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第二章
妖精・・・ちゃん?
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都合よく俺たちの近場にあった酒場へと入った。
店内は煙草の匂いやらどぎつい酒の匂いやらが充満している。
いいね、これぞ大人のお店ってやつだ。
まだ明るい時間だが店内は賑わっており、見渡す限りのテーブル椅子は既に埋まってしまっていた。
昼から飲んだくれるアルコール依存症共が騒いでは飲み、賭け事をしては飲む。
俺も交ぜて欲しいが今はそれどころじゃないから我慢だ。
「うわぁ、最悪だ。席がないぞ」
「マルス様マルス様、ちょっと」
「うん?」
アテーネに服の裾を引っ張られた。
「ほらあそこ。カウンター席だったら空いてますよ!」
アテーネが指差す方向には一枚板で作られた立派なカウンター席があった。
先客は一人。肩幅の広い、大男が座って酒を飲んで─────いや違うな。あれは、ラーメンだ。こんな酒場でラーメンなんか食ってやがる。
「あ、居た」
アテーネが男を見て言う。
居た、とは?
俺は脳内でこの場合の”居た”の意味を考察する。
そんな俺を他所に、迷いなくアテーネは大男に近付くと、己へと歩み寄る人の気配に反応した大男が振り返った。
「あなた様は、女神アテーネ様!と、マルス様!?どうしてここっ!」
大男は驚愕で目を見開く。
俺を知っているのか。
ふっ、俺も有名人になったもんだね。
もしかしてサインとか求められたりするかも。今度練習しておこう。
アテーネの後ろに続いて俺も大男に近づく。近くで見るとその背中は更に大きく感じた。
厳つい風貌に気圧された俺が一歩後ろに下がると、大男は啜っていたラーメンをほっぽりだし、跪き頭を垂れた。
「お初にお目にかかりやす。おれっち、ケンネムルンの森の妖精・テレンと申しやす」
と名乗った。
ふーん、ケンネムルンの森の妖精ね─────妖精?・・・妖精・・・・・・妖精いいぃぃぃぃ!?このむさ苦しい大男が?冗談だろ?どっちかって言うと山男の化身じゃん!
困惑する俺を置いてけぼりに、気にせず二人は親しげに話し始めた。
「女神様、ご無沙汰しております。お渡ししたメモの通りに喋っていただけましたか?」
「ええ、バッチリですよ!雰囲気も最高でした!」
「お気に召されたのですな!」
「はい、妖精ちゃんは天才です!」
「女神様にそう言ってもらえるとは、感激ですぞ!」
「はぁ~その鍛え抜かれた背中、何度見ても惚れ惚れします!筋肉フェチのわたしにはたまりません!!」
アテーネはヨダレを垂らして妖精ちゃんの背中を触りまくり、妖精ちゃんはされるがままにそれを受け入れる。
てか、誰が”ちゃん”だよ!どっからどう見ても○○殿がお似合いの筋骨隆々、極太眉毛なThe・漢!!君の一人称もどうなんだ?おれっちて・・・せめて、オイラぐらいに留めてほしかったね。
「お二方はどうしてここに?」
「うん、君をね」
「お待ちください」
探しに来たんだよ、と言おうとしたがテレンくんに手で制されてしまった俺は続きが言えなかった。
「皆まで言わずともあなた様のご意志は重々承知しておりますわ!」
テレンくんは豪快な笑顔で言った。
「へ?」
身に覚えのない言われに思わずアホっぽい声が漏れる。
「さすがはマルス様です。ここがリターンズの幹部デスラー・ハウンドの居場所と知って訪れたのですな!」
うん、初耳だな。
そもそもデスラーって誰だ?
リターンズの幹部?
もしかしなくてもスカイムより上の地位の敵だよな?
要するにめちゃくちゃ強敵ってことだよな?
「ま、まぁね。テ、テレンくんの方こそどうしてここに?旅の途中で寄ったの?」
俺は見栄を張った。
「ああ、おれっちは組織が全勢力を挙げて回収しようと企んでいる”神器”の調査にきたんでさぁ。一回外の世界に出て現状の把握をしておきたかったんで。旅と銘打って実際は組織の調査及び壊滅ですぜ」
凄く真面目に語るテレンくんの壮大な計画・・・はひとまず置いといて。
彼の発言の中には気になるキーワードが含まれていた。
「神器?アテーネ知ってるか?」
俺は仮にも元女神・アテーネにふった。
「知らないです」
即答であった。
お前は知っとけよ。
「神器とは古の大戦で使用された武器の総称ですぜ。その数は九つ。世界中に散らばり国が、四英傑自らが保管しているものから未だに行方のわかってないもの・・・そしてリターンズに奪われたものまで」
テレンくんは眉をしかめる。
「ちなみにマルス様は神器を二つ所持してますぜ。さすがはマルス様。かつての世界最強であったヘイルダム様の子孫は伊達じゃねぇや」
へぇー、マルスって人は一人で神器を二つ所持してるんだ、凄いじゃん。
・・・ん?マルスって俺やないかい!
