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第一章「利用される者、する者」
利用するもの、されるもの
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レオヴィクが来てから、肩を貸していたヨハンをレオヴィクに預け、三人で部屋に戻った。
そして、ヨハンをソファに座らせると、レオヴィクが「座れ」と言い、俺もヨハンの横に腰掛ける。
それを見たレオヴィクは、机をはさんで反対側のソファに腰を掛ける。
「さて、リオ。この部屋に誰か来なかったか?」
レオヴィクに問われた質問にびくりとする。
「きた、」
それだけいうと、レオヴィクは「やはりな」と、再び真意の分からない言葉を零す。
俺はそれに対して質問をしたいのに、なんて聞いたらいいのか、そもそも聞き返していいものなのかすら、わからなかった。
「ついに動き出したか」
「ええ、そのようですね」
二人はお互いに顔を見合わせながら言葉を交わす。
俺はそれを聞いていることしかできない。
「まさか、早速動き出すとは思わなかったが、こちらも早めに動いた方がいいな」
「そうですね。私が手記をそのまま手に持って移動したのは今日がはじめてだというのに」
「元々目を付けていたのだろう。ヨハンに」
「ほっほっほ、老いぼれと思って侮ってもらっちゃ困りますな」
ヨハンは髭を触りながら笑うが、まだ本調子ではないようで、「あいたた」と言いつつ、おなかのあたりをさする。
「ところでヨハン、お前はなぜそんなにもピンピンしている」
「それが私にもわからないんですよ。てっきり、あとはレオヴィク様に看取っていただくだけかと思っていたのですがねぇ」
「え」
そこまでずっと聞くことに徹していたが、さすがに聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、声を漏らしてしまう。
「看取ってもらうって……、どういう」
「そのままの意味だ」
レオヴィクに言われるが、やはり意味はよくわからない。
「リオ様、私は今日、ノーバイデン教の動向を探るために餌をもっていました。そしてノーバイデン教は、まんまとその餌を食べ、こちらの思惑通り動向を探ることができました」
「えさ…」
「えぇ、手記をもって歩けば、ノーバイデン教は必ずその手記を奪いに来るだろうと。そこで私自身、殺される可能性ももちろんありましたが、今こうしてまたリオ様とお話しできて、私は幸せ者でございます」
そこまでの会話を、何の躊躇もなくするものだから、なんだか普通の会話のように聞こえてしまい、口を挟むことを忘れてしまった。
しかし、この話は聞き流していい話ではない。
「殺される可能性って、」
「ヨハンは、ノーバイデン教をおびき寄せるための餌だ。それを自分からかって出てくれたんだ」
にわかには信じられない内容に俺は言葉を失う。
「とはいえ、この老いぼれでもまだまだやることはあるようです。こうやって生き永らえることができているのですから、もしいるのであれば神に感謝をしたいところですね」
ほっほっほといつものように髭を触るその姿が、本当にいつも通りすぎて、自分の感情が間違っているのかと疑問を持ってしまうほどだった。
「お、おかしいよ」
「おかしい?なにもおかしいことはない。今後のアンブラリア王国のためにも、犠牲は覚悟しなければならない。それほど、今からやろうとしていることは、重大なことなのだから」
レオヴィクと庭の噴水の縁に座って話をした時に、少なからず暖かさを感じていた。
しかし、今はどうだろうか。
暖かい気持ちなど全くなく、むしろ冷徹な、氷のような、まだ先だと思っていた冬が突然訪れたような、そんな寒さが全身を駆け巡った。
「俺はアンブラリア王家を取り戻すためにここにいる。そして、ヨハンも同じ気持ちでここに来てくれている」
レオヴィクが続ける言葉が、だんだんと小さく、遠く聞こえる気がして何を言っているのか理解ができなくなっていた。
ようするに、アンブラリア王家を取り戻すためなら、どんな犠牲も仕方がないものとする
