琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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第一章「利用される者、する者」

焦燥感

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あれから、また市街地をアレンとともにうろうろしていた。
長い時間歩いて、少し疲れを感じ始めた。でもそれ以上に楽しくて、歩みを止めたくなかった。

「あ、そういえば、子供関連の話をしたんですよねー?だったら、結局なんでリオ君を団長の傍においてるのかわかりましたかー?」

アレンに突然聞かれた質問に、俺はなんて返せばいいかわからず口ごもってしまった。

「ありゃ、まだわかんなかったですかー?まぁいつかわかることでしょうから、気長に待ちますかー」

アレンはそれ以上問い詰めることはせず、俺も少し強張っていた肩の力を抜く。

レオヴィクが王家を取り戻すといっている。
しかし、それは、たぶん、危ないことだし、誰にも知られてはいけないことだ。
レオヴィクのお爺さんが書いた手記もレオヴィクの部屋でしか読めないし、なんなら、手記の中でも秘密に調べるという内容が書かれていた。
ということは、俺が簡単に口を滑らせてはいけない内容だということは、馬鹿な俺でもわかる。
問い質されなかったことはよかったが、これから俺はこれを抱えて生きていかなければいけないのかと、改めて今回の自分が利用される状況に重みを感じて急に息苦しさを感じた。

「リオ君、大丈夫ですかー?今日はたくさん歩きましたからねー。疲れちゃいましたかねー?」

アレンが、俺の顔を覗き込みながら足を止める。
目の前にいるアレンに、このことを伝えてしまったら、おそらく計画はなくなり、俺は処分される可能性だってある。

ボスが言っていた意味を改めて実感した。
生きるために利用される。これは俺が、生きるために必要不可欠なものだ。
利用されるためにも、相手の不利になるようなことは絶対してはいけない。

「いや、大丈夫。でもそろそろ戻ろうかな。疲れてきた、気が、する」

「そうですねーじゃぁ城に戻りますかーって、城でいいんですよね?」

アレンの質問の意図が分からず、首をかしげる。

「いや、今リオ君がいる部屋ってレオヴィク団長の部屋ではあるんですけどー、団長は自分の家をもってるから、そっちに帰ったりしないのかなーとおもいましてー」

「お城以外、行ったことないから……」

「そうですよねー。団長、なんで自分の家にはつれていかないんでしょうかー。まぁそれも何かしら考えがあるのかもしれないですねー」

アレンは自身で結論づけたあと、「じゃあお城に向かいますかー」といつもの感じで、また歩き始めた。
俺もそのあとをついていく。
夜、帰ってこないことも時々あったが、仕事が忙しいとかではなく、自宅に帰っていたのだろうか。
とはいえ、そんなこと俺は知る方法も知る必要もおそらくないので、特に気にしないようにすることにした。



それから少し歩いて、気がつけばいつものお城の近くまで戻ってきていた。
ふと、視線を足元から正面、そして上に移動させていくと、お城の大きさを実感する。
お城の一番高い塔には、赤い旗が風に揺れている。

「あの旗、いやーですよねー。教団の旗を、普通にお城に掲げてるんですから。……胸糞悪い」

その一言を言ったときのアレンの表情や雰囲気はいつもの飄々としたものはなく、ただただ嫌なものを、まるで親の仇とでも言うくらいの気迫で睨みつけていた。

俺は、その様子を見ることしかできず、足を止めると、アレンがふとこちらに視線を向ける。
目が合ったときには、気圧されるくらいの視線はなく、いつものアレンに戻っていた。

「さー!いつもの部屋に戻りましょうねー。今のは聞かなかったことにしてくれると嬉しいですー。お城であんな事言ったら、俺ここにはたぶん居られないですからねー」

少し怖さを感じながらも、今はアレンについていくしかないので、俺もアレンの後についていく。
お城の前には別の騎士団の人が立っており「お疲れ様です」とアレンに声をかけていた。
その時に俺の方をちらりと見ると、アレンほどではないが、睨みつけられ思わず下を向く。

「リオ君」

アレンが俺の肩を抱きよせ、上半身を屈めながら耳元でささやく。

「団長と俺以外信用したらいけませんからねーほぼ全員教団のやつらですよー」

囁かれた言葉に驚き、耳に手を当てながら少しアレンから距離を取る。

「ふふ。安心してください。俺は、団長の右腕です」

その言葉には、いつもの飄々とした調子がなく、騎士としての力強さがあった。
アレンは、レオヴィクがやろうとしていることを知っているのだろうか。
本当はレオヴィクが俺を傍に置いている理由を知っているのだろうか。
それを尋ねたいが、この場所では口にできる内容も少なく、聞くこともできない。

「また一緒にお買い物に行きましょうねー。二人で」

アレンはそう言うと、「はい!つきましたー!では!またー!」

そういって廊下を歩いていく。
小さくなっていく背中を見つめながら、アレンという人間がますますわからなくなって、思わず頭を抱えた。



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