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第三章 理解は絶望と共に
第18話 向けられた想いはあまりに苦く
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「お前は、自分はあのセンという子を好き放題に犯し続けている極悪人、という事にしたいらしいが、それは無理なんだ」
「……どうしてだよ」
「そういう行為をしたのであれば、必ず痕跡というものが残る。大方、汚れも何もかも清めの炎で綺麗にしているだけだとでも言いたいのだろうが――」
この世界では風呂の代わりに清めの炎という、火傷する事なく汚れ等を燃やし尽くす事が出来る炎に、全身を包む事で身体を清潔に保っている。
だからその炎で徹底的に身を清めていたら、ゴミなんて全部焼き切れて痕跡なんて残らなくても問題ない筈。
この理屈の何がおかしいのか解からない研一であったが――
「子種というのは穢れか?」
(え、いや、逆に穢れじゃないなら何なんだ!?)
次に告げられた質問めいた言葉の意味が全く解からず。
何を言われているんだとばかりに混乱する事しか出来ない。
「確かにお世辞にも綺麗だとは言えないのは認める。望まない相手からの物だと考えれば悍ましいの一言だろう。穢れ呼ばわりしたくなるのも解からないでもない。だが、本来は子どもを宿す為に必要不可欠な神聖な物の筈ではないのか?」
「…………」
ドクドクと心臓が早鐘を打つ中、必死で思考を巡らせて反論を叩き出そうとする。
けれど何も出てこない。
出来たのは、そんなの屁理屈じゃないかと、負け惜しみの叫び声を上げてしまいそうになるのを必死で抑える事くらいだ。
(どうして予想出来なかった?)
少し遅れて頭の中を締めたのは後悔。
神聖だの何だのと言う話には未だ納得は出来ない。
屁理屈こねても穢れは穢れだろうが、なんて思わずには居られないけれど――
(肉には焼き跡一つ付かないし、髪だって燃えないんだ。精液にも効果がないかもって、何で俺は想像しなかった!?)
それでも絶対に予想出来ないという訳ではない。
頭を捻りに捻って注意深く考えていたならば、その可能性に気付く事自体は不可能ではなかった。
「もし姫様が相手だったなら、情事の後始末くらい姫様自身が済ませていたと考える事が出来ただろう。だから痕跡が全くなくても気になんてしてなかったよ。実際センが来る前まで、お前が姫様を好き放題に弄んでいるだなんて私も勘違いしてたしな」
後悔に打ち震える研一を尻目に、ベッカの説明は続いていく。
もし自分とサーラが情事を行なうのであれば、研一が周囲に与えているイメージから想像すれば、好き放題サーラを楽しむという形になる。
それは女としては屈辱的であり、そんな痕跡、絶対に誰にも見られたくないだろうからサーラ自身の手で徹底的に処理する筈だ。
「だが、お前がセンに無理やりそういう行為を迫っているというのなら、誰が後始末をしてるんだ? そもそもその為の道具は? 姫様なら備品の在処を知っているだろうが、お前は用意された物しか使わないだろう? それとも城のどこから道具を持ってくればいいか解かるか?」
「…………」
城内中の者に憎まれているとはいえ、それでも研一は救世主という賓客なのだ。
頼めば必要な物ならば大体用意してくれるが――
逆に言えば頼んでもない物は出て来ない。
――いくら賓客と言えど、隙あらば暴言ばかり放つ人間に、誰が好き好んで構いたいのかという話だ。
(どうしたら憎まれるかってばかり考えて日常の事を気にしなさ過ぎた……)
ベッカの言うとおり。
情事を楽しんでいたと言うのなら、後始末はどうしていたのかという言葉に反論する術が全く浮かばなかった。
「はっ、バレたらしょうがねえ」
だからって諦めて全面降伏するには、あまりにも早過ぎる。
ここで簡単に認められる程度の気持ちなら、誰からも恨まれる覚悟で悪党演技を続けたりなんてしていない。
