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第六章 届けられない乙女の想い
第41話 憎くて憎くて堪らない
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「ですが、それはあまりにも……」
研一達の話を聞いたベッカは、ようやく全ての事情を理解していた。
どれだけ研一が誰にも理解されない戦いをしてきたのかを。
本当に愛する者以外何も興味ないのなら、いくらでも悪い事なんて出来ただろうに、それでも自分達を出来るだけ傷付けないように気遣ってくれていた事も。
その事に自分はなんて優柔不断で駄目な人間だと傷付き、自己嫌悪している事だって、マニュアルちゃんと話している時の研一の顔を見れば、手に取るようにベッカには解かった。
「確かに理屈は解かります。恨まれ憎まれている方がアイツにとっては都合が良い。私達が事情を知ったなんて言えば、きっと私達を巻き込まないように遠ざけるだけでしょう」
そして事実を知った今だからこそ、ベッカは後悔していた。
(協力なんて申し立てるべきではなかった……)
何か事情があって悪党の演技をしている事はベッカも想像していたが、こんな事情だとは思ってなかった。
精々、サラマンドラ国を救った後は別の国をすぐに救いに行くから、居なくなった後に研一に頼りたくならないように振る舞っているだとか。
その程度にしか考えてなかったのだ。
「けれど、姫様。これでは、あまりにもアイツが不憫ではないですか……」
そして事情を知った今では、やるせない気持ちだけが激しい程にベッカの胸の中を暴れ回っている。
この先も研一が戦いを続けるのであれば、この誰にも理解させてはいけない戦いを願いが叶うまで続けないといけないのだ。
(それでスキルのせいだから仕方ないなんて割り切って、好き勝手生きられるようなヤツでもない癖に……)
きっとこれからも善良な人を傷付ける事に躊躇い、心を痛め。
誰にも理解されないように振る舞い、敵意や嫌悪をその身に帯び続けながら――
それでも恋人の為だけに悪人にも成り切れない半端な自分を嘲笑って、願いを叶える為に歩き続けるのだ。
それは地獄と呼びたい程の日々である事は、容易に想像出来た。
「…………」
サーラは頷き一つ返す事無く、静かにベッカの言葉に耳を傾けている。
そこに感情の動きは見えず、長年仕えているベッカですら、何を思っているか全く読み取れなかった。
「こんな事を知って、どうやって私はアイツを憎んでやればいいんです……。どうやってアイツの力になればいいんです……」
ベッカには、もう研一を憎む事なんて出来そうになかった。
きっとサーラも同じ気持ちだろうという想いで、泣き言を口にするが――
「憎いですよ? 憎いに決まってるじゃないですか」
サーラは考える事もせず、あっさりと口にする。
この世界に魔法があるのは当たり前だというように、本当に普通の事を語るような自然さで。
「一人で抱え込んで私に頼ってくれずに苦しんでいるのが憎い」
そしてサーラは語り始める。
何を考えているのか解からない感情の抜け落ちた表情のまま、声を荒げる事もせずに。
「普通の加護を持って私の前に現れてくれなかったのが憎い」
それはきっとサーラの本心からの想い。
考え悩む時間すら一切なく、堰を切ったように言葉が次々と溢れ出していく。
「昔の女の事しか見えてなくて、あの人の目に私の事なんて少しも映ってくれてないのが、本当に心の底から憎い」
相も変わらず表情は変わらない。
まるで作り物のように動かない顔が、口だけ動く様は見る者が見れば不気味に映ったかもしれない。
けれど――
(姫様、貴女はそこまでアイツの事を……)
貼り付けたような表情のまま、ボロボロと目から零れる涙がサーラの心を何よりも代弁する。
憎む言葉には嘘なんて一つも無く。
だからこそ、研一が好きで好きで堪らないのだ。
「どう頑張っても、あの人を癒してあげられる存在になれない運命が憎い」
全てを知って、抱き締めに行く事も出来ないのが憎かった。
女狂いな変態なんだと誤解していた事を謝りにいけないのが憎かった。
そんなスキルを持ってるのに、それでも開き直らず必要以上に人を傷付けようとしない優しさを認めて上げられないのが憎くて――
こんなにも研一の事しか考えられないのに、どうしたって結ばれる未来が見えないのが憎くて憎くて狂いそうで仕方なかった。
「もしあの人を憎めないのなら、あの人の邪魔をすると言うのなら、今ここで私が貴女を殺します」
持て余した感情が涙として溢れている事にもサーラは気付かず。
炎の剣を生み出して、ベッカの首筋に近付ける。
そこに迷いの色はなく、返事次第で間違いなく自分の首が刎ねられる事をベッカは直感した。
「いいえ。姫様のお陰で、ようやく私も少しはアイツの事を憎めそうです」
そうして、ベッカは本心から口にする。
大きな大きな喜びと、一握りの寂しさが胸に過ぎるのを感じて。
――ベッカの返答にサーラは無言で炎の剣を消した。
(なるほど。これは確かに……)
物心付いた時から仕え、成長を見守ってきたサーラの心を完璧に奪ってしまった男に。
複雑な親心のようなモノを感じながら。
