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運命の出会い
第4話
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ゼノスたち入学希望者は、学院の中央に位置するドーム状の広間に通された。
広間の中央には巨大な無色の水晶が置かれている。
水晶の隣には、黒い髪をオールバックにして眼鏡をかけたインテリ系イケメンが立っていた。
入学希望者は国別に縦一列に並んでおり、それぞれ約三十名。
ユリウスとイリスが先頭に並び立っているのを視認したゼノスは、二人とは別の――共和国の列の最後尾に並ぶ。
インテリ系イケメンが眼鏡をクイっと持ち上げる。
「私、勇者協会から派遣されて参りました、ウィリアム・ミッドフォートレスと申します。この魔術学院で講師を務めさせて頂くとともに、皆さんの試験官を担当させて頂きます。さっそくですが皆さん、こちらの水晶に触れて魔力を注いでください。このように」
そう言ってウィリアムが水晶に触れると、透明だった水晶が緑色に変わり、さらに40という数字が表示された。
「このように水晶は注がれた魔力を検知し、属性に応じた色へ変化します。私の属性は土ですので緑色に変わっていますね」
魔力には火、水、風、土、光、闇の六つの属性が存在する。
この世界では人間、魔族にかかわらず等しく魔力を宿しており、必ず属性がついているのだ。
ただし、光と闇の属性はごく限られた者にしか宿らない。
「また、表示されている数値ですが、体内に保有している魔力レベルです。今回は属性と魔力レベル、この二点を確認させていただきます。ではさっそく――」
「始める前に質問いいですかー」
共和国の列の先頭に立つ、緩くウェーブがかった茶髪の男が手を挙げる。
「なんでしょうか?」
「魔力のレベルが低かった場合は入学できないとか?」
「いいえ、魔力レベルは経験を積むことで上昇しますし、低いからという理由で入学をお断りすることはありません。皆さんは各国から選ばれた方たちですからね。現在の皆さんの実力を把握させていただくだけです」
「あれ、そうなの?」
「ええ。ただし、入学時には誓約書にサインをしていただきますが」
「誓約書……?」
「はい。魔術学院に入学後は、魔力レベルを高めるための一環として、魔族と戦っていただく場合があります。その際に怪我や命を落とす可能性もゼロではありません。それを承知したうえで入学するという誓約書です」
ウィリアムの言葉で、室内はざわめき出した。
「……魔族と戦うのか」
「ねえ、あなた戦ったことある?」
「いや、俺はないけど……お前は?」
「あたしもないわよ」
飛び交う会話にあるのは動揺の色が濃い。
元より学院が設立された経緯を考えれば魔族と戦う機会はあるだろうな、というのは誰もが実のところ理解していた。
しかし、ウィリアムから聞かされるまでは半信半疑なところもあったのだ。
だが、ゼノスは室内の状況に首を傾げる。
――こいつら、実戦経験がないのか。
っていうか、国から選ばれてるとか聞いてねーぞ、親父。
「ふん、そんなことで入学を諦める者に魔王と戦う資格などない。帝国にそのような者は一人もいないがな」
と、イリスを見ながら冷笑を浮かべるのはユリウスである。
「あら、王国にだって一人もいませんよ」
イリスは表面上、にこやかな笑みを浮かべながら言い返す。
二人の言葉により、帝国と王国、双方がにらみ合う。
一触触発の、張り詰めた緊張感の中、空気を読まずに口を開いたのはやはり茶髪の男だった。
「まぁまぁ、ひとまず落ち着いて、ね。これからこの学院で一緒に学ぶことになるんだからさ。仲良くしようよー」
どことなく間延びした口調で告げる。
その言葉に毒気を抜かれたユリウスとイリスが元に直ると、他の者たちも二人に従うように前を向く。
「いやあ、よかった。ウィリアム先生、試験を始めちゃってください」
「そうですね、それでは先頭から順番に水晶に触れてください」
ウィリアムの合図で魔力測定が始まる。
まず初めにユリウスが水晶に触れると、青色――水の属性で数値は20と表示された。
イリスも水晶に触れると、白く光り輝き、数値はユリウスと同じ20と表示された。
白色は光の属性を表すが、主に浄化や癒しといった聖なる力を宿した魔法が多い。
ただし、その数は非常に少ないため、光の属性を宿した者は男であれば聖人、女であれば聖女と呼ばれている。
イリスは幼いころから光魔法を行使していた為、王国の民から聖女と謳われていた。
二人に続いて水晶に触れていくが、誰一人として白い輝きを放つ者はいない。
それだけ光の属性はレアなのだ。
魔力もユリウスとイリスの数値を超える者はおらず、大抵は10前後だった。
――他の奴らが10前後ってことを考えると、ユリウスとイリスはかなり優秀ってことか。
次々と測定されていく様子を眺めながら、ゼノスは冷静に分析する。
とりあえず注意すべき人間はユリウスとイリス、この二人でよいだろう。
そう判断したゼノスだったが、視線はイリスばかりを追っていた。
しかも、イリスの顔を見ると胸の中が熱くなる。
――落ち着け!
