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第一章 旅立ちの前に
第91話 サーラ大興奮
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「だが――」
「それよりマキーナ国に派遣されるに当たって、どうしてもベッカに頼んでおきたい事があるんだ」
ベッカがこれ以上、サーラにも協力を求めるべきだと提案してくる前に、さっさと話を終わらせようと研一は本題に入っていく。
「頼みたい事?」
「俺がマキーナ国に行っている間、センちゃんの面倒を見ていてほしいんだ」
「ふむ……」
(今更、そこまで神妙な顔をして頼むような事か?)
ベッカは研一からの提案に、内心では拍子抜けしていた。
というのも、前回のドリュアス国でテレレの努力をドリュアスの民が実感しているかを確かめる為、研一は悪党の演技を繰り広げたのだが――
民の怒りが研一の仲間であるセンに向かう可能性があった為、研一は先にセンをサラマンドラ国に帰し、ベッカに預けていたのだ。
(いや、この男の過去を考えれば、それも仕方のない事か……)
そこでベッカは、そもそも研一がこの世界に来た大元の原因を思い出す。
恋人を自分の知らない場所で襲われた事が切欠であり――
今度こそ自分の手で大事な者を守り抜きたいと思っていると考えれば、国を跨いだ離れた場所に長期間預けるなんて、相当に覚悟が必要だろうと思い直す。
――ましてやマニュアルちゃんの事があった後なのだ。
国やサーラを守る戦士として魔物や魔族相手に命のやり取りを繰り返し、何度も仲間を見送ってきたベッカとは死生観がそもそも違い過ぎる。
(……思っていたより遥かに、私は信頼されていたのだな)
「国の事とかで忙しいんだとは思う。その苦労が解かるなんて口が裂けたって言えない。それでも頼む。ベッカにしか頼めないんだ……」
神妙に考え込んでいるベッカの姿に、センの面倒を見ている余裕がないと思ったのだろう。
研一は膝を付くと、躊躇う事も無く土下座して必死で頼み込む。
「やめろ。頭を上げてくれ。任せてもらう以上、無責任な返事は出来ないから色々と考えていただけだ。必ず何とかするから、返事には少し時間をくれ」
「ああ、ありが――」
そこで研一が土下座を止めて顔を上げた瞬間だった。
「ベッカ。少しいいですか」
コンコンというノックの音がして、サーラの声が扉の外から響いてくる。
「少し急ぎの用件があって研一の部屋に行ったのですが、不在らしくて。よければ一緒に探してもらえませんか?」
おそらくマキーナ国からの派遣要請について、話したい事でもあるのかもしれない。
研一の事を探しているようだった。
(ああ、なるほど。こういう時にサーラに見せ付ける為に脱いだのか)
そこで研一はベッカの行動に、ようやく得心する。
ベッカの部屋を訪ねてくる可能性が一番高そうな人間と言えば、考えるまでもなくサーラだし、いくらベッカが自分に協力してくれているとはいえ――
さすがに誰にでも裸を見られていいと思っている訳ではないだろう。
「俺ならここに居るぜ、お姫様。入って来いよ」
それならばベッカの献身を無駄にする訳に、いかないとばかりに研一は気合を入れたかと思うと――
サーラを部屋に促しつつ、素早く自分の服を着崩した。
「待っ――」
「ああ、ここに居たんです――」
ベッカが一瞬、慌てたような声を上げるが一足遅い。
サーラが扉を開けて、部屋に入ってきたかと思うと言葉の途中で固まる。
「やっぱり気の強い女を無理やりヤるってのが、オーソドックスだけど最高なんだよな」
そこに居たのは、まるで先程まで情事に励んでいたと言わんばかりに、服を着直すような姿をしている研一。
そして、冷や汗をダラダラと流しているベッカであった。
(……私は今日、死ぬかもしれない)
そもそもベッカが研一の悪行を見せ付けようと思っていた相手に、サーラは含まれていない。
サーラもベッカ同様、既に研一の事情を知っていて意味なんてないのだから。
「いやあ、本当に興奮したぜ。どうしてこう、嫌がる女の声ってのはソソるんだろうな」
それでもベッカが死期を感じずに居られないのは、事情を知ったサーラが心の底から研一を愛してしまった事を知っているからであり――
演技の言葉とはいえ、愛した男が別の女を当て付けのように褒めているところなんて、気分がいい筈もない事くらい想像出来るからだ。
「しかもそういう態度だけでも涎モノだってのに、見た目だって非の打ち所がねえ大人の女だからな。年の割にはガキっぽいところのある、どっかのお姫様とは、えらい違い――」
ドンドン顔を蒼くしているベッカの様子に気付くどころか、むしろ協力してもらっているんだからといつも以上に全力で悪党ぶっていた研一であったが――
そこで気付いた。
予想に反して、全く悪感情がサーラの方から流れてこない。
(あれ、おかしいな? 部下がこんな目に遭っているのを見せられたら絶対に怒るタイプだとは思うんだけど――)
不思議に思い、サーラのに意識を向けた研一は、予想外の光景を目にする。
「……」
サーラが鼻血を流していた。
一体何が起きているのかとサーラの視線の先を追う研一であったが、何を見ていたかに気付いて絶句する。
(……大丈夫か、このお姫様?)
