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第三章
俺の平穏
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確かにこの手で掴んできたはずが騒ぎの元凶の人物はいなかった・・・
違う、いるぞ。
部屋の入口から顔を半分だけのぞかせて、こちらの様子を窺っている。
「なによ、あれ・・・」
非常に不味いぞ。
俺も引いたが、頼みの綱のメーガンさんもドン引きしている。
これでは彼女の助力を得られないかもしれない。
「いや、あれですよ。なんて言うか・・・男のプライドというか・・・チラ見栄というか」
「わたしもう寝るわね」
「メーガンさん見捨てないで。お願いします」
寝ころんだメーガンさんの枕元付近に近寄って、俺はラウンズさんに聞こえないよう小声で訴える。
俺を見つめるラウンズさんの眼光が鋭くなった気がした。俺は心の中でラウンズさんをボコボコに殴っておくことで溜飲を下げる。
「冗談じゃないっすよ!あんな状態のラウンズさんと寝ろって言うんですか!?」
「いいじゃない。たまには男同士水入らずで積もる話もあるでしょ。わたそは邪魔しないから二人で楽しみなさい」
「あんなのと同じ空間にいたら、心休まる時間を失います!」
「マルスもなかなか言うようになったわよね。それだけわたしたちに心を許してくれてるってことでしょ?嬉しいわ。おやすみなさい」
目を瞑るメーガンさん。
これ以上大事な睡眠時間を削がれたくない俺は、もうこれしきのことでは挫けない。
「心は許しましたけど、アレは嫌なんですよ!お願いだから、助けてください!」
俺が語気を少し強めると、メーガンさんはやれやれ、と眉をしかめてみせる。
「しょうがないわね」
もはや負のオーラを放出しているラウンズさんと向き合ったメーガンさんは手招きした。
「あなた、こっちにきて一緒に寝ましょ?マルスにも迷惑がかかってるわ。この子は明日大会なのよ?」
どっかの誰かさんのせいで明日というか、もう今日なんだけど。
メーガンさんの言葉を聞くやいなや、ラウンズさんはドアの付近からすごすごと歩み寄って、ベッドに腰掛けるとメーガンさんを見据える。
「お前が、どうしてもって言うなら・・・一緒に寝てやってもいいぞ・・・」
顔を逸らし、男のツンデレを発揮する。
面倒くさい・・・なんてめんどくさい男なんだ。
俺は心底そう思った。
この様子じゃ、メーガンさんも呆れを通り越して怒りのオーラが出ているにちが・・いや、出てい・・・ない・・・だと !?
むしろなんだろう、この優しさに満ちた眼差しは・・・まるで、弱き者を許す聖母のような・・・
散々仲を取り持つ為に奔走して俺を除け者にして完全に夫婦の世界が誕生しているが、いったい今のラウンズさんのどこにメーガンさんのツボを刺激するポイントがあったのか。
解せない。わかりたくもない。
メーガンさんは起き上がると、ラウンズさんの頬に口付けた。
「・・・おやすみなさい」
そのあともラウンズさんになにか動きがあったようだが、キスが始まった時点で俺は目や耳から入る情報をシャットダウンすることに全力を注いでいた。
俺は静かに立ち上がり気配を消してベッドを迂回して、部屋の出口へと歩いた。
背後でラウンズさんがメーガンさんを組み敷いて、いちゃこらし始めたような気もしたが、決して振り返らない。
俺は空気が読めるので野暮なことはしないのだ。
俺は役割を終えた。
こうして俺は願ってやまない平和を再び手に入れることに成功したのだ。
それが全てだ。
いや、正しくはそう考えないとやってられない。
彼らから見れば、俺はまだ学院を卒業していない子供なのに、毎日毎日毎日気を使って生きている。
学院の連中も変な奴が多いし、メーガンさんはたまに抜けてるし、ラウンズさんは強烈に変だ。
でも、いいんだ。
毎日少しずつ小さな幸せを見つけて生きていこう。
俺にはヒロイン候補の彼女たちがいるじゃないか。
みんな癖が強いが、素直で可愛らしい。
滑るように部屋を出て俺は後ろ手でドアを閉めた。
