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第1話 氷華の少女と炎と風と、水
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魔法は血に宿り、魔術は石に宿る――
この世界で“力”を持つ者は、生まれながらにして決まっていた。
貴族が頂点に立ち、平民はただ命を賭して戦うだけ。
だが、そんな階級に支配された軍事学院に、一人の異端が現れる。
家柄も後ろ盾もない。けれど、その少年は、、、
――これは、地を這う者が、天を喰らう物語。
魔石――それは、かつて人類が偶然に手にした“力の結晶”だった。
その美しさと莫大なエネルギーは、世界を進歩させる希望となるはずだった。だが、人々はそれを武器に変えた。
魔術の技術が発展し、魔石を操る術が戦争を引き起こす。国家は争い、国境は血で塗り替えられ、やがて“魔石戦争”と呼ばれる時代が幕を開けた。
長引く戦争の中で、権力は軍に集中し、国政は名ばかりのものとなった。
そして、魔法を使う血統の存在が、戦場で優位を占めるようになったとき――人々は血を重んじるようになる。
すなわち、貴族制度の誕生である。
貴族の中でも特に高位に位置する三家――『御三家』。
それに続く実力と名誉を持つ七家――通称『煌家(こうけ)』。
その他、下位貴族や平民たちはその下に位置づけられ、魔力は生まれにより価値を決められるものとなった。
そんな世界で、力を求める若者たちが集うのが、軍属魔術教育機関――国家統合魔導学院である。
ここでは、階級に応じた教育が行われていた。
将官――大将・中将・少将。
佐官――大佐・中佐・少佐。
尉官――大尉・中尉・少尉。
下士官――曹長・軍曹・伍長。
そして一般兵――上等兵・一等兵・二等兵。
学院では、貴族を中心とした上位クラスと、一般出身の下位クラスに分けられる。
上位クラスの中でも成績上位者は中尉に任命され、
下位層や下位クラスの上位者が上等兵に、
それ以外は一般兵として戦地に赴くことになる。
そして、今日――
国家統合魔導学院に新たな年度が始まる。
黒髪の男は、校門をくぐりながら、大きく息を吐いた。
(入学式、ね……)
厳粛な雰囲気の中、広大な講堂の扉をくぐると、すでに生徒たちが整然と座っていた。
最前列には誇らしげな制服を着た上位クラスの生徒たち。
その後ろに控えるように、下位クラスの生徒が座る。
男は迷うことなく、下位クラスの一角に腰を下ろした。
入学者代表の挨拶
入学式が始まり、壇上に立つのは煌家に名を連ねる赤羽家出身の男子生徒ーー赤羽 拓真(あかばね たくま)。
彼は煌家の名を背負うにふさわしい、堂々たる態度で前に立った。真っすぐに伸びた背筋、鋭い目つき、そしてその雰囲気はまさに“貴族”そのものだった。煌家の出自からくる高貴さと、他者を寄せ付けないプライドが、彼の立ち振る舞いに滲み出ている。
拓真は一歩前に踏み出し、口を開く。
「――我々、煌家はこの学院の中でも一際名を馳せる家系です。血統が物を言うこの世界で、我々煌家はその名に恥じぬよう、これからも常にトップを目指し、努力を続ける所存です。」
会場の雰囲気が一瞬、凍りつく。
「この学院に集った皆さんは、ただの魔導士ではありません。国を、未来を担う者たちです。自分の力を過信せず、我々の誇り高き血統に恥じぬよう、日々精進するべきです。」
拓真は一度、強く目を閉じると、再び開き、全員を見渡した。
「私――赤羽拓真は、この学院を、いや、この世界を制する者となるでしょう。どうぞ、よろしく。」
その言葉が会場に静かな緊張を走らせ、拓真は颯爽と壇上を降りた。
生徒会長の挨拶
壇上に、白銀の髪が美しく揺れる少女が現れた。
彼女の背筋は凛と伸び、その立ち姿は空気を震わせるような威圧感すら持っていた。
「ご入学、おめでとうございます。皆さんを代表して、私より一言、歓迎の辞を述べさせていただきます」
