23 / 39
第二十二話『力の差』
しおりを挟む
黒づくめが俺達目掛けて襲いかかってきたのと同時に、俺は意識をカチリと切り替え、そして一気に駆け出した。
彼我の距離が一瞬で狭まる中、俺は思い切り地面を蹴りつける。
次の瞬間、耳元で風切り音が聞こえた。
「――オヤ?」
黒づくめが目の前に現れる。いや、違う。俺が間合いを食らい尽くしたのだ。
明らかにこれまでとは一線を画す速力なのだが、俺の感覚は遅れることなく付いてきている。
突如目の前に現れた俺に間の抜けた声を出す黒づくめの脇腹目掛けて、俺は一閃を繰り出す。
俺の剣は吸い込まれるように黒づくめの脇腹を切り裂いた――かのように見えたが、気づけば奴は元いた場所に平然と立っていた。
今の速度でも触れることは出来ないのかと、俺は歯噛みする。
「フムフム、これは中々興味深いねぇ」
そう言いながら自分の脇腹に手をやる黒づくめ。
よく見ると、全身を覆っているローブの脇腹部分が少しだが切り裂かれたように破れていた。
ダメージを与えることは出来なかったが、奴に触れることは出来たらしい。
「ウン、やはり君は面白そうだねぇ。
ローブ一枚分とはいえ、このボクに触れることが出来る人間なんてそうそう居ないよ?
どうやら以前とは違うようだねぇ」
暢気な口調で喋りながら、黒づくめはしきりに頷いているが、放たれている威圧感は依然として強い。
ミルノはどうか分からないが、少なくともエルザやエルリックでは太刀打ち出来ないだろう。
出し惜しみして勝てる相手ではないのだし、【限界突破】を使うしかない。
俺は視線を黒づくめに向けたまま、皆に声をかける。
「皆、こいつは今までの敵とは明らかに強さの質が違う。
【限界突破】で一気にケリをつけるから、手出しは無用だ」
「カーマインっ。私達も戦うわ!」
「エルザ、気持ちは嬉しいが、【限界突破】を使っている間は手加減が出来ない。
そうなると皆を巻き込んでしまう可能性がある。
済まないがここは俺に任せてくれ」
「……分かったわ。でも、いつでも援護は出来るように準備だけはしておくわよっ。
それくらいはいいでしょ?」
「ふっ。あぁ、もちろんだ!」
そう言って俺は、一歩前に踏み出して、黒づくめを睨みつける。
「ウーン、イチャついてるところ申し訳ないんだけどねぇ」
「イチャついてなんていないっ!」
「どう見てもイチャついてるようにしか見えなかったんだがねぇ。
――まぁ、それはいいとして。
彼女達もただ見物というのはつまらないだろう?」
「……どういう意味だ?」
黒づくめの表情はフードに隠れている為、窺い知ることは出来ないが、その口調に俺は頭の片隅に引っかかりを覚えていた。
眼前の黒づくめに気をやりつつも、周囲を見るが特に変わった様子はない。
ないはずなのだが、徐々に警戒の度合いが引き上げられていくのが分かる。
ふと、黒づくめが笑みを浮かべたような気がした。
「なぁに、ちょっとした余興をしようと思ってだねぇ」
黒づくめが楽しそうに言った言葉と同時に、エルザ達の直ぐ後ろから魔物が音も立てずに出現する。
これは――転移かっ。
現れた魔物は全部で六体。
インプが五体にもう一体は――ミノタウロスだっ!
インプは体長一メートルほどの小型の悪魔だ。
全身が黒く、尖った耳と充血した目をしており、膨れた腹と鉤のある長い尻尾を持った姿をしている。
頭からは二本の角を生やしており、背中には蝙蝠のような翼を持つ。
戦闘力はオークより若干下というところなので、エルザ達であれば特に問題はない。
問題があるとすればやはりミノタウロスだろう。
「さてさて、せっかくだから見物といこうじゃないか。
あぁ――手出しはダメだからねぇ?」
「くッ!」
皆のもとへ行こうとする俺を威圧で牽制する黒づくめ。
何が何でもエルザ達だけで戦わせるつもりのようだ。
「ヴゥウウウウウウウウウッ!」
狂牛は獰猛な殺気を放ち、赤く染まった双眸でエルザ達を睨みつけた。
エルザとエルリックは、目を大きく見開いている。
二人は突然現れた魔物、特にミノタウロスを前に硬直してしまっているようだった。
ミルノの方は――よし、二人よりは冷静なようだな。
だったら!