「ええ、本当に憎らしい男ですね」
ベッカは涙を流し続けるサーラの顔を世界から隠すように、抱き締めたのだった。
研一達の話を聞いたベッカは、ようやく全ての事情を理解していた。
どれだけ研一が誰にも理解されない戦いをしてきたのかを。
本当に愛する者以外何も興味ないのなら、いくらでも悪い事なんて出来ただろうに、それでも自分達を出来るだけ傷付けないように気遣ってくれていた事も。
その事に自分はなんて優柔不断で駄目な人間だと傷付き、自己嫌悪している事だって、マニュアルちゃんと話している時の研一の顔を見れば、手に取るようにベッカには解かった。
「確かに理屈は解かります。恨まれ憎まれている方がアイツにとっては都合が良い。私達が事情を知ったなんて言えば、きっと私達を巻き込まないように遠ざけるだけでしょう」
そして事実を知った今だからこそ、ベッカは後悔していた。
(協力なんて申し立てるべきではなかった……)
何か事情があって悪党の演技をしている事はベッカも想像していたが、こんな事情だとは思ってなかった。
精々、サラマンドラ国を救った後は別の国をすぐに救いに行くから、居なくなった後に研一に頼りたくならないように振る舞っているだとか。
その程度にしか考えてなかったのだ。
「けれど、姫様。これでは、あまりにもアイツが不憫ではないですか……」
そして事情を知った今では、やるせない気持ちだけが激しい程にベッカの胸の中を暴れ回っている。
この先も研一が戦いを続けるのであれば、この誰にも理解させてはいけない戦いを願いが叶うまで続けないといけないのだ。
(それでスキルのせいだから仕方ないなんて割り切って、好き勝手生きられるようなヤツでもない癖に……)
きっとこれからも善良な人を傷付ける事に躊躇い、心を痛め。
誰にも理解されないように振る舞い、敵意や嫌悪をその身に帯び続けながら――
それでも恋人の為だけに悪人にも成り切れない半端な自分を嘲笑って、願いを叶える為に歩き続けるのだ。
それは地獄と呼びたい程の日々である事は、容易に想像出来た。
「…………」
サーラは頷き一つ返す事無く、静かにベッカの言葉に耳を傾けている。
そこに感情の動きは見えず、長年仕えているベッカですら、何を思っているか全く読み取れなかった。
「こんな事を知って、どうやって私はアイツを憎んでやればいいんです……。どうやってアイツの力になればいいんです……」
ベッカには、もう研一を憎む事なんて出来そうになかった。
きっとサーラも同じ気持ちだろうという想いで、泣き言を口にするが――
「憎いですよ? 憎いに決まってるじゃないですか」
サーラは考える事もせず、あっさりと口にする。
この世界に魔法があるのは当たり前だというように、本当に普通の事を語るような自然さで。
「一人で抱え込んで私に頼ってくれずに苦しんでいるのが憎い」
そしてサーラは語り始める。
何を考えているのか解からない感情の抜け落ちた表情のまま、声を荒げる事もせずに。
「普通の加護を持って私の前に現れてくれなかったのが憎い」
それはきっとサーラの本心からの想い。
考え悩む時間すら一切なく、堰を切ったように言葉が次々と溢れ出していく。
「昔の女の事しか見えてなくて、あの人の目に私の事なんて少しも映ってくれてないのが、本当に心の底から憎い」
相も変わらず表情は変わらない。
まるで作り物のように動かない顔が、口だけ動く様は見る者が見れば不気味に映ったかもしれない。
けれど――
(姫様、貴女はそこまでアイツの事を……)
貼り付けたような表情のまま、ボロボロと目から零れる涙がサーラの心を何よりも代弁する。
憎む言葉には嘘なんて一つも無く。
だからこそ、研一が好きで好きで堪らないのだ。
「どう頑張っても、あの人を癒してあげられる存在になれない運命が憎い」
全てを知って、抱き締めに行く事も出来ないのが憎かった。
女狂いな変態なんだと誤解していた事を謝りにいけないのが憎かった。
そんなスキルを持ってるのに、それでも開き直らず必要以上に人を傷付けようとしない優しさを認めて上げられないのが憎くて――
こんなにも研一の事しか考えられないのに、どうしたって結ばれる未来が見えないのが憎くて憎くて狂いそうで仕方なかった。
「もしあの人を憎めないのなら、あの人の邪魔をすると言うのなら、今ここで私が貴女を殺します」
持て余した感情が涙として溢れている事にもサーラは気付かず。
炎の剣を生み出して、ベッカの首筋に近付ける。
そこに迷いの色はなく、返事次第で間違いなく自分の首が刎ねられる事をベッカは直感した。
「いいえ。姫様のお陰で、ようやく私も少しはアイツの事を憎めそうです」
そうして、ベッカは本心から口にする。
大きな大きな喜びと、一握りの寂しさが胸に過ぎるのを感じて。
――ベッカの返答にサーラは無言で炎の剣を消した。
(なるほど。これは確かに……)
物心付いた時から仕え、成長を見守ってきたサーラの心を完璧に奪ってしまった男に。
複雑な親心のようなモノを感じながら。
「ええ、本当に憎らしい男ですね」
ベッカは涙を流し続けるサーラの顔を世界から隠すように、抱き締めたのだった。
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