そう口を開いたのは、生徒会長――氷室 雪華(ひむろ せっか)。
御三家のひとつ、氷室家の令嬢。冷静沈着、容赦のない評価で知られ、学院で彼女を敵に回す者はほとんどいない。
その声は、氷の刃のように静かで、だが確かな力を秘めていた。
「ここにいる皆さんは、国を背負う魔導士候補です。血に誇りを持つ者、力に自信を持つ者、努力を積み重ねてきた者。ですが――戦場では、いずれも言い訳にはなりません。実力がすべてです」
目を閉じ、微かに息を吸って、彼女は言い放つ。
「この学院においても、それは同じです。どうか、誇り高く、自らを示してください」
拍手が響く中、男は淡々とその言葉を聞いていた。
校長の挨拶
続いて壇上に現れたのは、白髪混じりの老年の男――徳田 海道(とくだ かいどう)校長。
彼の姿はどこか威厳があり、ただの老人というわけではない。その眼差しには多くの経験を経た深みがあり、全身から滲み出る気迫は、年齢に関係なく誰もが感じ取ることができた。校長は一礼し、静かに口を開いた。
「新たな学び舎に足を踏み入れた皆さん、ようこそ国家統合魔導学院へ。」
彼の声は静かでありながらも、強い力を感じさせるものだった。
「我々の使命は単なる教育にとどまるものではありません。魔法、魔術、それらの力を正しく使いこなす者を育て、そして、この世界を変えていく者を送り出すことです。」
「私たちは、時として力の使い方を誤ることがあります。ですが、その誤りを犯さぬよう――常に自分を律し、他者を思いやる心を忘れてはなりません。」
「我々校舎に集う全員が、ただの力を追求するのではなく、その先に何があるのかを考え、己の道を貫いてほしいと願っています。」
徳田校長は、一呼吸置くと、さらに強い声で続けた。
「それが、魔法を使う者に課された、最も重い義務であり――誇りである。」
会場に深い静寂が広がる中、彼の言葉が全員に強く響き渡った。
⸻
入学式が終わると、生徒たちはそれぞれのクラスに分かれ、教室へと向かった。
下位クラスの教室に入ると、さっそく周囲がささやき始めた。
「氷室さん、やっぱり綺麗だったな……」
「でも、誰にも心開かないんだろ?生徒会でも近づける人いないって噂」
「そりゃ御三家だもんな。雲の上の存在ってやつ?」
男はその会話を横で「ふーん」と相槌を打ちながら聞き流していた。
そんな彼のもとに、声がかかる。
「よぉ、新入り! 一人か?」
「良かったら、仲良くしてくれよ」
声をかけてきたのは、明るい表情の少年――原 建人(はら けんと)と、無口だがどこか優しげな大木 竜樹(おおき りゅうき)。
主人公は軽く微笑んで応じた。
「よろしく。俺は……田村隆晴。よろしく」
簡単な自己紹介の時間が過ぎた後、三人は意気投合し、昼食を一緒にとることになった。
学院近くの喫茶店に入り、窓際の席に座る。
大木が言う「俺、火の魔法が使えるんだ。まだまだ制御難しいけど、戦闘じゃまあまあ頼れるぜ?」
続いて原が「俺は風。支援系中心だけど……火力も出せるようになりたい」
「へぇ……二人とも、すごいね」
隆晴が微笑むと、今度は建人が尋ねてくる。
「で、隆晴は? 何の魔法、使えるんだ?」
隆晴は一瞬、迷うように言葉を止めた。だが、すぐに目を細めて、静かに答えた。
「……水、かな。一応」
「へぇ、水か。珍しいな。なんかクールでかっこいい!」
そんな他愛もない会話を交わしながら、三人はランチを終え、それぞれの寮へと戻っていった。
⸻
その夜。
隆晴の携帯が震え、着信が表示された。
「……はい」
『よう。今日の様子はどうだった?』
懐かしさと少しの緊張が入り混じる声。
隆晴は、受話器に向かって静かに答えた。
「……まだ初日です。何もないですよ」
『そうか。無理はするな』
「……ええ。では、また連絡します」
通話が切れたあと、隆晴はベッドに体を沈め、天井を見上げた。
誰にも知られてはならない、“本当の目的”。