「エルザ! それに兄さんはインプを倒すんだっ。
ミルノは大変だろうが、【静寂する捕縛】を使いながら、ミノタウロスの相手をしてくれ!
くれぐれも無理はするな!」
「わ、分かったわ!」
「了解だっ!」
「畏まりました」
眼前のミノタウロスに呼吸を奪われていたエルザとエルリックは、俺の言葉を受けて覚悟を決める。
怯えをはらんでいた表情は引き締まり、インプを睨む。
震えが収まった手で剣を握り直しながら、二人は一気に踏み出しインプ目掛けて剣を振り下ろすと、目の前にいたインプの身体を真っ二つにした。
残り三体となったインプにエルザとエルリックが斬りかかる頃、ミルノがミノタウロスと相対する。
ミノタウロスは荒い鼻息を吹き出しつつ、強靭な体躯を怒張させ、蹄を踏みしめた。
雄々しく反り立つ角を誇示するようにして、ミルノを見下ろす。
「ヴゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
狂暴な雄叫びを発し、ミノタウロスは眼前のミルノを敵と認識したようだ。
ミノタウロスの雄叫びを目の前でモロに浴びたミルノだったが、流石に戦い慣れているようで戦意を失ってはいない。
スイッチを切り替えたように瞳を鋭く冷徹なものに変え、長剣の柄を鞘から引き抜き、ミノタウロスに突きつけた。
「――来なさい」
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
間髪入れずに思い切り地面を蹴りつけ、駆け出したミノタウロスは両刃斧を振り上げる。
巨牛の双眸が赤くギラつき、ミルノ目掛けて両刃斧が振り下ろされた。
次の瞬間――がくんっ、とミノタウロスの動きが一瞬停止する。
ミルノの【静寂する捕縛】だろう。
だが、オーガのように完全に自由を奪うことは出来ないようだ。
「ヴゥォオオオオオオオオオオオオオオオオウッッ!」
雄叫びを上げてミノタウロスが再び動き出そうとする。
だがミルノにとっては、その一瞬の停止で充分だった。
動き出そうとしたミノタウロスに正面から、ミルノが高速の一閃を放つ。
「ヴオゥッッ!?」
横凪の斬撃が狂牛の腕を捉え、衝撃が走る。
両手斧を持っていた両手の内の右手を斬り裂き、両手斧とともに右手が地面に落下した。
血飛沫を撒き散らすミノタウロスに対して、ミルノは懐から短剣を取り出す。
右手には長剣、左手に短剣を握り締め、突き刺すような視線でミノタウロスを捉えるミルノ。
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
猛牛は吠声を上げながら、調子に乗るなと言わんばかりに全身を怒らせ、残っている左手でミルノを殴りつける。
轟音が鳴り響き、硬い地面には抉れたような跡が出来るが、そこにミルノの姿はない。
「遅い――!」
「ヴオゥッッ!?」
攻撃後の硬直を見逃すことなく、神速をもって、ミルノが斬りかかる。
一瞬にして夥しい数の斬撃がミノタウロスの身体を埋め尽くす。
熟練度が二になり、【英雄領域】を発動した状態の俺の目からも、全てを追い切れない斬撃の嵐は、ミノタウロスに一切の反撃を許さず、その筋肉質な身体へダメージを叩きこんでいった。
「ヴグッ、ヴウゥッ、ヴウウゥッ!?」
ミノタウロスの呼吸は徐々に荒くなっていく。
腕を振り回す余力すらないのか、狂牛の動きは酷く緩慢だ。
「これで――終わりです」
再度【静寂する捕縛】使用したのだろう、弱っているミノタウロスの動きが完全に停止する。
最後に横一閃の斬撃を首に打ち込まれたミノタウロスは、薄皮一枚で頭と首と繋がった状態になった。
