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第二章「信じる者、欺く者」
ノーバイデン教
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ヨハンが倒れた日の夜。
王座ーー。今はノーバイデン教の礼拝堂となっている場所での出来事。
「アモン神官、例の物をお持ちいたしました」
片膝をつき頭を下げる一人の男性。
白に金のラインが入った長いローブを身に着けており、フードも目深にかぶっているその男の表情は全くわからない。
「おぉ、良く戻ったな」
玉座だったその場所にある、赤い大きな椅子には、同じく白いローブを身に着けている老人が座っている。
その人物はフードを被っておらず、少しウェーブがかかった短い白い髪に、口元には同じく白い髭が短く生えている。
その口元はニヒルな笑みを零している。
フードを被った男をは頭を下げたまま、懐に入れていた少し古びた本を一冊、両手で差し出す。
「これが、あのエルドリクが書いた手記か」
「はい。ヨハンが持っていたので間違いないかと」
「よくやったぞ。ひとまず中を確認した後に、この本は焼却処分としよう」
フードの男は立ち上がり、玉座に近づく。
そして、玉座に座るアモン神官に本を渡す。
「初代神官ですら、こやつの書いた手記にたどり着けなかったというが、こうも簡単に手に入るとは」
「アモン神官のお導きのおかげでございます」
フードの男は少しだけ顔を上げ、口もだけが気味悪く見え隠れする。
「私は、アモン神官の導きの通りに動いただけでございます」
「そう謙遜するな。そなたの声変わりの術も秀でた才ではないか」
「いえいえ、アモン神官に比べればこのような術、……子供だましのようなものですな」
そう言いながら、フードの男は声をヨハンと同じ声色に変える。
「はっはっはっ、本当にあのヨハンにそっくりではないか!あいつも老いぼれ、昔のような覇気も無くなり、何とも扱いやすい老人になりはてておる」
そして、アモン神官はそっと手記を開く。
「ん?」
「アモン神官?いかがされました?」
アモン神官は、そのまま次々に頁をめくっていく。
「な、なんなんだこれは」
フードの男は、アモン神官の言っている意味が分からず、首をかしげる。
しかし、アモン神官の雰囲気が、今までの穏やかなものから、とても重たく、苦しい雰囲気に変わる。
「あ、アモン、神官?」
「なんなんだ、この本は!!」
アモン神官は持っていた本を床にたたきつける。
急な行動にフードの男は、「ヒッ」と声を上げながら、後ろに倒れる。
寸前で手をついたことで、何とか尻もちをついただけで済んだ。
しかし、目の前の神官はそれだけでは済んではいないようだった。
「こんな、こんな白紙の手記を掴まされおって!」
「は、白紙!?」
バタバタと、ついていた手を前に持ってきて、四つん這いのまま床に放られた手記、と思われるものを手に取り頁をめくる。
しかし、どんなにめくっても、手記の中は真っ白で、表紙だけがやけに古く見えるように細工されたダミーだったのだ。
「ど、どうして」
「それはこちらのセリフだ!きさま……。まんまとレオヴィクにやられておって!!」
「も、申し訳ございません!」
フードの男は、両手と自分のおでこを地面につけ、謝罪をする。
それでも、アモン神官の憤りは収まらない。
「くっ、どうしてうまく事が進まないのだ。神の導きがより鮮明になれば、こんなことには…」
アモン神官は拳を強く握り、ドスンと大きな音を立てながら玉座を殴る。
「あ、アモン神官……」
「なんだ!この出来損ない!お前に口を開く権利などない!」
アモン神官は、フードの男に厳しい言葉を浴びせる。
「も、申し訳ございません、ですが、どうしてもお耳に入れておきたいことが……」
「耳に入れておきたい、ことだと?」