そして、それは俺も同様だが、駒となるものは、ただ駒として使われるだけじゃなく、その先に死があるとわかっていたとしても、そのまま進めていくということだ。
レオヴィクの冷たさを全身で感じた俺は、これ以上言葉をつづけることができなくなった。
「リオ、大丈夫か」
そうして、静かになった俺にレオヴィクはいつものように声をかけてくる。
「うん。大丈夫。大丈夫なんだけど、ごめん、ちょっと一人になりたい」
俺は、すっと立ち上がり部屋の外に出ようとする。
「まて。お前、ここに誰か来たのだろう?むやみに外に出るな。特に今はお前の存在がばれるわけにはいかない」
俺は無言でレオヴィクを見る。
「わかったら戻れ、座っておけ。もしくはベッドにでもいって本を読んでおけ」
リオは机の上に置いている本をちらりと見る。
当たり前だが、本を読むような気持にはならない。
「リオ、聞いているのか」
「レオヴィク様……」
ヨハンが声を出す。
「リオ様は、おそらく動揺してしまっているのでしょう。ここはひとまずリオ様のお好きなようにさせてあげるのはいかがですか」
ヨハンは柔らかい声でレオヴィクに語り掛ける。
その声ですら、今の俺は怖いと感じしまった。
今まで普通に話してきたはずなのに、死んでいたかもしれないという現実を、当たり前の日常に組み込んできているこの感じが、とても怖かった。
「はぁ。わかった。だが、この呪いのある場所からは出るな」
「わかった」
俺はそれだけを言うと部屋から出て、庭へ向かった。
ここでの行動は限られているから、結局は庭にいくことしかできないのだ。
であれば、少しでもバルコニーから見える位置にはいたくなくて、噴水の方にはいかず、以前レオヴィクが背を預けていたバルコニーの下あたりの柱に同じように背を預けつつ、両膝を立てた状態でしゃがみこむ。
「俺は、駒だ。俺も覚悟しなきゃいけないんだ」
そう呟いて、両膝に顔を埋め、両手で頭を覆う。
「レオヴィクは俺を利用する。俺はレオヴィクに利用される。それが約束。それが俺の、役目」
ーーーーー
第一章、利用するもの、されるもの ここで完結となります。
次回のお話からは第二章へと突入していきます。
もうしばらくお付き合いくださいませ
そして、ヨハンをソファに座らせると、レオヴィクが「座れ」と言い、俺もヨハンの横に腰掛ける。
それを見たレオヴィクは、机をはさんで反対側のソファに腰を掛ける。
「さて、リオ。この部屋に誰か来なかったか?」
レオヴィクに問われた質問にびくりとする。
「きた、」
それだけいうと、レオヴィクは「やはりな」と、再び真意の分からない言葉を零す。
俺はそれに対して質問をしたいのに、なんて聞いたらいいのか、そもそも聞き返していいものなのかすら、わからなかった。
「ついに動き出したか」
「ええ、そのようですね」
二人はお互いに顔を見合わせながら言葉を交わす。
俺はそれを聞いていることしかできない。
「まさか、早速動き出すとは思わなかったが、こちらも早めに動いた方がいいな」
「そうですね。私が手記をそのまま手に持って移動したのは今日がはじめてだというのに」
「元々目を付けていたのだろう。ヨハンに」
「ほっほっほ、老いぼれと思って侮ってもらっちゃ困りますな」
ヨハンは髭を触りながら笑うが、まだ本調子ではないようで、「あいたた」と言いつつ、おなかのあたりをさする。
「ところでヨハン、お前はなぜそんなにもピンピンしている」
「それが私にもわからないんですよ。てっきり、あとはレオヴィク様に看取っていただくだけかと思っていたのですがねぇ」
「え」
そこまでずっと聞くことに徹していたが、さすがに聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、声を漏らしてしまう。
「看取ってもらうって……、どういう」
「そのままの意味だ」
レオヴィクに言われるが、やはり意味はよくわからない。
「リオ様、私は今日、ノーバイデン教の動向を探るために餌をもっていました。そしてノーバイデン教は、まんまとその餌を食べ、こちらの思惑通り動向を探ることができました」
「えさ…」