平常心だ、平常心。
任務を優先させようという心と、イリスを見て可愛いと思う心、相反する二つの感情が入り混じっていた。
「君で最後ですよ」
「……へっ?」
ゼノスはウィリアムの呼びかけで我に返る。
いつのまにか、水晶に触れるのはゼノスだけになっていた。
「っと、悪い」
ゼノスは慌てて水晶に触れる。
次の瞬間、水晶が真っ赤に染まった。
それだけにとどまらず、水晶から炎が噴き出す。
「うおっ!?」
ゼノスが叫ぶのと同時、パキッと音を立てて水晶が砕け散った。
「なっ……!?」
その様子を見た者たちは驚愕した。
まさか水晶が壊れるとは、誰も思っていなかったのだ。
「おかしいですね、99まで計測できるはずなのですが……故障でしょうか?」
粉々に砕け散った水晶の破片に触れながら、ウィリアムが首を傾げる。
単純にゼノスの魔力レベルが99よりも上で、水晶が耐え切れず砕け散っただけなのだが、ウィリアムは目の前の少年がそのような規格外の魔力レベルだとは思ってもいなかった。
「君の名前は?」
「ゼノス・ヴァルフレアだ」
「ゼノスくん、申し訳ありませんが、水晶はこの一つしか用意していません。新しいものを準備するにも時間がかかるので、君の魔力レベルは後日測定をするということで構いませんか?」
「ああ、問題ない」
「ありがとうございます。さて、試験はこれで終了です。各国ごとに部屋を割り振られていますので、皆さん移動してください」
ウィリアムの言葉で、ゼノスを含めた全員は広間を出た。
広間の中央には巨大な無色の水晶が置かれている。
水晶の隣には、黒い髪をオールバックにして眼鏡をかけたインテリ系イケメンが立っていた。
入学希望者は国別に縦一列に並んでおり、それぞれ約三十名。
ユリウスとイリスが先頭に並び立っているのを視認したゼノスは、二人とは別の――共和国の列の最後尾に並ぶ。
インテリ系イケメンが眼鏡をクイっと持ち上げる。
「私、勇者協会から派遣されて参りました、ウィリアム・ミッドフォートレスと申します。この魔術学院で講師を務めさせて頂くとともに、皆さんの試験官を担当させて頂きます。さっそくですが皆さん、こちらの水晶に触れて魔力を注いでください。このように」
そう言ってウィリアムが水晶に触れると、透明だった水晶が緑色に変わり、さらに40という数字が表示された。
「このように水晶は注がれた魔力を検知し、属性に応じた色へ変化します。私の属性は土ですので緑色に変わっていますね」
魔力には火、水、風、土、光、闇の六つの属性が存在する。
この世界では人間、魔族にかかわらず等しく魔力を宿しており、必ず属性がついているのだ。
ただし、光と闇の属性はごく限られた者にしか宿らない。
「また、表示されている数値ですが、体内に保有している魔力レベルです。今回は属性と魔力レベル、この二点を確認させていただきます。ではさっそく――」
「始める前に質問いいですかー」
共和国の列の先頭に立つ、緩くウェーブがかった茶髪の男が手を挙げる。
「なんでしょうか?」
「魔力のレベルが低かった場合は入学できないとか?」
「いいえ、魔力レベルは経験を積むことで上昇しますし、低いからという理由で入学をお断りすることはありません。皆さんは各国から選ばれた方たちですからね。現在の皆さんの実力を把握させていただくだけです」
「あれ、そうなの?」
「ええ。ただし、入学時には誓約書にサインをしていただきますが」
「誓約書……?」
「はい。魔術学院に入学後は、魔力レベルを高めるための一環として、魔族と戦っていただく場合があります。その際に怪我や命を落とす可能性もゼロではありません。それを承知したうえで入学するという誓約書です」
ウィリアムの言葉で、室内はざわめき出した。
「……魔族と戦うのか」
「ねえ、あなた戦ったことある?」
「いや、俺はないけど……お前は?」
「あたしもないわよ」
飛び交う会話にあるのは動揺の色が濃い。
元より学院が設立された経緯を考えれば魔族と戦う機会はあるだろうな、というのは誰もが実のところ理解していた。