もはや言葉を発することなど出来なくなったミノタウロスは、後退し、よろめき、血飛沫を上げながら背中から倒れこみ、その身体が完全に沈黙する。
視線をエルザとエルリックへ向けると、二人もインプを倒し終わったようで、ミルノの傍へ近づく。
俺は視線を黒づくめに戻し、睨みつける。
「余興とやらはこれでおしまいか?」
「そうだよ。いやはや、君のお仲間も中々に強いじゃないかねぇ。
――特にミノくんを倒した子の能力は実に興味深い」
黒づくめのおどけた物言いの中には、底知れぬ不気味さを感じた。
俺は気を引き締め直して、黒づくめに相対する。
奴から感じる威圧感が一段と膨れ上がっていく。
「面白い余興も見れたことだし、そろそろ続きを始めるとしようかねぇ」
「そうだな。――但し」
「但し?」
「――直ぐに終わるけどなっ!」
瞬間、俺は目を見開き【限界突破】を発動させる。
「ふッッ!」
「ぉお!?」
剣を右手に持ち突貫してくる俺に、黒づくめは無詠唱で火属性魔法【火炎球】を繰り出す。
正面から迫り来る火炎球を、俺は剣で真っ二つに切り裂いた。
「魔法を斬るなんて随分と非常識じゃないかねぇ!?」
「斬れると思えば何でも斬れるもんさ、っと!」
俺は勢いそのままに黒づくめに斬りかかる。
すんでのところで黒づくめに回避されるが、打ち込んだ左足を軸にして、回避した方へ回転。
右足を地面に蹴り出し、黒づくめに肉薄すると剣で攻撃すると見せかけて、左足で蹴りを繰り出した。
「ぐぅッ!」
只の蹴りとはいえ、【限界突破】で、限界以上に引き上げられた俺の身体から繰り出された蹴りだ。
その破壊力は凄まじく、黒づくめを腹部を正確に捉え、その身体を壁際まで吹き飛ばす。
壁に身体をぶつけた黒づくめは、衝撃で地面に横たわる。
少しはダメージが通っていればいいんだが……。
「――フフッ。アハハハハ! どういう理屈かは分からないけど、奥の手を隠していたとはねぇ。
本当に君は興味深いねぇ」
何事も無かったかのようにスッと立ち上がる黒づくめ。
声色からは判断しにくいが、ダメージを与えることは出来ていないようだ。
「ウン。君のその力に敬意を表して、ボクも少し本気を出そうかねぇ。
……本気を出すなんて数百年ぶりのことだよ、君は運がいいねぇ」
「本気、だと? それに数百年ぶり?
……お前の正体はもしかして!」
「あ、分かっちゃうかねぇ?
つまりは、こういうことだねぇ」
黒づくめは、全身を覆っていたローブに手を掛けて剥ぎ取り、隠していた姿を露にする。
その姿とは――。
「フゥ。やっぱりこの格好が一番だねぇ。
隠すっていうのは性に合わないんだよねぇ」
黒づくめの正体は、女魔族だった。
ウエーブがかった紫水晶の長い髪に、頭からは山羊のような角が生えている。
眠たそうな瞳の色は髪と同じく紫水晶で輝いており、耳は尖っていた。
だが、女魔族の姿で一番目を惹くのは、胸と服装だ。
その双丘は今まで見てきた誰よりも大きく、もはや魔乳といって差し支えない。
そんな魔乳に対して、目の前の女魔族の服装は胸と下腹部のみを黒く薄い生地で覆っているだけで、細くくびれた腰に濃艶な褐色の肢体は、全て剥き出しになっていた。
魔族といえど、正直言って目のやり場に困る。
遠目から見ているエルザ達も目を見開き、呆然としていた。
「ん? 何をそんなに――って、あぁボクの格好に見蕩れてるのかい?」
「そんなわけがあるかっ! ……あまりの格好に驚いただけだ」
「? この格好がそんなにおかしいかねぇ? ボクは気に入ってるんだけどねぇ。
――まぁいいや、そろそろおしゃべりはこれくらいにしようじゃないか」