「えぇ、手記をもって歩けば、ノーバイデン教は必ずその手記を奪いに来るだろうと。そこで私自身、殺される可能性ももちろんありましたが、今こうしてまたリオ様とお話しできて、私は幸せ者でございます」
そこまでの会話を、何の躊躇もなくするものだから、なんだか普通の会話のように聞こえてしまい、口を挟むことを忘れてしまった。
しかし、この話は聞き流していい話ではない。
「殺される可能性って、」
「ヨハンは、ノーバイデン教をおびき寄せるための餌だ。それを自分からかって出てくれたんだ」
にわかには信じられない内容に俺は言葉を失う。
「とはいえ、この老いぼれでもまだまだやることはあるようです。こうやって生き永らえることができているのですから、もしいるのであれば神に感謝をしたいところですね」
ほっほっほといつものように髭を触るその姿が、本当にいつも通りすぎて、自分の感情が間違っているのかと疑問を持ってしまうほどだった。
「お、おかしいよ」
「おかしい?なにもおかしいことはない。今後のアンブラリア王国のためにも、犠牲は覚悟しなければならない。それほど、今からやろうとしていることは、重大なことなのだから」
レオヴィクと庭の噴水の縁に座って話をした時に、少なからず暖かさを感じていた。
しかし、今はどうだろうか。
暖かい気持ちなど全くなく、むしろ冷徹な、氷のような、まだ先だと思っていた冬が突然訪れたような、そんな寒さが全身を駆け巡った。
「俺はアンブラリア王家を取り戻すためにここにいる。そして、ヨハンも同じ気持ちでここに来てくれている」
レオヴィクが続ける言葉が、だんだんと小さく、遠く聞こえる気がして何を言っているのか理解ができなくなっていた。
ようするに、アンブラリア王家を取り戻すためなら、どんな犠牲も仕方がないものとする
そして、それは俺も同様だが、駒となるものは、ただ駒として使われるだけじゃなく、その先に死があるとわかっていたとしても、そのまま進めていくということだ。
レオヴィクの冷たさを全身で感じた俺は、これ以上言葉をつづけることができなくなった。
「リオ、大丈夫か」
そうして、静かになった俺にレオヴィクはいつものように声をかけてくる。
「うん。大丈夫。大丈夫なんだけど、ごめん、ちょっと一人になりたい」
俺は、すっと立ち上がり部屋の外に出ようとする。
「まて。お前、ここに誰か来たのだろう?むやみに外に出るな。特に今はお前の存在がばれるわけにはいかない」
俺は無言でレオヴィクを見る。
「わかったら戻れ、座っておけ。もしくはベッドにでもいって本を読んでおけ」
リオは机の上に置いている本をちらりと見る。
当たり前だが、本を読むような気持にはならない。
「リオ、聞いているのか」
「レオヴィク様……」
ヨハンが声を出す。
「リオ様は、おそらく動揺してしまっているのでしょう。ここはひとまずリオ様のお好きなようにさせてあげるのはいかがですか」
ヨハンは柔らかい声でレオヴィクに語り掛ける。
その声ですら、今の俺は怖いと感じしまった。
今まで普通に話してきたはずなのに、死んでいたかもしれないという現実を、当たり前の日常に組み込んできているこの感じが、とても怖かった。
「はぁ。わかった。だが、この呪いのある場所からは出るな」
「わかった」
俺はそれだけを言うと部屋から出て、庭へ向かった。
ここでの行動は限られているから、結局は庭にいくことしかできないのだ。
であれば、少しでもバルコニーから見える位置にはいたくなくて、噴水の方にはいかず、以前レオヴィクが背を預けていたバルコニーの下あたりの柱に同じように背を預けつつ、両膝を立てた状態でしゃがみこむ。
「俺は、駒だ。俺も覚悟しなきゃいけないんだ」
そう呟いて、両膝に顔を埋め、両手で頭を覆う。
「レオヴィクは俺を利用する。俺はレオヴィクに利用される。それが約束。それが俺の、役目」
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第一章、利用するもの、されるもの ここで完結となります。
次回のお話からは第二章へと突入していきます。
もうしばらくお付き合いくださいませ
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