琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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第一章「利用される者、する者」

いつも通りの朝

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「うわぁ!」

何か怖い夢を見た気がして、勢いよく体を起こす。
内容は思い出せないが、すごく嫌な事だった気がする。
スラム街にいた時の、あの時間のような。
でも、最後はなんだかとても暖かかった気もするけど、内容はとんと思い出せない。

うーん、と頭をひねっているところで、ふと自分がいる場所に気づいて驚く。

「うわぁぁ!!」

ベッドの上で布団に入っている自分自身に驚いて、俺は布団から飛び出る。
部屋にはだれもおらず、俺の驚いた声を聞いて、メイドが二人入ってきた。

「おはようございます。リオ様。本日はヨハン様がいらっしゃいますので、そろそろお召替えの準備を」

「あ、う、うん」

昨日はレオヴィクに本を読んでやると言われて、それを断ろうかどうしようか悩んでいたら、レオヴィクにベッドに来いって言われて、手を掴まれたところまでは覚えている。
しかしその後の記憶がなくて、しかも俺はベッドで寝ている。
まるで、あのスラム街で気持ち悪い男たちにされた後のように、記憶が飛んでいる状態だ。

「まさかな」

まさかレオヴィクがそういうことをする奴ではないと、頭では理解しているものの、なんとなく恐怖のようなものが足元から這い上がってくる感じがして、ぶるりと体を震わせる。

「よっわ」

そう呟いて、自分の太ももを握った拳で一度だけ殴る。
しかし、その時に太ももにあの行為の後の嫌な疲労感は特になく、本当に何もなかったんだろうかと、少し安堵する。

「もう結構時間たってるのに」

あんな事をされてから、最初はもちろん半狂乱になっていたものの、何度もその行為が繰り返されれば慣れるしかないのだと、諦めもついていたが、途中からボスのおかげでその行為もなくなり、俺自身もあの呪縛からは解き放たれたと思っていた。

「たぶん、面倒くさいところ見せちゃったな」

レオヴィクは、恐らく俺の醜態を見たのだろう。子供のように怯えて動けなくなってしまう自分を見たのだろう。
そんな子供の面倒はごめんだと、早々にこの部屋を出たんだろう。

そう結論づけて、俺は、メイド達が持ってきてくれた服に着替える。
そういえば…

「この服って、なんでこんなに俺にぴったりなんだ」

ぼそッと呟いた声をメイドが聞いていたのか、返答があった。

「レオヴィク様が、リオ様のお体のサイズから、仕立て屋に依頼をしております」

そうだったのか。わざわざ俺のために服を準備していてくれたとは思わず、少しむずがゆい気持ちになった。
今日会えたら、ありがとうとか言った方がいいのかもしれないな、なんて考えていた時だった。

「リオ、起きたのか」

部屋にレオヴィクが入ってきた。

「え、れ、レオ、ヴィク?」

「なんだ、俺がここにいたらいけないのか」

「いや、そういうわけじゃないけど」

「とりあえず、いつも通りだな。ならいい」

「う、うん」

いつも通りということは、やはり俺は醜態をさらしてしまっていたようだ。
しかし、そのことについて言及されることもなかったから、恐らくまだ利用価値はあると思ってくれているのだろう。
ふぅと息を吐く。

「リオ、今日から俺は自宅で就寝するようにする。だから、基本的にはこの部屋はお前の好きに使ってもらって構わない」

「え?」

「少し調べものなり、やることが山積みでな。こういうのは、城でやるよりも自宅でやった方がはかどるんだ」

「そ、そっか」

俺のせいだろうか、俺が昨日失敗したからだろうか。
そう聞けたらと思うのだが、言葉は喉元で止まり、口から発せられることはなかった。

「そして、昨日も言ったように、お前はベッドで寝られるようにしろ。俺は就寝時ここには戻らない。お前ひとりだから、安心して寝ろ」

「あ、え?」

「どんなにベッドで寝かせても、小さな物音だけでお前はすぐに目が覚めるからな。恐らく何も物音がしなければ、ベッドで寝られるのではないかと思ったんだ」

「そ、そっか」

「だから、とりあえずお前はベッドで寝られるようになれ。でないと、利用するにも不安要素が残る」

その最後の言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。
不安要素。利用されないかもしれないということか。
その場合、恐らくこの首飾りを取られて、新しい利用対象が現れるんだろう。
レオヴィクが必要なのはこの首飾りだけなのだから。

「わ、わかった。頑張る」

「まぁ無理はするな。どうしてもというなら、アレンを呼んで一緒に寝てもらってもいい。お前、あいつとは楽しそうに話せているようだしな」

「アレン?」

急に出てくる名前に驚きはしたが、アレンとはそんなに頻繁に会っているわけではない。
レオヴィクよりも話を振ってくれるから、いろいろ話しているというだけで、特に楽しいと感じているわけではない。
とはいえ、それはそれでありなのかもしれないと思ってひとまず頷いておく。

「では、俺はこれから仕事があるので、お前はヨハンに文字を教えてもらえ。昨日読めなかった本は机に置いてある」

「あ、ありがとう」

そう言葉を言ったときに思い出す。

「あ!レオヴィク!」

「なんだ」

「あの、こ、この服」

「その服がなんだ。何か不都合でもあったのか」

「い、いや違くて。その、ありがとう。俺の服」

そういうと、レオヴィクは視線を逸らしながら、口元に手を当てつつそわそわしていた。

「そういう服にも着慣れていた方がいいと思ってだな……まぁ、その感謝の言葉は受け取っておこう」

レオヴィクはそのままリオを見ることはなく、部屋を後にした。
パタリと閉じた扉を見つめて、少しだけ、ほんの少しだけこころがポッと暖かくなるようなそんな気がしたが、きっと気のせいだろうと、無視をして、ソファに座りヨハンが来るのを待った。

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