琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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第一章「利用される者、する者」

秘密の場所

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「この場所は、城から少し離れた場所になっております。そして、この場所自体、レオヴィク様が完全に取り仕切っておりまして、この場所の周りには誰も近づけないようになっております」

庭に警備がいない理由が判明したことで、また新たな疑問が湧く。

「近づけないよう、に?」

「はい、この場所はレオヴィク様の先々代、エルドリク様が国王より秘密裏に受け継いだ場所で、古い結界術が施されている場所になるのです。」

へーと理解しているように返事はするものの、全く理解はできていない。
そんな魔法のようなもの、と半信半疑で話を聞く。

「疑っておられますね」

ほっほっほ、と再び髭を触りながら笑うヨハンに少しムッとするものの、実際に疑っているので言い返す言葉がない。

「そして、この話をレオヴィク様はリオ様にはされておられなかったのですね。いやはや、言葉が少なすぎるにも程があります」

ヨハンは額に手を当てながら左右に頭を振る。
ふぅと息を吐いた後、顔を上げ、俺の方を見た。

「……とはいえ、レオヴィク様にも事情がございます。あの方は、言葉より行動でお守りする方ですしね。まだ、レオヴィク様との時間には少し猶予がありそうなので、お話ししましょうかね」



この場所は古い結界術で守られており、ノーバイデン教の信者は入れないようになっているのだという。
というのも、ノーバイデン教は、必ず首から逆さ十字に瞳のようなマークが重なっている首飾りを付けており、それを付けているものは必然的にはじかれる、そもそもこの場所にたどり着くことができないようになっているそうだ。

国王の挨拶回りのあと、セヴァリウス王がノーバイデン教の不穏な動きを瞬時に察知し、この場所を作り、秘密裏にエルドリクに受け継いだという。
当時はまだ、呪いまじないなどが使える魔術師という存在がいたが、年々その数は減っていき、今では魔術師は存在していないとも言われている。

そんな中で、この場所だけは数百年の時を経た今でも効力を失わずに、エルドリク家に力を貸している。
セヴァリウス王の執念なのか、そういったものを感じる場所でもある。

だったら、教団も首飾りを外してこの場所に入ればいいと思うのだが、なんでも教団の首飾りは外すと精神錯乱を起こしてしまうという、にわかにも信じがたい噂が回っており、誰も外したがらないのだという。

そういった教団の裏を突いた秘密の場所で、リオはしっかり隔離されていたのだ。




「ですので、リオ様はこの部屋と、この部屋から見える庭であれば、おひとりで出ても問題ないですよ」

そうなのか、と納得はできるものの、じゃあ今すぐ庭に出てみますという気持ちにはならず、下を向く。

「ひとまず、庭に行くだけいってみますか?すぐに帰りたくなったのであれば、そのまま私がお部屋までお送りしますよ?」

ヨハンにそういわれ、窓の外を見る。
太陽の光が庭に降り注ぎ、キラキラと草花を照らしている。
スラム街にいた時には見ることはなかったこの綺麗な景色を、近くで見れるという気持ちも高まり、意を決して立ち上がる。

「行ってみる」

「かしこまりました。では、このヨハンがお供させていただきましょう」

そういうと、ヨハンも「よっこらしょ」と腰を押さえながら立ち上がり、扉へと向かう。

「少し歩みは遅くなるかもしれませんが、参りましょう」

ヨハンは俺の方を見て、手を差し伸べる。
その手を見て、俺は少し戸惑ったが、大人しく手を重ねヨハンとともにレオヴィクの部屋を出た。

そうして、少し歩くと庭はすぐに見えてきた。
思ったよりも近いところにあったため、拍子抜けした気持ちもあるが、自分の感情で外に出て、ここまで歩いてきたということに意味があるのだろう。

「いかがですかな?戻りますか?」

ヨハンに聞かれ、少し考える。

「もう少しここにいる」

そして答えを出すと、ヨハンは「さようでございますか」と言いながら、「ごゆっくり」と言葉を残し、庭から去っていった。

ヨハンがいなくなってから、ゆっくりと歩みを進めた。
スラム街にいたころは、ほぼ裸足に近い状態だったが、ここに来てからは靴を履くようになり、地面を踏んでも痛くない柔らかい靴を履かせてもらっている。
しかし、庭には柔らかそうな芝生が敷き詰められており、裸足で歩いたら気持ちがいいのではないかと思い、そっと靴を脱いだ。

脱いだ靴をその場に置き、芝生の上に足を下す。
その瞬間、柔らかい感触が足裏に伝わり、少しくすぐったいようなそんな感覚が全身を駆け巡った。

そのまま数歩進み、小さな噴水の前まで来た。
噴水の縁に腰を掛けると、柔らかな風が頬を撫で、とても気持ちが良かった。

「気持ちいい……」

思わず口から出た言葉に自分でもびっくりしたが、今は純粋に気持ちよさを全身で感じた。


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