サーラが見ていたのは、はだけた服から覗いている研一の鎖骨や胸元であった。
腹心が怯えた表情で裸を晒している事に気付くどころか、自分が鼻血を流している事すら解かっていない。
その目に今の光景を焼き付ける事以外、忘れてしまったかのように研一の露出した肌を見続けている。
「……おい、この変態淫乱お姫様」
あまりにも酷過ぎるサーラの姿に。
もはや演技だけでなく、半分くらいは本心から罵倒の言葉が研一の口から飛び出してしまうが――
「あっ――」
サーラは罵倒された事にも気付かず。
研一が服を直して肌を隠した事に、残念そうに声を漏らしたかと思うと――
「な、なんという淫らな恰好を! 貴方には恥というモノがないのですか!」
(いや、ベッカの格好とか他にもっと色々と突っ込まないと駄目なところあるだろ……)
随分と的外れに感じる叫び声を上げ。
研一を呆れと戸惑いで何とも言えない表情にさせた挙句に。
(……私は教育を間違えてしまったのかもしれない)
ベッカからは、酷く悲しげな視線を向けられてしまったのであった。
「それよりマキーナ国に派遣されるに当たって、どうしてもベッカに頼んでおきたい事があるんだ」
ベッカがこれ以上、サーラにも協力を求めるべきだと提案してくる前に、さっさと話を終わらせようと研一は本題に入っていく。
「頼みたい事?」
「俺がマキーナ国に行っている間、センちゃんの面倒を見ていてほしいんだ」
「ふむ……」
(今更、そこまで神妙な顔をして頼むような事か?)
ベッカは研一からの提案に、内心では拍子抜けしていた。
というのも、前回のドリュアス国でテレレの努力をドリュアスの民が実感しているかを確かめる為、研一は悪党の演技を繰り広げたのだが――
民の怒りが研一の仲間であるセンに向かう可能性があった為、研一は先にセンをサラマンドラ国に帰し、ベッカに預けていたのだ。
(いや、この男の過去を考えれば、それも仕方のない事か……)
そこでベッカは、そもそも研一がこの世界に来た大元の原因を思い出す。
恋人を自分の知らない場所で襲われた事が切欠であり――
今度こそ自分の手で大事な者を守り抜きたいと思っていると考えれば、国を跨いだ離れた場所に長期間預けるなんて、相当に覚悟が必要だろうと思い直す。
――ましてやマニュアルちゃんの事があった後なのだ。
国やサーラを守る戦士として魔物や魔族相手に命のやり取りを繰り返し、何度も仲間を見送ってきたベッカとは死生観がそもそも違い過ぎる。
(……思っていたより遥かに、私は信頼されていたのだな)
「国の事とかで忙しいんだとは思う。その苦労が解かるなんて口が裂けたって言えない。それでも頼む。ベッカにしか頼めないんだ……」
神妙に考え込んでいるベッカの姿に、センの面倒を見ている余裕がないと思ったのだろう。
研一は膝を付くと、躊躇う事も無く土下座して必死で頼み込む。
「やめろ。頭を上げてくれ。任せてもらう以上、無責任な返事は出来ないから色々と考えていただけだ。必ず何とかするから、返事には少し時間をくれ」
「ああ、ありが――」
そこで研一が土下座を止めて顔を上げた瞬間だった。
「ベッカ。少しいいですか」
コンコンというノックの音がして、サーラの声が扉の外から響いてくる。
「少し急ぎの用件があって研一の部屋に行ったのですが、不在らしくて。よければ一緒に探してもらえませんか?」
おそらくマキーナ国からの派遣要請について、話したい事でもあるのかもしれない。
研一の事を探しているようだった。
(ああ、なるほど。こういう時にサーラに見せ付ける為に脱いだのか)
そこで研一はベッカの行動に、ようやく得心する。