「どうも俺のはガキに使うにはデカ過ぎて入らなくてな。あんだけ姫さんに大見得切っておきながら何もしてないってのは、みっともなくてよ」
センを好き放題していないという部分だけは認めてしまう。
ただセンが使い難かっただけで、自分は女なら子どもだろうが大人だろうが、性欲処理の道具としか見てない男だと装うとするが――
「……もう一つ助言させてもらう。本当に何が何でも隠したいと言うのなら、センともう少し口裏を合わせておいた方がいいぞ」
ベッカは全く取り合わない。
何故なら――
「菓子を届けに行った時、私がお前を無視してセンにしか話し掛けなかっただろう? お前を馬鹿にされていると思ったんだろうな。物凄いムッとしてたぞ」
もうとっくの昔に判断の時間は終わっているのだ。
今までの事は自分の推測に対する最後の確認であり――
悪人だという演技を押し通したいのなら、ここに気を付けた方がいいだなんて助言が出来てしまうくらいには――
研一が何か事情があって悪ぶっているだけの善人なのだと確信してしまっていた。
――そして、センのお陰で解かったなんてあの場で伝えて、センを傷付けたくなかったからこそ、わざわざ場所を移動したのだ。
「よっぽど懐かれてるんだな。ずっと騙されていた私が言う事でもないが、あの顔を見てお前があの子に乱暴しているなんて思える程には、鈍くも捻くれてもないつもりだ」
それでも研一やセンが甘かったのかと言えば、そうとも言い切れない。
ベッカが研一の演技に気付けたのは偶然に近い部分も多くあったからだ。
とある理由で研一の事を観察していなければ、初対面の悪印象を引き摺り続けて、真実に辿り着く事なんて出来なかっただろう。
(ずっと後悔してた。権力者におもちゃにされるのも、救世主におもちゃにされるのも変わらないなら、今後の国の事を考えれば子ども達を見捨てるべきだなんて思ってしまった事を……)
その理由こそ魔人の落とし子の一件。
一度は研一に言い包められて子どもを見捨てる選択をしたものの――
実際にセンの姿を自分の目で見て、こんな小さい子が性欲処理の道具に使われていくのかなんて、想像するだけで耐えられなくなった。
そこで自分が相手をするから、子どもには子どもらしい時間を与えてやってくれと嘆願するつもりで様子を窺っていたのだが――
(あんなに懐いてるんだ。いくら私でも、おかしいくらい思うさ)
予想に反してセンに悲壮感がない。
むしろ研一にべったりと言っていい程に懐いている。
おかしいなと思い、よくよく観察を続ければ情事の痕跡が一切出て来ない。
そこでベッカは研一が悪ぶった演技をしているだけであり、センには手を出すどころか、とても大事にしているのだろうという推測を立てたのだ。
――そして、それは正しかった。
「詳しくは解からないが、どうしても隠さなければならない理由がある事くらいは解かる。今回みたいにボロが出ないように、私にも何か協力させてくれないか?」
そうなると今まで事情も知らずに嫌っていた事への申し訳なさが押し寄せ。
あんな態度を取れば誰からも認められる事も無いと解っているだろうに、それでも子ども達を助けずに居られなかった研一の姿がトンデモなく格好良いものに見えてしまって――
ぶっちゃけると、ベッカは研一の事を好きになってしまっていた。
それは尊敬出来る一人の人間として。
同時に、魅力的な異性としても意識してしまう程に。
「好き勝手喚くんじゃねえよ! それ以上ふざけた事言うなら、身体で解からせてやってもいいんだぞ!」
当然だが、研一にそんな事を察する余裕なんてない。
今までの努力が全て無駄になるかもしれないという恐怖に導かれるまま、壁に押し付けるようにベッカに詰め寄るが――
「別にさ、お前が本当に私を抱きたいって言うなら私は構わないんだ。その、今更なんだと言われるかもしれんが、凄い奴だと思うし気に入ってるからな」
そんなのは気になる異性にやられたところで、嬉し恥ずかしの壁ドンイベントにしかならない。
ベッカは怯えの一つも見せず。
