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依頼2 火山の後始末をします。
火山 エピローグ
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宴会から一夜明け、クリエたちは全員で同じ露天風呂に入っていた。
裸ではなく、各自がシンプルな水着を着用している。
昔は海水浴などは普通に服を着ていたが、水難事故が多発したため、ある世界神の命令で水着が開発される。
それ以降、利便性の良さから瞬く間に世界中に広まる事になった。
女将さんの計らいで、今露天風呂は混浴の貸し切りになっており、レミラは村人と今後の方針を話していた。
「気持ち良いね」
クリエが目の前にある壮大な火山を見て言う。
「数日前とは全然違う景色に見えます」
ウィルがクリエと同じように火山を眺めて言った。
「美味しい物も食べれたし、クリエとこうして混浴も出来て、今回の依頼は良い事ずくめだわ。水着が無かったらもっと良いけど」
「もう少しお前は慎みを持て。なんでもさらけ出そうとするな牛乳 (うしちち)が」
「はいはい、無いからってひがまないの」
「そうですわよ。大きさが全てではございません」
ミヨンは胸の大きなアニスとリゼに挟まれ、考えるのを諦めて溜息を吐いた。
「しかし、この村はどうなっちゃうの? 確か観光客が少なくてヤバイって話だったけど」
アニスが静香の言っていた村の現状を思い出す。
折角火山や魔物の問題が無くなっても、この温泉村が無くなるのは残念な事だと思っていた。
だが突然リゼが高笑いを始める。
「そこは問題ありませんことよ! このリゼ・エレクトラ、商機は逃しません! 昨日の夜、この温泉村を盛り上げる名物商品を村人と話して、すでに生産の目途も付けております」
「そうなの? でも名物って何を?」
「勿論! フェニックス饅頭にフェニックスの置物、フェニックスの温泉卵など! あ、勿論卵は味の監修をしたと付け加えますが」
あまりにベタな名物にアニスの口が開いたままになり、ミヨンが呆れながらリゼに言った。
「それ、うまくいくのか? フェニックスはここだけじゃなく、周辺の温泉村全体の権利だろう?」
「ふっふっふ、甘い! 激甘ですわ! 今回はこの村が他の温泉村と違って、ゆるキャラなど独自のキャラクターを出していない事が功を奏しました」
「? 普通は不利になるのではないでしょうか?」
ウィルが疑問を口にする。しかし、リゼは自信満々に答えた。
「他の村はオリジナルのキャラを作り、なまじ知名度が上がっているからこそ、フェニックスを前面に押し出しにくいのです。だって今までのキャラを蔑ろにすれば、それまでのファンから見切りを付けられますし、フェニックス一本にしても他を捨てたイメージが付いてマナイス要素しかありません」
「あー、なるほど。確かに今までの客を考えると、すぐ乗り換えるのは悪手だな。両立するには金もかかる」
納得がいった感じでミヨンが頷いた。
「そうです。逆にここは何もないから最初から全力でフェニックス推しに出来る。さらに職人の方々も、聖獣をモチーフにした物なら恥ずかしい物を出せないと、やる気満々ですわ!」
「で、お前の利益は?」
「売り上げのいくらかを頂きます。勿論、商品に掛かる独自の販路や材料の輸送、我が商会での宣伝など数々の協力も惜しまない。専属契約もすでに済ませてありますのよ。ゆくゆくは、遠方の観光客を乗せた専用飛竜便も計画。これは……イケますわ!」
リゼの高笑いが露天風呂に響く。
「言っておきますが、全てレミラさんの許可は頂いておりますので、なんの問題もございません。あとレミラさんは、今後交流を深めるため、全ての温泉村へ定期的に顔を出すようです。それだけでもフェニックスがいる温泉村の知名度は爆上がりですわ!」
と、勝ち誇ったようにリゼが言うと、クリエが立ち上がり少し歩く。
そして火山をバックにみんなが居る方向に振り返った。
「僕が最初から全部思い出せれば良かったんだけど、ごめんね」
悲しそうにクリエが言う。
そもそも最低でも300年以上前の事であり、むしろ思い出せただけでも奇跡だった。
四人は口々にそんな事はないと言いながら、首を横に振った。
励ましてくれる四人を見て、やがて満面の笑みでクリエが言う。
「ありがとう。でもみんなが楽しそうで良かったよ。またみんなでいつか来ようね」
その言葉を聞き、四人はクリエを取り囲むと、ひしっと抱きしめた。
「これが上手くいけば、今まで以上にクリエ様をサポート出来ますわ」
「ありがとうリゼ、これからも美味しいお酒をよろしく」
「食べ物もよろしく頼むぞ」
「調理器具や服などを楽しみにしていますよ」
「……あなたたちは少し遠慮して下さいまし」
クリエを除いた各々が好き勝手な事を言うが、クリエに対する愛情は火山よりも大きく、ドラゴンの身体よりも硬く、そしてフェニックスよりも熱い絆で結ばれている四人だった。