ベッカの部屋を訪ねてくる可能性が一番高そうな人間と言えば、考えるまでもなくサーラだし、いくらベッカが自分に協力してくれているとはいえ――
さすがに誰にでも裸を見られていいと思っている訳ではないだろう。
「俺ならここに居るぜ、お姫様。入って来いよ」
それならばベッカの献身を無駄にする訳に、いかないとばかりに研一は気合を入れたかと思うと――
サーラを部屋に促しつつ、素早く自分の服を着崩した。
「待っ――」
「ああ、ここに居たんです――」
ベッカが一瞬、慌てたような声を上げるが一足遅い。
サーラが扉を開けて、部屋に入ってきたかと思うと言葉の途中で固まる。
「やっぱり気の強い女を無理やりヤるってのが、オーソドックスだけど最高なんだよな」
そこに居たのは、まるで先程まで情事に励んでいたと言わんばかりに、服を着直すような姿をしている研一。
そして、冷や汗をダラダラと流しているベッカであった。
(……私は今日、死ぬかもしれない)
そもそもベッカが研一の悪行を見せ付けようと思っていた相手に、サーラは含まれていない。
サーラもベッカ同様、既に研一の事情を知っていて意味なんてないのだから。
「いやあ、本当に興奮したぜ。どうしてこう、嫌がる女の声ってのはソソるんだろうな」
それでもベッカが死期を感じずに居られないのは、事情を知ったサーラが心の底から研一を愛してしまった事を知っているからであり――
演技の言葉とはいえ、愛した男が別の女を当て付けのように褒めているところなんて、気分がいい筈もない事くらい想像出来るからだ。
「しかもそういう態度だけでも涎モノだってのに、見た目だって非の打ち所がねえ大人の女だからな。年の割にはガキっぽいところのある、どっかのお姫様とは、えらい違い――」
ドンドン顔を蒼くしているベッカの様子に気付くどころか、むしろ協力してもらっているんだからといつも以上に全力で悪党ぶっていた研一であったが――
そこで気付いた。
予想に反して、全く悪感情がサーラの方から流れてこない。
(あれ、おかしいな? 部下がこんな目に遭っているのを見せられたら絶対に怒るタイプだとは思うんだけど――)
不思議に思い、サーラのに意識を向けた研一は、予想外の光景を目にする。
「……」
サーラが鼻血を流していた。
一体何が起きているのかとサーラの視線の先を追う研一であったが、何を見ていたかに気付いて絶句する。
(……大丈夫か、このお姫様?)
サーラが見ていたのは、はだけた服から覗いている研一の鎖骨や胸元であった。
腹心が怯えた表情で裸を晒している事に気付くどころか、自分が鼻血を流している事すら解かっていない。
その目に今の光景を焼き付ける事以外、忘れてしまったかのように研一の露出した肌を見続けている。
「……おい、この変態淫乱お姫様」
あまりにも酷過ぎるサーラの姿に。
もはや演技だけでなく、半分くらいは本心から罵倒の言葉が研一の口から飛び出してしまうが――
「あっ――」
サーラは罵倒された事にも気付かず。
研一が服を直して肌を隠した事に、残念そうに声を漏らしたかと思うと――
「な、なんという淫らな恰好を! 貴方には恥というモノがないのですか!」
(いや、ベッカの格好とか他にもっと色々と突っ込まないと駄目なところあるだろ……)
随分と的外れに感じる叫び声を上げ。
研一を呆れと戸惑いで何とも言えない表情にさせた挙句に。
(……私は教育を間違えてしまったのかもしれない)
ベッカからは、酷く悲しげな視線を向けられてしまったのであった。
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