ツッコミどころ満載なテレンくんだが、彼は真面目な顔して言っている。
「ええ!?俺、二つ持ってんの?どれとどれさ?」
俺は思わず取り乱してしまった。
「落ち着いてくだされ。あなた様が所持しているのは《絶剣・グランデル》とエルバイス家に伝わりし《秘剣・ブルートガング》の二刀です」
「あ、これとこれか。・・・アテーネどういうことだ?」
「説明したではありませんか。転生の際に」
後ろめたいのか俺と視線を合わぜずに明後日の方向を見て話すアテーネ。
あっ、思い出したぞ。確かに言ってたわ。転生前に『敵に渡すくらいなら君に渡しちゃえ』的なことを。
つまりはそういう意味だったのか。なんてもん渡してくれたんだこのアホ女神は。
ブルートガングは父さんの形見だから我慢するさ。
でもグランデルは要らないな。もう神器一個持ってるんだったら不要だよな?俺、二刀流じゃないし。
それに、全神器九個の中で二つを持ってる俺って超絶危ない立場じゃね?
いわゆるお尋ね者ってやつやん。
ああ、なんか面倒くさくなってきた。さっさとお家に帰って美女たちに癒されたいと切実に思う。
「それにしてもさ、あれだよな」
「はい?」
「正教ってリターンズの幹部が運営してたんだな。初耳だわ」
俺が振った世間話。
それは別にどうってことない普通の話題を選択したつもりであった。
しかし、テレンくんは小首を傾げ。
「マルス様、なにを仰っておいでで。ここは邪教の聖地ですぜ?」
と言った。
・・・なんですと?
「え?正教の聖地・マハバトだよね?」
「違いますぜ。この街は邪教の聖地・マハバードですさぁ」
「まじで?」
「ははっ!マルス様、お間違えになられたのですかい?」
「あはは、そうみたいだね。うっかりしてたよ」
乾いた笑いしかできない。
「ですが、マルス様。図らずともこのデスラーの拠点に訪れるとは・・・やはりあなた様は選ばれし子・・・おれっちは嬉しいですぞ!!共に打倒・リターンズ!!」
感無量ってな具合で男泣きをするテレンくん。
実に暑苦しい妖精がなんでも肯定的に捉えるので、俺は否定するのを諦めた。
そのついでに元凶を睨む。
「おい、アテーネ。お前、間違えやがったな?どこまでもポンコツなんだよ」
「すみません。ですがマルス様・・・可愛い可愛い女の子の些細なミスです。許して差しあげてください」
「いやいや、許せねぇよ!?なんでわざわざ殺されに幹部のとこに行かなきゃいけないんだ!それにお前は顔だけは認めてやるが、性格はど・ブスだからな!」
「なっ!!ほんっとに器の小さい男ですね!女の子の失敗くらい笑って流してあげるのが紳士でしょ!」
口論がヒートアップする。視野が狭くなっていた俺とアテーネは、自分たちに向けられる好奇の眼差しに気付けていなかった。
「お二人とも冷静に。周りの注目が集まりすぎてますぜ」
テレンくんの指摘に、ハッと我に返った俺とアテーネ。
周囲の目は、まさに頭のおかしな二人組を見ている目であった。
「場所を変えましょう。おれっちの部屋で作戦会議でさぁ」
「「作戦会議?」」
俺とアテーネがハモる。
嫌な予感がするな。人の話を聞かない系妖精のテレンくんは出会ってまだ数分にも関わらず暴走気味だ。
「はい!明日のデスラー討伐作戦を練るのです!!」
「「はい?」」
意気込むテレンくんと再びハモる俺とアテーネ。
テレンくんが勝手に単なる俺らのミスを肯定的に捉えまくったせいで、急遽デスラーを倒す計画の作戦会議の開催が決定した。
未だに状況を掴めないままテレンくんに案内されて彼の宿泊先へと向かうのであった。
店内は煙草の匂いやらどぎつい酒の匂いやらが充満している。
いいね、これぞ大人のお店ってやつだ。
まだ明るい時間だが店内は賑わっており、見渡す限りのテーブル椅子は既に埋まってしまっていた。
昼から飲んだくれるアルコール依存症共が騒いでは飲み、賭け事をしては飲む。
俺も交ぜて欲しいが今はそれどころじゃないから我慢だ。
「うわぁ、最悪だ。席がないぞ」
「マルス様マルス様、ちょっと」
「うん?」
アテーネに服の裾を引っ張られた。
「ほらあそこ。カウンター席だったら空いてますよ!」
アテーネが指差す方向には一枚板で作られた立派なカウンター席があった。
先客は一人。肩幅の広い、大男が座って酒を飲んで─────いや違うな。あれは、ラーメンだ。こんな酒場でラーメンなんか食ってやがる。
「あ、居た」
アテーネが男を見て言う。
居た、とは?