~依頼2 火山の後始末をします。 完~
裸ではなく、各自がシンプルな水着を着用している。
昔は海水浴などは普通に服を着ていたが、水難事故が多発したため、ある世界神の命令で水着が開発される。
それ以降、利便性の良さから瞬く間に世界中に広まる事になった。
女将さんの計らいで、今露天風呂は混浴の貸し切りになっており、レミラは村人と今後の方針を話していた。
「気持ち良いね」
クリエが目の前にある壮大な火山を見て言う。
「数日前とは全然違う景色に見えます」
ウィルがクリエと同じように火山を眺めて言った。
「美味しい物も食べれたし、クリエとこうして混浴も出来て、今回の依頼は良い事ずくめだわ。水着が無かったらもっと良いけど」
「もう少しお前は慎みを持て。なんでもさらけ出そうとするな牛乳 (うしちち)が」
「はいはい、無いからってひがまないの」
「そうですわよ。大きさが全てではございません」
ミヨンは胸の大きなアニスとリゼに挟まれ、考えるのを諦めて溜息を吐いた。
「しかし、この村はどうなっちゃうの? 確か観光客が少なくてヤバイって話だったけど」
アニスが静香の言っていた村の現状を思い出す。
折角火山や魔物の問題が無くなっても、この温泉村が無くなるのは残念な事だと思っていた。
だが突然リゼが高笑いを始める。
「そこは問題ありませんことよ! このリゼ・エレクトラ、商機は逃しません! 昨日の夜、この温泉村を盛り上げる名物商品を村人と話して、すでに生産の目途も付けております」
「そうなの? でも名物って何を?」
「勿論! フェニックス饅頭にフェニックスの置物、フェニックスの温泉卵など! あ、勿論卵は味の監修をしたと付け加えますが」
あまりにベタな名物にアニスの口が開いたままになり、ミヨンが呆れながらリゼに言った。
「それ、うまくいくのか? フェニックスはここだけじゃなく、周辺の温泉村全体の権利だろう?」
「ふっふっふ、甘い! 激甘ですわ! 今回はこの村が他の温泉村と違って、ゆるキャラなど独自のキャラクターを出していない事が功を奏しました」
「? 普通は不利になるのではないでしょうか?」
ウィルが疑問を口にする。しかし、リゼは自信満々に答えた。
「他の村はオリジナルのキャラを作り、なまじ知名度が上がっているからこそ、フェニックスを前面に押し出しにくいのです。だって今までのキャラを蔑ろにすれば、それまでのファンから見切りを付けられますし、フェニックス一本にしても他を捨てたイメージが付いてマナイス要素しかありません」
「あー、なるほど。確かに今までの客を考えると、すぐ乗り換えるのは悪手だな。両立するには金もかかる」
納得がいった感じでミヨンが頷いた。
「そうです。逆にここは何もないから最初から全力でフェニックス推しに出来る。さらに職人の方々も、聖獣をモチーフにした物なら恥ずかしい物を出せないと、やる気満々ですわ!」
「で、お前の利益は?」
「売り上げのいくらかを頂きます。勿論、商品に掛かる独自の販路や材料の輸送、我が商会での宣伝など数々の協力も惜しまない。専属契約もすでに済ませてありますのよ。ゆくゆくは、遠方の観光客を乗せた専用飛竜便も計画。これは……イケますわ!」
リゼの高笑いが露天風呂に響く。
「言っておきますが、全てレミラさんの許可は頂いておりますので、なんの問題もございません。あとレミラさんは、今後交流を深めるため、全ての温泉村へ定期的に顔を出すようです。それだけでもフェニックスがいる温泉村の知名度は爆上がりですわ!」
と、勝ち誇ったようにリゼが言うと、クリエが立ち上がり少し歩く。
そして火山をバックにみんなが居る方向に振り返った。
「僕が最初から全部思い出せれば良かったんだけど、ごめんね」
悲しそうにクリエが言う。
そもそも最低でも300年以上前の事であり、むしろ思い出せただけでも奇跡だった。
四人は口々にそんな事はないと言いながら、首を横に振った。
励ましてくれる四人を見て、やがて満面の笑みでクリエが言う。
「ありがとう。でもみんなが楽しそうで良かったよ。またみんなでいつか来ようね」
その言葉を聞き、四人はクリエを取り囲むと、ひしっと抱きしめた。
「これが上手くいけば、今まで以上にクリエ様をサポート出来ますわ」
「ありがとうリゼ、これからも美味しいお酒をよろしく」
「食べ物もよろしく頼むぞ」
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「……あなたたちは少し遠慮して下さいまし」
クリエを除いた各々が好き勝手な事を言うが、クリエに対する愛情は火山よりも大きく、ドラゴンの身体よりも硬く、そしてフェニックスよりも熱い絆で結ばれている四人だった。
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