王女になるのはこの私

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「ウィラ…?」


中庭で呆然と立ち尽くす私を、彼女は気づかないフリをするのが空気的に分かってしまった。


色とりどりの薔薇の庭園。咲き誇る花。美しい光景。


彼女はその中に完璧に擬態するように、美しく着飾っていた。


桃色のドレスに煌めくティアラ、豪華な装飾品を身につけ、中庭のテーブルで優雅に紅茶を飲んでいる。


私は土で汚れたエプロンの裾を握りしめて彼女を見詰めた。


どこからどう見てもウィラだ。立ち回り、仕草、上品にしようと頑張ってる姿は間違いなくウィラだ。


そしてウィラはお付きの者に、マルディータ様、とか、プリンセス、と呼ばれていた。


マルディータ。私の、本当の名前。


「嫌ねぇ、下賎な視線が突き刺さって、ティータイムが台無しだわ」


わざとらしいため息と共にウィラが立ち上がってこちらを見た。


見ないふりは辞めにしたようだった。


「…ウィラ、だよね…?」


私は1歩踏み出して彼女に聞いた。声は震えていた。


赤い瞳が私を冷たく突き放した。


「まあなんて無礼な事。この国のプリンセスに向かってなんたる戯言。ウィラですって?誰の事かしら。」


ヒュッと喉がなる。孤児院であんなに仲の良かった彼女が。上品だけど強がりで、正義感の強いあの子が、そんな。


「アンジェ!ここにいたのか。」


師匠の声が後ろから掛かってハッとする。先程まで庭園の管理について王宮の者と話をしていたようだ。



師匠はウィラの姿を見て慌ててその場に膝をついた。


「これはこれは、プリンセス・マルディータ様。王族の庭に無断で立ち入る勝手な行動、どうかお許しください。私、庭師のファーチェと申します。こちらは弟子のアンジェでございます。」


中々頭を下げない私を見て、また師匠は慌てて私の頭を掴んで下げさせた。


私はそれどころじゃなかった。ウィラがやってる事に頭が追いついていなくて、パニック状態だ。



「あら、そう。興味無いわ。それより貴方のお弟子さん、かなり無礼でしてよ。さっさとつまみ出してちょうだいな。折角のお茶が土の匂いで台無しだわ。どうしてくれるのかしら?」



「大変申し訳ありません!すぐに下がらせます!後ほどきつく罰を与えておきますのでどうかお許しを。」


師匠はまた慌てて私を中庭から連れ出した。と言うより、引きずり出した。


「アンジェっお前プリンセスに何をしたんだ!中庭の現在の状態を観察して来いって言ったのに余計な事しおって!」


「し、師匠…プリンセスって…」


「はぁ?お前も知ってんだろ、プリンセス・マルディータ。15年前の反乱で死んだと思われてた、現国王の妹君。かなり贅沢放題やってるって話だ。

容赦もないから逆らったら片っ端から殺されるってのも聞いた。絶対に怒らすんじゃねえぞ。」


私の顔は強ばってしまった。脳がついに理解してしまった。


ウィラは、私に成りすましているんだと。



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