俺は脳内でこの場合の”居た”の意味を考察する。
そんな俺を他所に、迷いなくアテーネは大男に近付くと、己へと歩み寄る人の気配に反応した大男が振り返った。
「あなた様は、女神アテーネ様!と、マルス様!?どうしてここっ!」
大男は驚愕で目を見開く。
俺を知っているのか。
ふっ、俺も有名人になったもんだね。
もしかしてサインとか求められたりするかも。今度練習しておこう。
アテーネの後ろに続いて俺も大男に近づく。近くで見るとその背中は更に大きく感じた。
厳つい風貌に気圧された俺が一歩後ろに下がると、大男は啜っていたラーメンをほっぽりだし、跪き頭を垂れた。
「お初にお目にかかりやす。おれっち、ケンネムルンの森の妖精・テレンと申しやす」
と名乗った。
ふーん、ケンネムルンの森の妖精ね─────妖精?・・・妖精・・・・・・妖精いいぃぃぃぃ!?このむさ苦しい大男が?冗談だろ?どっちかって言うと山男の化身じゃん!
困惑する俺を置いてけぼりに、気にせず二人は親しげに話し始めた。
「女神様、ご無沙汰しております。お渡ししたメモの通りに喋っていただけましたか?」
「ええ、バッチリですよ!雰囲気も最高でした!」
「お気に召されたのですな!」
「はい、妖精ちゃんは天才です!」
「女神様にそう言ってもらえるとは、感激ですぞ!」
「はぁ~その鍛え抜かれた背中、何度見ても惚れ惚れします!筋肉フェチのわたしにはたまりません!!」
アテーネはヨダレを垂らして妖精ちゃんの背中を触りまくり、妖精ちゃんはされるがままにそれを受け入れる。
てか、誰が”ちゃん”だよ!どっからどう見ても○○殿がお似合いの筋骨隆々、極太眉毛なThe・漢!!君の一人称もどうなんだ?おれっちて・・・せめて、オイラぐらいに留めてほしかったね。
「お二方はどうしてここに?」
「うん、君をね」
「お待ちください」
探しに来たんだよ、と言おうとしたがテレンくんに手で制されてしまった俺は続きが言えなかった。
「皆まで言わずともあなた様のご意志は重々承知しておりますわ!」
テレンくんは豪快な笑顔で言った。
「へ?」
身に覚えのない言われに思わずアホっぽい声が漏れる。
「さすがはマルス様です。ここがリターンズの幹部デスラー・ハウンドの居場所と知って訪れたのですな!」
うん、初耳だな。
そもそもデスラーって誰だ?
リターンズの幹部?
もしかしなくてもスカイムより上の地位の敵だよな?
要するにめちゃくちゃ強敵ってことだよな?
「ま、まぁね。テ、テレンくんの方こそどうしてここに?旅の途中で寄ったの?」
俺は見栄を張った。
「ああ、おれっちは組織が全勢力を挙げて回収しようと企んでいる”神器”の調査にきたんでさぁ。一回外の世界に出て現状の把握をしておきたかったんで。旅と銘打って実際は組織の調査及び壊滅ですぜ」
凄く真面目に語るテレンくんの壮大な計画・・・はひとまず置いといて。
彼の発言の中には気になるキーワードが含まれていた。
「神器?アテーネ知ってるか?」
俺は仮にも元女神・アテーネにふった。
「知らないです」
即答であった。
お前は知っとけよ。
「神器とは古の大戦で使用された武器の総称ですぜ。その数は九つ。世界中に散らばり国が、四英傑自らが保管しているものから未だに行方のわかってないもの・・・そしてリターンズに奪われたものまで」
テレンくんは眉をしかめる。
「ちなみにマルス様は神器を二つ所持してますぜ。さすがはマルス様。かつての世界最強であったヘイルダム様の子孫は伊達じゃねぇや」
へぇー、マルスって人は一人で神器を二つ所持してるんだ、凄いじゃん。
・・・ん?マルスって俺やないかい!