――その一言で空気が変わった。
眠そうにしていた目が一転、獲物を捉えたかのような威嚇めいたものへと変化する。
それは凶眼。
心臓を握りつぶす物理的圧力さえ兼ね備えたような鋭い眼光が俺を射抜く。
ゴクリと俺の喉が大きく動き、溜まっていた唾を飲み込む。
目が動き、剣を構えたまま、意識が女魔族に釘付けになる。
「さて。それじゃあ、遊びを再開しようかねぇ」
「ッッ!?」
次の瞬間、両者は一気に飛び出した。
俺は剣を、女魔族はどこからともなく取り出した大鎌を手に持ち振り上げ、衝突させる。
衝撃をものともせず、女魔族は紅い唇を吊り上げた。
交差する互いの武器の奥で笑みを浮かべる女魔族に、俺は軽く舌打ちする。
快音を響かせながら得物を弾き合い、次第に激しさを増しながら斬り結ぶ。
「アハハハハッ! 良いねぇ! キミは【本物】のようだねぇッ!」
額に汗を滲ませながら相対する俺に対して、女魔族は大笑した。
部屋中に響く激突音と火花を散らせ、縦横無尽に刃を走らせながら、腹の底から歓喜している。
「こんなに楽しいのは四百年ぶりだねぇ!」
「うおおぉッッ!!」
歓喜の声を上げながら大鎌を振り下ろす。
地面の岩盤を容易く粉砕するその膂力に任せた一撃に、俺もまた雄叫びを上げて剣を振り返した。
一進一退の攻防が続いていたのだが、徐々に女魔族の攻撃が俺の身体に届き始める。
「グゥッ!?」
「オヤ? せっかく楽しくなってきたのに、もう終わりなのかねぇ?」
【限界突破】の効果が後少しで切れる。
せめて、あと一撃。
そう思って最後の力を振り絞ろうと眼前を見据えた時。
魔力が膨れ上がっていくのを感じた。
女魔族の大鎌の先には、さっきとは比べ物にならないほどの大きさの大火球。
回避しようと試みるが――後ろを思いだしハッと踏みとどまる。
アレを避ければ確実にエルザ達が巻き添えを食らってしまうだろう。
――斬るしかない!
俺は腰を据えて剣を構える。
「ウンウン。良い瞳だねぇ。四百年前にも見た事があるよ。
ボクはそういう瞳を見るとさ――滾ってきちゃうんだよねぇ」
ゾッとするような蠱惑的な視線に、俺の肌が泡立ち、顔の色をなくしてしまう。
「フフフ。守ってみせておくれよ」
そして前方、女魔族が大鎌を地に振り下ろす。
「『焦熱炎獄』」
大鎌の先から放たれた、直径二メートルはあろうかという大火球。
全てを焼き尽くす地獄の炎のような塊が、地面を抉りながら俺に向かって一直線に近づいてくる。
巨大な大火球に対して、俺はミスリルの剣を強く握り締め魔力を込めた。
そして――俺は四肢に力を込めて、ミスリルの剣を振り抜下ろす。
「ぐっっ! うおおおおおおおおおおおおッッ!?」
部屋中が真っ赤な閃光に包まれる。
轟音とともに大火球は爆砕した。
「いやはや、アレを本当に消し飛ばすとは。
規格外にも程があるねぇ」
己の魔法を見事に粉砕した俺に、女魔族は嬉しそうな笑みを浮かべる。
弾け飛んだ大火球の爆風は凄まじく、俺はその衝撃に耐えるので精一杯だ。
そして何よりも――。
「ぐぅッッ!?」
【限界突破】の効果が切れてしまった。
俺は倒れそうになる身体を、地面に突き立てた剣で支えようとするが耐えきれず、片膝をついてしまう。
「フム。どうやらその能力には何かしらの制限があるようだねぇ。
まあ、それだけ強力な能力だ。
当然といえば当然なのかねぇ」
興味深そうに俺の状態を観察する女魔族。
もう一度攻撃を仕掛けられたら、次は防ぎようがない。
諦めかけていたその時。
「……ウン。楽しかったし、今日はこれくらいにしておくとするかねぇ」
「っな、何だ……と?」
「ン? 最初に言わなかったかねぇ?