しかし、ウィリアムから聞かされるまでは半信半疑なところもあったのだ。
だが、ゼノスは室内の状況に首を傾げる。
――こいつら、実戦経験がないのか。
っていうか、国から選ばれてるとか聞いてねーぞ、親父。
「ふん、そんなことで入学を諦める者に魔王と戦う資格などない。帝国にそのような者は一人もいないがな」
と、イリスを見ながら冷笑を浮かべるのはユリウスである。
「あら、王国にだって一人もいませんよ」
イリスは表面上、にこやかな笑みを浮かべながら言い返す。
二人の言葉により、帝国と王国、双方がにらみ合う。
一触触発の、張り詰めた緊張感の中、空気を読まずに口を開いたのはやはり茶髪の男だった。
「まぁまぁ、ひとまず落ち着いて、ね。これからこの学院で一緒に学ぶことになるんだからさ。仲良くしようよー」
どことなく間延びした口調で告げる。
その言葉に毒気を抜かれたユリウスとイリスが元に直ると、他の者たちも二人に従うように前を向く。
「いやあ、よかった。ウィリアム先生、試験を始めちゃってください」
「そうですね、それでは先頭から順番に水晶に触れてください」
ウィリアムの合図で魔力測定が始まる。
まず初めにユリウスが水晶に触れると、青色――水の属性で数値は20と表示された。
イリスも水晶に触れると、白く光り輝き、数値はユリウスと同じ20と表示された。
白色は光の属性を表すが、主に浄化や癒しといった聖なる力を宿した魔法が多い。
ただし、その数は非常に少ないため、光の属性を宿した者は男であれば聖人、女であれば聖女と呼ばれている。
イリスは幼いころから光魔法を行使していた為、王国の民から聖女と謳われていた。
二人に続いて水晶に触れていくが、誰一人として白い輝きを放つ者はいない。
それだけ光の属性はレアなのだ。
魔力もユリウスとイリスの数値を超える者はおらず、大抵は10前後だった。
――他の奴らが10前後ってことを考えると、ユリウスとイリスはかなり優秀ってことか。
次々と測定されていく様子を眺めながら、ゼノスは冷静に分析する。
とりあえず注意すべき人間はユリウスとイリス、この二人でよいだろう。
そう判断したゼノスだったが、視線はイリスばかりを追っていた。
しかも、イリスの顔を見ると胸の中が熱くなる。
――落ち着け!
平常心だ、平常心。
任務を優先させようという心と、イリスを見て可愛いと思う心、相反する二つの感情が入り混じっていた。
「君で最後ですよ」
「……へっ?」
ゼノスはウィリアムの呼びかけで我に返る。
いつのまにか、水晶に触れるのはゼノスだけになっていた。
「っと、悪い」
ゼノスは慌てて水晶に触れる。
次の瞬間、水晶が真っ赤に染まった。
それだけにとどまらず、水晶から炎が噴き出す。
「うおっ!?」
ゼノスが叫ぶのと同時、パキッと音を立てて水晶が砕け散った。
「なっ……!?」
その様子を見た者たちは驚愕した。
まさか水晶が壊れるとは、誰も思っていなかったのだ。
「おかしいですね、99まで計測できるはずなのですが……故障でしょうか?」
粉々に砕け散った水晶の破片に触れながら、ウィリアムが首を傾げる。
単純にゼノスの魔力レベルが99よりも上で、水晶が耐え切れず砕け散っただけなのだが、ウィリアムは目の前の少年がそのような規格外の魔力レベルだとは思ってもいなかった。
「君の名前は?」
「ゼノス・ヴァルフレアだ」
「ゼノスくん、申し訳ありませんが、水晶はこの一つしか用意していません。新しいものを準備するにも時間がかかるので、君の魔力レベルは後日測定をするということで構いませんか?」
「ああ、問題ない」
「ありがとうございます。さて、試験はこれで終了です。各国ごとに部屋を割り振られていますので、皆さん移動してください」
ウィリアムの言葉で、ゼノスを含めた全員は広間を出た。
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