アモン神官は、握りしめていた拳を緩める。
重たい雰囲気が少し和らぐ。
「は、はい」
「なんだ、申してみよ。くだらぬことだった場合は、わかっておるな。そなたには神罰が下ることになるぞ」
「重々承知しております」
フードの男は、ゴクリと口にたまっていた唾を飲み込み、もう一度頭を下げ口を開く。
「灯火の顕現かもしれませぬ」
「……なんと?」
「はい、ヨハンからこの手記を奪い、その場を去ろうとしたとき、レオヴィク騎士団長の部屋から一人の少年が出てきました」
アモン神官は、「ふむ」と言いながら、肘起きについていた拳をさらに緩め、自身の顔を支えるようにたて、親指と人差し指で短い髭を触る。
「その少年に見覚えは全くなかったため、しばらく物陰に隠れておりました。すると、その少年は首飾りのようなものを服の下から取り出したかと思えば、その少年の周りが光に包まれ、そして、灯火がヨハンとその少年の周りに漂っていたのです」
「それ、は……まさか」
「えぇ。首飾りに関しては少し遠めだったことと、少年が背中を向けていたこともあり、詳細はまだわかりませんが、もしかしたら……」
「琥珀の、首飾り?」
アモン神官が触っていた髭から指を離し、上体を戻す。
そして、玉座から立ち上がると、膝をついてたフードの男の傍による。
「探るのだ、そなたの道行きに神のご加護があらんことを」
それを言うと、アモン神官は自身がつけていたノーバイデン教団の首飾りをフードの男の頭に当てる。
その瞬間、首飾りからはふんわりと赤い光が漏れ、フードの男に吸い込まれる。
「我らは光の御もとに」
フードの男は、自身もつけている教団の首飾りの瞳の部分。紅玉がはめ込まれた部分をおでこにあて、そのまま立ち上がり、玉座ーー礼拝堂を後にする。
「灯の眠る琥珀……、ああ、神よ。我らをお見捨てになったわけではないのですね」
アモン神官は扉に背を向け、玉座の後ろ飾られている先代アモン神官の肖像画を見上げ、そして首飾りの紅玉の部分をおでこに当て、一礼をする。
王座ーー。今はノーバイデン教の礼拝堂となっている場所での出来事。
「アモン神官、例の物をお持ちいたしました」
片膝をつき頭を下げる一人の男性。
白に金のラインが入った長いローブを身に着けており、フードも目深にかぶっているその男の表情は全くわからない。
「おぉ、良く戻ったな」
玉座だったその場所にある、赤い大きな椅子には、同じく白いローブを身に着けている老人が座っている。
その人物はフードを被っておらず、少しウェーブがかかった短い白い髪に、口元には同じく白い髭が短く生えている。
その口元はニヒルな笑みを零している。
フードを被った男をは頭を下げたまま、懐に入れていた少し古びた本を一冊、両手で差し出す。
「これが、あのエルドリクが書いた手記か」
「はい。ヨハンが持っていたので間違いないかと」
「よくやったぞ。ひとまず中を確認した後に、この本は焼却処分としよう」
フードの男は立ち上がり、玉座に近づく。
そして、玉座に座るアモン神官に本を渡す。
「初代神官ですら、こやつの書いた手記にたどり着けなかったというが、こうも簡単に手に入るとは」
「アモン神官のお導きのおかげでございます」
フードの男は少しだけ顔を上げ、口もだけが気味悪く見え隠れする。
「私は、アモン神官の導きの通りに動いただけでございます」
「そう謙遜するな。そなたの声変わりの術も秀でた才ではないか」
「いえいえ、アモン神官に比べればこのような術、……子供だましのようなものですな」
そう言いながら、フードの男は声をヨハンと同じ声色に変える。
「はっはっはっ、本当にあのヨハンにそっくりではないか!あいつも老いぼれ、昔のような覇気も無くなり、何とも扱いやすい老人になりはてておる」
そして、アモン神官はそっと手記を開く。
「ん?」
「アモン神官?いかがされました?」
