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第三話 夢の通いじと白い犬
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弥信は、上も下も右も左もない真っ暗な空間にいた。
身動きをとろうとするが、なぜか動けないことに気づき見てみると、自分が手足を白く細い糸に繋がれまるで、使われるのを待っているマリオネットのように両腕を曲げてあげたまま座っていることに。
(あ⋯れ?わた⋯し⋯)
「ふふふふ」
背後から艶めいた女性の声がする。スーッと白く細い手が伸び弥信の頬を触られそうになった。
(怖い⋯)
感じたことのない畏怖を感じた弥信は「来るな来るな」と必死に祈り、目を固く閉じた。
⋯ハッと弥信が目を覚ますとなぜか視界に入る全ての物が上下逆さまになって視界に入ってきた。
「あれ?」
不思議そうに弥信がしているとノック音がし、ガチャリと扉が開いた。
「⋯あんた何してんの」
そう言い部屋に入ってきた母親は呆れ顔で弥信を見ていた。グルンと体制を変えてはじめて自分が2段ベッドから頭をはみ出しながら天井を見上げ寝ていたことに気づいた。
「早くしないと遅刻するわよ」
「⋯はぁ⋯い」
気の抜けた返事に不審そうな顔し母親はバタリと扉を閉めた。
「何だったんだろ⋯さっきの夢⋯」
呟いた弥信は、昨日の授業で蜘蛛がのった手を見た。
しかし、そこには相変わらず何の痕跡もなかった。
なんとも言えない不快感を抱きながら弥信は、身支度をするとリビングに向かった。
「おはよう」
「弥信、ベッドから落ちそうになってたんだって?」
からかうように言う父親に「うるさいなぁ」と言い弥信は席に座った。
そして、両手を合し「いただきます」と呟くと、食パンを口に運んだ。
「続いてのニュースです。また新たに行方不明者が。行方不明になったのは青柳高校2年生の今橋 知佳さん17歳」
「ぶっ」と思わず飲んでいた麦茶を吹き思いっきり噎せた。
「ちょっと大丈夫?」
「大丈夫⋯大丈夫」
驚いた表情の両腕に掠れた声で言うと弥信は、再びテレビに視線をうつした。ニュースでは行方不明事件のことをゲストコメンテーターたちが各々の意見を述べていた。
「青柳高校ってあんたと同じ高校じゃない」
「うん。しかも、今橋⋯さんは同じクラスだよ」
「えー、怖いわね。一緒に高校まで行こうか?」
「いーよ。子供じゃないんだから。ごちそうさまでした。いってきます」
後半は嫌がるのを見越したように、からかうように言う母親に、そう言い弥信はカバンを手に家をあとにした。
学校に行く途中、一軒の家の前には各局の取材車が止まり、家の前にはたくさんの報道陣でごった返していた。
(邪魔くさいなぁ⋯)
そんなことを考えながら、視線を向けると、そこは行方不明になったクラスメイトの家だった。そして、あの不思議な生き物がいた家でもあった。
(やっぱり⋯あのキメラがいた家だ。でも⋯偶然?)
すると、足を止め家を見つめている弥信に気がついた数名のキャラクターが足早によってきた。
「君、行方不明になった子と同じ学校の制服だね。家を見てたってことは知り合い?」
「どんな子だったか話聞かせてもらえらいかな」
まるで角砂糖に群がるアリのように寄ってきてはマイクを向けるキャラクターたちから逃げるように弥信はその場を去った。
学校に着くと、クラスの話題はやはり今朝の行方不明事件のニュースのことで持ち切りだった。
ホームルームでも先生に取材には応じないようと言われたチャイムが鳴れば、気だるい体育、その後の眠くなる授業⋯ 退屈だが当たり前のいつもの風景が繰り広げられた。
そして、再びチャイムが鳴りその退屈な授業から解放され、生徒たちは各々部活に行ったり帰路についた。
弥信も例に漏れず、帰ろうと扉を開けた時だった。目の前に白い物が飛び出してきた。それは、柴犬ほどの大きさの犬だった。弥信は視線をむけた犬と目が合った時。
「見つけた」
「えっ?」
その低い声がしてすぐに犬は走り去って行った。
(犬が⋯喋った?そんな不思議の国のアリスに出てるくるウサギじゃないんだし⋯えっ?なら今のは何なんの?)