ツッコミどころ満載なテレンくんだが、彼は真面目な顔して言っている。
「ええ!?俺、二つ持ってんの?どれとどれさ?」
俺は思わず取り乱してしまった。
「落ち着いてくだされ。あなた様が所持しているのは《絶剣・グランデル》とエルバイス家に伝わりし《秘剣・ブルートガング》の二刀です」
「あ、これとこれか。・・・アテーネどういうことだ?」
「説明したではありませんか。転生の際に」
後ろめたいのか俺と視線を合わぜずに明後日の方向を見て話すアテーネ。
あっ、思い出したぞ。確かに言ってたわ。転生前に『敵に渡すくらいなら君に渡しちゃえ』的なことを。
つまりはそういう意味だったのか。なんてもん渡してくれたんだこのアホ女神は。
ブルートガングは父さんの形見だから我慢するさ。
でもグランデルは要らないな。もう神器一個持ってるんだったら不要だよな?俺、二刀流じゃないし。
それに、全神器九個の中で二つを持ってる俺って超絶危ない立場じゃね?
いわゆるお尋ね者ってやつやん。
ああ、なんか面倒くさくなってきた。さっさとお家に帰って美女たちに癒されたいと切実に思う。
「それにしてもさ、あれだよな」
「はい?」
「正教ってリターンズの幹部が運営してたんだな。初耳だわ」
俺が振った世間話。
それは別にどうってことない普通の話題を選択したつもりであった。
しかし、テレンくんは小首を傾げ。
「マルス様、なにを仰っておいでで。ここは邪教の聖地ですぜ?」
と言った。
・・・なんですと?
「え?正教の聖地・マハバトだよね?」
「違いますぜ。この街は邪教の聖地・マハバードですさぁ」
「まじで?」
「ははっ!マルス様、お間違えになられたのですかい?」
「あはは、そうみたいだね。うっかりしてたよ」
乾いた笑いしかできない。
「ですが、マルス様。図らずともこのデスラーの拠点に訪れるとは・・・やはりあなた様は選ばれし子・・・おれっちは嬉しいですぞ!!共に打倒・リターンズ!!」
感無量ってな具合で男泣きをするテレンくん。
実に暑苦しい妖精がなんでも肯定的に捉えるので、俺は否定するのを諦めた。
そのついでに元凶を睨む。
「おい、アテーネ。お前、間違えやがったな?どこまでもポンコツなんだよ」
「すみません。ですがマルス様・・・可愛い可愛い女の子の些細なミスです。許して差しあげてください」
「いやいや、許せねぇよ!?なんでわざわざ殺されに幹部のとこに行かなきゃいけないんだ!それにお前は顔だけは認めてやるが、性格はど・ブスだからな!」
「なっ!!ほんっとに器の小さい男ですね!女の子の失敗くらい笑って流してあげるのが紳士でしょ!」
口論がヒートアップする。視野が狭くなっていた俺とアテーネは、自分たちに向けられる好奇の眼差しに気付けていなかった。
「お二人とも冷静に。周りの注目が集まりすぎてますぜ」
テレンくんの指摘に、ハッと我に返った俺とアテーネ。
周囲の目は、まさに頭のおかしな二人組を見ている目であった。
「場所を変えましょう。おれっちの部屋で作戦会議でさぁ」
「「作戦会議?」」
俺とアテーネがハモる。
嫌な予感がするな。人の話を聞かない系妖精のテレンくんは出会ってまだ数分にも関わらず暴走気味だ。
「はい!明日のデスラー討伐作戦を練るのです!!」
「「はい?」」
意気込むテレンくんと再びハモる俺とアテーネ。
テレンくんが勝手に単なる俺らのミスを肯定的に捉えまくったせいで、急遽デスラーを倒す計画の作戦会議の開催が決定した。
未だに状況を掴めないままテレンくんに案内されて彼の宿泊先へと向かうのであった。
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