少し遊んであげようって」
「なっ!?」
「君が良い研究対象になると分かったし、このまま続けると君が壊れちゃうだろうからねぇ。
それはもったいないし、今日のところはこれで帰るとするよ。
――そうそう、ボクの名前はマモン。覚えていてくれると嬉しいねぇ」
そう言うとマモンと名乗った女魔族は、転移を使い、本当に俺達の前から姿を消した――。
彼我の距離が一瞬で狭まる中、俺は思い切り地面を蹴りつける。
次の瞬間、耳元で風切り音が聞こえた。
「――オヤ?」
黒づくめが目の前に現れる。いや、違う。俺が間合いを食らい尽くしたのだ。
明らかにこれまでとは一線を画す速力なのだが、俺の感覚は遅れることなく付いてきている。
突如目の前に現れた俺に間の抜けた声を出す黒づくめの脇腹目掛けて、俺は一閃を繰り出す。
俺の剣は吸い込まれるように黒づくめの脇腹を切り裂いた――かのように見えたが、気づけば奴は元いた場所に平然と立っていた。
今の速度でも触れることは出来ないのかと、俺は歯噛みする。
「フムフム、これは中々興味深いねぇ」
そう言いながら自分の脇腹に手をやる黒づくめ。
よく見ると、全身を覆っているローブの脇腹部分が少しだが切り裂かれたように破れていた。
ダメージを与えることは出来なかったが、奴に触れることは出来たらしい。
「ウン、やはり君は面白そうだねぇ。
ローブ一枚分とはいえ、このボクに触れることが出来る人間なんてそうそう居ないよ?
どうやら以前とは違うようだねぇ」
暢気な口調で喋りながら、黒づくめはしきりに頷いているが、放たれている威圧感は依然として強い。
ミルノはどうか分からないが、少なくともエルザやエルリックでは太刀打ち出来ないだろう。
出し惜しみして勝てる相手ではないのだし、【限界突破】を使うしかない。
俺は視線を黒づくめに向けたまま、皆に声をかける。
「皆、こいつは今までの敵とは明らかに強さの質が違う。
【限界突破】で一気にケリをつけるから、手出しは無用だ」
「カーマインっ。私達も戦うわ!」
「エルザ、気持ちは嬉しいが、【限界突破】を使っている間は手加減が出来ない。
そうなると皆を巻き込んでしまう可能性がある。
済まないがここは俺に任せてくれ」
「……分かったわ。でも、いつでも援護は出来るように準備だけはしておくわよっ。
それくらいはいいでしょ?」
「ふっ。あぁ、もちろんだ!」
そう言って俺は、一歩前に踏み出して、黒づくめを睨みつける。
「ウーン、イチャついてるところ申し訳ないんだけどねぇ」
「イチャついてなんていないっ!」
「どう見てもイチャついてるようにしか見えなかったんだがねぇ。
――まぁ、それはいいとして。
彼女達もただ見物というのはつまらないだろう?」
「……どういう意味だ?」
黒づくめの表情はフードに隠れている為、窺い知ることは出来ないが、その口調に俺は頭の片隅に引っかかりを覚えていた。
眼前の黒づくめに気をやりつつも、周囲を見るが特に変わった様子はない。
ないはずなのだが、徐々に警戒の度合いが引き上げられていくのが分かる。
ふと、黒づくめが笑みを浮かべたような気がした。
「なぁに、ちょっとした余興をしようと思ってだねぇ」
黒づくめが楽しそうに言った言葉と同時に、エルザ達の直ぐ後ろから魔物が音も立てずに出現する。
これは――転移かっ。
現れた魔物は全部で六体。
インプが五体にもう一体は――ミノタウロスだっ!
インプは体長一メートルほどの小型の悪魔だ。
全身が黒く、尖った耳と充血した目をしており、膨れた腹と鉤のある長い尻尾を持った姿をしている。
頭からは二本の角を生やしており、背中には蝙蝠のような翼を持つ。
戦闘力はオークより若干下というところなので、エルザ達であれば特に問題はない。
問題があるとすればやはりミノタウロスだろう。
「さてさて、せっかくだから見物といこうじゃないか。
あぁ――手出しはダメだからねぇ?」
「くッ!」
皆のもとへ行こうとする俺を威圧で牽制する黒づくめ。
何が何でもエルザ達だけで戦わせるつもりのようだ。
「ヴゥウウウウウウウウウッ!」
狂牛は獰猛な殺気を放ち、赤く染まった双眸でエルザ達を睨みつけた。
エルザとエルリックは、目を大きく見開いている。
二人は突然現れた魔物、特にミノタウロスを前に硬直してしまっているようだった。
ミルノの方は――よし、二人よりは冷静なようだな。
だったら!
