牢獄の天使は愛を知らない

momo6

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第一章

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 私が産まれた場所は、硬い石畳の部屋だった。
清潔とは言えない場所で、母は苦痛に耐えながら私を産んだ。
母は、私を可愛がる事はせず泣いた時だけ抱き上げて、母乳の変わりにヤルー(牛に似た生き物)の乳を飲ませてくれたと面倒を見てくれているサリーお姉さんに聞いた。
 私が3歳ぐらいの時に客から貰った病気で母は隔離され1人寂しく亡くなったと聞かされたのは、私が4歳の時。
サリーお姉さんは娼婦で、栗色のフワフワした髪が腰まであり可愛らしい人だ。身の回りの事や食事など私の世話をしてくれている。

 娼婦の中でも1番人気だった母は、「金持ちや名のある方達の相手が大半で私に構う暇が無かったからだよ。」とマリンお姉さんが話してくれたが、他にも同じ境遇の子供達がいたので、寂しいと思う事は無かった。世話をしてくれる他の親達がいたしお姉さん達が優しくしてくれたからだ。
 中には意地悪な子もいたが、特に相手にせずお姉さん達のお手伝いをしていたら周りから『笑わないつまらない子』と言われる様になった。別に気にしていない。だって本当の事だから。
今は、サリーお姉さんに面倒を見て貰っている私だが今後はどこに住むか決めなくてはならないと聞かされた時にこの国は、五つの町に分かれているのだと教えてくれた。

1.居住区(家庭を持ったり、住み込みじゃない者達。)
2.娯楽街(遊園地や温泉宿がある。住み込みになる。)
3.遊郭街(性的目的の建物がある。襲われ防止で住み込みは出来ないが泊まりは出来る。)
4.飲食街(食べ物・名産品・ハンドメイドなど売っている。住み込み可)
5.闘技場(奴隷同士が戦う。稀に客が乱入出来る日もある。住み込み可)


 奴隷と言っても生活がある。自分で稼いで生活するのだ。 
 私達、奴隷の服は白色のシンプルなデザインで男女共有出来る洋服が支給される。仕事に合わせて制服があるが自分でカスタマイズしても大丈夫。サリーお姉さんも洋服に、レースや刺繍をしている。
娼婦は、上客だと店に払う金額とは別にお金を個別に貰えると聞いた。だから、女性の多くは娼婦になるんだと…後は飲食街で働くのだとも聞き、女性では滅多にいないが闘技場にいく女性だと勝ち進めば、ある程度の保障があると…

奴隷としての印を手の甲に押されると生涯、奴隷として扱われる。買われてこの国から出ても印が消える事は無いので自由になっても真っ当な仕事が出来ないとサリーお姉さんが教えてくれた。「だから、私は娼婦として今の地位を安定させてるの」サリーお姉さんの悲しい顔は忘れられない。


 成長するに連れ、違和感を覚えたのは…私が5歳の誕生日を迎える頃だった。
 それは、目の前の景色と頭の中に浮かぶ背景が重なりボヤける時がある。お姉さん達に話したら頭を優しく撫でてくれた。
それがなんなのか分からなかった。憐んでいたと知ったのはもう少し先の話。
日に日に鮮明に見えてくる景色が怖く、自分がどこにいるのか分からなくなった。ある日熱を出し自分が誰なのかを思い出した。ーーー28歳。
仕事に向かう途中、電車の事故に巻き込まれて…それからの記憶が無い。私は、その時に死んだんだろうか?だとしたら、ここは死後の世界?異世界転生とよく友達が話していたけどーーー聞いていた話と違う。
神様なんて会った記憶が無いし。魔法やチートが転生すると付くと聞いていたけど、今の私にあるのか分からない。だって、魔法があればこの状況から抜け出せるのに、誰も使ってない…一度、サリーお姉さんに魔法があるのか聞いたら衝撃な言葉が返って来た。

 「奴隷は魔法が使えないよ。封じ込められてるからね。この国自体に魔法が使えない様になってるから、ここから解放されたら使えるようになるけど、生活魔法ぐらいだよ?難しい魔法は賢者ぐらいにならないと私達には無理な話よ~」
 何でも、奴隷が逃げ出したり・拐われたりしない様にこの国に入ってきた者は全て、魔法が封じ込められるみたいだ。

魔法が使えるなら、一度は使ってみたいけどね。そう思ったのは内緒だ。
 なんでそう思うかは、ここに住んでいる以上無理な事を言ったら罰が与えられる。
前に「体調が悪いから休みたい」と言った男の人がいたが、管理者が鞭で叩いているのを見た事がある。謝っても鞭が止まる事は無くーー男の人は、そのままどこかへ連れて行かれ戻って来なかった。

ここは苦痛しか無い。地獄。異世界転生なら、もっとマシな所が良かった…産まれた瞬間に奴隷で、親の愛も知らないで育ったのだ。前世の記憶が無ければ心が死んでいる。いや、既に死んでいるのと同じだ。
5歳になってからは、毎日朝から夜まで小さい体で井戸から水を汲み、食材を貰いに行き籠を背負い食事の準備をして内職をする。
休めるのは鐘が5回なった時から日が出る時まで。鐘が5回鳴るのが合図だ。
 体を洗えるのは1週間に一度の憩いの日だけ。
それまで、タオルで体を拭くのみ。暑い日は匂いが漂い気分が悪くなる。

このまま夢だったらと、何度思った事か。


 息苦しくて目覚めた朝。外はまだ薄暗い。
ボロボロの屋根から砂埃が舞っているのが見えた。
ツンと鼻を刺す様な酷い匂いを我慢して水瓶で喉を潤す。
濁った水を我慢して飲むがゴホっとむせてしまう。

 着替えなど無く。寝たままの姿でゴーンと朝を知らせる鐘の方へ歩き出す。
辺りはまだ薄暗い。裸足で歩くと小さな破片を踏んだのか鈍い痛みと共に赤い血が滲む。

周りには、同じぐらいの子供と大人達がのっそりと同時進行へと歩いていく。

広場に着くと既に人集りで埋まっていた。
押しつぶされないように中心には行かず、外側へ避難する。
人が集まるとプーンと臭いが漂い思わず鼻を摘んでしまう。
毎日の事だが、匂いになれそうにない。

早く朝の挨拶が終わらないか、顔を歪めながら耐えているとーーーようやく、やって来たのか集落のリーダーが挨拶を始める声が聞こえて来た。

「おはよう!諸君!怪我の無い1日をノウボア様に感謝しながら働くのだ!!ノルマを達成した者は、今日の仕事は終了してよし!ノウボア様の為に働け!!!」
広場に行き渡る大声で話し終えたリーダーは、そのまま出勤のチェックを始めた。
順番に(名前の変わり)番号と顔を確認しながら、それぞれの仕事場に向かう。

 私の順番が来たのは日が昇り明るくなった頃。
「142番!」
スッと前に出て行く、リーダーは顔を確認し書類に記入していた。
「よし、行っていいぞーーーちょっと、待て。」
怪訝な顔で呼び止められ、ビクリと動きを止めた。

「足から血が出ているなーーーこれで大丈夫だ。気をつけて歩けよ。次!143番!」
 リーダーから薬を塗ってもらい、お姉さん達以外から初めて優しくされて、戸惑ってしまった。
塗り薬をされ、包帯で巻かれた足を見ながら今日も水を汲みに行く。
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