アモン神官は、そのまま次々に頁をめくっていく。
「な、なんなんだこれは」
フードの男は、アモン神官の言っている意味が分からず、首をかしげる。
しかし、アモン神官の雰囲気が、今までの穏やかなものから、とても重たく、苦しい雰囲気に変わる。
「あ、アモン、神官?」
「なんなんだ、この本は!!」
アモン神官は持っていた本を床にたたきつける。
急な行動にフードの男は、「ヒッ」と声を上げながら、後ろに倒れる。
寸前で手をついたことで、何とか尻もちをついただけで済んだ。
しかし、目の前の神官はそれだけでは済んではいないようだった。
「こんな、こんな白紙の手記を掴まされおって!」
「は、白紙!?」
バタバタと、ついていた手を前に持ってきて、四つん這いのまま床に放られた手記、と思われるものを手に取り頁をめくる。
しかし、どんなにめくっても、手記の中は真っ白で、表紙だけがやけに古く見えるように細工されたダミーだったのだ。
「ど、どうして」
「それはこちらのセリフだ!きさま……。まんまとレオヴィクにやられておって!!」
「も、申し訳ございません!」
フードの男は、両手と自分のおでこを地面につけ、謝罪をする。
それでも、アモン神官の憤りは収まらない。
「くっ、どうしてうまく事が進まないのだ。神の導きがより鮮明になれば、こんなことには…」
アモン神官は拳を強く握り、ドスンと大きな音を立てながら玉座を殴る。
「あ、アモン神官……」
「なんだ!この出来損ない!お前に口を開く権利などない!」
アモン神官は、フードの男に厳しい言葉を浴びせる。
「も、申し訳ございません、ですが、どうしてもお耳に入れておきたいことが……」
「耳に入れておきたい、ことだと?」
アモン神官は、握りしめていた拳を緩める。
重たい雰囲気が少し和らぐ。
「は、はい」
「なんだ、申してみよ。くだらぬことだった場合は、わかっておるな。そなたには神罰が下ることになるぞ」
「重々承知しております」
フードの男は、ゴクリと口にたまっていた唾を飲み込み、もう一度頭を下げ口を開く。
「灯火の顕現かもしれませぬ」
「……なんと?」
「はい、ヨハンからこの手記を奪い、その場を去ろうとしたとき、レオヴィク騎士団長の部屋から一人の少年が出てきました」
アモン神官は、「ふむ」と言いながら、肘起きについていた拳をさらに緩め、自身の顔を支えるようにたて、親指と人差し指で短い髭を触る。
「その少年に見覚えは全くなかったため、しばらく物陰に隠れておりました。すると、その少年は首飾りのようなものを服の下から取り出したかと思えば、その少年の周りが光に包まれ、そして、灯火がヨハンとその少年の周りに漂っていたのです」
「それ、は……まさか」
「えぇ。首飾りに関しては少し遠めだったことと、少年が背中を向けていたこともあり、詳細はまだわかりませんが、もしかしたら……」
「琥珀の、首飾り?」
アモン神官が触っていた髭から指を離し、上体を戻す。
そして、玉座から立ち上がると、膝をついてたフードの男の傍による。
「探るのだ、そなたの道行きに神のご加護があらんことを」
それを言うと、アモン神官は自身がつけていたノーバイデン教団の首飾りをフードの男の頭に当てる。
その瞬間、首飾りからはふんわりと赤い光が漏れ、フードの男に吸い込まれる。
「我らは光の御もとに」
フードの男は、自身もつけている教団の首飾りの瞳の部分。紅玉がはめ込まれた部分をおでこにあて、そのまま立ち上がり、玉座ーー礼拝堂を後にする。
「灯の眠る琥珀……、ああ、神よ。我らをお見捨てになったわけではないのですね」
アモン神官は扉に背を向け、玉座の後ろ飾られている先代アモン神官の肖像画を見上げ、そして首飾りの紅玉の部分をおでこに当て、一礼をする。
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