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第一章「利用される者、する者」
居心地の悪い場所 ーレオヴィク視点ー
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「はぁ、またか」
アンブラリア王国、騎士団団長レオヴィク・カストルは頭を抱えた。
その原因は、自身の部屋の隅で丸まっている一人の子供だ。
「こいつは、なぜベッドで寝ないんだ」
そう問いかける先にいる子供は、数日前にスラム街で犯罪組織とともに暮らしていたリオという子供だ。
十分に栄養が取れてないことから、体の大きさは12歳~13歳といったところだが、聞いてみると15歳くらいだという。
とはいえ、自分でも年齢が本当に15歳なのかはわからないとのこと。
いつからスラムに住んでいるのか、まったく出自が不明なのだ。
そんなリオは、レオヴィクがいない間は部屋を好きに使っていいと言われており
レオヴィク自身も仕事の関係であまり自室に帰ってこないことから、ほぼリオの部屋として利用するような意味合いで伝えていた。
しかし、久しぶりの自室に戻ると、リオは寝ていたのだが、その場所はベッドではなく絨毯すら敷かれていない床の上だった。
初めてここに来た日に、心身ともに疲れているだろうと考え「部屋は好きに使え、寝るときはそこのベッドを使え」といって部屋を出た。
その数時間後に戻ってみれば、今と同じように部屋の隅で丸まって寝ているではないか。
最初はもちろん驚いてリオをたたき起こし、なぜそこで寝ているのかと問いただした。
「あのベッドは、居心地が悪い」
リオはそれだけを言うとまた眠りについた。
結局、レオヴィクは眠りについたリオを抱えてベッドに寝かせる。
抱えたときの体の軽さには心底驚いた。
そしてベッドに寝かせて数分。「うぅ」とうめき声とともにリオが目を覚ました。
「は?なんで俺ベッドにいるわけ?」
「俺が運んだ」
「居心地が悪いっていったじゃん…」
リオはいそいそとベッドから足を下ろし、そして定位置と言わんばかりに再び部屋の隅に戻ったのだ。
「はぁ、まぁ今日はそこでもいいが、これからはそこのベッドで寝ろ。いいな」
この日はまだ仕事が残っていたため、リオの様子を見に来るために少し自室に戻っただけであった。
リオは特に返事はせず、視線だけをレオヴィクに向けまた丸まってその場で眠りだした。
せめて何か体にかけてやろうとベッドから薄手の毛布をとり、リオにかけてやる。
するとリオはハッとこちらを見るが、レオヴィクの顔を見るなり少し寂しそうなそんな表情をしながら毛布にくるまって寝始めた。
レオヴィクは特に何も言わずに部屋を出た。
そして今日だ。あれから数日経ち、リオの面倒はメイド達に任せていた。
食事も少ないがしっかりとってはいる。
ただ、どれだけ言ってもベッドでは寝ないのだとメイドからも報告を受けていた。
案の定、部屋の隅で丸まっているリオを見たレオヴィクは、リオにゆっくりと近づき声をかけようとした。
かけようとしたのだが、リオの顔を見てためらった。
決して声は出していなかったものの、静かに涙を流していた。
魘されているような雰囲気はなく、ただただ閉じた瞳から涙が流れていたのだ。
「どうしたものか」
自身で連れてくると決めて、利用すると決めた子供。
しかしその子供は出自も自身のことも何もわからないという。
琥珀の首飾りを持っている理由さえも。
今まで全く手掛かりがなく、いよいよアンブラリア王家の復活は諦めようかと思っていた矢先だった。
まさか犯罪組織解体の任務中に大きな手掛かりに出会うとは思わず、あの時は一瞬ではあるが取り乱した。
しかし、琥珀の首飾りがあったというだけで、アンブラリア王家につながる情報は全くなく、結局今となってはどうやって動くか、何を調べるかなどの目途は立っていない状況だった。
「お前は、何者なんだ。やはりアンブラリア王家の血は完全に途絶えてしまったのか」
リオに問いかけるも、流れる涙は止まらず。
思わず手を伸ばし頬を流れる涙を人差し指ですくっていた。
すると、その人差し指を追いかけるようにリオの頭が動く。
スリっと指に頬を寄せてくるその様はまるで猫のようだった。
「猫……。お前は野良猫だな」
レオヴィクは、前回失敗してしまったリオをベッドに移動するという行動を再びとってみた。
片手で抱えられるほどの軽さの子供。頬に手を当てつつ、横抱きのままリオをベッドへと運ぶ。
そっと気づかれぬようにベッドに寝かせると、頬に添えた手にすり寄りつつ、そのまま寝始めた。
成功だと思い、頬から手を離そうとしたが、なんだかもう少しこのままの方がいい気がして、時間の許す限りリオの頬を撫でた。
