琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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第一章「利用される者、する者」

屁理屈と恐怖

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市街地に行ったその日の夜、レオヴィクは俺がいる部屋に帰ってきた。
なんだかひどく疲れているような、そんな雰囲気を感じたが、特にそれを聞く間柄でもないかと思い「おかえり」の一言で済ませる。

そのまま、いつものメイド達がレオヴィクの身の回りの世話をテキパキと済ませ、気が付けば扉の前で二人並び、綺麗なお辞儀をしながら「おやすみなさいませ」と部屋を出て行った。

「今日はここで寝るのか?」

「あ?なんで」

「いや、今日アレンと出掛けた時に、レオヴィクは自分の家もあるって話をしてて」

「あいつ……。また余計なことを。この前の訓練じゃ足りなかったのか」

レオヴィクは以前のぼこぼこ発言から再び、アレンへの憤りを感じているようだった。

「別にいいじゃん。家があってもなくても、俺には特に関係ないし」

「まぁそうなんだが。こうも俺が知らないところで俺の話をペラペラとされるのはいい気分ではないな」

それはそうか。とはいえ、アレンもレオヴィクの全てをペラペラしゃべっているわけではなさそうな感じがした。
取捨選択をしっかりとしているというか、そういうところは表面上の適当さとは全く別の雰囲気を感じる。
この部屋に送り届けてくれた時の、あの時のアレンの雰囲気が顔を出す。

「ところで、今日の外出はどうだった」

「どう、だった…?」

「何かいろいろと見て回ったのだろう。特に何も起きなかったのか?」

「え?特に何も。何かレオヴィクに不都合なことは起きていないと思うけど…」

「違う…そうじゃ、……。まぁいい。何か買わなかったのか?」

レオヴィクは頭をガシガシと掻きながら、何ともよくわからない質問をしてくるが、何か買ったのかと聞かれれば答えはある。

「これ、アレンにお勧めしてもらって、妖精の本を買った。妖精と宝石の本」

そういって、今日買った本をレオヴィクに見せると、そっと俺の手からその本をとり、パラパラとページをめくった。

「あぁこの本か。もう読んだのか?」

「いや、まだ。わかんない文字とかもあって、ヨハンが来た時に教えてもらおうと思って」

今日買った本は絵本のようではあったが、読みやすい文字だけではなく、まだ覚えかけの文字も使われていて、読めない文字も所々あり、内容を理解するにはまだ少しだけ勉強が必要そうだった。

「そうか。なら俺が読んでやろう」

「え?」

「なんだ、いやなのか」

「いや、とかそういうんじゃ、ないけど。レオヴィク、こういうの読める、のか?」

「俺を馬鹿にしているのか」

「ちがっ!そういうわけじゃなくて、なんていうか、これ子供向けだと思うし、そのレオヴィクには簡単すぎるというか」

急に提案されたことに驚き、咄嗟に否定寄りの言葉を出してしまったことに少し後悔しつつも、やはりこの本をレオヴィクが読むということがどうにも想像できず、俺は疑心暗鬼の目でレオヴィクを見てしまった。

「お前が読めないというから、読んでやろうといっているんだ。別に必要ないならいいのだが」

そういわれても、何と答えるのが正解なのか。
今日買ってもらった本を早く理解したいという気持ちはあるが、おそらく明日はヨハンが来てくれるはずだから、今日寝てしまえば、もう明日が。
とはいえ、絶対に読まなさそうなレオヴィクが、読んでくれるという。

「な、なにか策略が…」

「は?そんなものはない。読んでほしいのか、読んでほしくないのか、それだけだ」

そんな簡単なことなのか?
そんな簡単な問いなのであれば、答えは決まっている。

「読んで、……ほしい」

「なら、最初からそう言え。ほら、読んでやるからお前もベッドにこい」

「え!?ソファでいいよ!?」

「俺は今日の仕事で疲れている、移動するの面倒なんだ。お前が来い」

レオヴィクはメイドの世話が終わった後はずっとベッドの上にいた。
俺はソファにいたのだが、本を渡すときにレオヴィクの近くに行き、今も会話をしていたからそのままベッドの横に立っている。
一歩踏み出せばもうベッドではあるのだが、ベッドに入るのはどうにも……。

「お前は、いつになったらこのベッドに慣れるんだ。仮にも一国の王に成り代わろうとしているお前が、ベッドで寝ていないと知られてみろ。すぐにばれるぞ」

「だ、誰にも会わなければいいじゃんか」

「そういう問題でもないだろ。お前は何もしなくてもいいとは言ったが、少なからず、お前の世話をする人間は現れる」

「こ、ここのメイドにしてもらう」

「ここにきているメイドも計画のことは知らん」

「じゃ、じゃあ一人で全部やるから誰にも会わなければ、、いい」

「屁理屈を言うな。とにかく、今日はベッドに上がれ」

そういうと、レオヴィクは俺の腕をつかみ、ベッドに引き入れようとする。
その時だった。
俺の記憶が鮮明に脳裏に流れてくる。
初めて気持ちの悪い男たちにベッドに引き入れられた日のことを。
そしてそのあと何度か、同じようにベッドに引き入れられたことを。
今掴まれている手はレオヴィクの手で、あいつらじゃないということはわかっている。
わかっているはずなのに、頭が理解をしてくれない。正常に処理をしてくれない。

俺の視界は暗闇に包まれた。


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