そして何事もなかったかのように、自室へと戻っていった。
そこには確かに平穏があることを俺は知っていた。
違う、いるぞ。
部屋の入口から顔を半分だけのぞかせて、こちらの様子を窺っている。
「なによ、あれ・・・」
非常に不味いぞ。
俺も引いたが、頼みの綱のメーガンさんもドン引きしている。
これでは彼女の助力を得られないかもしれない。
「いや、あれですよ。なんて言うか・・・男のプライドというか・・・チラ見栄というか」
「わたしもう寝るわね」
「メーガンさん見捨てないで。お願いします」
寝ころんだメーガンさんの枕元付近に近寄って、俺はラウンズさんに聞こえないよう小声で訴える。
俺を見つめるラウンズさんの眼光が鋭くなった気がした。俺は心の中でラウンズさんをボコボコに殴っておくことで溜飲を下げる。
「冗談じゃないっすよ!あんな状態のラウンズさんと寝ろって言うんですか!?」
「いいじゃない。たまには男同士水入らずで積もる話もあるでしょ。わたそは邪魔しないから二人で楽しみなさい」
「あんなのと同じ空間にいたら、心休まる時間を失います!」
「マルスもなかなか言うようになったわよね。それだけわたしたちに心を許してくれてるってことでしょ?嬉しいわ。おやすみなさい」
目を瞑るメーガンさん。
これ以上大事な睡眠時間を削がれたくない俺は、もうこれしきのことでは挫けない。
「心は許しましたけど、アレは嫌なんですよ!お願いだから、助けてください!」
俺が語気を少し強めると、メーガンさんはやれやれ、と眉をしかめてみせる。
「しょうがないわね」
もはや負のオーラを放出しているラウンズさんと向き合ったメーガンさんは手招きした。
「あなた、こっちにきて一緒に寝ましょ?マルスにも迷惑がかかってるわ。この子は明日大会なのよ?」
どっかの誰かさんのせいで明日というか、もう今日なんだけど。
メーガンさんの言葉を聞くやいなや、ラウンズさんはドアの付近からすごすごと歩み寄って、ベッドに腰掛けるとメーガンさんを見据える。
「お前が、どうしてもって言うなら・・・一緒に寝てやってもいいぞ・・・」
顔を逸らし、男のツンデレを発揮する。
面倒くさい・・・なんてめんどくさい男なんだ。
俺は心底そう思った。
この様子じゃ、メーガンさんも呆れを通り越して怒りのオーラが出ているにちが・・いや、出てい・・・ない・・・だと !?
むしろなんだろう、この優しさに満ちた眼差しは・・・まるで、弱き者を許す聖母のような・・・
散々仲を取り持つ為に奔走して俺を除け者にして完全に夫婦の世界が誕生しているが、いったい今のラウンズさんのどこにメーガンさんのツボを刺激するポイントがあったのか。
解せない。わかりたくもない。
メーガンさんは起き上がると、ラウンズさんの頬に口付けた。
「・・・おやすみなさい」
そのあともラウンズさんになにか動きがあったようだが、キスが始まった時点で俺は目や耳から入る情報をシャットダウンすることに全力を注いでいた。
俺は静かに立ち上がり気配を消してベッドを迂回して、部屋の出口へと歩いた。
背後でラウンズさんがメーガンさんを組み敷いて、いちゃこらし始めたような気もしたが、決して振り返らない。
俺は空気が読めるので野暮なことはしないのだ。
俺は役割を終えた。
こうして俺は願ってやまない平和を再び手に入れることに成功したのだ。
それが全てだ。
いや、正しくはそう考えないとやってられない。
彼らから見れば、俺はまだ学院を卒業していない子供なのに、毎日毎日毎日気を使って生きている。
学院の連中も変な奴が多いし、メーガンさんはたまに抜けてるし、ラウンズさんは強烈に変だ。
でも、いいんだ。
毎日少しずつ小さな幸せを見つけて生きていこう。
俺にはヒロイン候補の彼女たちがいるじゃないか。
みんな癖が強いが、素直で可愛らしい。
滑るように部屋を出て俺は後ろ手でドアを閉めた。
そして何事もなかったかのように、自室へと戻っていった。
そこには確かに平穏があることを俺は知っていた。
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