「こんな子供に俺は何をさせようとしているんだろうな」
そんな小さな呟きは誰にも聞かれることなく、静かに消えていった。
アンブラリア王国、騎士団団長レオヴィク・カストルは頭を抱えた。
その原因は、自身の部屋の隅で丸まっている一人の子供だ。
「こいつは、なぜベッドで寝ないんだ」
そう問いかける先にいる子供は、数日前にスラム街で犯罪組織とともに暮らしていたリオという子供だ。
十分に栄養が取れてないことから、体の大きさは12歳~13歳といったところだが、聞いてみると15歳くらいだという。
とはいえ、自分でも年齢が本当に15歳なのかはわからないとのこと。
いつからスラムに住んでいるのか、まったく出自が不明なのだ。
そんなリオは、レオヴィクがいない間は部屋を好きに使っていいと言われており
レオヴィク自身も仕事の関係であまり自室に帰ってこないことから、ほぼリオの部屋として利用するような意味合いで伝えていた。
しかし、久しぶりの自室に戻ると、リオは寝ていたのだが、その場所はベッドではなく絨毯すら敷かれていない床の上だった。
初めてここに来た日に、心身ともに疲れているだろうと考え「部屋は好きに使え、寝るときはそこのベッドを使え」といって部屋を出た。
その数時間後に戻ってみれば、今と同じように部屋の隅で丸まって寝ているではないか。
最初はもちろん驚いてリオをたたき起こし、なぜそこで寝ているのかと問いただした。
「あのベッドは、居心地が悪い」
リオはそれだけを言うとまた眠りについた。
結局、レオヴィクは眠りについたリオを抱えてベッドに寝かせる。
抱えたときの体の軽さには心底驚いた。
そしてベッドに寝かせて数分。「うぅ」とうめき声とともにリオが目を覚ました。
「は?なんで俺ベッドにいるわけ?」
「俺が運んだ」
「居心地が悪いっていったじゃん…」
リオはいそいそとベッドから足を下ろし、そして定位置と言わんばかりに再び部屋の隅に戻ったのだ。
「はぁ、まぁ今日はそこでもいいが、これからはそこのベッドで寝ろ。いいな」
この日はまだ仕事が残っていたため、リオの様子を見に来るために少し自室に戻っただけであった。
リオは特に返事はせず、視線だけをレオヴィクに向けまた丸まってその場で眠りだした。
せめて何か体にかけてやろうとベッドから薄手の毛布をとり、リオにかけてやる。
するとリオはハッとこちらを見るが、レオヴィクの顔を見るなり少し寂しそうなそんな表情をしながら毛布にくるまって寝始めた。
レオヴィクは特に何も言わずに部屋を出た。
そして今日だ。あれから数日経ち、リオの面倒はメイド達に任せていた。
食事も少ないがしっかりとってはいる。
ただ、どれだけ言ってもベッドでは寝ないのだとメイドからも報告を受けていた。
案の定、部屋の隅で丸まっているリオを見たレオヴィクは、リオにゆっくりと近づき声をかけようとした。
かけようとしたのだが、リオの顔を見てためらった。
決して声は出していなかったものの、静かに涙を流していた。
魘されているような雰囲気はなく、ただただ閉じた瞳から涙が流れていたのだ。
「どうしたものか」
自身で連れてくると決めて、利用すると決めた子供。
しかしその子供は出自も自身のことも何もわからないという。
琥珀の首飾りを持っている理由さえも。
今まで全く手掛かりがなく、いよいよアンブラリア王家の復活は諦めようかと思っていた矢先だった。
まさか犯罪組織解体の任務中に大きな手掛かりに出会うとは思わず、あの時は一瞬ではあるが取り乱した。
しかし、琥珀の首飾りがあったというだけで、アンブラリア王家につながる情報は全くなく、結局今となってはどうやって動くか、何を調べるかなどの目途は立っていない状況だった。
「お前は、何者なんだ。やはりアンブラリア王家の血は完全に途絶えてしまったのか」
リオに問いかけるも、流れる涙は止まらず。
思わず手を伸ばし頬を流れる涙を人差し指ですくっていた。
すると、その人差し指を追いかけるようにリオの頭が動く。
スリっと指に頬を寄せてくるその様はまるで猫のようだった。
「猫……。お前は野良猫だな」
レオヴィクは、前回失敗してしまったリオをベッドに移動するという行動を再びとってみた。
片手で抱えられるほどの軽さの子供。頬に手を当てつつ、横抱きのままリオをベッドへと運ぶ。
そっと気づかれぬようにベッドに寝かせると、頬に添えた手にすり寄りつつ、そのまま寝始めた。
成功だと思い、頬から手を離そうとしたが、なんだかもう少しこのままの方がいい気がして、時間の許す限りリオの頬を撫でた。
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