「エルザ! それに兄さんはインプを倒すんだっ。
ミルノは大変だろうが、【静寂する捕縛】を使いながら、ミノタウロスの相手をしてくれ!
くれぐれも無理はするな!」
「わ、分かったわ!」
「了解だっ!」
「畏まりました」
眼前のミノタウロスに呼吸を奪われていたエルザとエルリックは、俺の言葉を受けて覚悟を決める。
怯えをはらんでいた表情は引き締まり、インプを睨む。
震えが収まった手で剣を握り直しながら、二人は一気に踏み出しインプ目掛けて剣を振り下ろすと、目の前にいたインプの身体を真っ二つにした。
残り三体となったインプにエルザとエルリックが斬りかかる頃、ミルノがミノタウロスと相対する。
ミノタウロスは荒い鼻息を吹き出しつつ、強靭な体躯を怒張させ、蹄を踏みしめた。
雄々しく反り立つ角を誇示するようにして、ミルノを見下ろす。
「ヴゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
狂暴な雄叫びを発し、ミノタウロスは眼前のミルノを敵と認識したようだ。
ミノタウロスの雄叫びを目の前でモロに浴びたミルノだったが、流石に戦い慣れているようで戦意を失ってはいない。
スイッチを切り替えたように瞳を鋭く冷徹なものに変え、長剣の柄を鞘から引き抜き、ミノタウロスに突きつけた。
「――来なさい」
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
間髪入れずに思い切り地面を蹴りつけ、駆け出したミノタウロスは両刃斧を振り上げる。
巨牛の双眸が赤くギラつき、ミルノ目掛けて両刃斧が振り下ろされた。
次の瞬間――がくんっ、とミノタウロスの動きが一瞬停止する。
ミルノの【静寂する捕縛】だろう。
だが、オーガのように完全に自由を奪うことは出来ないようだ。
「ヴゥォオオオオオオオオオオオオオオオオウッッ!」
雄叫びを上げてミノタウロスが再び動き出そうとする。
だがミルノにとっては、その一瞬の停止で充分だった。
動き出そうとしたミノタウロスに正面から、ミルノが高速の一閃を放つ。
「ヴオゥッッ!?」
横凪の斬撃が狂牛の腕を捉え、衝撃が走る。
両手斧を持っていた両手の内の右手を斬り裂き、両手斧とともに右手が地面に落下した。
血飛沫を撒き散らすミノタウロスに対して、ミルノは懐から短剣を取り出す。
右手には長剣、左手に短剣を握り締め、突き刺すような視線でミノタウロスを捉えるミルノ。
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
猛牛は吠声を上げながら、調子に乗るなと言わんばかりに全身を怒らせ、残っている左手でミルノを殴りつける。
轟音が鳴り響き、硬い地面には抉れたような跡が出来るが、そこにミルノの姿はない。
「遅い――!」
「ヴオゥッッ!?」
攻撃後の硬直を見逃すことなく、神速をもって、ミルノが斬りかかる。
一瞬にして夥しい数の斬撃がミノタウロスの身体を埋め尽くす。
熟練度が二になり、【英雄領域】を発動した状態の俺の目からも、全てを追い切れない斬撃の嵐は、ミノタウロスに一切の反撃を許さず、その筋肉質な身体へダメージを叩きこんでいった。
「ヴグッ、ヴウゥッ、ヴウウゥッ!?」
ミノタウロスの呼吸は徐々に荒くなっていく。
腕を振り回す余力すらないのか、狂牛の動きは酷く緩慢だ。
「これで――終わりです」
再度【静寂する捕縛】使用したのだろう、弱っているミノタウロスの動きが完全に停止する。
最後に横一閃の斬撃を首に打ち込まれたミノタウロスは、薄皮一枚で頭と首と繋がった状態になった。
もはや言葉を発することなど出来なくなったミノタウロスは、後退し、よろめき、血飛沫を上げながら背中から倒れこみ、その身体が完全に沈黙する。
