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第二話 春はあけぼの黒い蜘蛛
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次の日、弥信が学校に行き憂鬱な気分でクラスの戸を開けた。教室に入ると、いつもは嫌みたらしく弥信の席に座っている女子もそれを取り巻いている奴らも今日はなかった。見ると、何やら自分たちの席でコソコソと話しているようだった。しかし、そこにはいつも突っかかってくる女子生徒の姿はなかった。
(へぇ、珍しい。休みかな?バカでも風邪はひくんだ。まぁ今日は平和でいいや)
そう思いながら弥信は席に着いた。
授業がはじまると、カンカンカンカンと黒板を走るチョークの音、先生の淡々とした話を聞いていた弥信は欠伸を噛み殺した。そして視線を落とすと、書いていたノートの上に黒い小さな蜘蛛がいることに気づいた。
(ありゃ、蜘蛛さぁんどいてくださーい。ノートとれないよー)
ノートをバサバサと蜘蛛を落とすように振るが蜘蛛はカサカサと弥信の手の上にのぼった。するとチクリと針で刺したような痛みが弥信の手に走った。
「いたっ!」
思わず弥信は声を出し立ち上がった。
「大丈夫か安堂」
その声に先生は黒板から弥信に視線を移した。
「えーっと·····」
先生やクラスメイトの視線を一気に集めた弥信は目を泳がせた。
「なん⋯でもないです。すみません」
「寝ぼけてるなら顔洗ってこいよ」
そう言い授業に戻った先生に「はぁい」と弥信は小さく言うと席に座った。そして自分の手を見るが手には噛まれたような痕はなかった。
(おなしいなぁ⋯)
そう考えまじまじと自分の手を見ていると、いじめっ子の取り巻きがいる席からクスクスと笑い声が聞こえた。それにムッとしながら弥信は、再び弥信は退屈な授業に戻った。
キーンコーンカーンコーン。部活がない弥信 は家に帰るため、教室をあとにした。
夕焼けのオレンジで包まれる帰り道、弥信が歩いていると、どこからか「ヒョー⋯ヒョー」という聞いたことがない鳴き声がした。辺りを見渡したがそこには鳥も人すらいなかった。
「ヒョーヒョー」
再びした鳴き声が背後からしたことに気づいた弥信 は振り返り、声がした上の方に視線を向け息を飲んだ。一軒家の黒い瓦屋根の上に頭は猿、胴体はタヌキ、虎のような足に蛇のしっぽを揺らした何ともチグハグな生物が立ち弥信を見下ろしていた。数秒だが弥信には数十分にも思えたその時間は、チグハグな生き物が弥信の頭上を飛び越えて行ったことで終わりを迎えた。弥信はヘナヘナとその場に座り込んだ。
「何なの今のは⋯」
ふと、弥信が視線を向けると表札が目に入った。そこには「今橋」と書かれていた。
「今橋って⋯」
昨日、弥信をバカにしてきたクラスメイトの顔を思い出し顔を顰めた。
「⋯まさかね」
恐怖と少し悪意のある考えを振り払うかのように弥信は頭を振ると立ち上がり、パンパンとスカートを叩き家路を足早に歩きだした。
(へぇ、珍しい。休みかな?バカでも風邪はひくんだ。まぁ今日は平和でいいや)
そう思いながら弥信は席に着いた。
授業がはじまると、カンカンカンカンと黒板を走るチョークの音、先生の淡々とした話を聞いていた弥信は欠伸を噛み殺した。そして視線を落とすと、書いていたノートの上に黒い小さな蜘蛛がいることに気づいた。
(ありゃ、蜘蛛さぁんどいてくださーい。ノートとれないよー)
ノートをバサバサと蜘蛛を落とすように振るが蜘蛛はカサカサと弥信の手の上にのぼった。するとチクリと針で刺したような痛みが弥信の手に走った。
「いたっ!」
思わず弥信は声を出し立ち上がった。
「大丈夫か安堂」
その声に先生は黒板から弥信に視線を移した。
「えーっと·····」
先生やクラスメイトの視線を一気に集めた弥信は目を泳がせた。
「なん⋯でもないです。すみません」
「寝ぼけてるなら顔洗ってこいよ」
そう言い授業に戻った先生に「はぁい」と弥信は小さく言うと席に座った。そして自分の手を見るが手には噛まれたような痕はなかった。
(おなしいなぁ⋯)
そう考えまじまじと自分の手を見ていると、いじめっ子の取り巻きがいる席からクスクスと笑い声が聞こえた。それにムッとしながら弥信は、再び弥信は退屈な授業に戻った。
キーンコーンカーンコーン。部活がない弥信 は家に帰るため、教室をあとにした。
夕焼けのオレンジで包まれる帰り道、弥信が歩いていると、どこからか「ヒョー⋯ヒョー」という聞いたことがない鳴き声がした。辺りを見渡したがそこには鳥も人すらいなかった。
「ヒョーヒョー」
再びした鳴き声が背後からしたことに気づいた弥信 は振り返り、声がした上の方に視線を向け息を飲んだ。一軒家の黒い瓦屋根の上に頭は猿、胴体はタヌキ、虎のような足に蛇のしっぽを揺らした何ともチグハグな生物が立ち弥信を見下ろしていた。数秒だが弥信には数十分にも思えたその時間は、チグハグな生き物が弥信の頭上を飛び越えて行ったことで終わりを迎えた。弥信はヘナヘナとその場に座り込んだ。
「何なの今のは⋯」
ふと、弥信が視線を向けると表札が目に入った。そこには「今橋」と書かれていた。
「今橋って⋯」
昨日、弥信をバカにしてきたクラスメイトの顔を思い出し顔を顰めた。
「⋯まさかね」
恐怖と少し悪意のある考えを振り払うかのように弥信は頭を振ると立ち上がり、パンパンとスカートを叩き家路を足早に歩きだした。
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