【転生先が四天王の中でも最弱!の息子とか聞いてない】ハズレ転生先かと思いきや世界で唯一の氷魔法使いだった俺・・・いっちょ頑張ってみますか

他仲 波瑠都

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第二章

王女の権力

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 紆余曲折あったが無事に?入学式並びクラス分け試験を凌いだ。

 俺は試験をやってないけど、ヘルメース先生の口添えで免除となったのだ。でもその代償は大きい。俺は確実に他の生徒からの反感を買っている。

 自分たちは頑張って試験に取り組んだのに、なんであいつは免除なんだ!あいつは四英傑の足でまといだろ!

 とヘルメース先生の手前、口には出さないが彼らの目はそう訴えていた。

 俺だって逆の立場なら彼らと同じ感想を抱くだろう。

 でも関係ねぇよな。今の俺は逆の立場じゃないし。

 そんな針のむしろ状態な中で、俺は逃げるように試験会場を去った。

 まあ、兎にも角にも試験は終わった。後はこれから三年間の下宿予定先に帰るだけなんだけど・・・シャーレットからの「着いてこい」の一言。

 俺の意見は無視で半ば強制的に連れられ、現在彼女の後ろを歩いている最中である。

 そしてなぜかフレイとアテーネも着いてきた。

 アテーネはまぁ、元から一緒の下宿先で暮らしてたし今後もその予定だからいいか。

 しばらく歩いていると、先を行くシャーレットが足を止めた。

「それにしても、マルス。あなた入学後は大変そうね。心の底からあなたの身が心配だわ」

 とこれっぽっちも心配してない声のトーンで言うシャーレット。

「マルスくん、安心してくださいね。難癖つけてくる輩はわたくしが成敗します!」

 とやや過剰気味に俺の身を案ずるフレイ。

 彼女たちはとにかく極端だ。もう少しバランスの良い性格になれないのか?

「ねぇ、シャーレット。結局どこに向かってんの?」

「言ってなかったわね。向かってるのはあなたの下宿先よ」

「はい?」

 素っ頓狂な声をあげる俺に構わずシャーレットは続ける。

「四英傑の跡取りのあなたを一般の生徒と同じ場所に下宿させるわけないでしょ?安心なさい、マルスのことを邪険に扱う人たちじゃないわ。あたしが保証する」

「いや、勝手に・・・第一、俺はもう予定の下宿先と契約してるし、無理でしょ?」

「あたしは王女よ。あたしの前に契約なんてもんは、無意味だと思いなさい」

 王様、あなたの娘は間違った方向に育ってますよ。

「横暴だ!権力の暴力だ!」

「文句あんの?」

 ギロリと睨まれ情けなくも縮こまった俺。蛇に睨まれた蛙とはまさにこのこと。

「わたしはどうしたらいいのですか?マルス様と同じ下宿先の予定だったんですけど」

 アテーネが不安そうに尋ねる。

「心配しなくてもいいわ、あなたには超高級宿をあたしの名義で契約してあるから」

「わぁー!ありがとうございますシャーレット王女!・・・ぷぷっ、ではマルス様。今日までお世話になりました」

 数秒前の不安げな表情はどこへやら、勝ち誇った笑みで俺を見るアテーネ。

 このクソ元女神にどうにか一矢報いてやりたい。 

 脳をフルスロットルで思考を巡らせる。

 その結果、俺は導き出したのだ。

 この女を陥れる素晴らしい策を。

「でもなぁ・・・俺はもうアテーネなしじゃ生きられない体になっちゃったし・・・」

 含みを持たせた言い方。俺はちらっと横目でアテーネを見ると、彼女はあからさまに動揺していた。

「ち、ちょっと!マルス様、その言い方では語弊が生じて────痛い!」

 鈍い音が響いた。その音に遅れて頭を抑えるアテーネ。

「あら、頭に虫がとまってたのよ。許しなさい」

 うん、誰か彼女に謝罪の仕方を教えてあげてくれ。

 いや、やっぱり教えなくていいや。

「もう、気をつけて────ぎゃっ!」

「すみません。背中に虫がとまってて・・・」

 フレイは口に手を当てて、オホホと優雅に笑った。

「わざとですよね!?わたしはマルス様のご飯を作ってたげてただけなのに・・・うわぁぁぁぁーん!」

 アテーネは泣き出した。

 ふん、ざまあみろ。


 ”悪事は必ず自分に返ってくる”これは前世で中学校の担任から教わった言葉だ。先生自身が身をもって経験して得た教訓らしい。俺は異世界越しに今日、この言葉の意味を実感するのであった。

 アテーネが恨めしい目で俺を見ていた。

 そして良からぬことを閃いた顔をした。

 先程の俺と同じ表情。  

 あ、あかんやつや。

「一昨日の夜・・・散々わたしを付き合わせて、寝かせてくれなかったくせに・・・」
 
 いやいや、二人で酒飲んでただけじゃん!てかさ、飲もうって誘ったのお前だろ!

「えっ?いやそれは語弊が・・・ぎぃやぁぁぁぁあ!!!」

 華やかなマダムが着飾ってアフタヌーンティーを楽しみ、穏やかな時が流れる昼下がりの王都。

 辺りに少年の断末魔が響いた。
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