むしろ、満更でもないとばかりに頬を赤く染めて研一の顔を見詰め返す。
「ただな、そうやって震える手で触られても申し訳ないだけだ。本当に私としては歓迎したいところなんだが、それじゃあお前が傷付くだけだろう? 本心から私の事が欲しくなったら、また言ってくれ。初めての相手がお前になるなら大歓迎だよ」
抱きたくなる程の魅力がある女じゃなくてスマナイ、なんて付け加えると。
呆然と立ち尽くしている研一の横をすり抜け。
これで話は済んだとばかりに、ベッカは部屋を後にする。
(ああ、そうか。そういう事だったのか……)
自分以外誰も居なくなった部屋で、今になってようやく研一は理解する。
魔人の落とし子達を救出した件では、フェットや直接ぶちのめした男達に確実に恨まれているのは間違いないし、繋がりのあった他の権力者にだって鬱陶しがられた筈。
それなのにスキルが大して成長しなかった原因。
それが一体なんだったのかを。
(ベッカから貰ってた憎しみが消えたんだ……)
フェットや権力者達からの憎しみは、今までと同じように届いていたのだ。
ただ失ったモノがあっただけの話。
(これから本格的な戦いになるってのに、何で今なんだよ……)
そして失ったと気付いたからこそ解かった事がある。
ベッカこそ、この世界で誰よりも研一を蔑み、憎んでくれていた相手。
一番、力を与えてくれていた存在であり、それを失ってしまった自分の力は大きく落ちてしまっている。
(だからって諦めて堪るか……)
心が挫けそうになるが、歯を食い縛って自らを奮い立たせた。
力が弱くなったからこそ、踏ん張って前に進まなければならない。
(負けたら全員殺されるんだ……)
自身の事なんて省みずに頑張っているサーラ。
あれだけ悪態を吐きまくったのに自分の事を理解してくれたベッカ。
監禁された上に母親まで失い、それでも少しずつ笑ってくれるようになったセン。
誰も彼も良い子で、無惨に殺されていいとは思えないし――
自分の願いが叶わないなんて、想像するだけでも耐えられない。
(もう、綺麗事なんて言ってられない……)
悪党を退治したついでに恨まれようなんて、まどろっこしい事をしている暇なんてない。
誰からも恨まれて当たり前の悪事を働くとしよう。
それも国中を相手取る規模で。
静かに決意を固めると、研一は自分以外誰も居なくなった部屋を後にしたのであった。
「……どうしてだよ」
「そういう行為をしたのであれば、必ず痕跡というものが残る。大方、汚れも何もかも清めの炎で綺麗にしているだけだとでも言いたいのだろうが――」
この世界では風呂の代わりに清めの炎という、火傷する事なく汚れ等を燃やし尽くす事が出来る炎に、全身を包む事で身体を清潔に保っている。
だからその炎で徹底的に身を清めていたら、ゴミなんて全部焼き切れて痕跡なんて残らなくても問題ない筈。
この理屈の何がおかしいのか解からない研一であったが――
「子種というのは穢れか?」
(え、いや、逆に穢れじゃないなら何なんだ!?)
次に告げられた質問めいた言葉の意味が全く解からず。
何を言われているんだとばかりに混乱する事しか出来ない。
「確かにお世辞にも綺麗だとは言えないのは認める。望まない相手からの物だと考えれば悍ましいの一言だろう。穢れ呼ばわりしたくなるのも解からないでもない。だが、本来は子どもを宿す為に必要不可欠な神聖な物の筈ではないのか?」
「…………」
ドクドクと心臓が早鐘を打つ中、必死で思考を巡らせて反論を叩き出そうとする。
けれど何も出てこない。
出来たのは、そんなの屁理屈じゃないかと、負け惜しみの叫び声を上げてしまいそうになるのを必死で抑える事くらいだ。
(どうして予想出来なかった?)
少し遅れて頭の中を締めたのは後悔。
神聖だの何だのと言う話には未だ納得は出来ない。
屁理屈こねても穢れは穢れだろうが、なんて思わずには居られないけれど――
(肉には焼き跡一つ付かないし、髪だって燃えないんだ。精液にも効果がないかもって、何で俺は想像しなかった!?)