弥信はヘタリとその場に座り込んだ。
「大丈夫か?!」
その声に我に返り振り返ると、義翔と結仁がへたりこんでいる弥信のもとに駆け寄ってきた。
「原田くん、金城くん。今⋯」
今見た事を言おうとしたが、「犬が喋った」と言い、変人扱いされたくないと思った弥信は、廊下を見つけたまま口を閉じた。
「わかってる。犬がいたんだろ?なんで犬なんかいるんだ?」
義翔の言葉に弥信は無言で頷いた。
「迷い込んだ⋯とか?」
「学校にか?」
結仁の言葉に義翔は訝しげに後輩に視線をむけた。
「それもそっか⋯」
「なるほど」と納得した結仁 はボソリと呟いた。
「ごめん。2人ともありがとう。だいぶ落ち着いたわ」
「んーそうか?⋯なら気をつけて帰れよ?」
そう言うと、義翔と結仁が差し出された手につかまり弥信は立ち上がりぎこちない笑みを浮かべた。
「うん。ありがとう。2人も気をつけてね」
「おう!」と手を挙げる義翔と「はい」と素直は返事をする結仁に手を振ると弥信は、廊下を歩いて行った。
身動きをとろうとするが、なぜか動けないことに気づき見てみると、自分が手足を白く細い糸に繋がれまるで、使われるのを待っているマリオネットのように両腕を曲げてあげたまま座っていることに。
(あ⋯れ?わた⋯し⋯)
「ふふふふ」
背後から艶めいた女性の声がする。スーッと白く細い手が伸び弥信の頬を触られそうになった。
(怖い⋯)
感じたことのない畏怖を感じた弥信は「来るな来るな」と必死に祈り、目を固く閉じた。
⋯ハッと弥信が目を覚ますとなぜか視界に入る全ての物が上下逆さまになって視界に入ってきた。
「あれ?」
不思議そうに弥信がしているとノック音がし、ガチャリと扉が開いた。
「⋯あんた何してんの」
そう言い部屋に入ってきた母親は呆れ顔で弥信を見ていた。グルンと体制を変えてはじめて自分が2段ベッドから頭をはみ出しながら天井を見上げ寝ていたことに気づいた。
「早くしないと遅刻するわよ」
「⋯はぁ⋯い」
気の抜けた返事に不審そうな顔し母親はバタリと扉を閉めた。
「何だったんだろ⋯さっきの夢⋯」
呟いた弥信は、昨日の授業で蜘蛛がのった手を見た。
しかし、そこには相変わらず何の痕跡もなかった。
なんとも言えない不快感を抱きながら弥信は、身支度をするとリビングに向かった。
「おはよう」
「弥信、ベッドから落ちそうになってたんだって?」
からかうように言う父親に「うるさいなぁ」と言い弥信は席に座った。
そして、両手を合し「いただきます」と呟くと、食パンを口に運んだ。
「続いてのニュースです。また新たに行方不明者が。行方不明になったのは青柳高校2年生の今橋 知佳さん17歳」
「ぶっ」と思わず飲んでいた麦茶を吹き思いっきり噎せた。
「ちょっと大丈夫?」
「大丈夫⋯大丈夫」
驚いた表情の両腕に掠れた声で言うと弥信は、再びテレビに視線をうつした。ニュースでは行方不明事件のことをゲストコメンテーターたちが各々の意見を述べていた。
「青柳高校ってあんたと同じ高校じゃない」
「うん。しかも、今橋⋯さんは同じクラスだよ」
「えー、怖いわね。一緒に高校まで行こうか?」
「いーよ。子供じゃないんだから。ごちそうさまでした。いってきます」
後半は嫌がるのを見越したように、からかうように言う母親に、そう言い弥信はカバンを手に家をあとにした。
学校に行く途中、一軒の家の前には各局の取材車が止まり、家の前にはたくさんの報道陣でごった返していた。
(邪魔くさいなぁ⋯)
そんなことを考えながら、視線を向けると、そこは行方不明になったクラスメイトの家だった。そして、あの不思議な生き物がいた家でもあった。
(やっぱり⋯あのキメラがいた家だ。でも⋯偶然?)
すると、足を止め家を見つめている弥信に気がついた数名のキャラクターが足早によってきた。
「君、行方不明になった子と同じ学校の制服だね。家を見てたってことは知り合い?」
「どんな子だったか話聞かせてもらえらいかな」
まるで角砂糖に群がるアリのように寄ってきてはマイクを向けるキャラクターたちから逃げるように弥信はその場を去った。
学校に着くと、クラスの話題はやはり今朝の行方不明事件のニュースのことで持ち切りだった。
ホームルームでも先生に取材には応じないようと言われたチャイムが鳴れば、気だるい体育、その後の眠くなる授業⋯ 退屈だが当たり前のいつもの風景が繰り広げられた。
そして、再びチャイムが鳴りその退屈な授業から解放され、生徒たちは各々部活に行ったり帰路についた。
弥信も例に漏れず、帰ろうと扉を開けた時だった。目の前に白い物が飛び出してきた。それは、柴犬ほどの大きさの犬だった。弥信は視線をむけた犬と目が合った時。
「見つけた」
「えっ?」
その低い声がしてすぐに犬は走り去って行った。
(犬が⋯喋った?そんな不思議の国のアリスに出てるくるウサギじゃないんだし⋯えっ?なら今のは何なんの?)
弥信はヘタリとその場に座り込んだ。
「大丈夫か?!」
その声に我に返り振り返ると、義翔と結仁がへたりこんでいる弥信のもとに駆け寄ってきた。
「原田くん、金城くん。今⋯」
今見た事を言おうとしたが、「犬が喋った」と言い、変人扱いされたくないと思った弥信は、廊下を見つけたまま口を閉じた。
「わかってる。犬がいたんだろ?なんで犬なんかいるんだ?」
義翔の言葉に弥信は無言で頷いた。
「迷い込んだ⋯とか?」
「学校にか?」
結仁の言葉に義翔は訝しげに後輩に視線をむけた。
「それもそっか⋯」
「なるほど」と納得した結仁 はボソリと呟いた。
「ごめん。2人ともありがとう。だいぶ落ち着いたわ」
「んーそうか?⋯なら気をつけて帰れよ?」
そう言うと、義翔と結仁が差し出された手につかまり弥信は立ち上がりぎこちない笑みを浮かべた。
「うん。ありがとう。2人も気をつけてね」
「おう!」と手を挙げる義翔と「はい」と素直は返事をする結仁に手を振ると弥信は、廊下を歩いて行った。
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