視線をエルザとエルリックへ向けると、二人もインプを倒し終わったようで、ミルノの傍へ近づく。
俺は視線を黒づくめに戻し、睨みつける。
「余興とやらはこれでおしまいか?」
「そうだよ。いやはや、君のお仲間も中々に強いじゃないかねぇ。
――特にミノくんを倒した子の能力は実に興味深い」
黒づくめのおどけた物言いの中には、底知れぬ不気味さを感じた。
俺は気を引き締め直して、黒づくめに相対する。
奴から感じる威圧感が一段と膨れ上がっていく。
「面白い余興も見れたことだし、そろそろ続きを始めるとしようかねぇ」
「そうだな。――但し」
「但し?」
「――直ぐに終わるけどなっ!」
瞬間、俺は目を見開き【限界突破】を発動させる。
「ふッッ!」
「ぉお!?」
剣を右手に持ち突貫してくる俺に、黒づくめは無詠唱で火属性魔法【火炎球】を繰り出す。
正面から迫り来る火炎球を、俺は剣で真っ二つに切り裂いた。
「魔法を斬るなんて随分と非常識じゃないかねぇ!?」
「斬れると思えば何でも斬れるもんさ、っと!」
俺は勢いそのままに黒づくめに斬りかかる。
すんでのところで黒づくめに回避されるが、打ち込んだ左足を軸にして、回避した方へ回転。
右足を地面に蹴り出し、黒づくめに肉薄すると剣で攻撃すると見せかけて、左足で蹴りを繰り出した。
「ぐぅッ!」
只の蹴りとはいえ、【限界突破】で、限界以上に引き上げられた俺の身体から繰り出された蹴りだ。
その破壊力は凄まじく、黒づくめを腹部を正確に捉え、その身体を壁際まで吹き飛ばす。
壁に身体をぶつけた黒づくめは、衝撃で地面に横たわる。
少しはダメージが通っていればいいんだが……。
「――フフッ。アハハハハ! どういう理屈かは分からないけど、奥の手を隠していたとはねぇ。
本当に君は興味深いねぇ」
何事も無かったかのようにスッと立ち上がる黒づくめ。
声色からは判断しにくいが、ダメージを与えることは出来ていないようだ。
「ウン。君のその力に敬意を表して、ボクも少し本気を出そうかねぇ。
……本気を出すなんて数百年ぶりのことだよ、君は運がいいねぇ」
「本気、だと? それに数百年ぶり?
……お前の正体はもしかして!」
「あ、分かっちゃうかねぇ?
つまりは、こういうことだねぇ」
黒づくめは、全身を覆っていたローブに手を掛けて剥ぎ取り、隠していた姿を露にする。
その姿とは――。
「フゥ。やっぱりこの格好が一番だねぇ。
隠すっていうのは性に合わないんだよねぇ」
黒づくめの正体は、女魔族だった。
ウエーブがかった紫水晶の長い髪に、頭からは山羊のような角が生えている。
眠たそうな瞳の色は髪と同じく紫水晶で輝いており、耳は尖っていた。
だが、女魔族の姿で一番目を惹くのは、胸と服装だ。
その双丘は今まで見てきた誰よりも大きく、もはや魔乳といって差し支えない。
そんな魔乳に対して、目の前の女魔族の服装は胸と下腹部のみを黒く薄い生地で覆っているだけで、細くくびれた腰に濃艶な褐色の肢体は、全て剥き出しになっていた。
魔族といえど、正直言って目のやり場に困る。
遠目から見ているエルザ達も目を見開き、呆然としていた。
「ん? 何をそんなに――って、あぁボクの格好に見蕩れてるのかい?」
「そんなわけがあるかっ! ……あまりの格好に驚いただけだ」
「? この格好がそんなにおかしいかねぇ? ボクは気に入ってるんだけどねぇ。
――まぁいいや、そろそろおしゃべりはこれくらいにしようじゃないか」
――その一言で空気が変わった。
眠そうにしていた目が一転、獲物を捉えたかのような威嚇めいたものへと変化する。
それは凶眼。
心臓を握りつぶす物理的圧力さえ兼ね備えたような鋭い眼光が俺を射抜く。
ゴクリと俺の喉が大きく動き、溜まっていた唾を飲み込む。
目が動き、剣を構えたまま、意識が女魔族に釘付けになる。
