琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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第一章「利用される者、する者」

流れない涙 ーレオヴィク視点ー

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※直接的な表現はありませんが
 リオの過去、性的虐待描写をにおわせる内容、行動が入ります。ご注意ください。
 苦手な方は、読み飛ばしていただいても大丈夫なような構成になっております



「や、やめ」

リオの手を引いたときに小さな声が聞こえた。

「なんだ。なんでそこまで強情なんだ」

掴んだ手はカタカタと震え始めている。こちらに引き寄せるために入れていた力を少し緩め、自分からリオに近づく。

「あ、やめ、て、くださ、い」

声はなおも小さく、聞き取るためにはもう少し近くによらなければいけなかった。
耳元でその声を聞こうと、顔を近づけた瞬間。

「ご!ごめんなさいごめんなさい、ちゃんと、ちゃんとするから、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

そう言ってリオはこちらも見ずにベッドにバタバタと上がってきた。
いったいどうしたのかと、掴んでいた手を離すが、リオはベッドの上で丸まって動かない。
頭を両手で抱え必死に自分を守っているように見えた。
小さな体が、いつも以上に小さく見える。

「リ、リオどうした、おい、…」

どうしたのかと、丸まっているリオに手を伸ばす。
すると体の震えは先ほどよりも大きくなり、そして、バッと体を起こすと自身が着ている服を脱ぎ始める。

「ご、ごめんなさい。ごめんなさい、ちゃんと、ちゃんと自分でぬぐから、だから、だから…」

震える手で、一つ一つボタンをはずそうとしているが、いまだに一つも外れないボタンにより焦ったのか「なんで、なんで」と言いながら、服のボタンを掴んでは手を滑らせている。

「リオ、な、何をしているんだ、大丈夫だ、なんで服を脱ぐ」

「あ、ごめんなさい。すぐ、すぐに脱ぎますから、だから、これは、これだけは取らないで」

リオはボタンを外そうとしていた手を服の下にしまっている首飾りに持っていくと、服の上からぎゅっと握る。

「これは、これは、だめだから、でもすぐ、脱ぎますから、ごめんなさいごめんなさい」

いつもニコニコ笑っているわけではないが、こんな怯えていたこともなく、俺は思いっきり狼狽えてしまう。
こいつはスラム街で暮らしていて、犯罪組織を捕縛するときは部屋の隅でただただ静かに丸くなっていた。
この部屋に連れてきてから、寝るときに部屋の隅で丸くなることはあったが、普段の生活でここまで怯えるようなしぐさを見せることはなかった。

一体何がトリガーだったのか。

「リオ、脱がなくていい。脱がなくていいから、落ち着け。俺だ、レオヴィクだ」

何度かそう問いかけるが、リオはこちらを見ようともしない。
リオの顔を覗き込むが、その目はどこを捉えているかわからない。
ぎょろぎょろと視線は右往左往し、定まらない様子から、相当に怯えていることがわかる。

「あ、し、下、下だけでも脱ぎます、だから、だから今日は、これで」

そういってリオは自分のズボンに手をかける。
そして何の躊躇もなく、ズボンと一緒に下着も脱いだ。
その肌を見て、俺は息をのんだ。

太ももに、何か所も切り裂かれた跡があり、そのあとはすぐに治療されなかったのか、大きく盛り上がっている場所もある。
他にも、何かに縛られていたのか、ちょうど膝の上あたりに縄の擦れたあとが残っているが、これも最近つけられたものではなさそうだった。

そして、リオは脱いだ服をそのままに、四つん這いになると、自分の尻を高く上げて両手で尻を左右に開く。
そこは、普通に生活しているだけではつかないような傷が複数付いている。

リオのこの動作から、全てを理解した。

「リオ。リオ、大丈夫だ。俺は何もしない」

そんな事を言ってもリオには届かず、ただ、尻を左右に開くリオの手が絶対に離してはいけないという感情と、恐怖からカタカタと震えて、何度も滑り、その度にもう一度左右に開くという動作を繰り返している。

この子は、いったいどういう環境で暮らしていたのか、
そんなことは、もっと早く考えればわかったことではあった。
あんなスラム街で、大人の男たちしかいないあんな場所で、ましてや非力なこの少年は。

俺は、持っていた本をそっとベッドに置き、リオの手に触れる。
触れた瞬間にビクリと全身が反応するリオを見て、下唇をかむ。

リオの手を尻から外し、高くつき上げるためについていた膝をそっと後ろにスライドさせる。
そうすれば、うつ伏せの状態になる。
その状態になっても、リオはカタカタと体を震わせ「ごめんなさいごめんなさい」と小さな声を漏らしている。

そしてもう一つ驚いたことがあった。
これだけ、怯えているにもかかわらず、涙は一つも零れていないのだ。

うつ伏せ状態になったリオにそっと布団をかけてやる。
すると、怯えた顔がこちらを向く。

「おわ、たの」

「何もしない、何もしない。大丈夫だ」

もう一通り行為は終わったと思ったのだろうか。
それだけ、この行為に関して、リオは考えないよう、感じないようにしていたのだろうか。
それがどれだけ苦痛な事だったとしても。

「リオ、寝ろ。もう今日は寝よう」

特にかけられる言葉を持ち合わせてはいない。
こんな状態のリオに、かけられる言葉などないのだ。

リオは、まだ力の入った状態の体を少しだけ動かし、手を首飾りへと持っていく。
そして、首飾りを握ると、「よかった」と一言呟き、そして静かに目を閉じた。

おそらく寝ているはずなのに、体の強張りは解けておらず、布団の上から少し触ったリオの体は硬かった。


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