してから買いなさいよ~それとも、私とやーームグッ」
「だめ!違うの!!本当に知らなかったの!もう忘れて!!!」
真っ赤にしながらエマの口を押さえ、恥ずかしそうにモジモジしている。そんな椿が可愛くて抱きつきたいのを我慢し、頭をポンとする。
「冗談よ、さっ行きましょう。そろそろ時間だから、門が開くわよ」
ムーっとふくれっ面をしながらも自分が分からず買ってしまったのが悪い。顔の火照りが収まるまで外を眺めていた。
門には既に人が並んでいた。
その列に並んでいると、先頭の方で何やら騒がしい。
不思議に思い、顔を出すと誰かが門番と言い合いをしているようだ。
「だから!そんな人間は通していないって話しているだろ!」
「嘘よ!!街中に見当たらないのよ!絶対国を出たんだわ!!」
「あのなー、門はまだ開いていないんだぜ?どうやって出れるんだ?」
「それは…あなたが見ていないだけかも知れないでしょ!いーから名簿を見せなさい!!」
「ダメだ。門番以外に見せれるわけが無いだろ!?」
「貸しなさいよ!!!」
聞こえてきた声に椿は嫌な予感がした。無意識にぎゅうっとエマの腕にしがみついてしまう。
エマも声に気付いたようで、やれやれといった顔をしている。
サラが門番と言い合っていたのだ。
不安な顔でエマを見ると「大丈夫よ。心配いらないわ」と頭を撫でてくれた。
大丈夫。今は変装を解いているから見つからない。そう言うエマだが、椿は不安が頭から離れないでいた。
【 鑑定 : ラバーズ。箱の中に2センチ程の赤と青の球体が10個入っている。これを飲む事により媚薬の2倍・効果が出る。2人で盛り上がりたい時の必須アイテム。】
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