「さて。それじゃあ、遊びを再開しようかねぇ」
「ッッ!?」
次の瞬間、両者は一気に飛び出した。
俺は剣を、女魔族はどこからともなく取り出した大鎌を手に持ち振り上げ、衝突させる。
衝撃をものともせず、女魔族は紅い唇を吊り上げた。
交差する互いの武器の奥で笑みを浮かべる女魔族に、俺は軽く舌打ちする。
快音を響かせながら得物を弾き合い、次第に激しさを増しながら斬り結ぶ。
「アハハハハッ! 良いねぇ! キミは【本物】のようだねぇッ!」
額に汗を滲ませながら相対する俺に対して、女魔族は大笑した。
部屋中に響く激突音と火花を散らせ、縦横無尽に刃を走らせながら、腹の底から歓喜している。
「こんなに楽しいのは四百年ぶりだねぇ!」
「うおおぉッッ!!」
歓喜の声を上げながら大鎌を振り下ろす。
地面の岩盤を容易く粉砕するその膂力に任せた一撃に、俺もまた雄叫びを上げて剣を振り返した。
一進一退の攻防が続いていたのだが、徐々に女魔族の攻撃が俺の身体に届き始める。
「グゥッ!?」
「オヤ? せっかく楽しくなってきたのに、もう終わりなのかねぇ?」
【限界突破】の効果が後少しで切れる。
せめて、あと一撃。
そう思って最後の力を振り絞ろうと眼前を見据えた時。
魔力が膨れ上がっていくのを感じた。
女魔族の大鎌の先には、さっきとは比べ物にならないほどの大きさの大火球。
回避しようと試みるが――後ろを思いだしハッと踏みとどまる。
アレを避ければ確実にエルザ達が巻き添えを食らってしまうだろう。
――斬るしかない!
俺は腰を据えて剣を構える。
「ウンウン。良い瞳だねぇ。四百年前にも見た事があるよ。
ボクはそういう瞳を見るとさ――滾ってきちゃうんだよねぇ」
ゾッとするような蠱惑的な視線に、俺の肌が泡立ち、顔の色をなくしてしまう。
「フフフ。守ってみせておくれよ」
そして前方、女魔族が大鎌を地に振り下ろす。
「『焦熱炎獄』」
大鎌の先から放たれた、直径二メートルはあろうかという大火球。
全てを焼き尽くす地獄の炎のような塊が、地面を抉りながら俺に向かって一直線に近づいてくる。
巨大な大火球に対して、俺はミスリルの剣を強く握り締め魔力を込めた。
そして――俺は四肢に力を込めて、ミスリルの剣を振り抜下ろす。
「ぐっっ! うおおおおおおおおおおおおッッ!?」
部屋中が真っ赤な閃光に包まれる。
轟音とともに大火球は爆砕した。
「いやはや、アレを本当に消し飛ばすとは。
規格外にも程があるねぇ」
己の魔法を見事に粉砕した俺に、女魔族は嬉しそうな笑みを浮かべる。
弾け飛んだ大火球の爆風は凄まじく、俺はその衝撃に耐えるので精一杯だ。
そして何よりも――。
「ぐぅッッ!?」
【限界突破】の効果が切れてしまった。
俺は倒れそうになる身体を、地面に突き立てた剣で支えようとするが耐えきれず、片膝をついてしまう。
「フム。どうやらその能力には何かしらの制限があるようだねぇ。
まあ、それだけ強力な能力だ。
当然といえば当然なのかねぇ」
興味深そうに俺の状態を観察する女魔族。
もう一度攻撃を仕掛けられたら、次は防ぎようがない。
諦めかけていたその時。
「……ウン。楽しかったし、今日はこれくらいにしておくとするかねぇ」
「っな、何だ……と?」
「ン? 最初に言わなかったかねぇ?
少し遊んであげようって」
「なっ!?」
「君が良い研究対象になると分かったし、このまま続けると君が壊れちゃうだろうからねぇ。
それはもったいないし、今日のところはこれで帰るとするよ。
――そうそう、ボクの名前はマモン。覚えていてくれると嬉しいねぇ」
そう言うとマモンと名乗った女魔族は、転移を使い、本当に俺達の前から姿を消した――。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる