琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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第一章「利用される者、する者」

琥珀の妖精

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レオヴィクが部屋を出て少し待つと、コンコンと扉をたたく音がして、メイド達が扉の方へ向かう。
扉が開くとヨハンがいた。

「おはようございます。リオ様。少し早すぎましたかな?」

「いや、大丈夫。今日もよろしくお願いします」

「はい、こちらこそ」

そういって、俺とヨハンはいつもの定位置に座り、文字の勉強を始める。

「ヨハン、今日はこの本が読めるようになりたいんだけど、いいかな?」

「どれどれ、拝見いたしましょう」

ヨハンは俺が持っている本を受け取り、ページをめくる。
最後までページをめくり終わると、にこりと笑ったような顔でこちらを見て「では、今日はこちらの本で勉強しましょう」と言ってくれた。

冒頭の内容はなんとなくわかるのだが、だんだん物語が進んでいくとわからなくなる文字が出てくる。

「ヨハン、これはなんて読むの?」

「はい、こちらは「こはく」と読みます。ちょうどリオ様がつけられている首飾りの宝石を指す言葉ですね」

そう言われて、俺は首飾りを服の下から取り出し、琥珀の部分を見つめる。

「この部分の文章を少し読みますね」

ーーー

琥珀の妖精は記憶を司る妖精です。
数多の記憶をその宝石の中に閉じ込め、そして、大切に保管するのです。

だから、琥珀の妖精は「追憶の妖精」とも呼ばれておりました。
追憶の妖精は、いい記憶だけではなく、辛い記憶も保管するため、時々苦しそうにしていますが
太陽の光に当たると、気持ちが落ち着き、そしてまた新しい記憶の保管をしていくのです

ーーー

「記憶の保管……。」

「はい。昔から、琥珀という宝石は記憶を保管できると言われており、その記憶を頼りに様々な文化が築かれたとされています。このアンブラリア王国もそのうちの一つです」

「何か不思議な力とかがあるのか?」

「いえ、そういうわけではございません。あくまでそういう言い伝えと言いますか。物語ですね。実際この本の妖精たちのように、宝石を持つことで何かが起きたりすることは基本的にはございません」

俺は、この話を聞いて、たまに首飾りを見た時に見える炎のような揺らめきが、実は妖精だったのではと少しわくわくしたのだが、言い伝えと聞いて、見間違え……もしくはこの琥珀の宝石の形状からそういう風に見えるのだと納得をした。

「リオ様がお持ちのその首飾りは、アンブラリア王家が代々引き継いでいるものですから、もしかしたら過去の記憶を閉じ込めているかもしれませんね」

ほっほっほ、と髭を撫でながら笑うヨハンを見て、俺もそうだったらいいなと、そうだったら素敵だと思いつつも、処刑されてしまったあの記憶も琥珀に残っていたらそれは辛いことだなと、少ししんみりもした。

「では、続きを読んでいきつつ、文字のお勉強も進めましょうか」

「うん」

その後も、ヨハンによっていろいろな宝石の読み方を教えてもらい、物語の大筋も理解できた。
この本は妖精たちが最終的に一丸となって、悪と戦う物語だった。
黒い宝石が世界を壊しかけていたが、実はその宝石も元は綺麗な宝石で、いろいろな悪い気を吸ってしまったことで、黒く濁ってしまっていた。
それを、他の妖精たちの力で浄化し、元の綺麗な宝石に戻り、世界も崩壊せず、めでたしめでたし。
そんな内容だった。

「ところで、この本はどうされたのですか?」

ヨハンに聞かれ、俺はアレンと買い物にいった話をする。
するとヨハンは、「さようでございますか」と、なんだか嬉しそうな顔をしたので、こちらも少しうれしくなって顔が少し熱くなる感じがした。

「では、今日はこの本の内容を理解できたことですし、ここまでとしますか」

「うん、ヨハン、今日もありがとう」

「いえいえ、こちらも日々の楽しみが増えたので。こちらこそ、ありがとうございます」

ヨハンからお礼を言われてしまった。
俺はたまたまここにいるだけの駒に過ぎないが、そんな俺がヨハンの楽しみの一つになっていることは、少しうれしかった。

「リオ様、本日は晴天でお散歩日和ですが、お庭に出たりはなさらないのですか?」

急にヨハンから質問された内容に、うーんと悩む。
以前もそう聞かれて、特にすることがないからと断ったが、今日はなんだか出てみてもいいような気がした。
昨日の記憶がない時間のもやもやを忘れたいという気持ちもある。

「今日は…。行ってみようかな。ヨハンはもう帰るの?」

「はい、この後私は、レオヴィク様とお話の予定が入っておりまして、そちらに向かわなければならないのです」

「そっか……。」

最近知った感情、寂しさを感じつつも、一緒に行こうという言葉は出てこない。

「大丈夫ですよ、リオ様。そこの庭まででしたら、おそらく誰にも会わないと思います」

ヨハンは知ってか知らずか、俺の不安要素の一つを解消してくれた。
この部屋を出るときは必ず誰かと一緒だったから、知らない人と会ったときにどう対応したらいいか全くわからなくて、不安だったのだ。
しかし、ここで一つ疑問が湧き上がる。
今まで庭を見たりしているときに思ったことだったが、そういうものだろうと納得していた疑問。

「そういえば、ここのお城って警備とかそういうのはいないのか?」


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