それでも絶対に予想出来ないという訳ではない。
頭を捻りに捻って注意深く考えていたならば、その可能性に気付く事自体は不可能ではなかった。
「もし姫様が相手だったなら、情事の後始末くらい姫様自身が済ませていたと考える事が出来ただろう。だから痕跡が全くなくても気になんてしてなかったよ。実際センが来る前まで、お前が姫様を好き放題に弄んでいるだなんて私も勘違いしてたしな」
後悔に打ち震える研一を尻目に、ベッカの説明は続いていく。
もし自分とサーラが情事を行なうのであれば、研一が周囲に与えているイメージから想像すれば、好き放題サーラを楽しむという形になる。
それは女としては屈辱的であり、そんな痕跡、絶対に誰にも見られたくないだろうからサーラ自身の手で徹底的に処理する筈だ。
「だが、お前がセンに無理やりそういう行為を迫っているというのなら、誰が後始末をしてるんだ? そもそもその為の道具は? 姫様なら備品の在処を知っているだろうが、お前は用意された物しか使わないだろう? それとも城のどこから道具を持ってくればいいか解かるか?」
「…………」
城内中の者に憎まれているとはいえ、それでも研一は救世主という賓客なのだ。
頼めば必要な物ならば大体用意してくれるが――
逆に言えば頼んでもない物は出て来ない。
――いくら賓客と言えど、隙あらば暴言ばかり放つ人間に、誰が好き好んで構いたいのかという話だ。
(どうしたら憎まれるかってばかり考えて日常の事を気にしなさ過ぎた……)
ベッカの言うとおり。
情事を楽しんでいたと言うのなら、後始末はどうしていたのかという言葉に反論する術が全く浮かばなかった。
「はっ、バレたらしょうがねえ」
だからって諦めて全面降伏するには、あまりにも早過ぎる。
ここで簡単に認められる程度の気持ちなら、誰からも恨まれる覚悟で悪党演技を続けたりなんてしていない。
「どうも俺のはガキに使うにはデカ過ぎて入らなくてな。あんだけ姫さんに大見得切っておきながら何もしてないってのは、みっともなくてよ」
センを好き放題していないという部分だけは認めてしまう。
ただセンが使い難かっただけで、自分は女なら子どもだろうが大人だろうが、性欲処理の道具としか見てない男だと装うとするが――
「……もう一つ助言させてもらう。本当に何が何でも隠したいと言うのなら、センともう少し口裏を合わせておいた方がいいぞ」
ベッカは全く取り合わない。
何故なら――
「菓子を届けに行った時、私がお前を無視してセンにしか話し掛けなかっただろう? お前を馬鹿にされていると思ったんだろうな。物凄いムッとしてたぞ」
もうとっくの昔に判断の時間は終わっているのだ。
今までの事は自分の推測に対する最後の確認であり――
悪人だという演技を押し通したいのなら、ここに気を付けた方がいいだなんて助言が出来てしまうくらいには――
研一が何か事情があって悪ぶっているだけの善人なのだと確信してしまっていた。
――そして、センのお陰で解かったなんてあの場で伝えて、センを傷付けたくなかったからこそ、わざわざ場所を移動したのだ。
「よっぽど懐かれてるんだな。ずっと騙されていた私が言う事でもないが、あの顔を見てお前があの子に乱暴しているなんて思える程には、鈍くも捻くれてもないつもりだ」
それでも研一やセンが甘かったのかと言えば、そうとも言い切れない。
ベッカが研一の演技に気付けたのは偶然に近い部分も多くあったからだ。
とある理由で研一の事を観察していなければ、初対面の悪印象を引き摺り続けて、真実に辿り着く事なんて出来なかっただろう。
(ずっと後悔してた。権力者におもちゃにされるのも、救世主におもちゃにされるのも変わらないなら、今後の国の事を考えれば子ども達を見捨てるべきだなんて思ってしまった事を……)
その理由こそ魔人の落とし子の一件。
一度は研一に言い包められて子どもを見捨てる選択をしたものの――
実際にセンの姿を自分の目で見て、こんな小さい子が性欲処理の道具に使われていくのかなんて、想像するだけで耐えられなくなった。
そこで自分が相手をするから、子どもには子どもらしい時間を与えてやってくれと嘆願するつもりで様子を窺っていたのだが――
