天使は悪魔に恋をしている。

ゆゆゆ

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2人の最後。

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「またお前かよ!いい加減邪魔するのやめろよ!」


「心外だなぁ。邪魔なんてしてないよ。俺は俺の仕事してんの。」


軽く微笑みを浮かべるその男の背中には大きな白い羽根。
俺の背中に生えている真っ黒な羽根と正反対の色を持つその正体は〝天使〟


俺の商売敵であり天敵だ!


俺が座っている屋根の向かいの家に降り立ったその男は悪魔界にまでファンのいるイケメンだ。


「なんで毎回毎回俺のターゲットばかり奪うんだ!他のやつも狙えよ!お前上級天使だろ!?もっと大きい悪事を止めた方が成績も上がるしこんな小さな悪事止めんなよ!」


俺は下級悪魔だから精々子供を唆して100円前後の万引きをさせるくらいしかできない。なのにこいつは毎回俺のターゲットにタイミングよく働きかけそれを阻止するのだ。おかげで俺の営業成績は底辺を彷徨っていて同期からもかなり差をつけられている。仲の良い同期に天使から逃げる方法を聞いたが目を逸らして何も言ってくれなかった。


「あはは。ちゃんと大きい悪事も止めてるよ。この間はテロ事件ってやつ潰したしその前は爆発事件止めたし。だから、大丈夫。心配しないで。それに、ほら、小さい悪事でも数が増えると大変だからね」


「心配なんてしてねーよ!それに俺以外の下級悪魔の邪魔はしてねーって聞いてるぞ!俺の方に来るなって言ってんだよ!」


そう叫んだ途端、天使ヤローの顔が歪んだ。
なんか地雷を踏んだっぽい・・・冷や汗が止まらない。


「ふふふ、誰に聞いたか知らないけど・・・自覚がないのも罪だよ。」



大きな羽根が動き天使がこちらへ近づいて来る。


嫌な予感がして逃げようと羽根を翻したが激痛と共に身体の一部を奪い取られたような感覚に陥った


意識を失いそうになりながら聞こえてきたのは不思議な会話



〝わかった、、、そこまで言うならお前の功績に免じて許そう〟


〝感謝いたします〟


〝達者でな〟


そして、暖かい何かに包まれたまま、俺は死を迎えた。

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