イジメられて高校中退→定時制高校→大検取得→まさかの退学→でも大学進学し、年収1000万の旦那さんと結婚した話

凛々

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 空は、暗く、低くて寒かった。
 2月の夕方だった。
 わたしはあの日のことを、今でもはっきりと記憶している。

 長い机が四角く並べられた部屋に通されると〝定時制高校で学びませんか〟と書かれたパンフレットと資料を手渡された。
 部屋には、もう数名が席に座っていた。

 ふと入り口近くの青年が目についた。
 癖毛を明るめな色に染めて、服装は私服。カーキのモッズコートの下にレイヤードして、下は履き込んだデニム。
 一目で歳上とわかったけれど、彼の雰囲気に妙に惹かれた。

 さっきまでの暗い気持ちが少し明るくなったわたしは、母を促して、彼が良く見える対角線上の席に着いた。
 ほどなくして先生が現れ、簡単に自己紹介をし、本日の参加者の名前を1人ずつ読んだ。
 
 〝ナナセ〟と呼ばれた、その青年の名は、珍しいのですぐ覚えた。

 青年は熱心な様子だった。
 ひと通り説明が終えられた後、校内を案内すると言われ、皆席を立ってゾロゾロと外に出ようとした。
 すると青年は先生の1人を捕まえて、個別になにやら質問をはじめた。
 入り口近くの席なので、その様子を横目に見て、聞き耳を立てながらわざとゆっくり教室を出てみる。
 この人、絶対にここに入る
 と確信した。

 あの日、あの教室に居たのは、おおよそわたしと同じ様な同年代の子たちばかりだった。
 友達ができない?
 勉強についていけない?
 お金がない?
 きっとさまざまな理由を抱えて、夜の学校に来たのだろう。
 不安そうな親たちの隣にいて、同じく不安そうな顔をしていた。
 これからこの子たちと顔付き合わせて4年間通うの?
 うんざりだった。
 けれどどんな事を言っても、わたしも世間から見たら立派な〝不登校〟の一員。
 散々、母が馬鹿にした口調で言われた、落ちこぼれ。
 わたしだってこんな筈じゃなかった。
 成績優秀で素直で立派な、貴女のお嬢さんでいたかった。
 でも無理だった。
 泣く泣く、高校だけは、高校だけは出てくれと言われて、とりあえず説明を聞きに来たのだ。

 でもナナセの様な人がいる事に、少し救われた気がした。
 歳上で、学ぶ事に熱心で、その理由に何かがある。
 この人と仲良くなる為に、此処に通うのも悪くないと思った。
 どうせ何もしたくないけれど、世の中高校くらい出ておかなくちゃいけないみたいだし。
 そうなると、通うのは此処になるんだし、と。
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