それを隠して、生き抜かなくてはならない学院生活の、最初の一日が終わった。
この世界で“力”を持つ者は、生まれながらにして決まっていた。
貴族が頂点に立ち、平民はただ命を賭して戦うだけ。
だが、そんな階級に支配された軍事学院に、一人の異端が現れる。
家柄も後ろ盾もない。けれど、その少年は、、、
――これは、地を這う者が、天を喰らう物語。
魔石――それは、かつて人類が偶然に手にした“力の結晶”だった。
その美しさと莫大なエネルギーは、世界を進歩させる希望となるはずだった。だが、人々はそれを武器に変えた。
魔術の技術が発展し、魔石を操る術が戦争を引き起こす。国家は争い、国境は血で塗り替えられ、やがて“魔石戦争”と呼ばれる時代が幕を開けた。
長引く戦争の中で、権力は軍に集中し、国政は名ばかりのものとなった。
そして、魔法を使う血統の存在が、戦場で優位を占めるようになったとき――人々は血を重んじるようになる。
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貴族の中でも特に高位に位置する三家――『御三家』。
それに続く実力と名誉を持つ七家――通称『煌家(こうけ)』。
その他、下位貴族や平民たちはその下に位置づけられ、魔力は生まれにより価値を決められるものとなった。
そんな世界で、力を求める若者たちが集うのが、軍属魔術教育機関――国家統合魔導学院である。
ここでは、階級に応じた教育が行われていた。
将官――大将・中将・少将。
佐官――大佐・中佐・少佐。
尉官――大尉・中尉・少尉。
下士官――曹長・軍曹・伍長。
そして一般兵――上等兵・一等兵・二等兵。
学院では、貴族を中心とした上位クラスと、一般出身の下位クラスに分けられる。
上位クラスの中でも成績上位者は中尉に任命され、
下位層や下位クラスの上位者が上等兵に、
それ以外は一般兵として戦地に赴くことになる。
そして、今日――
国家統合魔導学院に新たな年度が始まる。
黒髪の男は、校門をくぐりながら、大きく息を吐いた。
(入学式、ね……)
厳粛な雰囲気の中、広大な講堂の扉をくぐると、すでに生徒たちが整然と座っていた。
最前列には誇らしげな制服を着た上位クラスの生徒たち。
その後ろに控えるように、下位クラスの生徒が座る。
男は迷うことなく、下位クラスの一角に腰を下ろした。
入学者代表の挨拶
入学式が始まり、壇上に立つのは煌家に名を連ねる赤羽家出身の男子生徒ーー赤羽 拓真(あかばね たくま)。
彼は煌家の名を背負うにふさわしい、堂々たる態度で前に立った。真っすぐに伸びた背筋、鋭い目つき、そしてその雰囲気はまさに“貴族”そのものだった。煌家の出自からくる高貴さと、他者を寄せ付けないプライドが、彼の立ち振る舞いに滲み出ている。
拓真は一歩前に踏み出し、口を開く。
「――我々、煌家はこの学院の中でも一際名を馳せる家系です。血統が物を言うこの世界で、我々煌家はその名に恥じぬよう、これからも常にトップを目指し、努力を続ける所存です。」
会場の雰囲気が一瞬、凍りつく。
「この学院に集った皆さんは、ただの魔導士ではありません。国を、未来を担う者たちです。自分の力を過信せず、我々の誇り高き血統に恥じぬよう、日々精進するべきです。」
拓真は一度、強く目を閉じると、再び開き、全員を見渡した。
「私――赤羽拓真は、この学院を、いや、この世界を制する者となるでしょう。どうぞ、よろしく。」
その言葉が会場に静かな緊張を走らせ、拓真は颯爽と壇上を降りた。
生徒会長の挨拶
壇上に、白銀の髪が美しく揺れる少女が現れた。
彼女の背筋は凛と伸び、その立ち姿は空気を震わせるような威圧感すら持っていた。
「ご入学、おめでとうございます。皆さんを代表して、私より一言、歓迎の辞を述べさせていただきます」
そう口を開いたのは、生徒会長――氷室 雪華(ひむろ せっか)。
御三家のひとつ、氷室家の令嬢。冷静沈着、容赦のない評価で知られ、学院で彼女を敵に回す者はほとんどいない。