(あんなに懐いてるんだ。いくら私でも、おかしいくらい思うさ)
予想に反してセンに悲壮感がない。
むしろ研一にべったりと言っていい程に懐いている。
おかしいなと思い、よくよく観察を続ければ情事の痕跡が一切出て来ない。
そこでベッカは研一が悪ぶった演技をしているだけであり、センには手を出すどころか、とても大事にしているのだろうという推測を立てたのだ。
――そして、それは正しかった。
「詳しくは解からないが、どうしても隠さなければならない理由がある事くらいは解かる。今回みたいにボロが出ないように、私にも何か協力させてくれないか?」
そうなると今まで事情も知らずに嫌っていた事への申し訳なさが押し寄せ。
あんな態度を取れば誰からも認められる事も無いと解っているだろうに、それでも子ども達を助けずに居られなかった研一の姿がトンデモなく格好良いものに見えてしまって――
ぶっちゃけると、ベッカは研一の事を好きになってしまっていた。
それは尊敬出来る一人の人間として。
同時に、魅力的な異性としても意識してしまう程に。
「好き勝手喚くんじゃねえよ! それ以上ふざけた事言うなら、身体で解からせてやってもいいんだぞ!」
当然だが、研一にそんな事を察する余裕なんてない。
今までの努力が全て無駄になるかもしれないという恐怖に導かれるまま、壁に押し付けるようにベッカに詰め寄るが――
「別にさ、お前が本当に私を抱きたいって言うなら私は構わないんだ。その、今更なんだと言われるかもしれんが、凄い奴だと思うし気に入ってるからな」
そんなのは気になる異性にやられたところで、嬉し恥ずかしの壁ドンイベントにしかならない。
ベッカは怯えの一つも見せず。
むしろ、満更でもないとばかりに頬を赤く染めて研一の顔を見詰め返す。
「ただな、そうやって震える手で触られても申し訳ないだけだ。本当に私としては歓迎したいところなんだが、それじゃあお前が傷付くだけだろう? 本心から私の事が欲しくなったら、また言ってくれ。初めての相手がお前になるなら大歓迎だよ」
抱きたくなる程の魅力がある女じゃなくてスマナイ、なんて付け加えると。
呆然と立ち尽くしている研一の横をすり抜け。
これで話は済んだとばかりに、ベッカは部屋を後にする。
(ああ、そうか。そういう事だったのか……)
自分以外誰も居なくなった部屋で、今になってようやく研一は理解する。
魔人の落とし子達を救出した件では、フェットや直接ぶちのめした男達に確実に恨まれているのは間違いないし、繋がりのあった他の権力者にだって鬱陶しがられた筈。
それなのにスキルが大して成長しなかった原因。
それが一体なんだったのかを。
(ベッカから貰ってた憎しみが消えたんだ……)
フェットや権力者達からの憎しみは、今までと同じように届いていたのだ。
ただ失ったモノがあっただけの話。
(これから本格的な戦いになるってのに、何で今なんだよ……)
そして失ったと気付いたからこそ解かった事がある。
ベッカこそ、この世界で誰よりも研一を蔑み、憎んでくれていた相手。
一番、力を与えてくれていた存在であり、それを失ってしまった自分の力は大きく落ちてしまっている。
(だからって諦めて堪るか……)
心が挫けそうになるが、歯を食い縛って自らを奮い立たせた。
力が弱くなったからこそ、踏ん張って前に進まなければならない。
(負けたら全員殺されるんだ……)
自身の事なんて省みずに頑張っているサーラ。
あれだけ悪態を吐きまくったのに自分の事を理解してくれたベッカ。
監禁された上に母親まで失い、それでも少しずつ笑ってくれるようになったセン。
誰も彼も良い子で、無惨に殺されていいとは思えないし――
自分の願いが叶わないなんて、想像するだけでも耐えられない。
(もう、綺麗事なんて言ってられない……)
悪党を退治したついでに恨まれようなんて、まどろっこしい事をしている暇なんてない。
誰からも恨まれて当たり前の悪事を働くとしよう。
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