ゾウのルスカは花を描く

■４

有名になったルスカ

リンドウが描くルスカと花畑の絵は、見る者を惹きつける魅力がありました。

動物園で描いているところを見た人が、知り合いにその話をして、それを聞いた人がまた違う人に話をして、どんどん評判になっていきました。

リンドウのお母さんは、ソロッソ町だけでなく、もっとたくさんの人に、リンドウの絵の素晴らしさを知ってほしいと思うようになりました。

そこで、写真を投稿できるインターネットのサービスに、リンドウの絵の写真を何枚も載せてみたのです。

ゾウが鼻に筆を持って、色とりどりの絵の具で花畑を描いている絵は、あっという間に話題になりました。



最初は、「この絵はなんだろう？」と思われていたのが、そのゾウが、ソロッソ町のポロロッコ動物園に実際にいて、本当に花畑を描いているということが、だんだんと多くの人に知られていきました。

そして、今まで見向きもしなかった小さな動物園に、ルスカが花畑を描くところを一目見ようと、全国から人が押しよせるようになったのです。

見に来た人は皆、ルスカが花畑を描くところの写真や動画を撮ることに夢中でした。

そのうちに、ルスカの描く花畑の前で、自分も一緒に映った写真を、そのインターネットのサービスに載せることが、ひとつの流行になっていました。

それを載せると、たくさんの人が注目して反応してくれるので、皆、競うように写真を撮りに行き、その写真をそれぞれが加工して、投稿しました。

それから、かけ算のように、ルスカはまたたく間に全国的に有名になっていったのでした。



ルスカのすみかの前には、いつも人だかりができるようになりました。

そして、写真を撮るための長い行列が並び、ふらりと立ち寄っても、ルスカを見ることはできなくなったのです。

リンドウは、ルスカの絵を描くことどころか、ルスカと見つめ合って語りかけることもできなくなりました。

しばらくは、たまに様子を見にきていたリンドウでしたが、やっぱりルスカとゆっくり過ごせないことがわかると、寂しそうな顔をして、ポロロッコ動物園を去っていきました。

そして、動物園にはまったく姿を見せなくなったのでした。