その声は、氷の刃のように静かで、だが確かな力を秘めていた。
「ここにいる皆さんは、国を背負う魔導士候補です。血に誇りを持つ者、力に自信を持つ者、努力を積み重ねてきた者。ですが――戦場では、いずれも言い訳にはなりません。実力がすべてです」
目を閉じ、微かに息を吸って、彼女は言い放つ。
「この学院においても、それは同じです。どうか、誇り高く、自らを示してください」
拍手が響く中、男は淡々とその言葉を聞いていた。
校長の挨拶
続いて壇上に現れたのは、白髪混じりの老年の男――徳田 海道(とくだ かいどう)校長。
彼の姿はどこか威厳があり、ただの老人というわけではない。その眼差しには多くの経験を経た深みがあり、全身から滲み出る気迫は、年齢に関係なく誰もが感じ取ることができた。校長は一礼し、静かに口を開いた。
「新たな学び舎に足を踏み入れた皆さん、ようこそ国家統合魔導学院へ。」
彼の声は静かでありながらも、強い力を感じさせるものだった。
「我々の使命は単なる教育にとどまるものではありません。魔法、魔術、それらの力を正しく使いこなす者を育て、そして、この世界を変えていく者を送り出すことです。」
「私たちは、時として力の使い方を誤ることがあります。ですが、その誤りを犯さぬよう――常に自分を律し、他者を思いやる心を忘れてはなりません。」
「我々校舎に集う全員が、ただの力を追求するのではなく、その先に何があるのかを考え、己の道を貫いてほしいと願っています。」
徳田校長は、一呼吸置くと、さらに強い声で続けた。
「それが、魔法を使う者に課された、最も重い義務であり――誇りである。」
会場に深い静寂が広がる中、彼の言葉が全員に強く響き渡った。
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入学式が終わると、生徒たちはそれぞれのクラスに分かれ、教室へと向かった。
下位クラスの教室に入ると、さっそく周囲がささやき始めた。
「氷室さん、やっぱり綺麗だったな……」
「でも、誰にも心開かないんだろ?生徒会でも近づける人いないって噂」
「そりゃ御三家だもんな。雲の上の存在ってやつ?」
男はその会話を横で「ふーん」と相槌を打ちながら聞き流していた。
そんな彼のもとに、声がかかる。
「よぉ、新入り! 一人か?」
「良かったら、仲良くしてくれよ」
声をかけてきたのは、明るい表情の少年――原 建人(はら けんと)と、無口だがどこか優しげな大木 竜樹(おおき りゅうき)。
主人公は軽く微笑んで応じた。
「よろしく。俺は……田村隆晴。よろしく」
簡単な自己紹介の時間が過ぎた後、三人は意気投合し、昼食を一緒にとることになった。
学院近くの喫茶店に入り、窓際の席に座る。
大木が言う「俺、火の魔法が使えるんだ。まだまだ制御難しいけど、戦闘じゃまあまあ頼れるぜ?」
続いて原が「俺は風。支援系中心だけど……火力も出せるようになりたい」
「へぇ……二人とも、すごいね」
隆晴が微笑むと、今度は建人が尋ねてくる。
「で、隆晴は? 何の魔法、使えるんだ?」
隆晴は一瞬、迷うように言葉を止めた。だが、すぐに目を細めて、静かに答えた。
「……水、かな。一応」
「へぇ、水か。珍しいな。なんかクールでかっこいい!」
そんな他愛もない会話を交わしながら、三人はランチを終え、それぞれの寮へと戻っていった。
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その夜。
隆晴の携帯が震え、着信が表示された。
「……はい」
『よう。今日の様子はどうだった?』
懐かしさと少しの緊張が入り混じる声。
隆晴は、受話器に向かって静かに答えた。
「……まだ初日です。何もないですよ」
『そうか。無理はするな』
「……ええ。では、また連絡します」
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